Giovanni Boccaccio④<原文で読む古典の楽しみ>イタリア語 | Laylahの猫足イタリア語

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らいらです。「NHKまいにちイタリア語」でのやり直しイタリア語の学習記録をぺたり♪イタリア語で伝える愛の言葉・愛の表現もどうぞ☆

ひらめき電球今日覚えた使えるイタリア語




朗読の響きが心地よいイタリア古典文学。白崎容子先生の「原文で読む古典の楽しみ」。ダンテ『神曲』、ペトラルカ『俗語断片詩集』に引き続き、ボッカッチョ『デカメロン』をディクテーションしましたネコ




本 原文で読む古典の楽しみ

  
黎明期からルネサンス時代のイタリア文学
   Quattro passi nella letteratura classica italiana



右矢印イタリア古典文学作家6人の作品を通して、現代とは異なる黎明期からルネサンス期のイタリア語の響きを楽しみ、魅力に触れ、気に入った一篇を口ずさめるようになるのが、この講座の目的の1つ。



La letteratura italiana delle origini e del Rinascimento
黎明期からルネッサンス時代のイタリアの古典文学




くーさん 白崎容子先生のセリフ

パパ Marcoさん(斜体字)のセリフ

(スクリプトがなく答え合わせもできないのですが、学習の記録としてディクテーションに挑戦したものをそのまま載せています。
途中の猫まーく(ネコ)は私の感想などです)





11月17日放送分
Lezione 12 
Giovanni Boccaccio ④



«Decamerone» Chichibio e la gru
ジョヴァンニ・ボッカッチョ 『デカメロン』 第6日第4話「キキビーオと鶴」(4)




くーさん 今日もボッカッチョを楽しみましょう。


パパ Decameron》 Sesta giornata, Quarta novella, "Chichibio e la gru".


くーさん 『デカメロン』6日目第4話「キキビーオと鶴」、最終回です。

生きた鶴を見ようと、キキビーオとご主人のクッラードが朝早く川べりにやってくると、まだ眠っている鶴たちは一本足でした。ところが、クッラードの声に驚いて目を覚ました鶴たちの足は、やっぱり2本でした。キキビーオの嘘はバレバレ。クッラードからは、鶴が二本足だったらただでは済まないときつく言われています。

さあ、どうなるのでしょう。フィナーレの部分、2つに分けて聞いてみましょう。

まず前半です。




Chichibio quasi sbigottito, non sappiendo egli stesso donde si venisse, rispose: «Messer sì, ma voi non gridaste "ho ho" a quella d'iersera; ché se così gridato aveste ella avrebbe così l'altra coscia e l'altro piè fuor mandata, come hanno fatto queste.»



くーさん 見事に切り返しましたね。


パパ Sì.


くーさん では、区切って見ていきましょう。最初は?




Chichibio quasi sbigottito, non sappiendo egli stesso donde si venisse, rispose:

ほとんどわけがわからなくなったキキビーオは、彼自身もそんな台詞がどこから出てきたかわからないまま答えた



sbigottito は「気が動転した」。ご主人からどんな罰を受けるのか、怖さのあまり頭がほとんど働いていません。うろたえて、何も考える余裕がなくて、といった意味合いです。

donde は「どこから」。

si venisse si は「いったいどこから」の意味を強めています。

動詞 venire の主語は省かれていますが、これから口にする台詞、それがいったいどこから出てきたのか、つまりどうして思いついたのか、自分でもわからずに。

で、その台詞、これが物語のハイライトです。




«Messer sì, ma voi non gridaste "ho ho" a quella d'iersera;

「ご主人様、おしゃるとおりです。でもあなたは昨日の夜のあの鶴には”ほお、ほお”と叫ばなかったでしょう」



messer < messere は目上の男性への呼びかけで signor(e) にあたります。

gridasse gridare の遠過去。キキビーオはご主人に敬語の voi で話していますね。

ierseraieri sera

昨日の夜の quella 鶴とは、一本足で食卓に出されたあの鶴のことです。

そして、なぜなら、と続けます。




ché se così gridato aveste ella avrebbe così l'altra coscia e l'altro piè fuor mandata, come hanno fatto queste.»




接続詞 se のあとの語順を整理すると…


se aveste gridato così, ella avrebbe mandata fuor l'altra coscia e l'altro piè così come hanno fatto queste

もしもあなたがそう叫んでいたら、あの鶴もこの鶴たちがしたように、もう一方の足と腿を外に出していたでしょうから



接続法大過去 aveste gridato と条件法過去 avrebbe mandata の仮定文で、見事にやり返しましたね。


パパ Una risposta davvero geniale.



くーさん とっさのこのひと言、本当に天才的ですね。

さて、気になるのはご主人クッラードの反応です。

後半を聞きましょう。



A Currado piacque tanto questa risposta, che tutta la sua ira si convertì in festa e riso, e disse: «Chichibio, tu hai ragione, ben lo doveva fare.»
Così adunque con la sua pronta e sollazzevol risposta Chichibio cessò la mala ventura e paceficossi col suo signore.




めでたしめでたし。良かったですね。

では、後半を見ていきましょう。最初の文です。



A Currado piacque tanto questa risposta, che tutta la sua ira si convertì in festa e riso,

クッラードはこの答えがとても気に入ったので、彼の怒りはすべて楽しさと笑いに変わった


piacque は動詞 piacere の遠過去ですね。答えがあんまりふるっていたので、怒っていたのもすっかり忘れてしまったということです。



e disse: «Chichibio, tu hai ragione, ben lo doveva fare.»

そして言った。「キキビーオ、お前の言うとおりだ。確かに私はそれをするべきだった」



素敵ですね、この対応。

そして最後のセンテンス。




Così adunque con la sua pronta e sollazzevol risposta Chichibio cessò la mala ventura e paceficossi col suo signore.


こういうわけでキキビーオはとっさの愉快な返答によって悪運をかわし、ご主人と仲直りした。



Chichibio を主語とする動詞が2つあります。1つは cessòcessare がここでは他動詞で「危険を回避する」、目的語は mala ventura 「悪運を」。もう1つの動詞は paceficossi、再帰動詞 paceficarsi 「仲直りする」の代名詞 si が遠過去の活用 形 paceficò のあとについた形です。paceficarsi は現代イタリア語では pacificarsi となります。


いかがでしたか?


パパ La storia finisce bene grazie alla pronta risposta di Chichibio e al  senso dell'umorismo del buon Currado.



くーさん クッラードがユーモアのわかる人だったおかげで、ハッピーエンドになりました。フィレンツェ貴族のユーモア感覚と度量の広さ、最高ですね。

では、前半と後半を通して聞いてみましょう。


今日はキキビーオの楽しいトンチの答えを皆さんも発音しておきましょう。2回続けてどうぞ。



「その通りですがご主人様、昨晩の鶴には”ほお、ほお”と声をおかけにならなかったのでございましょう」

«Messer sì, ma voi non gridaste "ho ho" a quella d'iersera»



この物語、すごく有名ですよね。


パパ Certo. È una delle storie più conosciute del 《Decamerone》. Si legge a scuola.


くーさん 小学校で?


パパ Sì, io l'ho letta per la prima volta alla scuola elementare.


くーさん 子どもにもわかるよくできたお話ですものね。


パパ Allora vi è piaciuta?


くーさん 楽しかったですね。





本 今日のトピック




くーさん さて、今日のトピックは?



Novelle corniciate (novelle con cornici narrative)
枠物語




聞きなれない言葉かもしれませんが、『デカメロン』は「枠物語」の形をとっています。1日目から10日目まで、それぞれの日を額縁のような枠が囲んでいるのです。

各日とも最初にその日の表札みたいなものが数行あって、そこでその日の座長とお題が示されます。

例えば、「キキビーオと鶴」が入っている6日目の<表札>は、こんな具合です。



Finisce la Quinta giornata del Decameron: incomincia la Sesta, nella quale, sotto il reggimento d'Elissa, (si ragiona di chi con alcun leggiadro motto, tentato, si riscotesse, o con pronta risposta o avvedimento fuggì perdita o pericolo o scorno).



『デカメロン』の5日目が終わり、6日目が始まる。ここではエリッサの主催のもと、と座長の紹介があり、その後に、危うい場面に遭遇しても、うんぬんと、前回ご紹介したお題が続くわけです。

6日目の「まえがき」<introduzione>は、空にまだ月が残る美しい夜明けとともに、エリッサ率いる男女が散歩に出かける様子を作者ボッカッチョが語ります。その部分をちょっと聞いてみましょう。



Aveva la luna, essendo nel mezzo del cielo, perduti i raggi suoi, e già per la nuova luce vegnente ogni parte del nostro mondo era chiara, quando la reina levatasi, fatta la sua compagnia chiamare, alquanto con lento passo dal bel palagio, su per la rugiada spaziandosi, s'allontanarono [...]



そして、散歩の後、お話会が始まるまで、歌ったり、楽器を奏でたりといった貴族らしい様子が描写されたりします。

10人全員が物語を語り終えると、その日の「あとがき」<conclusione>になります。6日目の「あとがき」では、女性たちが散策にでかけ、木立に囲まれた池で水浴びをするという牧歌的な情景が繰り広げられます。


パパ Qui potete immaginare il panorama dolce e rilassante della campagna toscana vicino a Firenze.


くーさん フィレンツェの周りのトスカーナの丘陵地帯を思い浮かべましょう。

さて、日替わりのこの「まえがき」と「あとがき」を外枠とすると、その中にもう1つ、語られるそれぞれの物語を囲む内枠があります。

たとえば、第4話「キキビーオ」の話のあとには、次の第5話の語り手と交代する場面がこんな風に描かれます。



Come Neifile tacque, avendo molto le donne preso di piacere della risposta di Chichibio, così Panfilo per volere della reina disse:



女王とは、この日の座長エリッサ。ネイーフィレが語ったキキビーオの話はみんなも気に入ったようですね。この後、パンフィロが次の画家ジョットの物語を語り始めるわけです。このバトンタッチの場面が内枠の働きをしているわけですが…


パパ Grazie a questa cornice, noi possiamo anche conoscere  i commenti di chi ascolta le storie.


くーさん こうして物語の切れ目ごとに語り手と聞き手たちが物語から外に出てきてくれると、私たち読者もその場に一緒にいるような気分になれますよね。


パパ Tutti esprimono liberamente la proprio opinione, i loro apprezzamenti per i vari personaggi le critiche per quelli che non piacciono.


くーさん 登場人物を褒めたりけなしたり、彼らの思い思いの感想に、私たちも同じ場所で直接耳を傾けることができる、そんな雰囲気が楽しいですね。おかげで物語そのものの緊張感がほぐれ、緩急自在の見事なリズムが生まれています。

また、語られた物語が仮に下世話なものであっても、貴族たちが彼らなりのコメントで受け止めてくれるおかげで、俗悪に流れることなく、物語集の品格が保たれているんですね。


パパ Sì, esattamente.


くーさん 文章だけでなく、「枠物語」という構造の面でも、『デカメロン』は完成度の高い作品だということになります。

では、最後にもう一度「キキビーオと鶴」のフィナーレを聞きましょう。


ボッカッチョの『デカメロン』はこれでおしまいです。この次は、時代を100年ほど下って、ロレンツォ・デ・メディチの登場です。


パパ Vederete sarà molto interessante.


くーさん お楽しみに。






 
ヘッドフォン 白崎容子先生くーさんMarcoさんパパのセリフ(斜体)は例によりディクテーションしました (スクリプトがなく答え合わせもできないのですが、学習の記録としてディクテーションに挑戦したものをそのまま載せています)。



メモまいにちイタリア語2017年11月号応用編より
原文で読む古典の楽しみ
黎明期からルネサンス時代のイタリア文学
Quattro passi nella letteratura classica italiana

Lezione12 Giovanni Boccaccio④




今日の部分は 4:25 から 5:04 ですネコ






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ネコ2018年1月から始まった応用編は、待ちに待った朝岡直芽さんの24chiacchierateです。お聞き逃しなく!テキスト購入もお忘れなく~。

興味のある方はぜひNHKゴガクでストリーミング で聞いてくださいね♪






「原文で読む古典の楽しみ」2017年10月~12月号も、
白崎容子先生による和訳や、語句の詳細な説明、
こぼれ話、パラフレーズ(現代イタリア語への原文の置き換え)、
さらには略年表や関連図書の記載もあるので、
放送を聴き逃した方もテキストだけでも、ぜひお手元に!






Grazie a tuttiラブラブ

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