プロ野球は移動日、当スタジアムは休場日で商売には特に影響はなかったが、いにしえより伝わる絵描き歌を忠実に再現するかのような、ざあざあ降りの雨だった6月6日(月)。
そんな雨の中、当スタジアムの近所で開催されていたとある野球の試合をちょっとだけ楽しんできた、先日の休場日の話をさせていただく。
向かった先は、毎年雨の季節になるとありがたみを実感するこの球場。
当スタジアムから2駅となりのご近所球場、毎度おなじみ東京ドームである。
いつもの主ジャイアンツが留守のこの日、ここで行われていた野球は……
毎年6月に東京ドームと神宮球場を舞台に開催される、全国の大学野球連盟覇者による日本一決定戦、『全日本大学野球選手権大会』。
ちょうどこの6日(月)が今年の第71回大会の開会日だったのだが、雨のため神宮で予定されていた3試合が全部中止というあいにくのスタートに……。
屋根のおかげで無事だった東京ドームの、大会第1日目のカードはこちら。
その4試合のうち、スタンドで観戦したのは第3試合。
日本文理大学(九州地区大学野球連盟 北部代表)VS松山大学(四国地区大学野球連盟代表)の、試合途中から。
出場27校いずれのOBでもなければ、親類縁者に関係者などもおらず、ただ単に「近所で大学野球の全日本大会がやってるからちょっと見に行こう」という軽薄な動機でやってきた桃色野郎。
日中に店の工事の立ち合いがあり、それが済んでからドームに向かい、着いたらやっていたのがこの試合だったのだ。
ひょんなことから対決を見守ることになった両校は、ともにはるか遠くの西国の大学野球連盟ゆえ、お目にかかるのはもちろんこの試合がはじめて。
「日本文理」と聞くと「ああ、新潟の?」と即座に思い浮かべる野球ファンが多かろうが、日本文理大学の所在地は大分県大分市。
「夏はまだ終わらない!」で知られる新潟の高校とは、まるっきり無関係だそうだ。
出場は3年ぶり10回目で、元巨人の脇谷選手が主将を務めていた2003年の第52回大会では日本一に輝いた実績もあり。
同校OBのNPB現役選手は、DeNA宮崎選手、広島ケムナ投手、巨人田中豊樹投手、ヤクルト坂本投手。
一方の松山大学はというと、所在地が埼玉県東松山市……などというひっかけはなく、素直に愛媛県松山市。
2大会連続32回目の出場という大会常連校。四国大学リーグ(1部)では加盟校最多の29回の優勝を誇る強豪校らしい。
OBには1962年にプロ入りし、大洋一筋14年で出場1398試合、通算882安打と長く活躍した重松省三氏がいる。
……なんて情報を、着座してからスマホのGoogle先生に教えてもらう。
ちなみに、遠隔地同士の対戦だったためだろうか、着いた時点でスタンドはこんな状況。
鳴り物や声を出しての応援が禁止されていたこともあってか、両校とも応援団やチアの姿もなく閑散としていたスタンドに響き渡っていたのは、フィールド上の選手の声と球音のみ。
こんなに静かな試合中の東京ドーム、たぶん2019年の『プレミア12』の時の平日デイゲーム(非日本戦)の時以来だろう。
この第3試合の観客数は公式発表で1080名。1日通し券自由席のみの販売で、どうやって試合ごとの客数を数えていたのかは不明。
どこでも好きなところ座り放題だった中、なんとなくふらっと三塁側に着座したという理由で、三塁側ダグアウトに陣取っていた日本文理大学をなんちゃって大分県人の心持ちで勝手に応援することに決め、試合を眺めることに。
その日本文理大学野球部のユニフォーム。
真っ赤なシャツがひときわ目を引く、なかなかカッコいいデザイン。
ユニの派手さには定評がある当スタジアム的に、この手のビビッドな色遣いのチームにはそこはかとなく親しみを感じる。
一方の松山大学はというと……
上下とも白地で、2008年以前の野球日本代表のようなスタイルのストライプに、胸マークはヒゲ付きとわりとオーソドックス。メットやキャップの「M」マークのデザインがなかなか洒落ている。
両校ともぼちぼちランナーは出すものの、決め手に欠けて0-0のまま回が進んだ試合がようやく動いたのは6回裏。
粘りの投球を続けていた松山大先発の菊池投手から、我らが日本文理大の5番野元選手がライトスタンドへ2ランホームランを放ち先制。
くそどうでもいい余談だが、場内アナウンスによると、これが今大会第6号とのこと。ふと「6月6日の、6回裏の第6号か……」としょうもないゾロ目に気付き、ひとりスタンドでダミアンに思いを馳せる。
松山大も7回表にタイムリーで1点を返したものの、日本文理大の5投手による小刻みな継投にかわされて、一歩及ばずゲームセット。
2-1で日本文理大が勝利し、2回戦へと駒を進める。
ついさっきなったばかりの新参日本文理大ファン、ニセ大分県人として観戦したこの試合。つかの間の薄いご縁とはいえ、やはり応援しているチームが勝つとうれしいもので、なにやらいい気分で東京ドームを後にしたのだった。
その日本文理大は、残念ながら2日後の2回戦で大阪商業大に2-6で敗退。
本日神宮球場で行われた決勝では、上武大を下した亜細亜大が20年ぶり5回目の優勝を飾り、『第71回全日本大学野球選手権大会』は全日程を終了。
結局その東京ドームの1試合しか見られなかったが、来年は平日日中、太陽の下の神宮球場にも足を運び、また見ず知らずの大学の応援に興じたいと思う。
コロナ禍復興シフトを敷いているため、なかなか球場での野球観戦に行けないのは残念だが、そこはグッとこらえて野球がある日にせっせと稼ぎ、直近2年の大ダメージをちょっとづつでも取り戻そうと日々あがいている当スタジアムへの皆様のご来場を、引き続き心よりお待ちしております。