世の中、不思議なことがある。

かつて自分がしたことを、今度は

他人が自分の妻と契りをむすぶ。

 

これを因果応報というのか、「源氏

物語」では、女三宮(おんなさんの

みや)を通して、物語にされている。

 

(女三宮)

秋、桐壺帝の第一皇子の朱雀帝は、源

氏の異母兄で、病がちのため出家を考

えていたが、心残りは女三宮であった。

 

女三宮は藤壺の妹の女御の忘れ形見で、

女御が早世したのを不憫に思い、婿候

補が多かったが、そのまま、女三宮の

裳着の儀が豪華に行われ、その三日後

に、朱雀帝は剃髪し出家する。

 

ー源氏と女三宮ー

朱雀院の懇望もあり、源氏は、女三宮

の後見を引き受け北の方として迎える

ことになる。このとき源氏は40歳で

女三宮は14歳。

 

源氏は、女三宮を妻に娶るとのは4度

めになる。これまで、源氏は12歳のと

き葵上(16歳)と結婚、葵上は男児(

夕霧)を出産後に亡くなる。

二度目が、源氏22歳で紫上(14歳)と

結婚、三度目源氏(27歳)は明石君(1

8歳)と結婚し女児(明石の姫)を誕生。

このたび源氏は、藤壺の面影が残る女三

宮にに心動かされ、藤壺の妹の子・女三

宮を北の方として迎える。

 

(源氏と紫上・女三宮)

源氏の唯一の正妻であった紫上の立場は

崩れてしまう。紫上の嘆きはたとえよう

もなく深く傷ついてしまう。

 

二月に六条院に輿入れした女三宮、源氏

にはかの女は幼く、素直なだけの女三宮

(14歳)には物足りなく憶え、かえって

紫上(32歳)の良さを知ることになる。

 

(女三宮と柏木)

源氏四十賀の翌年には今上帝(きんじょ

うてい)の后になった明石中宮(明石

の姫君)は皇子を出産。

そんななか、源氏のライバル・頭中将の

嫡男で、夕霧の親友でもある柏木は、落

葉宮(朱雀院と一条御息所の子)という

妻がいたが、源氏が女三宮をあまり愛し

ていないとわかり、柏木はことのほか女

三宮を不憫に想い、何とか女三宮に逢い

たいと煩悶する。

 

六条院での蹴鞠あそびに夕霧と柏木が参

加する。

夕霧は頭中将の妹・葵上と源氏との間に

できた子で、夕霧には柏木の妹・雲居雁

を妻にしている。

 

ある日、宮廷で二人話していると、唐猫

が突然御簾内から走り出て来た猫は紐で

結ばれていたため、まくれ上がった御簾

の中の三宮をみてしまう。

のち女三宮の兄君の東宮から、琴を教え

た御礼にと、女三宮の唐猫を賜り、柏木

は異常なまでにかわいがっていた。

 

(冷泉帝ー源氏と藤壺ー

4年後冷泉帝が譲位し、女三宮の兄が今

上帝に即位する。

噺は冷泉帝について出生の秘密に遡る。

冷泉帝は、表向きは、桐壺帝の子・皇子

だったが、ホントのところは、源氏と桐

壺帝の后・藤壺との密通の間でできた子

だった。

 

ー女三宮と柏木ー

冷泉帝が譲位し、明石中宮の第一皇子が

東宮に立ち、太政大臣(頭中将)は隠居、

髭黒大将は右大臣となり政務を司る。

 

翌年正月20日に六条院で女楽が催され

た。紫上、明石君、里下がり中の明石女

御、女三宮による豪華な合奏だった。

それから間もなく紫上は胸の痛みを訴え、

病の床につく。

源氏は紫上を二条院に移すが、容態はよ

くなく、源氏は紫上を看病するために二

条院にいったきりになる。

この間、柏木はついに女三宮の寝所に忍

びこみ、契りを結ぶ。

 

 

ー源氏と女三宮ー

紫上には六条御息所の死霊が憑りつい

ていた。紫上はいったん息絶えかける

が、祈祷の甲斐あってどうにか回復する。

 

そして女三宮が妊娠。不審に思った源氏。

源氏は六条院の女三宮を訪れる。このと

き、柏木からの文を見つけすべてを知る。

すべてを知った源氏は宿命の恐ろしさに

うちのめされる。

あらためて源氏は、義母・藤壺との密通

を想い、父・桐壺院の心中を想い、女三

宮の不義を見て見ぬふりをするほかない、

と心に決める。

 

 

ー女三宮と柏木ー

女三宮の不調も六条御息所の死霊の仕

業だった。紫上は源氏の愛情が深く、

命を奪えなかったため、女三宮に憑り

ついて出家させる。柏木との密通の隙

を与えたとされる。

 

恋文を見つけられた柏木と宮は、犯し

た罪の大きさにおののいていた。

柏木が女三宮に歌をおくる。

今はとて 燃えむ煙も むすぼほれ

  たえぬ思ひの なほや残らむ

 

いまが最期、燃える荼毘の煙も、くす

ぶり、絶えぬあなたの想いがなおも残る。

と、これに女三宮が返歌を詠む

立ち添ひて 消えやしなまし 憂き事を

 思ひ乱るる 煙くらべに

 

わたしも消えてしまいたい、辛い事を

嘆く競いに 遅れをとれましょうかと。

 

 

 

女三宮の出家の話は柏木の耳にも入る。

柏木は、毎日のように訪れる夕霧(頭

中将の娘婿。源氏と葵上の子)に北の

方の落葉宮のことを頼み、28歳という

若さで亡くなる。

 

ー薫(柏木と女三宮)ー

源氏は、柏木の一周忌に手厚く供養。

出家した女三宮と亡き柏木のあいだの

密通でできた若君の薫は、愛らしく育

つてゆく。

 

「源氏物語(女三宮)」ゆかりの地

ー平安京「大極殿」ー

 

 

「源氏物語」は都の平安京を舞台にした

帝の継承にまつわる物語。平安宮のなか

でも、大極殿は、もっとも重要な建物で、

天皇の即位式のほか、正月に行われる朝

賀、外国使節の謁見など、国の重要な行

事が行われていた。

長岡京から桓武天皇が移した都が平安京。

平安京の中央を通り、北端から南端の

城門に通じる道が、朱雀大路になる。

この朱雀大路は現在の千本通に辺りで、

千本通と丸太通りの交差点に平安宮の

大極殿(だいごくでん)跡がある。

 

 

 

2023.1.26

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