メンタル不調は自己責任ではありません。進化精神医学(別名ダーウィン精神医学)から考えると、うつ病、ADHD、不安障害などの多くの精神疾患は、人類という種を存続させるために重要な特性だったことがわかります。

 

私たち人類の先祖、ヒト属は今から260−240万年前に登場し、ホモ・サピエンスへと進化したのは、今から約30万年前のことで、人間の脳と体はその頃からほとんど進化していません。その理由は、人類誕生から現在までを1年とした「人類カレンダー」に置き換えてみるとよくわかります。

 

人類カレンダーでは、人類誕生が元旦です。そのあとずっと原始時代の生活が続いて、ようやく農耕が始まったのが12月17日です。


ところが、大晦日の夜になってから環境が激変します。

 

日本で電灯が初めて点灯したのが大晦日の夜7時54分、第2時世界大戦の終結が9時42分、水道が普及したのが9時48分、テレビの普及が10時6分、日本初のセブンイレブンが開業したのが10時30分、iPhoneの到来が11時30分です。

つまり、コンビニやスマホのある現代社会は、人類にとってごく最近に始まった不慣れな環境ですから、体と脳に不調が出て当たり前なのです。

 

逆に、現在ではうつ病と呼ばれる症状は、原始時代には生き延びるために必要不可欠な特性だったと考えられます。

 

人類の歴史の大半は、集団で狩猟と採集で生きていたので、食料が乏しい時や雪で閉ざされる時期はじっとして、できるだけ体力を温存することができた人だけが生き残り、子孫を残せたのです。

 

うつ病の特性にある社会的な引きこもりは、集団内の対立を避けるのに役立ったでしょうし、食欲がおちる、朝起きられない、何もしたくない、動作が緩慢になるなどは、食糧不足や危険な状況下でエネルギーを節約する手段であったと考えられます。

 

同様に、ADHD(注意欠陥・多動性障害)も進化的な観点から考えることができます。次回はADHDと不安症を進化の観点から考えましょう。