幼い頃の発達障がいには、大きく分けて2つあります。1つ目は、脳の発達に関わる生まれ持った(先天性の)機能障害によって起こる注意欠如多動性障害(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)などで、2つ目は生まれてからの生育環境の影響でバランスが崩れた脳によって起こる発達障害のような特性です。

 

どちらの場合も、落ち着きのなさや乱暴、情緒の不安定、他の子どもと遊べないこと、学校や授業で発言できない(場面緘黙)など、早ければ乳幼児期から徴候が見られる、人としての成長や発達に関わる問題です。

 

これに対して、10代を過ぎる頃から増加するのは、パニック症などの不安症やうつ病、双極性障害、統合失調症といった大人に見られるようなメンタル不調です。その中には発達障がいの特性を持つ子どもが多く含まれています。

 

この時期には、性ホルモンの分泌が活発となり、脳の中でも情動・感情の発現に関わる部分(扁桃体などの辺縁系と呼ばれる領域)が活発化して、攻撃性が現れやすいのですが、感情をコントロールして行動を統括する大脳の前頭前野は、まだまだ未完成のままなので、メンタル不調が起こりやすくなるのです。

 

大脳の前頭前野が成熟するのは20代後半と考えられています。そのため20代になっても、携帯電話やタブレットの多用、睡眠不足、運動不足、栄養素不足などで脳のバランスが保てないと、幼い頃には目立たなかった発達障害の特性が顕著化することがあります。

 

そうなると、学校や職場でいじめの対象になったり、生きづらさを感じることから、うつ病や不安症などの二次障害を併発することもあります。

 

例えば、コミュニケーションが苦手なASDの特性があると、異質と見られやすく、孤立を深めることから引きこもりや二次障害のリスクが高まります。

 

大人の発達障がいは、単純なミスを繰り返す、よく遅刻する、人間関係がうまくいかないなどの生きづらさの問題から発覚する傾向にあります。自分の特性に合わない環境で働くことで二次障害が先に現れることもあります。

 

放置していると、健全な社会生活が維持できなくなります。

 

不安、落ち込み、意欲低下、疲労、イライラ、怒り、猜疑心などは、誰でも経験する感情なので、放置しがちですが、しばらく続くようなら「メンタル不調」を疑ってください。もしかするとその根底には、発達障がいが隠れているのかもしれません。