総額およそ100億円と言われる巨費によって、今春大きくリニューアルした東京ドームに誕生した出来立てほやほやの席種に、都市対抗野球観戦ついでに潜入を果たした話をさせていただく。
今回トライした新席種とはこちら。
1階スタンド三塁側内野上段に新設された、『THE 3rd PLATINUM BOX』である。その名の通りのボックス席種で、定員は4名。
『THE 3rd』といっても、他に『1st』や『2nd』の名がついた席種が同時に誕生したわけではなく、これは「第三の」ではなく「三塁側」を表しているようだ。事実一塁側にはない。
一塁側から撮った写真で位置を説明すると……
この真っ青なスタンドの中でひときわ目立つ白いエリアが『THE 3rd PLATINUM BOX』である。
数えてみたら全部で18ボックスあり、4名定員なので収容総数は72名ということになる。
そのボックスは、それぞれこのような作りになっている。
黒い壁に覆われた区画内にデンと鎮座する真っ白なソファー。かっちょいいモノトーンのエリアは、まるで高級家具店のショールームのようではないか。行ったことないけど。
そのソファをつぶさに観察してみると……
3名が横並びで……
もうひとり分はL字、という恰好で配置されている。
ひとり当たりの座面幅は55センチとのことだが、ご覧の通りL字部分はこの限りではない。
ソファなどという高級家具とは無縁の暮らしを送っている貧乏人だからの感動もあるだろうが、まあとにかく座り心地は抜群で、いまだかつて野球場で味わったことのない過保護な感触と、我が尻も驚いていた。
野球観戦よりも居住性に重きを置いている方針が色濃く表れているのが……
深々と寄りかかったら天を仰ぐような格好になってドームの屋根しか見えないほど、かなり後ろに傾いているこの背もたれの角度。
こんなにふんぞり返って野球を見たことはないし、見ようと思ったことすらない。
カップホルダーはL字部分の角にふたつ、横並びソファの反対側の一番端にひとつで、「4人分ないじゃん!」と思ったのは粗忽ものの早とちり。このラグジュアリーボックスはそんなイージーミスは犯さない。
ソファの間のこの部分が……
パカっとなと開いて、4つ目のカップホルダーが登場。ぼやぼやしてたら気付かずに過ごすところであった……。
ソファ以外の設備はというと……
正面には、ソファと比べるとかなりこじんまりとしたテーブルが1台。まるでテレビ台のようである。
テーブルの横に本当にテレビが設置されていたため、なおさらテレビ台に見えて仕方ない。
このテレビは……
場内コンコースなどに設置されているモニタと同じで、フィールドでやっている試合のテレビ中継映像が見られるようになっていた。
これがあればソファでごろりと横になって、怠惰にテレビ観戦を楽しめるではないか。まあ実際にそれをしようものなら、「家でよくね……?」という冷たい視線にさらされ続けるとは思うが。
なお、リモコンの類は置いていなかったため、地デジやほかのチャンネルが映るのかは検証できず。
その他、細かい設備としては……
6月に試した新席種『スカイテラス(パノラマソファBOX)』にもあった、電源とUSBの差込口がもちろんここにも用意されている。
真ん中に出ているひも状のものは……
荷物盗難防止用のワイヤーだろうか? 使い方がよく分からなかったので放置。
前述の通り、三塁側内野スタンド最上段にある『THE 3rd PLATINUM BOX』だが、その場所がゆえに今回試した都市対抗野球期間中限定の特典が。
応援ステージが真正面にあるので、都市対抗の華を臨場感たっぷりに楽しむことができるのである。
チームの応援をステージと一緒に盛り上がりたい、という方には大いにおすすめだ。ただし目当てのチームが三塁側ベンチの時のみ、という条件付きではあるが。
ざっと数えてみたところ、1ボックスの区画面積は一般席およそ10席分というかなりのゆったり設定。シートは球場椅子の範疇を優に超えるフカフカソファで、テレビや電源完備と、さすが自ら「プラチナ」と名乗るだけはある、素晴らしいボックスだったこの席。気になるのはお値段であろう。
ジャイアンツ戦ではシーズンシートの扱いなのだが、そのお値段はなんと780万円!(65試合)。見慣れぬ大きな桁数に、ゼロの数を3回くらい数えなおしたので間違いない。
計算すると、1試合あたり12万円、ひとり3万円……。どんな貴族ややんごとなき方々がここのオーナーなのだろうか……?
そんな普段は庶民立ち入り禁止のエリアに、都市対抗期間中は1ボックス1万円、ひとり2500円で潜り込むことができると聞いて、席種狂の桃色野郎が黙っていられるはずもなく、見ようと思えばタダで見られる都市対抗にわざわざ福沢諭吉を投じるという散財をして、今回の潜入にいたったという次第である。
1回の野球観戦にチケット代だけで12万円、と言われたら「あっ、結構です……」となるが(庶民基準)、ひとり2500円ずつを出し合ってのグループ観戦の席としては抜群に素晴らしく、非日常の観戦体験が楽しめる良席だった『THE 3rd PLATINUM BOX』。
格安に売り出される非ジャイアンツ戦の機会を狙って、また再訪したいと思う。
オープン戦の『クラフトカウンター 立見指定』、6月の『スカイテラス(パノラマソファBOX)』、そして今回と、これで今春誕生した東京ドームの新席種は、早くも3つの潜入に成功。今回がジャイアンツ戦価格で最も高い席となった。
だが実は、780万のシーズンシートは四天王最弱、どころか四天王にすら入っていない。東京ドームにはシーズンシート価格1000万オーバーの新ボックス席が6種類も誕生しているのだ。
定価ではまずいけないそれらの席種を攻めるチャンスを、虎視眈々と狙い続けたいと思う。
今季は商売優先で野球観戦がはかどらない分、席種開拓はいつも以上に精力的に取り組んでゆきたいと目論んでいる当スタジアムへの皆様のご来場を、引き続き心よりお待ちしております。