Dante Alighieri④『神曲』<原文で読む古典の楽しみ>イタリア語 | Laylahの猫足イタリア語

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らいらです。「NHKまいにちイタリア語」でのやり直しイタリア語の学習記録をぺたり♪イタリア語で伝える愛の言葉・愛の表現もどうぞ☆

ひらめき電球今日覚えた使えるイタリア語



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朗読の響きが心地よいイタリア古典文学。白崎容子先生の「原文で読む古典の楽しみ」。今日はダンテ『神曲』の4回目(最終回)をディクテーションしましたネコ



くーさん 白崎容子先生のセリフ

パパ Marcoさん(斜体字)のセリフ

(スクリプトがなく答え合わせもできないのですが、学習の記録としてディクテーションに挑戦したものをそのまま載せています。
途中の猫まーく(ネコ)は私の感想です)






本 原文で読む古典の楽しみ

  
黎明期からルネサンス時代のイタリア文学
   Quattro passi nella letteratura classica italiana



右矢印イタリア古典文学作家6人の作品を通して、現代とは異なる黎明期からルネサンス期のイタリア語の響きを楽しみ、魅力に触れ、気に入った一篇を口ずさめるようになるのが、この講座の目的の1つ。





10月13日放送分
Lezione4 Dante Alighieri④




La letteratura italiana delle origini e del Rinascimento
黎明期からルネッサンス時代のイタリアの古典文学





くーさん ダンテは森の中で3頭の猛獣、lonza 豹、leone 獅子、lupa 雌狼に行く手を阻まれてしまいましたね。


パパ È terrorizzato. E sta ormai per perdere la speranza di salvarsi.


くーさん 怖いし、もはや助かる見込みはないと絶望するダンテですが、


パパ Quando a un certo punto vede poco lontano una figura.


くーさん そのとき近くに人影のようなものが。ダンテはずばり、「あなたは実体のある人間なのか、それとも亡霊なのか」、と尋ねます。さて、どんな答えが返ってくるのでしょう。

«地獄篇»第1歌 67行目から75行目までの9行です。

彼とは一体何者なんでしょう。原文を読んでいきましょう。

まず最初の terzina 67行目は?




Rispuosemi: 《Non omo, omo già fui,

彼は私に答えた、「私は人間ではないが、以前は人間だった。



くーさん rispondere の遠過去 risp[u]ose のあとに代名詞 mi がついています。

ここからは人影らしきものの直接話法での語りになります。

最後の fui 、これは essere の遠過去、本来は fui già omo のはずですが、 omo が前に出て語順が変わっているんですね。文語調が簡潔に決まっていますね。


Non omo, omo già fui. = Non sono uomo, fui già uomo.




次の terzina 、最初は?



Nacqui sub Iulio, ancor che fosse tardi,

私は、遅かったけれどユリウスの統治下に生まれた。



ancor[a] chebenché~「~ではあるけれど(譲歩の接続詞)」。そのあとの fosse は接続法です。

「自分が生まれたのが遅くはあったけれど」


先に種明かしをしてしまうと、この謎の人影は古代ローマの詩人ウェルギリウスです。紀元前70年ごろの生まれなので、カエサルがローマの独裁官になったときにはまだ20代なかばでした。

カエサルはその2年後に暗殺されてしまうので、カエサルの治世のもとで生きたと実感するには生まれるのが遅すぎた。記憶にあるのはその次の皇帝アウグストゥスの治世だ、というわけです。

そして、アウグストゥス帝の時代を次のように言い換えています。



nel tempo de li dèi falsi e bugiardi.

偽りの神々の時代に。



déi は神 dio の複数形。偽りの神々とは、キリスト教以前の異教の神々のことです。



では、最後の terzina です。



Poeta fui,

私は詩人だった



本来なら fui poeta となるべきところを、 poeta fui の前においてかっこよく決めてますね。

そして、



e cantai di quel giusto figliuol d'Anchise

私はアンキーセスの立派な息子のことを謳った。




Anchise (固名)アンキーセスの立派な息子とは、叙事詩『アエネーイス』の主人公 Enea アエネーアース、そのあとはアンキーセスの息子を先行詞とする関係代名詞節になる。



che venne di Troia,

poi che 'l superbo Ilïon fu combusto.



誇り高いイリオスが焼け落ちたあと

トロイアからきたその息子



Ilïon イリオンとは、トロイアのギリシャ語名イリオス、イーリオン。トロイの木馬のエピソードで知られるトロイア陥落の話ですね。



パパ E qui si capisce che questa figura che Dante ha incontrato è l'anima del  grande poeta dell'antica Roma, Virgilio.



くーさん ここでようやくこの人影が古代ローマの偉大な詩人ウェルギリウスその人だと判明しました。イタリア語では Virgilio となります。

陥落したトロイアから父親アンキーセスを背負って逃れたアエネーアースが、ローマ建国の基礎を築くまでの遍歴を謳った叙事詩アエネーイスの作者です。

ここは詩人ウェルギリウスの自己紹介ですが、動詞は遠過去で通していますね。遠過去は fui, vissi のように音節が少ないので引き締まった感じが出ますね。


パパ Proprio coì.


くーさんでは、もう一度通して聴いてみましょう。




本 今日のトピック



くーさん 今日のトピックに移りましょう。


La lingua e lo stile della «Commedia»
 『神曲』の言語と文体




まず «Divina Commedia»という『神曲』のタイトルですが、


パパ Dante usa il termine «Commedia». Sarà Boccaccio più tardi aggiungere l'aggettivo "divina", «Divina Commedia».


くーさん ダンテは単に«Commedia»としていたんです。これに divina 「神の」をつけたのは Boccaccio なんですね。

ちなみに『神曲』という日本語タイトルは森鴎外によるものですが、もしも divina がなかったら、『神曲』とはできなかったですね。


«Divina Commedia»って「神の喜劇」かと思いますけれども、commdeia といっても笑わせる喜劇の意味ではないんです。commedia は広く「困難な状況から最後はハッピーエンドに至る筋立ての作品」を指しますけれども、当時の commedia の特徴として、さまざまな種類の言語と文体が混ざっているということがありました。

今日のウェルギリウス登場の場面には、


パパ Ci sono latinismi e anche parole greche.


くーさん ラテン語やギリシア語の語彙も登場して格調が高いですよね。尊敬するウェルギリウスにはそれに相応しく古典の香りの漂う語彙と文体を当てているんです。

一方、この前のライオンや狼の描写は、


パパ La descrizione delle belve feroci è realistica. 


くーさん そうですね。即物的な語彙を使って具体的に書いていました。格調の高さとリアリズム、文体のバラエティーが豊かです。

ちょっと横道にそれますが、ダンテのリアリズムっておもしろいですよね。例えば、ウェルギリウスについても、現れた時、長いこと黙ったままなので、「声がかすれた人」って言ってますよね。


パパ Sì, "chi per lungo silenzio parea fioco"


くーさん今日読んだところの少し前63行目です。

ウェルギリウスは亡くなって地獄の一番上の辺獄 Limbo にいて、もう1300年もたっているわけです。その間、それほど口をきいていないとすれば、間違いなく声はかすれていたでしょうね。冥界というシュールな世界のこういうリアルな描写って、なんかすごく新鮮な感じがしますよね。


パパ Certo. E anche in questo si vede la straordinaria abilità di Dante.


くーさん これもダンテの力のすごいところですね。


他にも、例えば、船がダンテが乗ったらかしいだのに、ウェルギリウスが乗ってもびくともしないとか、煉獄で昔の知り合いに会って、ハグしようとしても、相手は体がないので腕が自分の胸を抱いてしまうとか。もっともこれはウェルギリウスがすでに言っていたことなんですね。

アエネーアースが冥界にいるお父さんを抱こうとしたらうまく抱けなかったって書いてるので、それにならったということなんですけれど。ともかくこういう細かい描写も楽しいです。


パパ Sì.


くーさん では、ウェルギリウスとの出会いの場面、もう一度聴いてみましょう。



尊敬する Virgilio ウェルギリウスに会えてよかったですね。


パパ Sì, certo. E quando capisce di avere davanti a se, il grande poeta che ammira così tanto ecco che ci fa sentire tutta la sua gioia.


くーさん ほんと、ダンテはどんなにか嬉しかったに違いありません。

では、その喜びのくだりをちょっと聴いてみましょう。




«Or se' tu quel Virgilio e quella fonte
che spandi parlar sì largo fiume?»
rispuos'io lui con vergognosa fronte.

«O de li altri poeti onore e lume、
vagliami 'l lungo studio e 'l grande amore
che m'ha fatto cercar lo tuo volume.

Tu se' lo mio maestro e'l mio autore,
tu se' solo colui da cu' io tolsi
lo bello stilo che m'ha fatto onore. [...]»



「さてはあなたはウェルギリウスさま。言葉の
かくも豊かな大河の源流となられたお方?」
わが身を恥じ、へりくだって私は答えた。

「詩人たちの誉れであり光であるお方、
ご著書の勉学に私が注いだ長い時間とこよなき
愛が報われるよう、お力をお貸しください。

あなたは私の導き手であり、創作の源です。
私が名を得ることになった美しい詩の姿は
ほかならぬあなたから学ばせていただきました[...]」




くーさん ダンテが冥界の案内に選んだのは、哲学者や政治家ではなく詩人でした。そしてそれがウェルギリウスだった理由も、これでわかりましたね。

ダンテは、暗い森は思い出すのもいやだけれど、善いこともあったと言っていましたね。ウェルギリウスとの出会い、これが地獄での善いことでした。

そして、この出会いのおかげで、ダンテは冥界の旅に出かけ、天国の光を見ることができた。それが究極の善いことなんですね。


パパ Attraverso il paradiso però non sarà più lui Vergilio a guidare Dante.


くーさん でもウェルギリウスが案内してくれるのは地獄と煉獄まで。キリスト教徒ではないので、いかに立派な人物でも天国に行くことはできないんです。

天国は誰が案内するかっていうと、



パパ Sarà la sua Beatrice.


くーさん ダンテの永遠の女性、ベアトリーチェです。

この続きは日本語訳でもいいので、みなさんぜひ読んでみてくださいね。

ところでマルコさん、『神曲』の魅力をひと言で言うと?


パパ In questo opera Dante, grandissimo poeta, ma anche un uomo, vero? Normale con le sue debolezze, affronta tutti gli aspetti della nostra esistenza di essere umani. Ha un valore universale.


くーさん そうですね。大詩人であると同時に、普通の人間としての弱さを持ったダンテ自身の物語、人間のあらゆる側面を描き出した普遍的な価値のある作品です。今もずっと読み続けられているし、活躍中の現代作家や映画監督もよく引用しますよね。



パパ Certo. Nel cinema sin quasi dalle sue origini, in letteratura, nelle arti figurative, ( ..... ) presentazioni e recitazioni di questo opera unica e straordinaria non si possono contare.

arti figrative 造形芸術


くーさん 美術作品の題材になることも多いし、そういえば、映画『ライフイズビューティフル La vita è bella』の監督、ロベルト・ベニーニ Roberto Benigni の朗誦パフォーマンスもすばらしかったですよね。


パパ Sì, Benini (※) ha fatto una cosa davvero bella. Lui, toscano come dante, ha portato in giro per l'Italia e per il mondo molti canti della «Divina Commedia».

※正しくは、Benigni



くーさん ベニーニもダンテと同じトスカーナの人ですが、朗読じゃなくて『神曲』を暗記してるんですよね。イタリアはもちろん、アメリカやヨーロッパ各地で大きな反響を呼びました。


パパ Leggere questo classico della letteratura mondiale, c'è aiuta ancora oggi a capire meccanismi della nostra realtà di essere umani che sono sempre esistessi.


くーさん 古典を読むと、人間は今も昔も変わらないということがよく理解できそうですね。

さて、ダンテは今日でおしまいです。


パパ A prossima volta parleremo di un altro grande poeta, Francesco Petrarca.


くーさん 次回はペトラルカです。お楽しみに。



 

ネコ ダンテの『神曲』、終わってしまいましたね。白崎先生のお勧めのとおり、続きは日本語訳で読んでみようと思います。初めにあった苦手意識もどこへやら、すっかり古典が好きになってしまいました。次回からはペトラルカなのですが、一足早く『わが秘密』を読んでいるところです。
ラウラへの時を経ても変わらぬ愛を謳う、ペトラルカの美しい詩の世界、どうぞお楽しみに音譜




ヘッドフォン 白崎容子先生くーさんMarcoさんパパのセリフ(斜体)は例によりディクテーションしました
 (スクリプトがなく答え合わせもできないのですが、学習の記録としてディクテーションに挑戦したものをそのまま載せています)。



メモまいにちイタリア語2017年10月号応用編より
原文で読む古典の楽しみ
黎明期からルネサンス時代のイタリア文学
Quattro passi nella letteratura classica italiana

Lezione4 Dante Alighieri④





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