藤子F不二雄のSF短編「いけにえ」の実写ドラマが放送されたようですね。

この本に、収録されています。

 

 

 

主人公は、浪人生の「池仁平」という、平凡な青年。

恋人も居るのだが、浪人生ということもあってか、今は、微妙な関係になっている。

 

街の上には、大きな宇宙船が浮いていた。

しかし、池仁平を始め、街に住む人々は、別に、その宇宙船を、何も、気にすることなく、日常を送っている。

 

すでに、その宇宙船が、姿を現してから、長い年月が経ち、その宇宙船の中に居るはずの宇宙人からも、何の接触もなく、一体、何のために地球に来て、そこで、何をしているのか、誰も、関心を持たなくなっていた。

 

しかし、ある日、池仁平は、突然、見知らぬ男たちに襲われることになる。

そして、池仁平は、ある事実を知ることになった。

 

「宇宙人が、池仁平を、引き渡せと言っている」

 

「なぜ、自分が?」、当然、池仁平は、驚く。

池仁平を襲った、見知らぬ男たちは、国家機関の者たち。

それは、池仁平を確保し、安全に、無事に、宇宙人に引き渡すため。

 

宇宙人の科学レベルに、地球の科学では対抗することが出来ない。

世界各国の首脳が、池仁平を、宇宙人に引き渡せと、日本に圧力を掛けている。

しかし、当然、池仁平は、それに強く反発をし、抵抗する。

 

「人、一人の命は、地球よりも重いんだぞ!」と叫ぶ、池仁平に、

 

「その地球に、どれだけの人が生きていると思っているんだ!」と、男たちは反論。

 

池仁平は、自暴自棄になり、暴れ回り、「宇宙人と、差し違える」と叫ぶ。

 

何とか、安全に、池仁平を引き渡したい男たちは、池仁平に、恋人が居ることを知り、「何とか、使えないだろうか」と、池仁平のところに連れて来る。

 

恋人に会った池仁平は、冷静さを取り戻す。

そして、恋人と、一夜を過ごし、「君のためなら、死ねる」と覚悟を決める。

 

そして、いよいよ、男たちと一緒に、池仁平が、宇宙船に行こうとした時に、宇宙人から、新たなメッセージが届く。

それは、「もう、池仁平を連れて来なくても良い」というもの。

そして、「池仁平を、志望の大学に入れろ。そうしたら、宇宙に帰る」と言うメッセージを受け、世界各国の首脳から、大学に圧力がかかった……。

と、言うオチ。

 

この物語。

二つの要点があるのではないかと思います。

 

一つは、「わずか犠牲によって、大勢が助かるのなら、その犠牲には、目をつぶるべきなのか」ということ。

 

そして、もう一つは、「愛する人のためならば、人は、死ぬことが出来る」ということ。

 

「人の命は、地球よりも重い」という言葉は、確か、日本の過激派がハイジャック事件を起した時に、刑務所に入っている仲間の釈放を要求。

日本政府は、その過激派の要求に応じることになりますが、その時に、総理大臣か誰かが「人、一人の命の重さは、地球よりも重い」と言ったという話だったと記憶しています。

しかし、ハイジャックをした過激派の要求に応じた日本政府は、外国から批判を受けたのではなかったですかね。

 

しかし、その「一人の命」によって、「大勢の命」が救われるのだとしたら、恐らく、世間は、容認をすることになる。

しかし、その「一人の命」が、もし、自分だったら、また、自分の愛する人だったら、なかなか、当人は、受け入れることが難しいでしょう。

 

そして、「愛する人のためらば、自分の命は、惜しくない」というのも、人間の感情でしょう。

恐らく、神風特攻隊の人たちは、そう思って、敵に突入をして行った。

 

権力者は、こういった、人の感情を利用し、戦争に突き進むんですよね。

注意をしないと。

 

で、結局、この物語。

宇宙人は、何をしたかったのでしょう。

それが、疑問なところです。