紫式部の「源氏物語」。光源氏は

さまざまな女性が契りを結んでゆく。

相手の女性(ひと)は、四季が移り

変わるように歳をかさねてゆき、心

や容姿に磨きがかかり、美麗である。


ー光源氏と源典侍ー

光源氏19歳のとき、恋多き美貌の

貴公子は年上の源典侍(げんのな

いしのすけ)と出逢う。

 

<源典侍(げんのないしのすけ)>

宮中に源典侍という女性がいた。

かの女はもと皇族出身で臣下にくだり、

今は女官の監督をしたり、天皇の身の

まわりの仕事をする内侍所の次官であ

る。

 

源典侍(げんのないしのすけ)は、才

女で、琵琶も上手に弾き、一目おかれ

ていたが、ただ色好みとの評判で、次

から次へと浮名をながしていた。

 

<光源氏と源内侍>

かつて源氏は好奇心から源典侍に言い

寄った。すると、典侍は逃げるどころ

か、誘いに乗り、このときにふたりは

こっそりと契りを結んだ。

 

 

<源典侍と光源氏>

はじめて結ばれたとき以後源氏は典侍

から何通も手紙がきたが、38、9歳は

離れたかの女がおっくうになり返事は

していなかった。

ある朝、帝が典侍に髪をといてもらい、

別の部屋に入られたところに源氏が

偶然に通りかかる。

 

源氏は、いたずら心から、典侍の裳の

裾をひく。すると典侍は、扇をかざし、

流し目で源氏を見、源氏は自分の扇と

とりかえる。典侍の扇は、顔が映るほ

ど真っ赤で、金で森の絵が描かれ、上

手な字で、「森の下草老いぬれば」と

ある。有名な古歌からで、源氏は「大

荒木の森といっても、次から次へと

駒が来るんじゃないですか」に、典侍

は、草は盛りを過ぎていますけど、あ

なたのような若駒だったら、特別です

わ」と歌のやり取りをする。

 

そこへ桐壺帝が出てこられ、気づかない

ふたりは、まだやりとりを続けている。

典侍が「ちっとも返事をくださらないの

ね、こんな歳で捨てられるなんて、いい

恥さらしですわ」とすねたところ、帝は

「これは、これは。こういう仲とは思わ

なかった」と大笑いする。

 

この場を源氏は逃げてゆくが、典侍は、

「憎からぬ人のためには、濡れ衣も着

たがる」という諺の通り、ひとつも弁

解しなかった。

それで、典侍と源氏の浮名が立ってし

まった。帝は、お腹をかかえて笑いな

がら、「(息子・光源氏は)物堅くて

困ると思っていたけれど、けっこう遊

んでいるんだね」とお笑いになり言う。

 

 

 

<頭中将>

この源氏と典侍の浮名を聞いて、して

やられたと思ったのが頭中将(とうの

ちゅうじょう)。光源氏12歳のとき葵

上(16歳)と結婚するが、その葵上(

妻)の兄が頭中将で、源氏にとって親友

であり義兄になる。

 

 

<源氏と源典侍>

ある夏の日の夕立のあと。

源氏が温明殿の傍をあるいていると、

中から琵琶の音が響き、歌う音色が

美しい。典侍の戸を開けて入ってき

てくださいの意味の歌だった。

そこで、源氏は歌を返す。

袖が濡れたので、雨宿りをしている

だけです。

そこで典侍は、外にいる人の袖より、

中にいるわたくしの袖の方が濡れる

なはなぜかしら、と返され、源氏は

御殿にはいってゆく

 

<頭中将>

源氏と源典侍が寝床にはいってゆく。

これを源氏のあとをつけ、見届けた

頭中将。彼はふたりの現場を踏み込み、

恥をかかせようとした。

 

 

<頭中将と源氏>

ばったと音がし、源氏はあわてふためく。

典侍に未練のあると聞く、修理の太夫と

鉢合わせしたらまずいと思う。

急いで直衣(のうし)を抱えて屏風の後

ろに隠れた。暗いのでよくわからないな

か、頭中将はおかしいのをこらえ、屏風

を片付ける。いかにも怒ったふりをし、

太刀を引き抜き、源氏はその腕をつかま

え、頭中将とわかり、悪い冗談はよせと

と言い、そばではやめてと、腰を抜かし、

中将に手を合わせ拝む。

 

中将はお浮かれ遊びの証拠に、下着の姿

のまま出ていけと言うと、源氏は、それ

なら君も脱ぎたまえと言い、親友同士の

ふたりは、喧嘩し源氏は袖をちぎられ、

ほうほうの体で御前を出てゆく。

 

<源典侍と光源氏>

あくる朝の早く、源氏のもとへ手紙がつ

けられて、帯と着物の切れ端が届いた。

源典侍(げんのないしのすけ)の手紙に

は綺麗な字で、昨夜は大波の荒れ狂った

ような心地でした。波がこんな物を残し

ていきました。と、ある。

 

よく見ると、袖は中将のもの、それに帯

も頭の中将のものなので、源氏はそれら

を中将のもとへ届けてやりました。

あくる日は源氏も頭中将も宮中で公務

に忙しく過ごしている。ふたりとも、

ときどき顔を見合わせては、笑いを忍

びかねてこっそり笑い合っていた。

 

 

 

2023.1.28

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