今日覚えた使えるイタリア語
朗読の響きが心地よいイタリア古典文学。白崎容子先生の「原文で読む古典の楽しみ」。ダンテ『神曲』、ペトラルカ『俗語断片詩集』、ボッカッチョ『デカメロン』に引き続き、ロレンツォ・デ・メディチ『謝肉祭歌集』を書き起こしました
原文で読む古典の楽しみ
黎明期からルネサンス時代のイタリア文学
Quattro passi nella letteratura classica italiana
イタリア古典文学作家6人の作品を通して、現代とは異なる黎明期からルネサンス期のイタリア語の響きを楽しみ、魅力に触れ、気に入った一篇を口ずさめるようになるのが、この講座の目的の1つ。
La letteratura italiana delle origini e del Rinascimento
黎明期からルネサンス時代のイタリアの古典文学
白崎容子先生のセリフ
Marcoさん(斜体字)のセリフ
(スクリプトがなく答え合わせもできないのですが、学習の記録としてディクテーションに挑戦したものをそのまま載せています。途中の猫まーく()は私の感想などです)
12月1日放送分
Lezione 16 Lorenzo de' Medici ④
«Canti carnascialeschi» "Canzona di Bacco"
ロレンツォ・デ・メディチ 『謝肉祭歌集』 「バッコスの歌」(4)
ロレンツォ・デ・メディチ「バッコスの歌」の4回目です。
Oggi leggiamo l'ultima parte della"Canzona di Bacco".
今日は最後の第7節と第8節。カーニバルのパレードもいよいよフィナーレを迎えます。
ではまず前半、第7節から聞いてみましょう。イタリア語と日本語訳を続けてどうぞ。
Ciascun apra ben gli orecchi,
di doman nessun si paschi:
oggi sian, giovani e vecchi,
lieto ognun, femmine e maschi.
Ogni tristo pensier caschi:
facciam festa tuttavia.
Chi vuol esser lieto, sia,
di doman non c'è certezza.
では一緒に見ていきましょう。
最初の2行です。
Ciascun apra ben gli orecchi,
di doman nessun si paschi:
それぞれの人が耳をしっかり開いて聞いてほしい
誰も明日に幻想を抱いてはならない
動詞は apra 。主語は ciascuno 。「それぞれの人がこうであるように」という命令法です。
次の si paschi 、これも命令法です。これは pascersi という再帰動詞で、動物が草をはむ、食べ物を摂取する、そこから転じて「身を任せる、当てにする」さらに「幻想を抱く」といった意味になります。
主語は nessuno 。「誰も明日をあてにするな」、この詩の最初からずっと繰り返してきたことのまとめのようなフレーズですね。
そして?
oggi sian, giovani e vecchi,
lieto ognun, femmine e maschi.
今日のこの日に若者も老人も
女性も男性もそれぞれが幸せであれ
動詞 sian は siano 。 essere の3人称複数形で、siano lieti ということですが、ここは ognun 、つまり ognuno に合わせて lieto と単数形にしています。
そして…
Ogni tristo pensier caschi:
facciam festa tuttavia.
よくない考えはどれも落ちてしまえ
ずっと祭りを楽しもう
tristo は「不吉な」。
cascare は「落ちる、(落ちて)消えてなくなる」のニュアンスです。
最後は tuttavia でリフレインになります。
Chi vuol esser lieto, sia,
di doman non c'è certezza.
テンションが高くなってきましたね。
では後半、いよいよ最後の1節です。和訳と合わせて聞いてみましょう。
Donne e giovinetti amanti,
viva Bacco e viva Amore!
Ciascun suoni, balli e canti,
arda di dolcezza il core,
non fatica, non dolore!
Ciò c'ha a esser, convien sia.
Chi vuol esser lieto, sia,
di doman non c'è certezza.
盛り上がりましたね。
では、一緒に見ていきましょう。最初は?
Donne e giovinetti amanti,
viva Bacco e viva Amore!
ご婦人方よ、恋する若者たちよ、
バッコス万歳!愛神(アモーレ)万歳!
お酒と恋を楽しもうと呼びかけています。
Ciascun suoni, balli e canti,
arda di dolcezza il core,
それぞれが楽器を奏で、踊り、歌い、
歓びで心を燃やしなさい
動詞 suoni, balli, canti, arda
いずれも前の第7節と同じく命令法です。
non fatica, non dolore!
Ciò c'ha a esser, convien sia.
辛いことはいらない、苦しいことはいらない
そうあるべきことはそうあるのがよい
Ciò c'ha の c' は関係代名詞 che つまり ciò che ということですね。
次の動詞の ha のあとの前置詞の a は da の代わり。
avere da 不定詞で dovere と同じ意味になりますから、そうあるべきことは conviene sia そうあるのがよい、そうあるべきだ。
conviene che 接続法の構文なので、この sia は命令法ではなくて接続法ですね。
起こるべきことは起こればよい
なるようになれ
In questa ultima strofa al verso 6 l'espressione "tuttavia" che fino ad ora c'è la sempre è sostituita da un'altra "convien sia".
最後のこの一節だけ、6行目が tuttavia ではなく sia で終わっています。脚韻は ia 。 tuttavia と同じですね。
そしておなじみのリフレイン。
Chi vuol esser lieto, sia,
di doman non c'è certezza.
さあ、これで最後まで全部読みました。
冒頭の4行だけが有名な詩の全体の内容がわかりましたね。
余計なことは考えないで、とにかく今を楽しもう精神全開のフィナーレでした。
しかし、フィナーレのここにきて、ずっとお祭りをしていよう、起こるべきことは起こればよい、っていうのが、なんだかちょっとやけっぱちみたいな感じで、諦めっていうか、例えばメディチ家がいつまでも安泰ではいられないといった無常観みたいなものが漂っているように感じてしまうんですけれど。
Mah, non so. A me sembra una canzone così gioiosa. Cantano, ballano. Lorenzo la scrisse per il carnevale del 1490 come altri canzoni da lui composte. Era destinata a essere musicata e cantata in occasioni festose in un ambiente di corte.
なるほど。やっぱり歌って踊ってひたすら楽しく盛り上がるカーニバルの歌。
フィレンツェ出身のマルコさんがおっしゃるんだから、そうなんですね、きっと。
Nel 1490, però Lorenzo era già malato. Una malattia che due anni dopo l'avrebbe portato a morte prematura.
はい、でも確かに、ロレンツォがこの詩を書いたときは持病の痛風が悪化していたし、2年後の死の予感はあったかもしれませんね。
今日のトピック
さて、今日のトピックは?
Girolamo Savonarola
ジローラモ・サヴォナローラ
ジローラモ・サヴォナローラ。フィレンツェの北東に位置するフェッラーラからやってきた厳しい禁欲主義で知られるドメニコ修道会の修道士でした。大勢の市民を前にして、ロレンツォ率いるフィレンツェを「頽廃した虚飾の町」と批判して、神の罰が下ると予言していたんです。
In occasione della sua seconda venuta a Firenze presso il convento di San Marco era stato proprio Lorenzo il Magnifico a farlo chiamare.
そう。前にもフィレンツェに来たことのある彼を、今度はサンマルコ修道院の院長として呼ぼうと提案したのはロレンツォだったんですよね。大らかな「バッコスの歌」の傍らで宗教心は強くなっていたのでしょうか。
E lì ha fatto presa la predicazione del Savonarola.
神の怒りを説くサヴォナローラの説教に集まる人の数はどんどん増えていきました。サヴォナローラの神とはキリスト教の神です。ルネッサンスらしい異教の神々を描いていたロレンツォと親しい芸術家の中にもサヴォナローラに感化される人が出てきました。
Anche Botticelli.
あのボッティチェッリもその1人。晩年は、それまでと画風ががらりと変わって、宗教画とかダンテの『神曲』の挿絵を書くようになりました。
でも、サヴォナローラも過激のあまり、教皇アレクサンデル6世の怒りを買い、結局火あぶりの形になってしまうんですけれどね。
In Piazza della Signoria il punto esatto si può vedere anche oggi.
サヴォナローラが火あぶりになった場所が、フィレンツェのシニョリーア広場の石畳の上に今もプレートで示してあります。ご覧になった方もいらっしゃるかもしれませんね。
今日もう1つのトピックは?
L'anno 1492
1492年
ロレンツォは1492年に持病の痛風で亡くなりました。おじいさんコジモも痛風だったし、お父さんのピエーロは…
È ricordato con soprannome di Piero il gottoso.
「痛風病みのピエーロ」のあだ名があったぐらいです。
メディチ家代々の病気までロレンツォは受け継いでいたんですね。この年の4月にロレンツォは息を引き取ります。
Aveva 43 anni.
43歳。もっとも当時は暦が1つに統一されていなかったので、44歳とする節もありますが、いずれにしても若すぎますよね。息子が3人、娘が2人いて…
Il secondo figlio maschio, Giovanni, aveva studiato per diventare prete.
子供のときから聖職者の道を歩ませていた次男ジョヴァンニの枢機卿叙任式が亡くなる3週間ほど前に行われました。ぎりぎり間に合って、どんなにかほっとしたことでしょうね。
このジョヴァンニが、後にメディチ家出身のローマ教皇第1号、レオ10世 Leone Ⅹ になります。
ところで、1492年といったら、コロンブスがアメリカに到達した年と覚えていらっしゃる方も多いと思います。でも、イタリア半島にとっては、ロレンツォが亡くなったことのほうがずっと重大でした。
E alla sua morte anche gli equilibri politici nella penisola italiana si rompono. Si è rotto "L'ago della bilancia".
ロレンツォの外交手腕のおかげでどうにか安定を保っていたイタリア半島の「天秤の針」が彼の死によって壊れてしまったんですね。
Segna l'inizio per la penisola italiana di un periodo di guerre.
この後イタリアは外国の侵略と領土争いに明け暮れる「戦乱の時代」に突入します。ロレンツォの後をついでメディチ家当主になったのは、
(.....) succede il figlio maggiore, Piero, detto Piero il fatuo.
長男のピエーロですが、あだ名は fatuo、ちょっと軽薄というか、「おばかのピエーロ」。あだ名ほど間抜けではなかったみたいですけれど、政治力と外交手腕は父ロレンツォに遠く及ばなかったらしく、2年後の1494年には、フランス軍のフィレンツェ入城を許すという大失策をやらかして、メディチ家はフィレンツェから追放されてしまいます。その後、フィレンツェはコジモ・デ・メディチ以前の共和体制に戻りました。
そんなメディチ家の行く末の悲哀を感じ取るかどうか、それは別にして、ともかく今を楽しもうという精神を謳い上げた「バッコスの歌」、もう一度最初から8つの詩節を全部通して聞いてみましょう。
次回、ロレンツォ・デ・メディチのあとに登場するのは、
Niccolò Macchiavelli マキャヴェッリです。お楽しみに。
A presto.
白崎容子先生とMarcoさんのセリフ(斜体)は例によりディクテーションしました (スクリプトがなく答え合わせもできないのですが、学習の記録としてディクテーションに挑戦したものをそのまま載せています)。
まいにちイタリア語2017年11月号応用編より
原文で読む古典の楽しみ
黎明期からルネサンス時代のイタリア文学
Quattro passi nella letteratura classica italiana
Lezione16 Lorenzo de' Medici④
今日の部分は 1:23 から最後までです
Dante Alighieri①はこちら
Dante Alighieri②はこちら
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Francesco Petrarca①はこちら
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Lorenzo de' Medici①はこちら
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2018年1月から始まった応用編は、待ちに待った朝岡直芽さんの24chiacchierateです。お聞き逃しなく!テキスト購入もお忘れなく~。
興味のある方はぜひNHKゴガクでストリーミング
で聞いてくださいね♪
「原文で読む古典の楽しみ」2017年10月~12月号も、
白崎容子先生による和訳や、語句の詳細な説明、
こぼれ話、パラフレーズ(現代イタリア語への原文の置き換え)、
さらには略年表や関連図書の記載もあるので、
放送を聴き逃した方もテキストだけでも、ぜひお手元に!
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