千年昔の「源氏物語」。

時代は違うが、季節は移ろう季節に、

ふと、歳をかさねた自分をふりかえる

ことがある。

 

源氏は宮中で、身に迫る不穏な状況

を感じ、配流になる前に京を去る決

意する。このときに明石君と出逢う。

源氏と明石君との恋の夢物語。

 

3月下旬。行く先は須磨辺りと定め、

側近の家臣7.8人と出立する。

このとき源氏は紫上に財産を譲り、

紫上は泣いて別れを悲しんだが、そ

の想いは源氏も同じだった。

 

夢枕「龍神(父帝と明石入道)」

秋の須磨の寂しさは、ひとしお身にし

みる。

源氏の噂を聞いた前播磨守明石入道は、

娘を源氏に差しだしたいと考えていた。

 

翌年の春。頭中将が須磨まで源氏を訪

ねて来、ふたりは涙して再会を喜んだ。

 

三月の巳の日。祓いを行った後、落雷

があり、源氏の住まいの一部が焼けた。

その次の夜から妖しいものが歩き回り、

「龍王がはやくくるように」と、催促

し、さては、美しいものを好むという

龍神の使いかと、源氏は嫌な予感がす

る。依然。風雨はやまず、夢の中で亡

き父帝が現れ「早くここを去れ」と命

じる。

 

翌朝、渚に小さな船が着いた。これま

た夢を見、夢のお告げで迎えに来たと

いう明石入道。源氏は夢のこともあり

明石入道の船に乗り込み、明石の浦に

到着する。

 

ー夢枕(源氏と明石)ー

明石はにぎやかな港町。

源氏は浜辺にある入道の邸に迎えられ

る。明石入道はもともと高い身分で、

貿易によって富を築き、教養も人品も

優れていた。

 

明石入道のひとり娘・明石君は丘の上

の邸で暮らす。

明石入道は、光源氏を娘・明石君に会

わせようとするが、源氏は紫上の手前

逢おうとしなかった。ところが秋ごろ

になり明石君のもとに通うようになる。

 

 

 

京の都にて。帝の桐壺帝が眼病を患い、

太政大臣(右大臣)が亡くなり、弘徽

殿大后も病の床についていた。

桐壺帝は、夢を見ていて、亡き父帝が

現れ、源氏を京へ召還するように叱責

したという。桐壺帝は、藤壺の諫言を

退けて源氏を京に帰すよう宣旨をくだ

した。

 

喜ぶ源氏。このとき明石君はすでに懐

妊していた。源氏は「必ず京に呼び寄

せる」と明石君に約束し、別れを惜し

むのだった。

 

ー光源氏「京の都」ー

京に帰った年の10月源氏28歳は、父・

桐壺帝の菩提を弔うため、法華八講を催

す。

 

翌年2月は東宮(皇太子)の元服に続い

て譲位が行われた。このとき源氏は内大

臣に、左大臣は太政大臣に返り咲き、頭

中将も権中納言に昇進する。

こうして再び光源氏の世に巡りくる。

 

<明石と源氏>

明石では、明石君は女児(姫)を出産。

源氏は祝いを遣わし、上京を促したが、

明石君は京の暮らしが本当に幸せかど

うか、悩んでいた。

 

明石君は、願ほどきに出かけた住吉詣

で、偶然、栄華をきわめた源氏の行列

と出合うことになる。

「その秋、住吉に詣でたまふ。願ども

果たしたまふべければ、いかめし御歩

きにて、世の中ゆすりて、上達部、殿

上人、我も我もと仕うまつりたまふ」

と、源氏に遭遇した明石君は、身分の

違いを思い知り、参詣せずに住吉の浜

から去った。

 

<明石君「別れ」>

二条院の東院が完成。源氏は嵯峨と二条

を行き交う。

東院の西の対には花散里を迎え、東の対

には明石君を迎え、明石入道は大堰川の

山荘へと思う。

明石君に母娘の上洛をすすめる。このと

き源氏と明石のあいだにできた明石の姫

は3歳だった。

 

雪の嵐山、大堰川のほとりで。二条院へ

移ろうとしない明石君に源氏は「それな

ら姫だけでも」と言う。

 

泣き崩れる明石君に母の尼君は、「姫の将

来を想うなら、二条院の姫君(葵上)にお

譲りするのが姫のため」と説得する。

別れのつらさに泣く母、無邪気に車に乗る

姫、明石君の嘆きが胸に迫る、母娘の別れ。

 

<源氏と明石君>

源氏は明石を訪ねる。「お逢いするたび、

あなたは美しい」と言い、明石の琵琶の音

を久しぶりに聞く。

 

 

 

その年、世の中騒々しく、何かの前触れ

がしきりに起こる。天界にも月や日や星

の不思議な雲が流れる。

天変地異、疫病が起こり、なにかの祟り

と人々は恐れる。博士、儒家、神祇官、

陰陽師など勧文を奉る。

 

何か、千年の昔のことと思えない。

現在の世の中に通じる。と、錯覚する

ような京の都の帝の時代の「源氏物語」

である。

 

源氏物語(明石君)ゆかりの地

ー大阪・住吉大社ー

 

 

「源氏物語」第十四帖「澪標」で、明石

から帰京した光源氏(28歳)は願い果た

したために住吉大社を参詣る。源氏に遭

遇した明石君、身分の違いを思い知り、

参詣せずに浜を去ったという「みをつく

し」の場面。

かっての住吉大社は、眼前に青い海と白

い砂浜が広がり、社前まで入江が伸びた

風光明媚な場所だった。古来、航海の守

神として崇敬され、遣唐使は住吉の地か

ら船出し、平安貴族は、和歌の神として

も信仰していた。

 

 

住吉大社(大阪市住吉区住吉2丁目9-89)

 

 

2023.1.26

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