「源氏物語」の光源氏は、若く、魅
力的な貴公子で、いろいろな女性と
出合い、交際している。
生涯、結婚こそしなかったが、恋し
合った女性は、十数人いる。ところ
でそのなかでも異色の新しいタイプ
の女性といえる朧月夜。
<源氏と弘徽殿(朧月夜)>
春、源氏は20歳のとき。
花の宴が弘徽殿であったとき、右大
臣に招かれてゆく。女房たちは、源
氏の美しい姿に若きも老いも惹きつ
けられる。
夜が更けて、源氏がほろ酔い気分で、
宮中の廊下を歩いていると、女性が
「朧月夜に似るものぞなき…」と歌
う女性が歩いて来、その女性をお局
の小さな部屋に連れ込む。
ふたりは若く、欲するままに、快楽
の夢心地のなか、契りをむすびあい、
扇を取り換え、あわただしく別れた。
宮中の弘徽殿の朧月夜と光源氏
ー源氏と恋人「朧月夜」ー
あの夜の日の姫君は朧月夜だった。
朧月夜は右大臣の六の姫君で、源氏は
かの女の生涯にわたり、契りを結んで
ゆくことになる。このことで、源氏に
思わぬことが起こってゆくことになる。
(弘徽殿の朧月夜)
時代はかわり、ひとは思わぬ立場に
なっていることがある。
それは、朧月夜の姫君は朱雀帝と結
婚して入内し、帝の寵愛を受けるよ
うになったことである。気弱な朱雀
帝は、母君の弘徽殿の大后と祖父君
の右大臣の言う通りの政治をしてい
た。朧月夜の君は尚侍の役を受け、
母君のあとを受けて、弘徽殿に住ん
でいた。
<源氏と朧月夜(弘徽殿)>
源氏はいまだに朧月夜の君と手紙を
交わすだけでなく、忍んでゆくこと
もあった。朧月夜は大胆であった。
源氏は、このことで陥れられること
がおこる。
<朧月夜と源氏ー恋ー>
新しい年にかわる。今では右大臣と
弘徽殿の大后が大きな勢いをもつ。
源氏のところには年賀の客もなく、
左大臣も面白くなく、辞表を出し、
世の中は右大臣一派の思うまま。
源氏方には何ひとつ昇進の沙汰がな
い。
源氏がただひとつ、情熱的になれる
のは恋。それも困難な状況の恋ほど、
源氏の心をとらえる。
<密会(二条邸の朧月夜と源氏)>
源氏の異母兄の朱雀帝の后の朧月夜。
朧月夜はマラリアにかかり宮中から
里の二条邸、右大臣の邸に移り療養、
早速、源氏に知らせて来る。
邸は広く、手引きするものもあり、
夜は何よりも暗く、何度も朧月夜の
君のところに忍んでゆく。
<雷ー朧月夜と源氏ー>
ある日のこと。雷が鳴りだし、侍た
ちが邸の周りを警護し、源氏は出る
に出られなくなる。あくる日も雨が
降り、その夕方も雷鳴がとどろく。
雷鳴で、父君の右大臣が突然、朧月
夜の部屋にやってくる。
朧月夜はあわてて、御帳台からまろ
ぶように出てくる。その顔は真っ赤
である。父君は心配し、加持祈祷を
してもあわねばと思い、ふと、足元
を見ると、男物の帯が出ている。
まわりには、男手の散らし書きが落
ちている。右大臣は几帳を覗き込む
と、男が寝ており、そのとき、源氏
はゆったりとみやびやかに顔を隠す。
右大臣、憤懣に絶えかね足音も荒ら
かに室を出た。
<朧月夜と源氏>
右大臣は弘徽殿の大后のところへゆ
き、弘徽殿の大后は怒りで真っ青に
なり、怒り狂い言う。
うちの子(朱雀帝)を誰も敬ず、源
氏の君ばかり褒める。
葵上(源氏の妻)は死んだけれど、
わたしたちのひとつ屋根の下の可愛
がっている朧月夜を忍んでかすめと
るとはと。右大臣は帝には黙ってお
いてくださいよととりなすが、弘徽
殿の大后の怒りは積もるばかり。
ところで波乱万丈の源氏は、このとき
25歳。密会を重ねる帝の女御朧月夜は、
いわゆる新しい時代のさきがけのよう
な女性として、現在の人々、とりわけ
女性らに評価されている。
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