【13年目の追悼の日、11年目の感謝の日】 | 監督のささやき戦術

 有形無形のさまざまな物事を一瞬で激変させ、今もなおその影響が色濃く残るあの未曾有の大災害から今日で丸13年。

 犠牲となった多くの方々へのご冥福と、未だ道のり半ばの被災地の1日も早い復興を、心よりお祈り申し上げます。

 

 今から11年前の2013年の同日、ひっそり産声を上げた当スタジアムは、本日2024年3月11日に開場11周年の記念日を迎えた。

 「なんでまたよりによってそんな日付を選んで……?」と問われることがたまにあるが、開業の諸手続きや工事の進捗によって定まった最短のオープン日がたまたまその日だった、というだけの理由であり、意図があってのことではない。そういえば11年前も今年と同じ月曜日だった。

 そんな偶然によるものとはいえ、18歳までを東北で過ごした自分が独立して持った店の記念すべき第1日目が、結果的にそういう日付に重なったという事実は、スピリチュアルなものに疎い自分であっても、そこはかとなく運命めいたものを感じざるを得なかった。

 そうして、11年前から「3.11」は自分にとってふたつの意味を持つ特別な日付となった。

 

 11年前の今日、神田の飲み屋街の片隅に人知れず開場した当スタジアムが、11年経った今もこうして廃業の憂き目を見ることなくどうにか存続できているのは、ひとえに支えて頂いた、応援してくださった野球ファンのお客様や関係各位の皆様のご愛顧の賜物以外の何物でもない。

 短い当スタジアム史の約1/3を暗雲で覆い続けた「新型コロナ禍」を、息も絶え絶えになりながらもなんとか乗り切れた今、余計にそう感じている。

 この場をお借りして、心よりの感謝と御礼を申し上げる。

 

 長く続いた新型コロナ禍に、あと一撃何か大きなダメージを被ったらもう持たない……、というギリギリのところまで追いつめられていた当スタジアムだったが、疫病終息と入れ替わりのように訪れてくれた昨春の侍ジャパン『WBC2023』世界一奪還、そして昨秋のタイガース38年ぶり日本一と、ふたつの球界トピックスが大商いとなってくれたおかげで、どうにか命脈を保つことができた2023年。

 ひたすら防戦一方だった新型コロナ禍も過去のものとなり、世の中も球界もすっかりかつての日常を取り戻した中、当スタジアムにとっての12年目は「完全復活!」をスローガンに一大反転攻勢に出て、失われたものを取り戻すのではなく、アフターコロナの「新リリーズ」を一からまた作り上げてゆく、そのスタートに1年にしたいと密かに意気込んでいる。

 

 東日本大震災以後も、大きな地震であれば熊本、そしてこの年始の能登半島。地震以外にも台風による水害など、胸を痛めるような天災も少なくなく、当たり前の日常の尊さありがたさが改めて身に染みる。

 細くとも長く商売を続け、せっせと働いて稼いでわずかばかりであっても税金を納めること、遠征に出かけたり現地でお金を使ったりして経済の循環に微力ながら参加することが、ちっぽけな自分自身と当スタジアムができる被災地に対しての復興支援と肝に銘じ、これからも商売に精を出してゆきたいと思う。

 

 

 こちらが11年前、開場直後の当スタジアム場内。

 

 そしてこちらが本日現在の同じ場所。

 初期のスカスカさ、薄暗さに我が店ながら隔世の感を禁じ得ない。

 

 やっている当人的にはマンネリも飽きもなく、こうして毎日野球まみれの暮らしができていることが楽しくて仕方がないからか、11年という時間を「もう」とは全然思わない。完全に「まだ」「たったの」である。そしてそれはとてもありがたいことだといつも感じている。

 皆様に支えられて11年やってこられた当スタジアムが、皆様へご恩返しができるとするならば、それは今よりももっとずっと、野球ファンの皆様に喜んでいただける、楽しんで集まれる、贔屓球団の本拠地球場の次に好きな球場と思って親しみをもっていただける場であり続けることよりほかはない。そうであれるよう、12年目の今季も当スタジアムなりの野球道に邁進してゆく所存である。

 

 当スタジアムの数ある夢のひとつに、ロッテ(川崎時代)と同じ「観客動員100万人」というものがある。もちろん単年ではなく累計で。

 丸11年が過ぎた現時点での累計動員数はのべ9.5万名ほど。進捗率は10%にも満たず、このペースのままでは100周年時点でも未達の見通しだが、自分亡きあとの二代目、三代目桃色野郎の時代に達成してくれるのをあの世から見届けるべく、時代が移り変わってもしぶとく生き延びられる店づくり(そしてこの店を継ぎたいなどと無謀なことを考える、自分と同じようなちょっといかれた思考回路の人材の発掘、育成)に注力してゆきたい。

 身の丈に合わない動員目標はともかくとして、定員50名ほどのちっぽけな当スタジアムに、11年間でのべ10万名近いお客様がご来場された、という奇跡に等しい事実には、ありがたすぎてただただ心震えるばかりである。

 

 この11年間、大きな病気や怪我などで欠場を強いられたことがただの一度もなく、猛威をふるった新型コロナ禍中も結局一度も感染せず(知らぬうちに陽性になっていたかもしれないが、少なくとも自覚症状はなし)、毎日毎日楽しく仕事ができていることには、知能のパラメーターを削ってフィジカル面に割り振り、むやみやたらと元気で健康な身体に生んでくれた両親に感謝したい。

 とはいえもう40代も半ばを過ぎて、あちこちに衰えを感じる今日この頃。もって生まれた丈夫さに胡坐をかかず過信せず、年相応にいろいろ気をつけながら、引き続き当スタジアムでの毎日を楽しく過ごしてゆきたいと思う。

 

 開場記念日に寄せて、毎年毎年ほぼほぼ同じようなことを無駄に長々とつづっているが、最後に改めて。

 皆様の絶大なるご支援ご愛顧ご声援によって迎えられた11周年に心よりの感謝を申し上げるとともに、本日より12年目の戦いをスタートした当スタジアムへの皆様のご来場を、引き続き心よりお待ちしております。