成年後見人に就任した場合、ご本人がすでにマイナンバーカードを持っている場合と持っていない場合があります。
すでに持っている場合、ご本人が管理が可能であれば、ご本人に管理していただくことになります。
しかし、施設に入所していたり、病院に入院していたりして、ご本人による管理が難しい場合、後見人はやむを得ずそのカードの引継ぎを受けて、金庫等で管理することがあります。
まだマイナンバーカードを持っていない場合、マイナンバー通知カードや個人番号通知書についても、上記と同じ扱いがなされていると思います。
後見人としては、今まではマイナンバーカードの取得の必要性がないことから、取得を行っていないことがほとんどではないでしょうか。
そんな中、令和5年6月7日に、健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一本化するマイナンバー法等の一部改正法が公布されました。(→コチラ)
これにより、令和6年秋には保険証が廃止され、カードを持たない人が保険診療を受けるには、新たに発行する「資格確認書」が必要になる見込みです。
なお、発行済みの健康保険証については、改正法施行後1年間(先に有効期間が到来する場合は有効期間まで)有効とみなす経過措置が設けられています。
後見人としては、本人のマイナンバーカードの交付を受け、健康保険証と一体化させるかについて検討することが必要となります。
本人の意思決定支援の観点からは、後見人はメリット・デメリットをわかりやすく本人に伝えるということが求められます。
【メリット】
・本人の受診・薬剤情報等に基づいたより適切で質の高い医療を低い窓口負担で受けることが可能となる。
・手続なしで高額療養費の自己負担分を超える支払が不要になる。
【デメリット】
・施設等に入所している場合、本人又は施設でマイナンバーカードを管理することが必要となる。
(医療機関の受診の際にマイナンバーカードをカードリーダーに置く必要があるため、後見人が管理することは現実的ではない。)
このデメリットについては、以下のような対応策がとられています。
①令和5年11月頃より、暗証番号の設定が不要なカードの申請受付・交付を予定。
②施設入所者のマイナンバーカードの管理等についてのマニュアルを策定。
『福祉施設・支援団体の方向け マイナンバーカード取得・管理マニュアル』(→コチラ)
・施設入所者本人が管理する場合、紛失に注意の上でカードを管理。
(本人の同意を得て、家族が管理することも可能)
・本人管理が基本だが、入所契約や預かり証等の合意に基づき、施設側で入所者のカードを管理 することもできる。
(参考)施設側での管理方法について
・紛失防止のため鍵付きのロッカー等に保管する
・管理の記録をつける
・職員のうち管理を行う者の範囲を定める など
後見人としては、施設に入所している本人がマイナンバーカードの保険証との一体化を希望する場合、
・本人の管理が可能な場合は、本人の管理方法
・本人の管理が不可能な場合は、施設の管理方法
について確認し、マイナンバーカードが適正に管理されるよう留意する必要があるでしょう。
後見人がマイナンバーカードの代理交付を受けるために必要な書類についても見直しがされています。(→コチラ)
「交付申請者の出頭が困難であることを疎明するに足りる資料」については、代理権限を証する書面(登記事項証明書)で足り、実質不要となりました。
私が以前ご本人のマイナンバーカードの代理交付を受けたときは、この疎明資料として施設長に顔写真証明書を作成してもらわなければならず、手続きに手間と時間がかかったのですが、この見直しによって簡素化されたのはよかったと思います。
他にも、市区町村職員が施設や個人宅に出向き、申請を受付するなどの方法も上記マニュアルには紹介されています。
後見人としては、本人の意思決定支援の観点から、メリット・デメリットをわかりやすく本人に伝え、本人がマイナンバーカードの保険証との一体化を希望する場合は、その意思の実現のための支援を行っていくことになります。
マイナンバーカードと健康保険証の一体化は、後見業務にも大きな影響がありますので、今後も随時このブログで取り上げていきたいと考えています。
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(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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