ゴルフ直線打法 -71ページ目

背骨の動きを確認する

スイング動作の背骨の動きは、背中下部の腰椎部分が左に引かれて右に回り、背中中央部の胸椎部分が右に引かれて左へ回り、背中上部の頸椎部分が左に引かれて右に回る、という三部分の動きで構成されます。これはバック、ダウンともに同じ動きになります。一本の棒の右回転で右に振り、逆回転で左へ振るような単純な動きではないのです。

簡単にこの動きを理解するには、椅子に腰を掛けて、正面を向いたまま首の前の喉仏部分を左手で軽く左に引いてみます。首を含め背骨全体に力を入れずにこの動作をすると、頭が右に回り、背中が右に引かれ、腰の上が左に引かれるように動く事が分かります。これが丁度前記の背骨の動きの形になっています。微弱な動きですから注意深く見る必要があります。

バックスイングでは、ごく自然に胸の背中(胸椎部分)を右に引く動きに入ります。この時脚腰を固めて動きに逆らえば、この動きに逆らって腰椎部分が左に引かれます。これらの動きと共に、頸椎部分が左へ引かれます(喉仏が左に引かれる)。脚腰の体勢を固めたまま、バックの方向に腕を振れば、自然にこの背骨の動きが現れます。

この動きでは、腰椎部分の動きを胸椎部分の動きが引き出します。したがって、腰椎部分は右回りに引っ張られる形になります。この動きに逆らって腰椎部分を左へ引けば、ダウンでの動きになる筈です。これを骨盤下背部の背骨の下端部分の引き戻しで実行するのが、「尻で振る」動き(06-06-07)です。

ダウンの腰椎部分の左への引きの動きでは、背骨の腰椎部分に右回りの動きが現れ、これが胸椎部分を右に振ります。これでダウンの「上体を右に回す」動きが現れます。この動きで胸椎部分に左回りの動きが現れて、背中に張りが発生しながら腕を強力に引き伸ばして引き下ろし、次いで左へ引き抜く動きが現れます。

逆に、両手のグリップを右脇前に強く引き下ろそうとすると、この背骨の動きが現れます。したがって、脚腰の体勢を固めたまま、一気にグリップを右脇前に引き下ろす動きを注意深く観察すれば、この動きの仕組みを体感的に理解することができます。

グリップを右脇前に縦に引き下ろすダウンの様子は、インターネット上の優れたプロのダウンスイングの動画でも確認できます。上体を左に回して振ると、この腕の動きは現れません。

尻で振る?

ダウンの体の動きを駆動するために、「尻で振る」(06-06-06)動きが登場しました。この動きの仕組みにはこれまで様々な所で触れて来ましたが、「鼻歌まじりで」実行できるほど明瞭ではない、という苦情が聞こえて来ます。この動きを分かり易く体感的に捉えることを試みます。

まず「背骨で上げる」バックの動きを確認します。両手をグリップの形に握り合わせ、アドレスの姿勢から、脚腰の体勢と両腕を固めたまま、グリップを直線的に右に引きます。この動きでは肩が「縦に回る」ように動きます。この動きを継続すれば「背骨で上げる」動きになります。(腰を回すと肩が「横に回る」動きになります)

この動きを継続してグリップがトップまで上がると、肩の「縦に回る」動きに引かれて、僅かながら腰が右回りに引かれながら「縦に回り」ます。これで小さな「脚でこらえて」の動きが現れます。この動きで動いた背骨の下部末端部分(尾骨付近)を、両脚腰を固めたまま引き戻せば、「尻で振る」動きが実現します。この動きでは上体が右に傾く形で腕が振られます。

「尻で振る」動きでは、左の脚腰が左膝を内側に引き込むように踏ん張り、右の脚腰が右膝を外側に押すように踏ん張りますが、何れの足も内側で踏ん張ります。この動きのパワーを体感するには、クラブを握り、ヘッドを右脇前方の柱あるいは机の脚の右側面に当て、この両脚腰の踏ん張りと両足の感覚で左へ引いてみます。シャフトが撓う程強力な引きが現れる筈です。

アドレスの体勢で両手のグリップを固め、この動きを実行すると、グリップが一旦右に引かれるようにしながら反時計回りに回り、そこから強力に左へ直線的に引かれます。実際のスイングでは、バックの終局点で腰が右回りに引かれているために、ダウンに入るとこの動きで右脇前にグリップが引き下ろされ、さらにそこで再びこの動きで左への振り抜きが強力に実現します。

トップから左肩を前、右肩を後ろに引く動作を加える大きなスイングでは、腰が右回りに引かれ、両脚腰がこれに逆らって踏ん張る体勢に入る、大きな「脚でこらえて」の動きになり、ここから「尻で振る」ダウンに入ります。

普通に考えれば、背骨の動きでクラブを右に振ってバックすれば、この背骨の動きを逆転してダウンとなりますが、これを実行すると腰が左へ回り、クラブを力強く振ることも、打球の方向性確保もできません。そこで「尻で振る」のです。「尻で振る」動きができないと、ダウンで腰が左に回る動きが現れて右肩が落ち、ダフリあるいは左への引っかけの動きが出ます。

スイングの大局観

これまで各部の動きを検討し、スイングの動きを組み立てることを試みて来ました。まだまだ細部の話はありますが、ここで一息入れ、実際にスイングを実行する時の動きを大局的に眺め直してみることにします。

スイングの動きをするゴルファーというシステムにとって、目的意識の生み出すボールの軌跡のイメージが最初のインプットになります。この入力をもとにスイングの動きが作られますが、これをバックスイングとダウンスイングに分けて考えてみます。ただしトップの切り返しがバックスイングの終局点になります。

ダウンスイングは、バックスイングの終局点で決まるダウンの初期条件を利用し、一気に実行します。その実行法はこれまでの議論のような各部の動きの検討で決まっているわけですが、実際のスイングでは避けられない誤差が発生します。というわけで、ゴルファーは統計的(あるいはストカスティック)な変動を含むシステムと見なすことができます。

急速な動きが要求されるダウンの過程では、動きの構造の調節は実用的には不可能です。したがって、ダウンの動きの作り方が安定していれば、バックスイングの終局点でダウンの初期条件すなわちシステムのパラメータが決まり、このシステムを駆動してダウンを実行するという見方が実用的になります。

調節するパラメータの数が少ない程、予想される出力の誤差は減ります。そこで、必要十分な少数のパラメータを選択してスイングを実行することになります。肩と腕の「魔法の動き」で腕を固めて振るのはこの目的にかなっています。

前回の議論(06-05-06)の内容から、バックスイングを腰から上の背骨の動きで実行し、トップの切り返しで脚腰の緊張を生み出し、尻の動きでダウン、という簡単な仕組みでスイングが実行できることが分かっています。この場合、トップの切り返しで、上体の右後方への動きに対し膝から下の緊張を保って脚腰が抵抗すれば、ダウンの初期条件が安定した形で決まります。

この初期条件を確保して安定にダウンを実行するには、トップの切り返しで決まる背骨の体勢と膝から下の緊張を保持したまま、切り返しで引き込まれた背骨の下端を尻で引き戻せばよいのです。このように動きを捉えると、
「背骨で上げ、脚でこらえて尻で振る」
という、鼻歌まじりでも実行できる単純なイメージが得られることになります。

隠されたパワー源:腰から上でバック、尻でダウン

最近の話は、分かり易い動きで背骨の動きを引き出すことを目指し、手や腕の動きを導きにして動きを検討して来たのですが、ダウンからインパクトの振り抜きというスイングのクライマックスでは、何と言っても脚腰の動きが重要になります。

前回の「腰(腰椎)の踏ん張りで右腕を伸ばしてダウン、胸(胸椎)の踏ん張りで左腕を伸ばしてインパクトの振り抜き」(06-04-06)という説明は、「踏ん張り」の実行方法が分からないという声が聞こえて来そうです。これは尻周りの筋の緊張で実現できます。

バックスイングでは、両脚と背骨が腕とクラブという負荷を押し上げます。アドレスの体勢で右手のグリップと腕を固め、左手を左尻の先端に当てて右手のグリップを右耳外側後方に向けて押し上げてみます。自然な脚腰の動きで左尻が僅かに前に出ますが、尻に格別の緊張はありません。

ここで右肩を後ろに引いて右グリップを背中の方に引きます。この動きで左膝が右方向に引き込まれます。この体勢のまま、右肘と共に右グリップを胸の高さまで引き下ろし、そこから更に右脇前まで引き下ろします。この時左の尻が緊張することを左手で確かめて下さい。右腕を固めたままグリップを右脇前へ引き下ろすと、上体が右回りに押し戻されるように左の脚腰が「踏ん張る」ことが分かります。

左手と左腕でも同じような動きを確かめることができます。左グリップを右耳横後ろに上げ、背中の方に引き、そこから右脇前にグリップを引き下ろし更に左脇前まで引いてみます。この時右手の平を右尻の先端に当てて置けば、左尻の場合と同じように緊張することが分かります。特にグリップを左へ引く動きでは、胸が右を向くように右の脚腰が「踏ん張り」ます。

これらの動きを検討すると、バックでは背骨を脚に繋いで支える筋群が働き、トップの切り返しの動きにより脚腰の体勢が変化し、ダウンではバックの背骨の動きを保ったまま、骨盤後背下部と背骨の下端部分が左へ動くように脚腰の踏ん張りが発生することが分かります。

膝から下の構えが固く保たれていれば、この動きにより背骨が右方向に捻り続けられながら、クラブを左へ振り抜く動きが実現します。感覚的に捉えれば、腰から上の動きでバック、その動きを保ったまま尻の緊張でダウン、となります。これでパワーが確保されます。

腰で右腕、胸で左腕を振る

「魔法の動き」の肩の動きに注目してボールを打つことを試みましたが(「肩の動きでボールを打つ」(06/03/06))、どうも何かが不足しているような気がします。「魔法の動き」を、左前腕回内と左上腕外旋、右前腕回内と右上腕内旋、と考えて振るだけでは不十分なのです。

「魔法の動き」は、腕の動きの緩みを消してクラブを振ることを目指しています。これには腕を固める動きが必要で、とくに重要なのは、インパクト圏で腕が固まって伸びる動きを確保することです。このためには、腕だけの「魔法の動き」に拮抗して、左上腕を内旋し右上腕を外旋する動きを加える必要があります。

「肩の動きでボールを打つ」で試した肩の動きは、実はこのための動きであったのです。これを検証するために、まず左手をグリップの形に握って左前腕を回外し、そこで左上腕を外側に回すと肘が折れます。これに対抗して肘を伸ばそうとすると、肩が前に引き出されて腕が伸びます。これが「魔法の動き」の左肩の動きです。

右腕の場合も同じように右手を握って前腕を回内し、そこで上腕を内側に回すと肘が折れます。これに対抗して肘を伸ばそうとすると、肩が後ろに引かれます。この実験で、左腕は上腕内旋に拮抗する動き、右腕は上腕内旋に拮抗する動きを、それぞれの肩の動きが作り出していることが確認できます。

しかし、肩や胸回りの筋だけではインパクト圏での強力な腕の伸びは実現できません。結局背骨の捻りを利用することになります。実際に、左手の親指の背を右手で覆い、両手をグリップの形に握り合わせてアドレスの構えを作り、その位置で両腕を伸ばすと、左肩が前、右肩が後ろに引かれてグリップが反時計回りに捻られます。

ここで更に動きを強めると、グリップが左へ引かれます。これがこれまで繰り返し見て来たインパクト圏での直線的なグリップの動きです。完全に背骨が捻られていることが分かります。この動きを、まず右腕を伸ばし、次いで左腕を伸ばすようにすると、体の右前にグリップが引き出され、次いで体の前を直線的に左へ引き抜かれる動きが現れます。

背骨の捻れの構造から、この右腕の動きは腰椎部分の捻れ、左腕の動きは胸椎部分の捻れが原動力になっているものと考えられます。腰(腰椎)の踏ん張りで右腕を伸ばしてダウン、胸(胸椎)の踏ん張りで左腕を伸ばしてインパクトの振り抜き、というイメージとタイミングで振れば、快適なショットが実現するわけです。

肩の動きでボールを打つ

肩と腕の「魔法の動き」では、左の前腕の回外と上腕の外旋(外側回し)と右の前腕の回内と上腕の内旋(内側回し)、これに伴う左手を手の平方向に巻き込む掌屈と内転(アンコック)と右手を背側に反らす背屈と外転(コック)、で腕の構えを固め、これを、左肩甲骨を外側から前に引き出し、右肩甲骨を内側(背骨方向)に引く肩の動きで振ります。

バックのスタートから、トップの切り返しとこれに次ぐダウンからインパクトでも、一貫してこの動きで振ります。この動きは上体を右に回す形の動きを生みます。バックの場合は、右に回る肩の動きの方向は納得しやすいのですが、ダウンからインパクトでは肩を左回りに振りたくなります。ところが、この気持ちに惹かれるとスイングが壊れるのです。

スイングの動きでは、力強い腕の動きの実現には肩周りの筋群が大いに活躍します。強くて安定なショットを実現するには、前記の肩の動きの感覚を会得することが大切です。そこでこの動きを体感し身に付けることを試みます。

アプローチ・ウェッヂを振り、「魔法の動き」の要領で軽く右にバックし、そこから一気にダウンから左への振り抜きを実行します。まず左一本腕でこの動きを試してみます。ダウンの引き戻しに入る時に、肩や胸周りの筋で左肩甲骨を前に引き出すように引くのです。左肩を後ろに引くのではなく、逆に前に引き出すのです。

この動きで実際にボールを打ってみると、左腕が伸びて極めて安定に力強いショットが出ます。次に、右腕一本で同じように軽くバックし、肩周りの筋を使って右肩甲骨を後ろ(背骨方向)に引きつけると、左腕の場合と同様に、安定してしっかりボールを打つ動きが現れます。右肩を左方向に向けて振るのではなく、逆に右後方向に引くのです。

これらの肩の動きが納得できたら、両腕でクラブを振り同じ要領でボールを打ってみます。極めて安定した力強いボールの飛びが見られる筈です。脚腰の踏ん張りは、この肩の動きを生み出す上体の動きを支える形で自然に決まります。背骨を左方向に振り回すような脚腰の動きでダウンを開始すると肩の動きが逆転し、安定強力な腕の振りは消えてしまいます。

結局、肩と腕の「魔法の動き」を忠実に実行すれば、すべての必要な動きが体得できることが明らかになったわけです。

右手が腰、左手が胸を捻る

「交叉打法」では両手の動きに対応する両足の動きに注目しています(「完全交叉直線打法」!(06-06-01))。この足の動きは、腰椎周りや胸椎周りの背骨の動きに対応して発生しますが、実は右手の動きが腰椎周り、左手の動きが胸椎周りの動きを生んでいるのです。

このことの体感的な確認は簡単です。アドレスの体勢で立ち、右手のグリップを固めて右前腕を内側に回し続けてみます。この時右リストが反時計回りに回り続けると共に、腰(腰椎)周りに右回りの緊張が感じられ、最後には両足に力が入って腰の動きが止められ、グリップが左へ引かれます。

次に左手のグリップを固め、左前腕を外側に回し続けてみます。この時は左リストが反時計回りに回り続けると共に、胸(胸椎)周りに右回りの緊張が感じられます。この場合も、左腕の動きを続けると、最後には両足に力が入って左腕が左へ引かれます。

これらの動きは簡単ですが、何れもリストを反時計回りに回し続けることで、リストを回す手の動きが地面に結びつく背骨の動きを生み出すことが明瞭に体感できます。この仕組みが最終的にグリップを直線的に引く強力な動きを引き出すわけです。

ここで念のために、まず上体を右に回し、次いで左に回す動きで左手を振ってみます。「腰の回転」で振る動きです。この場合は、腕の動きが地面に結びつけられる感じが全くありません。同じ動きで右手を振ってみると、左への振り戻しでは肘が前に振り出され、グリップの直線的な動きは見られません。

更に念のため、まず腰を右に押し、左へ引き戻す動きで左手を振ってみます。「体重移動」で振る動きです。この場合は「腰の回転」よりも大きな円弧を描いて左手が振られますが、矢張り足が地面に吸い付く感じはありません。右手を振ってみると、動きの最後で僅かに脚の緊張が現れますが、グリップの直線的な動きは見られません。

これだけの簡単な実験で、腰の動きでクラブを右に振り左に振るスイングのイメージには、疑問を感じるようになります。これに対して「右手が腰、左手が胸」の動きでは、背骨を右方向に捻り続けるだけです。どうしてこれで強力なダウンの振り抜きができるのか。この謎の解明は次回に回します。

「完全交叉直線打法」!

前回の「左右交叉する手と足の繋がり」(06-05-31)で体験した「インパクトの基本動作」、アドレスの位置から右リストの内側回しで準備をし、左リストの外側回しでボールを打つ動きでは、両手と両足が交叉して働く仕組みの重要性が分かりました。今回はこの動きを積極的に利用して実用的な打法を組み上げてみます。

バックのスタートを、右リストの内側回し(右前腕回内)で実行します。この動きで、左足内側に踏ん張りが入ることを確認します。これで右一杯にクラブを引いた所から、左リストの外側回し(左前腕回外)でトップまで引き上げます。この時、右足内側に踏ん張りが生まれることを確認します。

ここから右リストを内側に回す動きを実行し、これによって左膝が引き込まれて左足内側に踏ん張りが発生することを確認します。この動きで体の正面が右に引かれます。ここから左リストを外側に回す動き(左前腕回外)に伴う右足内側の踏ん張りを確認しながら、一気にグリップを引き下ろします。右に引かれた体勢のまま、「インパクトの基本動作」の動きを実行する形の動きです。

この動きの限界で本来の「インパクトの基本動作」の動きが発生し、両足内側の踏ん張りと共にインパクト圏を強力に振り抜きます。腕を体の周りに円周状に振るスイングの「円周イメージ」に対抗して登場した、「左腕は左右、右腕は前後」という「革命的イメージ」を、実用的な形に具体化する形になります。

一見面倒なようですが、左右の手の動きに交叉する形で左右の足の内側の踏ん張りが発生することを確認し、その感覚に慣れれば、トップから思い切り振り抜く動きの手順が簡単に身に付きますます。これまでの「完全直線打法」のイメージとの対比から、今回の打法を「完全交叉直線打法」、略して「交叉打法」と呼ぶことにします。リスト・ターン、ボディー・ターンなどに対抗する、「クロス・コネクション」打法の登場です。

「交叉打法」の足の動きは、腰椎周り、胸椎周りの背骨の動きに対応して発生する脚腰の動きが生むもので、その内容を細かく追求すると、これまでの「完全直線打法」そのものであることが分かります。ただクラブを振る意識に繋がりやすいイメージで組み立てられています。

クラブ・ヘッドを振ることに専念することを勧めたゴルフ教師アーネスト・ジョーンズが、左一本脚での最初のラウンドをハーフ38で回った事実は、背骨の安定な動きの重要性を明らかに示します。しかし、二本脚の利点を活用する「交叉打法」の方が、直接背骨の動きを会得するよりは有利な方法であるというわけです。

左右交叉する手と足の繋がり

スイングでは「手の動きから始める」のが正解とする話、「どこから動きを作る」(06-05-29)では、左リストを外側に回す動きでボールを打つことでボールがよく飛ぶとことを指摘しました。

この話は、その前の「腰(腰椎)周りと、胸(胸椎)周りの動き」の話、「捻りきれば真っ直ぐ振れる」(06-05-27)の動きが分かり難いので、これらを分かり易く引き出すために考えたものです。ところが、この左リストの反時計回しで目の前のボールを打つのも結構難しいのです。

この動きで打ってみると、上手く行く時と行かない時があります。よく注意して見ると、右手の動きがよいとボールがよく飛ぶことが分かります。この時の右手右腕の動きは、右脚が右足内側で踏ん張るとうまく実現することが分かります。

ここまで来ると、すべてが明らかになります。グリップをしっかり固めてアドレスの位置から左へ引く体勢を取ると、右リストが内側に回り(右前腕回内)、これに伴って左足内側の踏ん張りが強まり、腰椎周りの背骨の動きが実現します。これに、左リストの外側回し(左前腕回外)で、右足内側が踏ん張る右の脚腰の動きが加わると、胸椎周りの背骨の動き(胸の背中を右に引く)が実現し、これで右腕が上手く振れると考えられるのです。

そこで、アドレスの体勢から右リストを内側に回してグリップを左へ引き、これで左足内側の踏ん張りを固め、ここから左リストを外側に回してみます。この時右脚が地面を押して踏ん張っていれば、右足内側が地面を押す動きが現れてグリップが左へ引かれます。これは分かり易い動きですから、実際に試してみればすぐに確認できます。

この動きの感覚が捉えられたら、まず右リストを内側に回してグリップを左に押し、左リストを外側に回すことで右足の内側に確実に力が入ることを確認しながら、ボールを打ってみます。右手がヘッドでボールを支えて左へ運ぶような感覚の動きが現れ、ボールがしっかり飛ぶことが確認できます。この時右足が浮き上がると、この右手や右腕の動きは現れません。

こうして、手と足の左右が交叉する繋がりで、能率よくボールを打つ体の動きの仕組みが明瞭になって来ました。この左右の手足の交叉連結を利用してクラブを振れば、捉え難い背骨の動きを意識しなくても腕が振れることになります。こうして「完全交叉直線打法」(!)に到達するわけです。この打法の内容は、次回に詳しく書くことにします。

目では考えられない

昔から「心ここにあらざれば、見れども見えず」と言います。このことを逆に捉えれば、目で見ていては考えられない、ということになります。これまでも「目は災いのもと」と、目で見る場合の危険を指摘して来ましたが、ゴルファーにとってこれはかなり深刻な意味を持ちます。

最近はテレビや新聞で女子プロゴルファーの人気が宣伝され、そのスイングを目にする機会も多いと思われます。高く大きなトップから一気に腰を回してボールを打つ姿などが目に入ると、思わず左腕を大きく伸ばして高いトップに入れたくなるかも知れません。

ところが、注意して見ると、バックで右肘をしっかりたたみ込むゴルファーも目につきます。よい成績を安定して収めているゴルファーには、しばしばこの動きが見られます。この動きではクラブが体に近く引き込まれ、ダウンでもトップから一気に振りやすくなり、腰より先に腕を振り抜くことが可能になります。

体に引きつけられたトップからは、右手を上から振り下ろしてヘッドをボールに向けて振ることができます。これが素早いダウンを可能にします。上から振るのはオーバー・ザ・トップの悪い動きというのは、グリップが体から離れて高く上がっている場合のことです。

左腕を伸ばしてバックするとフェースが開く動きが現れ、「反魔法の動き」に入ります。これでグリップが体から離れ、高いトップに入ることになります。この場合、ダウンでは体が先行して腕を引き下ろすことになり、「どこから動きを作る?」(06-05-29)で検討した、「手の動きから始める」打ち方はできなくなります。

結局インパクトで左リストが背側に折れる形でヘッドを振ることになります。この動きの能率の悪さを確認するために、アドレスの位置からアプローチ・ウェッヂでボールを打ってみます。ただし、ヘッドをボールの後ろに構え、腰を左に回した体勢からそのままヘッドを左に振ります。

これで左グリップが背側に折れる形でボールを打ちますが、ボールは少ししか飛ばない筈です。「どこから動きを作る」(06-05-29)の場合の打ち方の方が遙かに飛びます。もっとも、この場合はアドレスで、左手の後ろ三本指でしっかりグリップを固めて置く必要があります。今回の話も、その要点は「魔法の動き」の実行の勧めです。