後見人に就任したら | 成年後見日記

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もう10月ですね。

 

2ヵ月ぶりの更新です。

 

ここのところ、後見人や保佐人の新規の就任が続き、忙しくしていました。

 

後見人に就任したら、裁判所に初回報告書を提出するまでが一番忙しいです。

 

銀行、役所、年金事務所などに届出をしたり、財産調査をしたり…

 

さて、後見人に就任したら、何をしたらよいのでしょうか?

 

後見人に就任したら、まず最初にどのような仕事をするかについては、様々な本に書いてあるので、ここでは書きません。

 

ここでは、自分の経験上、後見人に就任したら検討した方がよいと思うことについて紹介します。

 

以下の2つです。

 

①前年分の税務申告

被後見人(本人)に所得税や住民税が課税されているようでしたら、前年分の確定申告や住民税の申告をするとよいと思います。

 

例えば、令和5年8月に後見人に就任したら、遡って令和4年分の申告をします。

 

障害者控除や医療費控除などの控除を受ければ、非課税になる場合があります。

 

たとえ成年後見開始の審判前でも、65歳以上の方で障害の程度が障害者に準ずるものとして市町村長等から認定され「障害者控除対象者認定書」の交付を受けた方は障害者控除が受けられますので、必要があれば認定書の交付を申請します。

 

これにより、税金が還付されたり、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料が減額されたり、医療費や介護サービス費の自己負担割合が下がったり、負担限度額認定証の交付を受けられたりする場合があり、本人の財産に大きな影響があります。

 

②利用できる制度の確認

本人が利用できる福祉制度が他にないか確認する必要があります。

 

後見人の就任時に、本人がすでに何らかの制度を利用している場合が多いと思います。

 

しかし、日本の福祉制度は申請主義ですので、本人が利用できるのに利用していない場合があります。

 

たとえば、知的障害の療育手帳を持っている障害年金2級の方について、

後見人が就任した後に、

・精神障害者保健福祉手帳を申請して1級の手帳を取得し、

・障害年金額の改定請求により障害年金1級になり、

・国の特別障害者手当を申請して手当を支給されることになった

というケースがあります。

これにより、本人の年収は約50万円増えました。

 

このように今後の本人の財産に大きな影響を及ぼす場合がありますので、後見人は、就任時に本人が利用できる福祉制度の確認を行った方がよいと思います。

 

制度が利用できるにもかかわらずに、後見人が見落として利用しないと、後見人は善管注意義務違反で責任を問われる恐れがあります。

 

 

 

以上の2点については、自分が後見人に就任した場合もそうですが、監督人に就任した場合も、後見人に検討するように促すとよいと思います。

 

結果的に本人の利益となった場合、後見人と監督人との間の信頼関係も生まれ、以後の監督業務がスムーズになるという効果もあるでしょう。

 

(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)

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