雪が舞い散り、京都の東山ではすで

に雪が積もる。この三寒四温のときが

過ぎると、やがて春が訪れる。

 

紫式部の「源氏物語」は、貴公子の

光源氏と身分の高いお方とが恋し、

契りが結ばれてゆく。

 

ー源氏と朧月夜ー

季節の移ろいゆき、歌とともに語ら

れる光源氏と朧月夜の恋契結物語。

明けて春。源氏は20歳になる。

 

春の入日のなか、花の宴。

源氏も親友の頭中将も舞う。

人々は散り、夜はふけ、酔った源氏

は、弘徽殿の廊下にて。

 

 

<源氏と朧月夜「初契」>

藤壺の御殿の戸口は閉まり、弘徽殿

の戸口がひとつだけ開いており、源

氏は、不用心と思いながら、中へ入

っていく。

すると廊下の向こうから、朧月夜に

詩心を誘われたのか、美しい声で「

朧月夜に似るものぞなき…」と歌い

ながら廊下をあるいてくる女性。

源氏は、その女性をお局の小さな部

屋に連れ込む。

かの女はびっくりし、大声をだすわ

よと押しかえすが、「ぼくは何をし

ても許される身分だから」と抱きか

かえ、自然と心の欲するままに、ふ

たりは契りを結ぶ。

 

夜が早く明ける。弘徽殿の女御たち

が戻ってくる音がする。源氏は、あ

なたの名前を教えて、また会いたい

と言うと、「わたしが死んでも、あ

なたの心がお墓をたずねるほどある

なら」と応える。

源氏はせっかくだから扇を取り替え

ようといい交換し、あわただしく別

れた。

 

ー源氏と朧月夜「恋人」ー

桜が過ぎて藤の花や八重桜の盛りの

頃。弘徽殿の女御のお産みになっ姫

君の裳着の式をしょうと、右大臣邸

で大きな花の宴が催される。

このとき右大臣は源氏の君も招き、

源氏は着替えて弘徽殿に出かける。

 

庭には遅い桜がふたもと咲いている。

藤の花が真っ盛り、灯ともし頃の宴

の席、男客は、真っ黒い衣装。そこへ

案内され、白と赤の桜の唐の御直衣で、

赤紫のえびの下がさね(下襲)を引き、

姿を見せる。その美しい姿に若きも老

いたる女御も惹きつけられる。

音楽が奏でられ、酒が出て夜が更ける。

 

花の宴の夜が更ける。源氏は酒の酔い

に身をまかせ、あの姫君がたのいる御

殿の方へ向かう。

その御殿女人たちは、宴のざわめきが

聞こえるので、出て来てこれを眺めて

おり、源氏は、苦しくなったのでと言

、御簾(みす)の中へ入る。

 

(朧月夜と源氏「扇」)

花の宴の中、弘徽殿の御簾の中に入った

源氏は、近くにいた女性に訊いてみる。

扇に何か思い出はおありですかと。これ

に「え、扇って何のこと?」と。あの夜、

取り替えた扇は、桜色に池の面に映る月、

という絵柄の美しい扇。桜の扇に想いで

はと聞いても、みんななんのことかわか

らず黙ったまま、向こうの方から「え、

扇ですって」という声がした。

その御殿の庭には藤の花が咲いていた。

 

 

 

あの夜の日の姫君は朧月夜だった。

朧月夜は右大臣の六の姫君で、源氏は

かの女の生涯にわたり、契りを結んで

ゆくことになり、このことが源氏にど

んな意味をもつことになるか。今は知

る由もない源氏は、かの女の身もとが

わかったことで嬉しく思う。

源氏20歳、朧月夜との恋契結の「花宴」。

 

 

 

 

2023.1.28

藤壺(源氏艶女物語1)ー男と女の物語(334)

2023.1.31

紫上(源氏艶女物語2)ー男と女の物語(336)

2023.2.1

葵上(源氏艶女物語3)ー男と女の物語(337)

2023.2.2

明石君(源氏艶女物語4)ー男と女の物語(338)

2023.2.3

女三宮(源氏艶女物語5)ー男と女の物語(339)

2023.2.4

空蝉(源氏恋契結1)ー男と女の物語(340)

2023.2.7

軒端萩「源氏恋契結2(軒端萩と空蝉)」ー男と女の物語(343)

2023.2.8

夕顔「源氏恋契結3」ー男と女の物語(344)

2023.2.10

六条御息所(源氏恋契結4)ー男と女の物語(346)

2023.2.11

胡蝶蘭(光源氏「胡蝶」)―男と女の物語(347)

2023.2.13

末摘花(源氏恋契結5)ー男と女の物語(350)

2023.2.14

源典侍(恋契結物語6)ー男と女の物語(351)