もちろん、製薬会社も営利目的で運営されていることは知っています。でも言葉巧みに、子供を気遣う親をニセ科学で巧妙に騙して、慢性病を作る生活習慣を子供に植え付けるキャンペーンは、絶対に許されるべきではありません(写真はポカリスエット製品情報のページからの引用です)。
このキャンペーンでは、健康習慣と称して、寝る前にポカリスエットで乾杯することを推奨しています。理由は、幼い子供は寝汗をびっしょりかくからと書かれています。コップ一杯を200mlとすると、寝る前に食塩0.24gと、砂糖+果糖ぶどう糖液糖(いわゆるHigh Fructose Corn Syrup;HFCS)が12.4gを摂取することになります。
なぜこれが悪魔の商法かと言うと、「適度に真実を入れて全く根拠のない話を信じさせて物を売る」と「この習慣が将来の子供の健康を害する」からです。
これを#おやすみポカリに当てはめると、「子供が寝汗をかくと言う真実に、子供が寝汗で食塩を失うと言う嘘の話を信じさせてポカリスエットを売る」、「寝る直前に食塩と血圧と血糖を上げる「飲む砂糖と果糖」を習慣化することで、脳がより多くの塩と糖分を求める依存症を作るため、年齢とともにさらに多くの塩分と糖分を摂取する傾向になることから高血圧、高血糖などのメタボリックシンドロームを若くして発症する危険が高まると推測される」からです。
さらに、人が体重1kgあたり1g以上の「飲む砂糖」を摂取すると塩を摂取しなくても血圧が上がることは科学的に証明されています。ポカリスエットはさらに食塩も入っているので、例えば、体重10kgの子供が毎晩200mlのポカリスエットを飲むと、毎晩就寝時には、血圧が上昇していると考えます。その状態では交感神経の興奮が高まるので、眠りが浅くなり、子供の成長に重要な深い眠りが減少する可能性があります。体重10kgあたり0.5gの塩分摂取で睡眠に質が下がることは、大人では証明されています。
寝汗はしょっぱくない
子供が大人より寝汗をかくことは本当です。でもその汗はしょっぱくないのです。人の体とはよくできたもので、必要なものを節約するシステムがあります。ポカリスエットの成分、食塩(塩化ナトリウム)もその一つなので、寝汗にはほとんど含まれないのです。
主に体温調節のために汗を出す汗腺、エクリン腺は、ナトリウムイオンと塩素イオンを再吸収する機能があります。寝汗のようにじわじわ出る汗は、作られる速度がとても遅いので、再吸収システムがしっかり働いて塩を節約する、つまり塩を失わないので補給の必要がないのです。
激しい運動時の汗はしょっぱい
一方、炎天下でのテニスやサッカーで、短時間に大量にかく汗はしょっぱくなります。と言うのは、汗が作られる速度が速すぎて、再吸収が間に合わないため、塩が汗に混じってしまうからです。ですから、大人の場合、1時間に1L以上の汗をかく状態の時には、スポーツドリンクを勧めています。また、激しい下痢、発熱などで食事が取れない場合に発症する脱水症にも、ポカリスエットのようなスポーツドリンクは有効です。
脱水は塩分取りすぎでも起こる
カレーやハヤシライスなど味の濃い夕食を食べると血中のナトリウム値が上昇して脱水が起こります。食後にのどが渇くようならもうすでに脱水が起きています。そこにさらにポカリスエットを飲めばどうなるか?想像してみてください。
子供の脱水の基準
脱水がきになる方は、子供の朝一番のおしっこの色と量を観察してみてください。黄色は濃くても普通、茶色は要注意です。毎日の水の飲み方を工夫しましょう。科学的な脱水の基準は以下の通りです。
軽い脱水:体重が5%落ち、尿量が少なくなっている。
中程度の脱水:体重が6−9%落ち、尿がほとんど出ない。
重度の脱水:体重が10%以上落ち、尿が全く出ない。
わたしの知る限り、普通の人が寝汗で低ナトリウム血症を起こした例はありません。「子供の熱中症を防ぐには?」でも書きましたが、寝る前のポカリより、朝の水の方がよほど効果的に補水できます。大塚製薬が、このキャンペーンをやめてくれることを心から願っています。