ゴルフ直線打法 -57ページ目

「尻の先端を右に引く」動きを捉える

これまでダウンからインパクトの動きを実現する、脚腰背骨の動きの解明に努力して来ました。「尻の先端を右に引く」動きの導入で、大切な動きの要点が明瞭になりましたが、自分でこの動きを確定しようとすると、何かはっきりしない所が出て来ます。

スイングの動きを作る上で難しい点は、立った姿勢でクラブを振ることです。腕やクラブが動くと、脚腰がこれに反応して動き、どちらの動きが原因かが分からなくなります。何を基準にして動きを作ればよいかがはっきりしなくなるわけです。

この難点を避けるには、体を安定に支えて背骨や脚腰の動きを観察できる体勢が必要です。これについては既に「スイング面の確定;腕の動きの自由度を落とす」(06-12-30)で利用した、ベッドの上に上向きに横たわって腕を振る方法が有効です。この時、体の体勢をアドレスの構えに近付けるように、低い枕で頭を支え、膝に撓みを持たせて踵をベッドに着けます。

ここで両手をグリップの形に握り合わせ、これを動かしてスイングの動きを作ります。もちろん「魔法の動き」を一貫して実行します。これまでに検討して来た、グリップを巻き上げる動きでトップまで運ぶと、これに逆らうように脚腰が踏ん張る様子が確認できます。さらにトップの切り返しの動きを実行すると、尻が左へ引かれる動きが現れます。

これが確認できると、これで動いた尻を右に引く動きでダウンに入るのが、極めて自然な動きとして納得できます。これが「尻の先端を右に引く」動きの内容だったのです。そこでこの動きを強めながら「魔法の動き」を続けると、グリップの引き下ろしから腕の引き伸ばし、更に左への引き抜きの動きが、それぞれの変化点に対応する「魔法の動き」と共に現れます。

これらの変化点で、右足、左足の踵がベッドを押す動きが変わります。これには対応する膝の動きがあります。「魔法の動き」を一貫して実行することに注意すれば、尻を右に引く動きと共に、右の背中がベッドに引き付けられるように動くことが分かります。これが背骨の踏ん張りで現れる動きであることも明瞭に認識できます。

これらの動きが、腕の動きを平面的な動きに収めることは、既に検討しました(「スイング面の確定;腕の動きの自由度を落とす」(06-12-30))。「魔法の動き」を一貫して実行し、肩甲骨の動きでグリップを巻き上げ、トップの切り返しで尻を左に前進させ、右への引き戻しでダウンからインパクトを実行するという、スイングの動きの合理性が確認されたわけです。

これで「直線打法」の動きはほぼ完成です。しかしまだ問題があります。ベッドに横になっているために、地球に対して踏ん張る動きが十分に捉えられないのです。この点の確認を次回に試みます。

腕を体に巻き付ける肩の動き

「魔法の動き」では、右腕を内側に回し、左腕を外側に回します。この動きを実行すると、右肩が背骨に向けて引かれ、左肩が前に引き出されます。これは、右の肩甲骨が背骨に向けて引かれ、左の肩甲骨が胸の前方向に向けて引き付けられる動きです。

この動きに慣れると、始めにアドレスの体勢で両手をグリップの形に握り合わせ、脚腰を固定してグリップを固めたまま、この肩甲骨の動きでトップまでグリップを巻き上げる動きが実行できます。これで尻が左に引かれます。ここから右前腕回内、左前腕回外の動きを実行すると、更に肩の動きが強まり、尻が更に左に引かれる切り返しの動きが現れてダウンの体勢に入ります。

ダウンでは、これらの動きで生まれた背骨の捻れを引き戻すように、尻を右に引き戻します。膝を固めてこの動きを実行すると、グリップが引き下ろされ、両腕が伸び、最後に左に引かれます。注意すべき点は、肩と腕の「魔法の動き」を続けることです。引き下ろしから左へ引く動きの過程で、動きの変化点毎に膝の動きにより脚の体勢が変わることが分かります。

バックの巻き上げの動きで、両腕を腰の上部に繋ぐ筋が引き伸ばされるように肩と腰の間の距離が増大します。腰の動きより先に肩が右に回るわけです。この動きで両腕は胸に巻き付き固定されます。ダウンでは、肩が腰より先に回ると背中の緊張が消えて腕が緩みます。これを避けて腕の緊張を維持強化するには、腰に対して肩を右に回し続ける必要があります。

この動きは、「魔法の動き」を継続すれば実現します。腰と肩の距離が増え、腕を下に引き、左に引く強力な動きが実現します。体に巻き付けられた腕でクラブを引く力を出すには、腰に対して上体を右に回すような背骨の踏ん張りが必要で、脚腰を踏ん張って尻を右に引く「尻の先端を右に引く」動きは、この背骨の動きを引き出すのです。

ダウンでグリップを下に引き、左方向に向けて強く引くには、この肩を右回りに回すように踏ん張る背骨の動きが必要です。「尻の先端を右に引く」動きが捉えられない人は、背骨を右に回して肩を右回りに回す動きを試せば、その時の尻の動きが「尻の先端を右に引く」動きになることが分かります。この時に肩と腕の「魔法の動き」を継続することが要点です。

最近の何回は、「尻の先端を右に引く」動きの話に集中してしまいました。次回は、誰でもこの動きを間違いなく捉えることのできる方法を確定し、この問題の完全解決を図ります。

「尻の先端を右に引く」と「腰を左に回す」の違い

インパクトの腕の動きに注目し、「魔法の動き」型と「反魔法の動き」型の二種類に分類することについては、既に詳しく検討してあります(目で見るスイングの大分類(06-12-26))。ここでインパクトのパワーの発生源となる脚腰の動きに注目すると、これらのゴルファーの動きを「尻の先端を右に引く」と「腰を左に回す」で分類できることが分かります。

始めに、分かり易い「腰を左に回す」動きで実現するインパクトの動きを確認します。両手をグリップの形に握り合わせ、アドレスの構えで体の正面に下げます。この状態から右腰を前、左腰を後ろに動かして背骨を左回りに回します。この動きで、右前腕回外、左前腕回内の「反魔法の動き」が現れてグリップが左に引かれます。

次ぎに同じアドレスの構えから、尻の先端を右に引くように脚腰を踏ん張ります。この動きでは、両腕が固く伸びてグリップが強く左に引かれます。この動きが分かり難ければ、逆に両腕を硬く伸ばしてグリップを引き下げ、左へ引く動きを作ってみて下さい。この時の尻の先端の動きと、両足の地面を押す動きに注目すると、「尻を右に引く」動きの特徴がはっきり掴めます。

尻の先端を右に引く時には、両足が強く地面を押し下げるように膝が踏ん張り、両踵が地面を強く右に押す動きが現れます。この両膝の踏ん張りで、腰が前を向いたままグリップが引き下ろされ、左へ直線的に引かれます。足の先からグリップまでが硬く繋がって、インパクトの動きが生み出されます。

世界の強豪の動きを見ると、インパクトの一瞬、背骨が固定されながら尻が背中の方に回り込む、「尻の先端を右に引く」動きが見られます。これでヘッドが直線的に走ります。これに対して「腰を左に回す」動きのゴルファーの場合は、背骨と共に右尻が前に回り続け、ヘッドは円弧を描いて抜けて行きます。

尻を右に引くと、腰が引き止められて腕が左へ引き抜かれるのです。この時の両膝の踏ん張りで、上体が右に回る形の動きが現れます。膝が緩むと背骨は左に回ります。「尻の先端を右に引く」動きで腕を硬く引き伸ばせば、両膝は強く踏ん張ります。グリップを引き下ろして左へ引き抜く動きは、このようにして実現していたのです。

簡単な「腰を左に回す」動きでも、飛距離を求めず方向性の確保に集中すれば、十分実用的なスイングに纏めることができます。しかし、インパクトの動きがバンカーショット風のすくい打ちになりますから、その影響を避けることはできません。加齢による体力の低下に対抗することも難しいのではないでしょうか。

パワー源の確保

前回の検討結果から、平面に近いスイング面の作り方を追求すると、「魔法の動き」を一貫して実行するという、簡単な原理でこのようなスイング面が実現できることが分かりました。これで打球の方向性の確保の確率が上がることは納得できますが、こんな不自由な動きでは力が十分には発揮できない筈だと感じる人もいると思います。

これは、百聞は一見にしかずで、実際に自分でボールを打って試してみればよいのですが、この「不自然」な動きは試す気になれない、という人もいるかも知れません。そこで、これまでにも何回か話に出て来た、腕を振る(引っ張る)強い動きの仕組みを再確認して置きます。

まず、腰の動きで上体を左に回転させると、腕が体から離れて振られることは確認済みです。これでは体を大きく動かしても、腕だけの力でクラブを振ることになるので力は出ません。そこで残るのが、尻を右に引く形のダウンからインパクトの動きです。この動きの納得できない人が多いのだ思われます。

これまでに何回か試した、ヘッドを机の脚に当てて左向きに引っ張る実験をすると、この形の動きが現れて確かに力が出ることが確認されます。実は、この動きの中心になるのは背骨です。これは、ヘッドを机の脚に当てて左に引きながら背骨の緊張を緩めると、瞬時に体が左に回って腕が脱力することから直感的に理解できます。

両足でしっかり地面を押さえ、思い切りヘッドを左に引こうとすると、背骨の腰骨(腰椎)部分が左に張り出すように脚腰背骨が踏ん張り、尻の先端部が右に引かれます。これで背骨の腰椎部分には右回りの動きが現れ、胸の背中(胸椎)が右に引かれます。これに逆らい背骨の胸椎部分が左回りに回ります。更にこれに逆らう動きが首(頸椎)に現れ、結局頭は安定に保たれます。

この面倒な背骨の動きが胸の部分に及ぶ時、その上に乗る肩と腕に「魔法の動き」が現れて、右肩甲骨が後ろに引き上げられて上腕は内側に、左肩甲骨が前に引き出されて左上腕は外側に回り、これで両腕が強く伸びます。ここで更に尻の先端を右に引く動きを強めると硬く伸びた両腕に強くヘッドを左へ引く動きが現れます。

もちろん、これらの動きでは、両膝がしっかり固まり、腕の動きに応じて踏ん張ります。クラブを持たなくても、両手をグリップの形に握り合わせて置いてこれらの動きを実行すると、尻を右に引く動きで背骨が固まりながら両腕が伸び、腕が強く左へ引かれます。結局、しっかり地球に結びつけられた状態で、背骨の動きが腕を引く力を生み出すことが分かります。

こんな面倒なことを考えなくても、「魔法の動き」を一貫して実行しながら、「巻き上げ引き下ろし打法」(06-12-21)でクラブを振り抜けば、この辺りの動きが自然に身につきます。これで直線打法は完成です。

スイング面の確定;腕の動きの自由度を落とす

方向性を確保して強力なインパクトを実現するというスイングの主目的を考えると、クラブの動きとしては左右の動きの確保が問題であり、前後の動きは必要最小限に止めることが有利であることが分かります。この見方からは、クラブ・ヘッドの軌道の膨らみを生む体の回転的な動きを最小限に止めて、左右上下の動きでスイングを作るのがよいことになります。

結局、ヘッドを膨らみの少ない平面的な動きの中で振るのが理想的、という見方が成立します。このようなクラブの動きが描き出す面が理想的な「スイング面」ということになります。

そこで次の問題は、この動きを確定する方法です。これまでの話の中心にある「魔法の動き」の原点は「革命的イメージ」です。これは、ベッドの上に上を向いて横たわり、左腕を右に左に振る動きに右手を添え、左右の動きが最大限になるよう試みることで得られた、「左腕は右左、右腕は上下」という動きのイメージです。

理想的な「スイング面」の動きを確定するには、この原点の経験を生かし、ベッドに上を向いて横になり、グリップの形に握り合わせた両手の握りでクラブを一杯に振る動きを作ります。実際にこの動きを試してみると、ベッドが体を安定に保ってくれるために、限度一杯に平面的なグリップの動きで振ることができます。

「革命的イメージ」の具体化には「魔法の動き」が必要ですから、「魔法の動き」を実行しながら、体の回転的な動きを押さえて平面的な動きの中で腕の動きを作ることになります。これで背中がベッド引き付けられる形でグリップを引く体の動きが得られます。この動きを克明に追求すると、これまで検討して来た尻の先端の動きも明確に捉えられます。この動きではグリップが左脇前迄引かれます。

実際のスイングでは立って体の安定を保つことが必要ですが、これは、両足が地面に食いつくようにアドレスの構えを適切に選べば、脚腰背骨の反射的な動きが実現してくれます。実際のスイングには、この動きの影響が現れます。たとえばフィニッシュへの動きです。これは意識的に作る必要は全くありません。

このように見て来ると、体中から不要な動きを排除するように、グリップを巻き上げる動きでクラブを上げ、そこから不要な動きを完全に排除した直線的な動きでヘッドを引き下ろして、巻き上げで蓄積されたエネルギーをクラブの左への引き抜きに利用するという、「巻き上げ引き下ろし打法」のイメージの合理性が明らかになります。

腕を振ってクラブを振るという二重振り子のイメージでは動きの自由度が高く、インパクトでヘッドをスクエアに固定する動きの実現が難しく、思い切り振る場面がなくなってしまいます。飛距離の不足やダフリの危険に目をつむり、一見楽な「二重振り子打法」で修練を積むのか、思い切って「巻き上げ引き下ろし打法」に挑戦するか。二つに一つの選択ということになります。

腰で引くダウンは不可;尻で逆向きに引く

ダウンは腰の動きで始める、という教えがあります。これは極めて危険な教えです。腰の動きでダウンを始めようとすると、必ず胸が左へ回ります。試してみて下さい。腰をその場で動かそうとしても、腰を左へ引こうとしても、同じように胸が左へ向きます。ダウンを腰の動きで始める意識は、胸を左に回して腕を振る動きを引き出すのです。

胸を左に回すと、右肩が前に引き出され、左肩が後ろに引き込まれて腕が振られます。このことは、両手をグリップの形に握り合わせて、腕を軽く右に振った状態から胸を左に回してみれば確認できます。この動きでは胸より大きく肩が動くことから、腕の動きが体から切り離されて平らに回るのが分かります。結局腕だけでクラブを振る動きになるわけです。

腰を動かしてクラブを振れば、大きな力でクラブを振れると思うのが自然な考え方ですが、腕が体から切り離されてしまっては体の動きがクラブに伝わりません。結局弱いスイングの動きになるのです。ベン・ホーガンが言っているように、本能的に使いたくなる動きの反対が正しい動きに近いのです(Ben Hogan, POWER GOLF, Pocket Books, 1953)。

このことを文字通りに実行すれば、ダウンでは腰の動きを逆転することになります。しかし、直接腰を右に回したり動かしたりしてダウンを実行することは不可能です。ホーガンの指摘は正しいのですが、その根拠は明瞭ではありません。実は、体の動きには内外の二つの動きがあり、その何れに注目するかが問題なのです。

このことについては、既に「腹の動きは押し、背中の動きはは引く?」(06-12-24)で、腹と背中の意識と実際の動きとの関係について議論してあります。この場合、腹の意識が腰に、背中の意識が尻に繋がります。腹は前、背中は後ろですから、体の前後を入れ替えて考えれば、腰を右に動かす代わりに、尻を右に動かせばよいことになります。

この考え方が役に立つかどうかを確認するには、まず手の握り(グリップ)を右に振り、そこから尻の先端部を右に引く動きを作ってみます。左手で尻の先端部を押さえ、右手だけの握り(グリップ)を固めて右に引くと、尻を押さえる左手が左に引かれるのが分かります。この左手が右に引き戻されるように尻の先端部を右に引くと右腕が強く左へ引かれます。

これでスイング面を決める動きの基本的な構造が殆ど完全に決まります。実は、「魔法の動き」によるバックの切り返しから、腕の引き下ろしでダウンに入る時にも、この動きが必要なのです。したがって、ダウンを腰の動きで始める意識があると、腕の引き下ろしができなくなるのです。

一見至極自然に見える、ダウンは腰の動きで始めるという教えが、実は極めて危険なものなのです。ゴルファーは、狼に狙われる赤頭巾ちゃんのように、危険が一杯な情報の渦の中で生きているのです。

スイング面の議論は無駄?

クラブのシャフトが描く動きの面を「スイング面」と捉え、この面を利用してスイングの途中のそれぞれの場所でクラブの位置とフェースの向きを確認する話があります。しかしスイング中のクラブの位置を外から見ても、体全体の動きとの繋がりまで見抜かない限り、スイングの調整はできません。

スイングの動きを外から見てスイング面を議論しても、スイングの実行には役に立たないのです。一つ一つのスイングの型には、これを生み出す体の動きがあり、その特徴を理解してスイングの調整を行う必要があります。したがって、スイング面の利用法としては、まず動きの作り方があり、その特徴を外から見て確認し微調整をする、という使い道しかありえないのです。

それでも、スイング面の話を読んだり聞いたりすると、これを見ることが上達への道だと考えてしまいます。実際に、練習場でバックスイングの動きを確認するためにクラブを引き上げて止め、頭を回してヘッドの位置やフェースの向きを見る人がいます。ところが、頭を回すだけで背骨には動きが生まれますから、動きの正確な確認はできません。

最も危険なことは、スイング面の意味を勝手に解釈して、スイングのイメージを作り上げることです。これは極めて悪い動きを作り出す危険があります。すでに「シャフト・プレーンの罠」について何度も書いてありますが、更に積極的にスイング面無用論を展開したくなります。

スイング面を利用してスイングを確認する方法を学ぶ場合、まず教える人のスイングがこれまでに見て来た二種類のスイングのどちらかを確認する必要があります。二重振り子型で「反魔法の動き」が見られる場合には注意が必要です。

グリップが右に回る「反魔法の動き」が現れると、腕に緩みが生まれます。試してみればすぐ分かります。このためにクラブの動きの制御が難しくなるのです。教える人は繰り返しの成果で安定したショットを実現できても、普通の人が同じスイングを真似ると、スイングが確定せず苦労する可能性が大きいのです。

肩と腕の「魔法の動き」で、バックのスタートからトップの切り返しの動きまでをしっかり実行し、そこから一気にグリップを引き下ろし、肘を伸ばし切る、という動きをゆっくり試せば、インパクトまでの全ての動きを自分で決めることができます。スイング面で迷うより、一貫して「魔法の動き」を実行しながら動きを確認し、納得の行くスイングを作り上げて下さい。

さて、ここまで書いて来て大切なことに気が付きました。スイング面がただ一つに決まるようなスイングの作り方の特徴を捉えれば、すべての問題が解決するということです。これからの二三回でこの捉え方の問題を解決することにします。

腕を振っては駄目!;体と腕でクラブを引っ張る

ゴルフのスイングを見ると、腕を振ってクラブを振るというイメージが強く湧きます。これが間違いを生むのです。

腕を振ると考えると、両腕と肩の作る三角形を振り、その先端のグリップでクラブを振るというイメージが出来上がります。ここから、両肩の中心にあるスイング軸を中心に腕が振り子状に振られ、これにグリップを軸として振り子状に振られるクラブが繋がるという、二重振り子のイメ-ジが生まれます。

このイメージでは、スイング軸の周りに腕を振るために、両肩を回転させる動きが要求されます。両肩を回転させると、肩甲骨が背中の上を滑って回り、腕の動きが体の動きに直結しなくなります。ここで更にグリップが動くと、クラブの動きの制御が難しくなるので、二重振り子型のイメージで振る場合には、グリップを固めて置いて腕の振りでクラブを振ることになります。

この振り方(「二重振り子打法」)には、グリップの固定以外に難しい動きはありませんから、実際に振ってみると確かに簡単に振れます。このスイングが好まれるのは自然なことです。ところが、注意深くインパクトのヘッドの動きを観察すると、問題があることが分かります。

まずウェッヂで地面に置いてあるボールを打ってみると、ボールの手前の地面にヘッドのソールが当たる動きが現れます。次にゆっくりした動きでドライバーを振り、インパクト圏の動きを見ると、インパクトの時点でフェースが上を向く形になります。このインパクトでグリップは右回りに回る「反魔法の動き」になります。

次ぎに、「魔法の動き」で巻き上げ、一気に引き下ろすダウンを試します。地面に置いたボールをウェッヂで打つと、ボールの下を通り抜ける所までヘッドは地面に触れません。いわゆるディセンディング・ブロー(下降打)の形で、ヘッドが加速しながらボールを打ち抜きます。ドライバーをゆっくりした動きで引くと、ややフェースが閉じる感じでヘッドが平らに引き抜かれるのが見られます。グリップは「魔法の動き」になります。

インターネット上の画像などを利用し、あるいは書物の中の写真などで、ドライバーのインパクト時点のヘッドの形を見ると、確かにこの二つの動きに対応する形が見られます。「魔法の動き」のインパクトではヘッドが加速し、「反魔法の動き」では減速する動きが現れるのです。二重振り子打法の掬い打ちのようなインパクトの動きでは、飛距離の確保は難しいのです。

「魔法の動き」では、右腕を内側、左腕を外側に回す動きが、腕とグリップを固め、右肩甲骨を背骨に引き付け、左肩甲骨を前に引き出して体に固定します。これで脚腰を含めた体の強い動きがそのままクラブに伝わるようになります。二重振り子のイメージの動きとの違いは明瞭です。

目で見るスイングの大分類

これまで、ダウンとインパクトでの「上体が右に回る」動きの重要性を繰り返し説明して来ました。しかし、これは理解できないと感じる人も多いはずです。スイングには大別すると二つの型があり、一つの型が身についている人には、もう一つの型の動きが納得し難いのです。違う言語が身についているために話が通じないという状況です。

これは重要な問題ですから、この型の違いを簡単に納得する方法を考えてみます。スイングで一番大切なのはインパクトです。これが安定して力強く実行できる動きが良いスイングの動きです。すべてのゴルファーはインパクトの動きを調整することでスイングの形を決めています。

これに関連して、机の脚を押す実験で、インパクトの体勢で体が腕を引っ張る強さを検討して来ました。「机の脚」でこのブログ内を検索すれば沢山出て来ます。ところが、実際には多くの人が弱い力しか出せない動きを好んで実行しているのです。恐らく本人はこのことを自覚していないのでしょう。胸を回す動きを教える人が、この弱い動きに誘っていることもあります。

そこで、「人の話を聞くよりは、彼らが何をするかを見よ」という教えに従い、とにかく違いを目で見る方法を提案します。クラブを握ってアドレスの構えを作り、ヘッドのフェースの前縁を「机の脚」に横から当てます。ここからボールを打つ体勢を作って違いを見ることにします。

まず、ヘッドを机の脚に当てたまま、グリップを右回りに回してみます(「反魔法の動き」です)。この動きで胸が左に回り、左上腕が内側に回り左グリップの背中が内側に引かれます。当然右グリップは外側に回り手首の背中が外側に引かれます。左腕が殆ど直線的に伸び、右肘が外側に引かれて体に引きつけられる体勢になります。これが「反魔法の動き」でのインパクトの体勢です。

次に、同じアドレスの構えから、ヘッドを机の脚に当てたまま、グリップを左回りに回してみます。すると、左腕が外側、右腕が内側に回ります(「魔法の動き」です)。この動きで左肘が外側に引き出されます。左手首の背中が外に引かれ、右手首の背中が内側に引かれます。この動きと共に、背骨が左に張り出すように引かれ、上体が右に回る動きが現れます。

この場合の背骨の動きは「反魔法の動き」では見られない力強い動きで、グリップを左に回す動きを強めれば、更に体中でヘッドを引っ張る強い動きが現れます。これに対し、「反魔法の動き」でグリップを右に回すと、その場で背骨が固まり、ヘッドを左へ引く強い動きは見られません。

書物の中の写真やインターネットの動画などで、インパクトの瞬間に左腕が真っ直ぐ伸びて左手首の背中が内側に引かれているか、それとも左肘が外に張り出すように引かれて上体が右に回るように引かれているかを調べてみて下さい。二種類の型が明確に確認できる筈です。

「犬が尻尾を振る」の誤り

ゴルフの世界では、ワンポイントのアイデアとか、如何にも何かが分かったように思わせる格言風の言葉などが好まれる傾向があります。残念ながら、ゴルフの動きの構造は一言で捉え切れるような簡単なものではないのです。一つの言葉を体全体の動きから切り離して勝手に解釈すると、必ず大きな失敗を招きます。

そのような言葉の一例が、ジミー・バラードの「驚異のコネクション・ゴルフ」、デビッド・レッドベターの「ザ・アスレチックスイング」などに登場する、「犬が尻尾を振る」です。尻尾すなわち腕を、犬すなわち体が振るのであって、体を使わずに腕の振り回しでクラブが振れるものではないという、如何にも筋の通った話で体の動きの重要性を指摘しているのです。

ところが、ここに大きな落とし穴があります。体の動きで腕を振ろうとしても、腕が自由に動けば腕の振りの動きは決まりません。これは分かり切った話です。そこで「犬が尻尾を振る」と言う人は、無意識の中に腕を体に固定する方法を導入します。たとえば、体の動きの説明で、両肘を後ろに引いてクラブを両肩の上に担ぎ、これを体の動きで振って見せるのです。

クラブが無くても両肘を後ろに引けば、左右の肩甲骨が背骨に引き付けられて肩が固まり、腕が体に固定されます。この状態で腕を大きく振るには、腹の筋肉で胸を左右に引き回す以外に方法はありません。結局臍を右に左に回す動きが必要になります。これが前回に見たように、押しの動きでボールを打つ悪い動きに導くのです。

両手をグリップの形に握り合わせ、アドレスの体勢から、右腕を内側に回し左腕を外側に回す、肩と腕の「魔法の動き」を実行してみて下さい。グリップが右脇前の辺りまで引かれる頃には、両肩(肩甲骨)がしっかり体に引きつけられ、この動きに対応して尻の背中辺りに緊張が生まれ、両脚腰が踏ん張って両足がしっかり地面を掴みます。胸は正面向きに固定されています。

この状態では、腕の動きが脚腰を通じて直接地球に働きかけます。この地球との結びつきを通じて、体全体の動きが一体化されます。しかも、胸を横に回さずにグリップを更に巻き上げる動きもできます。こうなれば、動きの目的意識に直結する腕の動きを通じて、クラブを振る動きを生み出すことを考えるのが最も合理的であることは明らかです。ここでは「尻尾が犬を振る」のです。

ゴルファーは、動きの内容を冷静に、また克明に追わない限り、ワンポイントのアイデアや格言風の教えに潜む危険から身を守ることは出来ません。特に胸を回す動きで腕を振ることを勧める教えは、背骨を痛める危険もあります。「魔法の動き」を完全に実行すれば、このような危険を避けることができるのです。