「ガルウイング」という言葉。
この「ガルウイング」の「ガル」とは、鳥の「カモメ」のこと。
つまり、「カモメが、翼を広げて、飛ぶ姿」を、「ガルウイング」と呼ぶ。
この「ガルウイング」という言葉は、車のドアの開き方を表す言葉として、よく知られているのではないでしょうかね。
例えば、この車。
「メルセデスベンツ300SL」という車だそうですが、この、上に跳ね上げるタイプのドアが「ガルウイング」と呼ばれるもの。
こちらは、「マツダAZ1」
そして、最も、有名なのは、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場する「デロリアン」ではないでしょうかね。
確か、この「デロリアン」が、タイムマシンに選ばれたのは、この「ガルウイング」が、未来的なデザインだからという理由だったと記憶しています。
ちなみに、上部に跳ね上げるドアを、全て「ガルウイング」というのは、間違いだそうですね。
例えば、この「ランボルギーニ・カウンタック」。
こちらは「ハサミが開いた時に似ている」ということで「シザースドア」と呼ばれるそう。
こちら、二台とも「トヨタ・セラ」です。
このドアは、「蝶が羽を広げた格好に似ている」ということで、「バタフライドア」と呼ばれるそう。
この車、好きだったんですよね。
ちなみに、これら、上に跳ね上げるドアは、「ポップアップドア」と呼ばれるそうです。
どの車も、格好良くて、憧れますが、貧しい僕には、手が出ない。
恐らく、車の場合、こういうドアは、デザインによって、採用されているのでしょう。
しかし、飛行機の場合、また、事情が違います。
例えば、1933年、ポーランドで正式採用された戦闘機「PZL P.7」。
この飛行機は、全金属製単葉機の量産機としては、最初期のもで、当時としては、最先端の技術が、採用されていたそうです。
この「P.7」が「ガルウイング」を採用したのは、パイロットの良好な視界を確保するためだったそうです。
ちなみに、それ以前は、翼を、支柱で持ち上げている「パラソル翼」というものが採用されていた。それが、こちら。
しかし、この「パラソル翼」は、支柱がある分、機体の重量が増え、空気抵抗も増す。
そこで、生まれたのが「ガルウイング」です。
上の「P.7」戦闘機では、まだ、翼を支える支柱があります。
そして、戦闘機は、機体の下部に翼を付けるように進化をする。
そして、その中には、「逆ガルウイング」と呼ばれる翼を採用する戦闘機もあった。
それが、こちら。
こちら、第二次世界大戦で使われたアメリカの「F4Uコルセア」戦闘機です。
なぜ、この「逆ガルウイング」が採用されたのか。
もちろん、格好良いから、と、言う訳ではありません。
この「F4Uコルセア」は、艦載機である「F4Fワイルドキャット」の後継機として開発されたそうで、アメリカ軍では、最初の2000馬力級エンジンを搭載。
その2000馬力という強力なエンジンのパワーを効果的に使うため、大きな直径のプロペラが採用されたそう。
しかし、その大直径のプロペラを搭載するには、機体の地面との距離を確保しなければならない。
しかし、翼に付ける「脚」は、あまり、長くしたくない。
そこで、採用されたのが「逆ガルウイング」ということになる。
つまり、翼を、下に下げ、折り曲げることで、地面との距離を狭めたということ。
それは、上の、二つの写真を見ると、よく分かります。
もっとも、この「逆ガルウイング」の採用のためか、艦載機として使用するには、飛行特性に難があるということで、当初は、海兵隊で使われ、「F4Fワイルドキャット」の後継には「F6Fヘルキャット」が採用されることになる。
その後、この「F4Uコルセア」もまた、艦載機として使用されることになりますが。
ちなみに、日本海軍にも、この「逆ガルウイング」を採用した機体がありました。
それが、こちら。
この艦上攻撃機「流星」は、急降下爆撃を行う「艦上爆撃機」と、魚雷攻撃を行う「艦上攻撃機」の両方の任務を行うことが出来る、画期的な軍用機で、高速を出すのに有利ということで、機体の中央に翼を付ける「中翼」式が採用された。
しかし、やはり、「脚」を長くしたくないということで、「逆ガルウイング」が採用されることになる。
この艦上攻撃機「流星」は、約110機が生産されたそうですが、その時には、すでに、この「流星」を載せるための航空母艦はなく、実戦配備をされたのは、ごくわずかで、終戦間際に、数回、米英空母に攻撃を行っただけ。
しかも、その戦果は、分からないということ。
ちなみに、終戦当日、8月15日に、木更津基地から、この「流星」が、房総半島沖に居た空母「ヨークタウン」に、特攻のために出撃。
これは、海軍の特攻の公式記録としては、最後のものだそうです。