「源氏物語」は、千年昔に書かれ現代に

読み継がれてきた。

「浮世」とは、仏教ではこの世のことを

いうそうだが、浮世絵師はこの浮世の夢

を枕絵で描く。

 

<源氏物語と浮世絵「枕絵」>

300年前江戸時代には、源氏物語をも

とに描いた「吾妻源氏」があり、「源氏

物語」を下敷きにしてかき、よく似た艶

っぽい場面と重なり、源氏物語を想像の

世界に導いてくれる。

 

<源氏と朧月夜「雷」>

「源氏物語」のなかで、朧月夜が病で宮中

から里の右大臣の二条邸に移り療養するこ

とになる。

朧月夜は手紙を書き、使いの者に源氏に渡

す。源氏は夜ごとに忍び、ふたりは契りを

結ぶ。

ある日の夜、雨がふるなか鳴り響き、屋敷

が警固の侍で固められ、出られなくなる。

あくる日も雨が降りつづけ雷鳴がとどろく。

このときに朧月夜の父の右大臣が心配して、

朧月夜の部屋に「どうか、大丈夫か」とや

って来る。

 

 

花宴の日、几帳の中の朧月夜と中に入る光源氏

 

<蚊帳の中の男と女「鳴神」>

仮名垣魯文(野暮山人)著『開註年中行誌』

(天保5年・1834刊行)があり、これに歌

川芳虎が挿絵を描いている。一年の各月の

行事の噺の中の「五月之噺」の物語「雷」。

 

 

仮名垣魯文(野暮山人)著『開註年中行誌』(挿絵:歌川芳虎)

 

ある後家さんの家に馴染の行商の小間物屋

がやってきて、櫛、かんざしを買ってもら

って帰ろうとすると夕立が降ってきた。

ゴロ ゴロ 〱 ピカ ピカ 〱

と光る。「お前も蚊帳へ這入りなみんな留

守で淋しいから お前いやでもどうぞ居て

おくれナ」と、女と男は蚊帳の中へ。

雷と光が頭の上へ落ちたるごとく、恐ろし

く鳴り響く。女を抱きかかえる男は、こら

へることがでず、女も火のごとく燃え、ふ

たりは、ゴロ 〱 〱と雷が轟くごとに、

男は夢の中にしたり、後家は善がり、雷を

避けるために「くはばら くはばら」の呪

文をとなえ、恐怖がふたりを結びつける。

雷は、まるで神鳴で、鳴る神となった。

 

ー「源氏物語」と枕絵ー

几帳の中の朧月夜は、気配であわてて、まろ

ぶようにでてくる。その顔はほてって紅く、

父君は顔色を見て心配するが、娘の足元を見

ると、男物の帯があり、そのまわりには、散

らかしになった書きものの紙が落ちている。

 

 

三代歌川豊国の枕絵・交歓のあと「吾妻源氏」

 

父の右大臣は、几帳を覗き込むと、光源氏

が、ゆったりと顔を隠し寝ているのを見て、

憤慨にたえかね出てゆく。

 

 

喜多川歌麿の「歌まくら」

 

歌麿はが描く「歌まくら」(正式名「歌満

くら」)は歌麿35歳の天明8(1788)年

の作。全12図の内第二図、茶屋の男女。顔

が見えない男と女がお愉しみ中。乱れた長

襦袢の裾から白いお尻、男がもつ扇には、

狂歌がある。

蛤(はまぐり)にはしをしかっとはさまれて

 鴫(しぎ)たちかぬる 秋の夕暮れ

歌麿は、生きることと楽しみを享楽するこ

ととは裏表であるという。

浮世で叶わぬ願いを男女が寝床でたがいに

語り、恍惚の世界にしたる朧月夜と光源氏

の「源氏物語」

 

 

 

2023.2.4

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