後見人等の報酬額はどのくらいなのでしょうか?
後見人等の報酬額は、家庭裁判所において報酬付与の審判により決定されます。
後見人等の報酬額にはおよその目安はあるものの、実際にいくら支払われたかについての統計的な数字が公表されたことは今までありませんでした。
そんな後見人等の報酬について、最高裁判所が初めて実態調査を実施し、結果が公表されました。
令和5年2月21日、成年後見制度利用促進専門家会議 第3回成年後見制度の運用改善等に関するワーキング・グループが開催されました。
この会議のテーマは、「適切な報酬算定に向けた検討及び報酬助成の推進等に関すること」です。
資料⇒コチラ
最高裁判所は、現在の財産の多寡を主要な考慮要素として報酬を算定する考え方から、後見人等が実際に行った事務の内容や負担の程度等を考慮して報酬を算定する考え方へ変更するという方向性を示しています。
ただ、この新しい報酬算定の考え方では、本人の財産額が少なくても事務の内容や負担が重い事案については、審判書に記載された報酬額は高くなるけれども実際には本人から報酬を受領できないことになり、まさに「絵にかいた餅」になってしまうことが想定されます。
そのため、新しい報酬算定の考え方を実務に導入するには、併せて報酬助成の推進を図る必要があると主として専門職から強く主張されてきました。
そこで、後見人等が報酬を受け取ることができない事案の実情を把握して、今後の適切な報酬の算定に向けた検討及び報酬助成の推進等に活かすため、最高裁判所が全国の家庭裁判所に対して実態調査を行い、今回のWGでその結果が公表されました。
この調査結果については、新聞記事にもなっています。
「成年後見人の報酬は年33万円超 最高裁が初調査」(福祉新聞)
この新聞記事の年33万円超というのは、下記の「報酬付与の申立てがあった事件の実情」の報酬額平均の表の全体の平均値に基づくものと思われます。
私がまずこの表を見て思ったのは、本人の流動資産額が50万円以下のケースが全体の約15%も占めるのか…ということです。
このようなケースの場合、報酬付与の審判を受けても、報酬助成を受けなければ実際に報酬を受領するのは難しいのではないでしょうか。
また、受領できないのであれば、あきらめて報酬付与の申立てをしないケースもあると思われます。
以下の資料が「報酬付与の申立てがない事件の実情」です。
後見人等が親族及び市民後見人以外の場合(その大半は専門職)(上記資料のB)で、本人の流動資産額が50万円以下のケースのうち、7.7%が申立てをしていないとの結果が出ています。
また、そのうち首長申立て以外(上記資料のD)の本人の流動資産額が50万円以下のケースにおいて、11.2%という高い比率で申立てがされていないのは、おそらく首長申立て以外の場合は報酬助成が受けられないようなケースなのではないでしょうか。
専門職は仕事として成年後見業務を行っているので、報酬付与の申立てをしないのは、受領できる見込みがそもそもないケースではないかと推察されます。
あと、今回公表された資料のうち、業界的に注目されているのは、以下の「本人との関係別報酬額平均」の表です。
やはり、弁護士の報酬額平均が一番高いという結果になりましたが、それは5000万円超から顕著になっています。
特に付加報酬がある場合の金額が高いので、専門性の高い業務を行ったことによるものと思われます。
今回の調査によって、報酬が受け取れていない事案のうち、受領見込みがないために報酬付与の申立て自体をしない事案の概要についてはある程度把握できましたが、報酬付与がされたものの現実に受領できなかった事案の概要についてまでは把握できていません。
とはいえ、報酬を受領できずに後見業務を行っている後見人等の苦労の一端が明らかになったといえるので、この調査の結果が報酬助成の拡充につながることを期待したいと思います。
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