「犬が尻尾を振る」の誤り | ゴルフ直線打法

「犬が尻尾を振る」の誤り

ゴルフの世界では、ワンポイントのアイデアとか、如何にも何かが分かったように思わせる格言風の言葉などが好まれる傾向があります。残念ながら、ゴルフの動きの構造は一言で捉え切れるような簡単なものではないのです。一つの言葉を体全体の動きから切り離して勝手に解釈すると、必ず大きな失敗を招きます。

そのような言葉の一例が、ジミー・バラードの「驚異のコネクション・ゴルフ」、デビッド・レッドベターの「ザ・アスレチックスイング」などに登場する、「犬が尻尾を振る」です。尻尾すなわち腕を、犬すなわち体が振るのであって、体を使わずに腕の振り回しでクラブが振れるものではないという、如何にも筋の通った話で体の動きの重要性を指摘しているのです。

ところが、ここに大きな落とし穴があります。体の動きで腕を振ろうとしても、腕が自由に動けば腕の振りの動きは決まりません。これは分かり切った話です。そこで「犬が尻尾を振る」と言う人は、無意識の中に腕を体に固定する方法を導入します。たとえば、体の動きの説明で、両肘を後ろに引いてクラブを両肩の上に担ぎ、これを体の動きで振って見せるのです。

クラブが無くても両肘を後ろに引けば、左右の肩甲骨が背骨に引き付けられて肩が固まり、腕が体に固定されます。この状態で腕を大きく振るには、腹の筋肉で胸を左右に引き回す以外に方法はありません。結局臍を右に左に回す動きが必要になります。これが前回に見たように、押しの動きでボールを打つ悪い動きに導くのです。

両手をグリップの形に握り合わせ、アドレスの体勢から、右腕を内側に回し左腕を外側に回す、肩と腕の「魔法の動き」を実行してみて下さい。グリップが右脇前の辺りまで引かれる頃には、両肩(肩甲骨)がしっかり体に引きつけられ、この動きに対応して尻の背中辺りに緊張が生まれ、両脚腰が踏ん張って両足がしっかり地面を掴みます。胸は正面向きに固定されています。

この状態では、腕の動きが脚腰を通じて直接地球に働きかけます。この地球との結びつきを通じて、体全体の動きが一体化されます。しかも、胸を横に回さずにグリップを更に巻き上げる動きもできます。こうなれば、動きの目的意識に直結する腕の動きを通じて、クラブを振る動きを生み出すことを考えるのが最も合理的であることは明らかです。ここでは「尻尾が犬を振る」のです。

ゴルファーは、動きの内容を冷静に、また克明に追わない限り、ワンポイントのアイデアや格言風の教えに潜む危険から身を守ることは出来ません。特に胸を回す動きで腕を振ることを勧める教えは、背骨を痛める危険もあります。「魔法の動き」を完全に実行すれば、このような危険を避けることができるのです。