ゴルフ直線打法 -56ページ目

脚腰背骨で両肩を右回りに押し上げ続ける

前回の実験で、「魔法の動き」のインパクトと腰の動きで腕を引くインパクトの違いが体感的に理解でたと思います。二つの動きの違いは、「魔法の動き」でクラブを引くというイメージと、腰の動きで腕を振り、腕に繋がるクラブを振るというイメージの違いが生むものです。

思い切り腰を動かして腕を振れば、腕が強力に振られてボールを打つ、と思う人は数多くいると思います。このイメージでは、地球の存在が殆ど消えています。実際は、地球を蹴飛ばす(押す)動きを利用し、脚腰背骨の動きで直接クラブを振る必要があります。腕を振るとクラブと体の繋がりが弱まり、地球との繋がりが消えてしまいます。

難しいのは、体の動きで直接クラブを引っ張ることです。「魔法の動き」では腕の緩みが消え、背骨の動きが肩を通してグリップの動きに直結します。この仕組みが確保されれば、脚腰背骨の動きで肩を動かせば、その動きでグリップがクラブを引っ張るという、スイングの仕組みが出来上がります。スイング動作はこの仕組みの運転法ということになります。

大きな力の源泉は、脚が地面を押す力です。地面を押して生み出されるのは両肩を押し上げる動きです。このことから、スイング中一貫して脚腰は両肩を押し上げます。ただし「魔法の動き」が作る体勢のために、背骨の動きは両肩を右回りに押し上げ続けることになります。バックのスタートの「魔法の動き」でグリップを固めれば、この動きがインパクトまで一貫して続きます。

ここで理解し難いのは、トップからダウンへの切り返しです。この動きは、「魔法の動き」の両肘の動きに対応する、両膝のピボット(回転軸受け)の切り換え動作が実現します。したがって、両肩を右回りに押し上げる動きを続ける中で、肩の切り返しの動きに対応して腰の動きの方向転換が実現し、ダウンからインパクトの動きが実現します。肩の回転は一貫して一方向のままです。

両肩を右回りに押し上げる動きが消えるとそ、の瞬間に腕が体から切り離されて引き下ろされてしまいます。腰の左への動きでダウンを開始すると、両肩が左回りに引き下げられ、その瞬間にこの切り離しが発生して腕が振られます。犬(体)が尻尾(腕とクラブ)を振る感じで、この感覚を好む人は多い(実は多過ぎる!)のです。

この形のスイングではインパクトに問題があることは、前回の地面の上のボールを打つ実験で確認されています。更に地球との結びつきが弱いことから、安定性とパワーの両面での不利は避けられません。このスイングで、パワーの減少傾向に悩んでいる人や、ショットの安定性に不満のある人は、少々の面倒くささに負けずに「魔法の動き」を試す必要があります。

両肩を右回りに押し上げ続ける動きで、バックからダウンまでを実行するというのは、一種のコペルニクス的転換(天動説から地動説への転換)ではあります。しかし、一貫して脚の踏ん張りで動きを作ることに注意して練習すれば、すぐに要領が会得できます。こういう動きに「チャレンジ」(!)してみるのは、心身の健康にも良いのではないでしょうか。

インパクトのグリップの動き

「魔法の動き」の効果が最も明瞭に現れるのが、インパクトのグリップの動きです。これを見るのは簡単です。「手首のコック、アンコック?」(07-01-08)に書いた要領で、左手の親指を右手で横から握り、両手の後ろ三本指の握りを強め、手首を含めてグリップを固めます。このグリップを「魔法の動き」で右に引き、そのまま「魔法の動き」を続けて体の前を通します。

この時名刺を右手の親指と人差し指の根元の隙間に差し込みます。人差し指は自然な形にして、名刺を持つために伸ばしたりしないようにします。このまま右腕を内側、左腕を外側に回して「魔法の動き」を実行すると、名刺の動きでインパクトに入る時のクラブのフェースの動きを見ることができます。

この場合、しっかり腕を伸ばしながら、インパクトに入るフェース(名刺)の動きを見ると、フェースが左手の上から被さるようにしてボールの下に突っ込む形の動きになることが分かります。この動きを確実に実現させるためには、左手(左前腕)をしっかり外側に回す必要があることも明瞭になります。

っこれは、単純に腕で真っ直ぐヘッドを引っ張ってインパクト、というイメージとは全く異なります。実際に、同じグリップと名刺で作る体勢で、一旦グリップを右に引き、そこからヘッドを真っ直ぐ引っ張る意識でインパクトの動きを作ってみると、確かに名刺は真っ直ぐ引かれますが、フェースが次第に上を向き地面を掬(すく)う「反魔法の動き」になります。

これまで時々、インパクトを直線的に引き抜く動きでボールを打つ、と書いていますが、「魔法の動き」が確実に実行されないと、この言葉で「反魔法の動き」に引き込まれる危険があります。アマチュアのスイングの動画を見ると、殆どの人がこの掬い打ち型のインパクトになっています。

一流のプロの動画を見ると、確かにインパクトで右グリップが左グリップの上を通ってインパクトする様子が見られます。「魔法の動き」を重視する欲目でそう見えるのだろうと思う人は、自分でインターネット上のあれこれの動画を見て確かめて下さい。ただし、実際の動きの構造を理解していないと、違いを明確に見ることはできないかも知れません。

簡単なことですから、「魔法の動き」で右にバック、両腕を伸ばしながら「魔法の動き」でインパクト、の動きを確認してみて下さい。思い切り左腕を回す必要があります。これができたら、実際にアプローチ・ウェッヂを持ち、この動きで打ってみて下さい。

次ぎに、右に引いたクラブを、腰の動きで引き戻してボールを打ってみて下さい。前の打ち方に比べ何と楽な動きだろうと思うかも知れません。そこで、地面にボールを置いて、二つの打ち方を比べてみて下さい。もちろん前の打ち方の方が遙かに良いショットが出ます。

次回は、この二つの打ち方を生む動きの構造と、そのイメージの違いを完全解明します。

ダウンで実際に止まるのは胸の上端

さて前回は、バックで右に引かれた臍の位置を止める意識でダウンと書きましたが、実際にこのイメージの動きを試してみたでしょうか。動きを試す前に、ダウンで臍が右に引かれたまま止まっている人などいないのを知っていて、試す気にもなれなかったかも知れません。

このダウンの動きの表現は、背骨の動きの代わりに臍の感覚を使ったものですが、実際にこの意識で振れば、腰を左に回さずに腕が振れることが体感的に確認できる筈です。しかし、実際の動きで臍が左方向に向くことを目で見ると、折角のアイデアも試して貰えなくなってしまうのです。

そこで、動きの表現としてもう少し正確なものにすると、インパクトの腕の振りの動きの中心になる、胸の上部中央のスイングの「中心」(胸骨上端と左右の鎖骨を結ぶ胸鎖関節)を正面向きに固定する、ということになります。これはこれ迄に何回と無く登場したスイングの方向性確保の要点です(例えば;「実行イメージ:巻き上げて引き下ろす」(06-12-21))。

バックスイングの最終期に、この「中心」はやや右方向を向きますが、ダウンスイングでこの「中心」を元の位置に引き戻すと、腰を含めて上体が左に回ってしまいます。そこで、「中心」をそのままの位置に止めるようにダウンを実行すれば、丁度この「中心」が主面向きに固定される形の動きで腕が振られます。

バックとダウンの動きの中心の意識については、はずっと以前に、
「ここで更に注意深く左グリップの動きに注目すると、始めは腰(腰椎)の辺りを中心として円周を描くように動きながら、次第に上に引き上げられ、切り返しの動き以降は胸(胸椎)を中心とする円周状の動きでダウンの振り抜きが実行されるのが分かります。いわば低いスイング・センター(腕の振りの中心)から出発し、次第にセンターが上昇し、ダウンは高いセンターを中心として実行される、という形になります。(当然インパクトでアドレスの体勢には戻りません)」
と書いてあります(「新パラダイムの本質:腕と背骨の動きの繋がり」(06-04-27))。

この要領で、肩と腕の「魔法の動き」でダウンに入ると、実際に臍を右に向ける腰(腰椎)回りの動きが現れるのです。ところが、「魔法の動き」の肩甲骨の動きが上手くできない人が多いのです。逆に臍を右向きに引いて止める意識でダウンに入れば、望ましい肩と腕の動きが得られます。これで腰の動きで腕を振るという、慣れた動きの意識で腕を振ることが可能になります。

単純に腰の動きで腕を振ると考えると、腰が先行して上体(胸)が右に傾く動きまます。これが肩と腕の「反魔法の動き」を引き起こすことは、これまで何度も指摘して来たことです。胸(胸椎)の動きを制御して、「中心」の動きを止めるには、「臍を止めて腕を振る」、あるいはより積極的に「臍を右に引く」イメージで、ダウンに入ればよいのです。これが前回の話の内容です。

実際にクラブを振る時に、どのイメージで振れば良い結果が得られるかを、自分であれこれ試して確認してみて下さい。

臍を止めて腕を振るダウン

今回は更に実用的な動きのイメージを固めることにします。イメージですから、再び頭の体操ということになります。ゴルフのスイングが難しいのは、頭が動きを納得してくれないからです。そこで、頭が納得しやすい動きの捉え方を見つけ出す必要があります。今回はその「決定版」とも言える(!)ものを提案します。

腕と脚の連携が上手く取れないと、とんでもない動きが現れます。極端な例がシャンクです。ところが両腕でクラブを振っていると、それぞれの腕がどのように振られているのかが、はっきり掴めなくなります。前回の片腕でクラブを振る練習は、この意味で動きの内容が掴みやすかったのです。注意して見れば、これで腕と脚の連携の様子が確認できます。

左脚を後ろに引いて右腕でクラブを振り、ボールを打ってみると、バックの動きで右脚方向に僅かに臍が引かれる状態で右の脚腰が踏ん張り、インパクトに向けてはこの脚腰の体勢を更に固めるようにして腕が振られることが分かります。いわば、バックで右に引かれた臍を固定して腕を振る感覚の動きです。ここで臍を左に引き戻すと、真っ当に腕が振れません。

次ぎに右脚を後ろに引き、左腕でクラブを振ってみます。この時もバックで僅かに臍が右に引かれ、その位置で脚腰が踏ん張りに入ります。ここからインパクトに向けて左腕を振るには、右に引かれた臍をそのままの位置に固定する意識で、左の脚腰を踏ん張って腕を振ります。これで上手くボールが打てます。臍を左に引き戻すと腕が振れなくなります。

前回の最後の両腕で振る実験で、左脚、右脚の順の意識でインパクトという動きで上手くボールが打てたのは、右脚が踏ん張った(臍が右に引かれた)状態のまま、左腕の振りに入ったためであり、逆の右脚、左脚の順の意識でボールが上手く打てなかったのは、右脚から入ると、その動きで左腕と共に臍が左に引き戻されていたためであることが分かります。

この結果から、大きなスイングの動きでも、バックで僅かに右に引かれた臍を固定するように脚腰を踏ん張って、トップから切り返しの動き迄を実行し、ダウンではこの臍の位置を固定して、左腕に続いて右腕の振りを実行するという意識で両脚腰を踏ん張れば、腕を強力に振り抜く動きが実現できます。

ダウンで臍を左に引き戻すと、ごく自然に左脚に体重が移動して右肩が落ち、これで右脚に体重が戻る「明治の大砲」型の動きになります。この動きに引かれ、腕の動きは完全な「反魔法の動き」になります。左脚で踏ん張ってこの動きを止めても、背骨が右前に傾く体勢に入り、腕が引かれて「反魔法の動き」に入るだけで、インパクトの直線的振り抜きはできません。

バックで僅かに右に引かれた臍を固定して、左、右と腕を振るというイメージを試してみて下さい。背骨の動きを考えるより振りやすいと思います。実は、これで固定されるのは、胸の上部中央のスイングの「中心」になる部分なのです。これについては次回に書きます。

インパクトの右脚と左脚の動き

言葉すなわち頭の体操の問題がいろいろ出て来ましたが、ここでもう一度体の動きの問題に重点を移します。論より実験で、まず右手でアプロ-チ・ウェッヂを握り、右腕一本でボールを打ってみます。この時、左脚を後ろに引き右脚を利用して打つことを試します。ヘッドを右に引き、左へ引き抜く動きでボールを打ちます。

この時、まず右膝を安定に保って、小さな振り幅でチップ・ショットを打ってみます。これで右膝が固定したピボット(回転軸)になるような感じの動きになります。ボールの位置を適切に選んでしっかり振れば、これでボールは真っ直ぐ飛びます。

ここで始めに右膝を少し内側に引いて置き、同じようにしてボールを打つと、右膝が内側に引き込まれてインパクトが安定しなくなります。僅かな膝の体勢の違いが、体の動きを変えてしまうのです。右腕と右脚を使うインパクトの動きでは、右膝が踏ん張っていなくてはボールをしっかり打てないことが分かります。

インパクトの右腕の振りを効果的に実行するためには、右脚の踏ん張りが必要であり、膝が内側に引き込まれる動きは良くないことが分かります。そこで左手にクラブを持ち替え、右膝を踏ん張ってボールを打ってみても上手く打てません。右脚の踏ん張りは右腕の振りのためにあるようです。

次ぎに右脚を後ろに引き、左脚の利用を試します。まず右手にクラブを持って振ってみるとボールが上手く打てません。そこで左手でクラブを握り、左腕一本でボールを打ってみます。左膝に緊張を持たせ、左膝を固定して左脚の踏ん張りでボールを打つと、今度はしっかり打てます。

ここまで実験的に確認できたら、両手両足を使って、インパクトの動きを作ってみます。先ず左膝の踏ん張りで左腕を振り、これに右膝の踏ん張りで右腕の振りを加えてインパクトしてみます。しっかり打てるはずです。逆にまず右膝の踏ん張りで右腕の振りに入り、これに左膝の踏ん張りと左腕の振りを加えてみると、全くボールが打てません。

一頃前には、ダウンで右膝を左向きに引き込み、左膝も左へ引いて左腕一本で振り抜く動きが喧伝されたものです。このため、右脚を後ろに引いた体勢でインパクトの動きを練習させた例もあります。これは背骨がいわゆる逆Cの体勢に入る、左一本腕打法の名残です。インターネット上の動画などで見ると、今の一流のプロのインパクトでは右膝右脚が踏ん張っているのが普通です。

ただし、この動きで右腕を強く使うには、それより先に左脚(膝)の踏ん張りで左腕の振りに入る必要があるわけです。これが今回の簡単な実験が示した結果です。とにかく、他人のスイングを見る時も自分のスイングでも、インパクトの右膝の踏ん張りができているかどうかを注意して見てみましょう。

手首のコック、アンコック?

バックスイングの終期に手首を親指側に折るのがコックの動き、インパクトでこれを戻す動きがアンコック、というのが一般的な解釈のようです。親指側に折るのがコックなら、アンコックでは小指側に折ることになりそうです。

軽く右手を握り、手首を親指側に折ってみます。すると親指と人差し指が硬く握る形になり、腕が固まります。ここから手首を小指側に折ると、前腕(肘から手まで)が緩んで、自由にぐらぐら動くようになります。これではインパクトの役には立ちません。それではコックをどこまで戻すのがアンコックなのでしょうか。実はコックと呼ばれる動きは手首を折る動きではないのです。

実際に、「魔法の動き」でクラブを動かしてみると、バックのスタートでグリップが固まり、それ以後インパクトまで一貫して固まったままです。この動きを確かめるには、左手の親指を右手で横から握り、両手の後ろ三本指を手の平に巻き込むようにしてグリップの形を作ります。この両手の握りは、実際にクラブを握る時の左右の手の後ろ三本の指の握りを再現します。
(これまで時々「両手をグリップの形に握り合わせ」と簡単に書きましたが、これには後で述べるような危険があります)

この正しい両手の握り合わせで作ったグリップ(手の握り)を動かせば、実際にクラブを振る時の力強い動きが再現できます。このグリップで「魔法の動き」を実行すると、一貫してグリップが固まり続ける形でクラブを振り抜けることが分かります。これでショットが安定するわけです。

それでは、トップに向かう時のコックの動きはどうなるのでしょうか。「魔法の動き」によるバックの動きが深まると共に、右前腕回内(内側回し)、左前腕回外(外側回し)の動きが強まります。これに伴って両手の握りが一段と強まります。この時の両腕の動きの組み合わせで、これまでコックと捉えられて来た腕とクラブの相対位置の変化が現れます。

実は、手首を親指側に折ると、親指にクラブのグリップ部分に食い込むような力が入ります。これはベン・ホーガンも注意しているような、腕の親指側の筋の緊張を引き起こします。この動きでは深いトップに入れても、体と腕の繋がりは固まりません。ここからのダウンではクラブの安定な動きの確保が難しいのです。

そこで例の「両手をグリップの形に握り合わせ」という、簡単な表現の含む危険を検討してみます。左手の握りの人差し指に右手の小指を掛ける形の、通常のオーバー・ラッピングの形で握ると、右の親指内側で左の親指を押さえようとする力が強まり、両手の後ろ三本指の内側への巻き込みという、腕の基本の動きが崩れてしまい、手首が固まらないのです。

左手の親指を横から右手で握れば、この危険は避けられます。こんな僅かの言葉の違いが大きな影響を及ぼす危険があるので、ゴルフの話は難しいわけです。

ステイ・ビハインドとは?

一頃盛んに言われたゴルフの言葉に、「ステイ・ビハインド・ザ・ボール」(略してステイ・ビハインド)があります。ボールを打つ時に頭がボールの方に動くのを戒めたもので、ボールの手前に頭を残して打てというわけです。しかし、ゴルフの難しさは同じ言葉も違った受け取り方ができることで、よかれと思う教えでも、受け取り方では思い掛けない結果に導く危険があります。

そこで、このステイ・ビハインドの場合に、どんな問題があるかを検討してみましょう。普通に立って両腕をだらりと下げます。ここから、背骨を右前方向に傾けてみます。傾けたところで、胸に左手を前から当ててみてください。胸の正面がやや左を向いている筈です。

次ぎに、始めの立った体勢のまま、体を右前方向に向ける動きを作ってみます。脚腰を自然な動きに任せて置けば、この動きでも上体が右前方向に傾きます。一見、前に背骨を右前方向に傾けた時と同じような体勢に見えます。ここで、左手を胸に当ててみて下さい。手の平の背中が正面を向いている、すなわち胸の正面が前を向いている筈です。

納得が行かなかったら、もう一度背骨を右前方向に傾ける動きと、立ったまま体を右前方向に向ける動きを作ってみてください。背骨を傾ける動きでは、右肩が落ちます。立ったまま体を右前方向に向ける動きでは、右肩が落ちません。どちらの動きでも、頭が右方向に引かれ、始めの立った姿勢の位置にボールがあるとすれば、ステイ・ビハインドの形になっています。

このように、体の形で動きを指示すると全く違った解釈をする可能性があります。今の二つのステイ・ビハインドの体勢で、どちらが良いかを考えてみましょう。これを見るには、それぞれの体勢に入る時の腕の動きが参考になります。背骨を右に傾けると、ぶら下げた右腕が外側、左腕が内側に回ります。立ったまま体を右前方向に向けると、この反対の動きが両腕に現れます。

そこでこれらの体の動きに対応して、腰の動きがどうなっているかを見ます。背骨を右に傾けると腰が左回りに左へ引かれます。立ったまま体を右前方向に向けると、この動きに逆らうように脚腰が踏ん張ります。特に両膝が踏ん張ります。これで、尻の先端が右に引かれる感じの緊張が発生します。背骨を右に傾けた時とは大違いの動きです。

さて、ここで直接これらの脚腰の動きを作って腕を振ろうとしてみると、なかなか難しいことが分かります。これに対してアドレスの体勢から、背骨を右前方向に傾けた時の両腕の動き、すなわち「反魔法の動き」と、その反対の「魔法の動き」を作ってみて下さい。始めの実験の通りの脚腰背骨の動きが現れます。腕の動きで体の動きを導き出せば、間違う危険はないのです。

肩甲骨が硬くなると?

今回は肩甲骨が硬くなる(動き難くなる)とどうなるかを検討します。アドレスの構えで両手をグリップの形に握り合わせ、体の前に固定します。ここから、上体の動きでグリップを右に引き、そこから上体の動きで引き戻し、体の前を通して左の前まで引きます。この動きで腕の動きに注目します。

アドレスの構えで両手を握り合わせた状態では、グリップは楽に前後に軽く動かすことができます。そこで両腕を緊張させて腕とグリップを固めます。この状態から体の動きで軽くグリップを右に引くと、グリップが外側(右回り)に回ります(「反魔法の動き」)。そこから体の動きで左へ引き戻して体の前を通して左の前まで引きます。この時も、グリップが右回りに回ります。

この時の腕の動きは「魔法の動き」の反対の、「反魔法の動き」になります。動きを大きくすると、グリップが右肩上まで引き上げられ、そこから引き戻すとグリップが左肘外側の高さの辺りまで引かれます。動きが大きくなっても「反魔法の動き」は変わりません。注目すべき点は、体の前でグリップの直線的な動きが見られないことです。

この場合、両腕の三角形とグリップを固めて振る形になり、体の動きが無くては腕の動きができません。両肩甲骨が固定されて体の動きで腕の動きを作っています。このため、脚腰の動きが大きくなります。しかもこの動きでは両膝が動き続け、下向きに地面を強く押す動きができません。「魔法の動き」で実現するスイングとは特性が全く異なります。

肩(肩甲骨)が硬くなると、当然ごく自然にこの形のスイングになります。この動きでは、打球の方向性の確保も、パワーの発揮も難しくなることは明らかです。これまでの話で、まずこの点を指摘し注意を喚起して置くべきでした。前回の要領で「魔法の動き」の体操を試みるのが、スイングのためにも、体のためにもよいことでしょう。

肩甲骨の動きを練習する

肩と腕の「魔法の動き」を一貫して続けることが、これまで検討して来たスイングの動きの要点です。これが崩れる瞬間に、体の動きとグリップの繋がりが緩んでしまいます。この動きでは肩甲骨の動きが重要な役割を果たします。(これについては既に「腕を体に巻き付ける肩の動き」(07-01-02)で触れています)

ここで問題になるのは、肩甲骨の動きが複雑で、よい動きを作るにはどうすればよいのかが、頭で考えては分かり難いことです。知らない中に、肩甲骨の動きの悪さのために、クラブを振る腕の動きが悪くなっている可能性があります。加齢と共に頑固さと肩の硬さが強まるのが一般的な現象のようですから、ここでこれに対抗する方法を考えます。

こうすればこうなる筈だ、と思い込んで振るのを止めて、まずどんな動きを作りたいのかをイメージ的に捉え、これを実現するように体を動かすことを試みるのです。これを繰り返す中にイメージそのものも改善され、望ましい動きができるようになります。「目的意識が動きを作る」のです。赤ん坊が立ち上がることを試みる時と同様で、いろいろ試すことが大切です。

問題の肩甲骨の動きですが、これが悪いと「魔法の動き」はできません。そこで逆に「魔法の動き」を繰り返し試みる中に、肩甲骨の動きもよくなると考えるのです。これは簡単です。

先ず動きが作りやすい右手でハンマーの柄を握り、体の前に構えて、ここから楽に腕を内側向きに回してみます。どこでも回しやすい所を回す意識で回せばよいのです。これでハンマーのヘッドが内側に回りながら右に振られてから引き戻される動きが現れます。この動きで体の前から始めて体の前を通り抜けるまでハンマーを振ります。

この動きを次第に大きくすると、ヘッドが右に引かれてから後ろの上に上がり、そこから引き下ろされて体の前を直線的に通り抜けるようになります。ごく自然な動きです。体はこの動きに引かれて自然に起きる動きに任せておきます。これで右の肩と腕の「魔法の動き」で一貫して振る動きが出来上がります。体の動きで腕を振ると肩甲骨が動かなくなります。これは駄目です。

左手にハンマーを握り、ハンマーのヘッドを外側(左回し)に回すと、右腕と同じようなヘッドの動きが現れます。右腕の場合に比べ、左腕の方が最初から体に繋がる動きを感じます。次第に腕の動きを大きくして、右後ろから上を通して引き戻し体の前を直線的に通り抜けるまでの動きを実行します。体の左サイドの踏ん張りがはっきり感じられるようになります。これで左の肩と腕の「魔法の動き」を一貫して実行しながら振る動きが出来上がります。

最後に両手でハンマーをクラブのように握り、両肩両腕の「魔法の動き」を一貫して実行する動きを試します。小さな動きから始めて次第に大きくします。難しければ、ハンマーの代わりに両手をグリップの形に握り合わせて振り、小さな動きから大きな動きまで試し、体の前の直線的な動きを確認します。これで「魔法の動き」に対応する自然な体の動きも体感的に捉えられます。

背骨の動きを確認する

ダウンで大きな力を出すには、地球に対して踏ん張る脚腰の動きが必要です。コースを回っていても、脚に力が入らなくなるとしっかりしたショットが出なくなります。しかし脚の動きだけを作ってみても、思うような体や腕の動きにはなりません。ところが、腕を理想的に動かそうとすると、これを支えるように脚腰が動きます。

地球の重力の作用する空間で生きてきた人間の体には、立ってバランスを保って動くための仕組みが組み込まれてあり、このための腕の動きと脚腰の動きを繋ぐ神経の回路が出来上がっている筈です。このように考えると、ダウンの脚腰の踏ん張りの確認には、理想的な腕の動きを作ってみればよいことになります。

そこで、まず両手をグリップの形に握り合わせてアドレスの体勢をつくり、膝が踏ん張れる形にあることを確認し、ベッドの上での腕振りの実験で確認した、平面に近い腕の動きでクラブを振る動作を実行してみます。もちろん肩と腕の「魔法の動き」でグリップの動きを固く体(背骨)に繋ぎます。この状態でバックからトップ、更にトップの切り返しの動きまで実行します。

これで前回ベッドの上で確認した腕と体の動きが実現します。これに続く、グリップを一気に引き下ろし、腕を伸ばしてその限界で左に腕が左へ引かれる迄の動きの実行では、先ず左の脚腰の踏ん張りで腕が引き下ろされ、続く右の脚腰の踏ん張りで、腕が伸びてその限界で左へ引かれる動きが現れることが分かります。ベッドの上での実験では十分確認できなかった動きです。

もちろん、この最後の動きでは、左の脚腰も含め両脚腰の踏ん張りが現れます。背骨の両側が緊張する動きです。ダウンの動きでは、膝が重要な役割を果たします。足がしっかり地面に着いていれば、腕の肘の動きに対応して膝の動きが決まります。このためには、それぞれの段階で腕の動きをしっかり体に繋ぐ、肩と腕の「魔法の動き」を確実に実行する必要があります。

何れにしても、両足をしっかり地面に固定して、肩と腕の「魔法の動き」を一貫して実行し、平面に近いスイングの動きの中でクラブを振れば、地球を強力に押す脚腰の動きが適切な時間関係で現れ、強力で安定なインパクトが実現することになります。「尻の先端を右に引く」というのは、このようなダウンの動きでの、脚腰の踏ん張りの特徴を捉えていたわけです。

膝から下が締まらなくては、踏ん張りが効かなくなります。膝が緩んでいれば、尻を右に引く動きでも腰が左に回ってしまいます。両膝が踏ん張っていれば、尻を右に引く動きで、両足が地面を押し下げながら右に押します。両膝の動きに注意してスイングの動きを監視してみて下さい。