成年後見関係事件の概況(令和5年1月~令和5年12月)が公表されました。
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この概況で注目したいのは以下の点です。
①申立件数が4万件突破
成年後見関係事件(後見開始、保佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数は合計で40,951件(前年は39,719件)であり、対前年比約3.1%の増加となっています。
昨年は対前年比約0.2%の減少となっていましたが、増加に転じました。
②保佐類型の増加が顕著
各類型の対前年の増減率は以下のとおりです。
括弧内が令和4年の対前年の増減率です。
令和5年は保佐類型の増加が顕著となっています。
これは、申立時の本人情報シートの活用の定着により、医師や裁判所が本人の状況をより詳細に把握することが可能となったためでしょうか。
もしくは、地域連携ネットワークの構築などにより、地域の権利擁護ニーズの早期把握・対応が促進されたためでしょうか。
○後見開始の審判の申立件数 対前年比約1.3%の増加(約0.2%の減少)
○保佐開始の審判の申立件数 対前年比約9.2%の増加(約0.3%の増加)
○補助開始の審判の申立件数 対前年比約4.4%の増加(約5.1%の減少)
③引き続き市区町村長申立てがトップに
申立人については、令和元年までは、本人の子が最も多かったのですが、令和2年にはじめて市区町村長が最も多くなりました。
令和5年も引き続き市区町村長が最も多く、全体の約23.6%を占めています。
2番目に多いのが本人(約22.2%)、3番目は本人の子(約20.0%)となっています。
これは、申立件数全体に占める保佐・補助の比率の増加に伴うものと推測されますし、本人のために申立てを行う親族がいないことも要因と推測されます。
この傾向は今後も続くでしょう。
④鑑定実施率がさらに低下
成年後見関係事件の終局事件のうち、鑑定を実施したものは約4.5%(前年は約4.9%)でした。
実施率の減少傾向に歯止めがかかりません。
これは、本人情報シートの活用が定着したことにより、裁判所が申立書類から本人の状況をより詳細に把握することが可能になったことも原因ではないでしょうか。
⑤親族後見人の選任率は減少傾向
配偶者、親、子、兄弟姉妹及びその他親族が成年後見人等に選任されたものが全体の 全体の約18.1%(前年は約19.1%)となっています。
家庭裁判所では、適任の親族がいれば、親族を後見人に選任する方向性なので、市区町村長申立てや本人申立てが多い(適任の親族がいない)のが要因と思われます。
⑥司法書士の選任数が依然としてトップ
第三者後見人の中では、司法書士の選任数が依然としてトップです。
地方では、専門職後見人の数が不足していて、後見人の担い手不足が深刻な地域もあると聞きます。
後見人の担い手不足をどう解消するかが大きな課題となっています。
第三者後見人の選任数
親族以外の後見人等 33,348件(前年32,013件)
内訳
司法書士 11,983件(前年11,768件)
弁護士 8,925件(前年 8,683件)
社会福祉士 6,132件(前年 5,851件)
市民後見人 344件(前年 271件)
⑦監督人の選任率は横ばい
令和2年から新たに監督人の統計が公表されていますが、令和5年も公表されました。
認容で終局した後見開始、保佐開始及び補助開始事件(38,002件)のうち、成年後見監督人等(成年後見監督人、保佐監督人及び補助監督人)が選任されたものは1,287件であり、全体の約3.4%(前年は約 3.4%)です。
令和4年2月から大阪家庭裁判所で運用が開始された総合支援型監督人は、とてもいい取組みだと思うので、今後全国各地に広まってほしいと思います。
(東京ジェイ法律事務所 司法書士 野村真美)
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