不安感や緊張感は誰もが感じる当たり前の感情です。狩猟と採集に頼っていた私たちの先祖にとって、この感情は生き延びるために絶対不可欠なものでした。

 

もし人類にこの感情がなければ、猛獣の脅威を感じず殺されてしまったり、危険な激流に入って流されたり、猛吹雪を恐れず外に出て遭難したりして、人類は絶滅してしまったでしょう。

 

不安感は、2つの相反する自律神経系、交感神経と副交感神経のバランスが深く関与しています。

 

交感神経は、闘争・逃走反応(fight or flight response)を生じて、体を非常事態にすぐ対応できる状態にします。この反応があったから、人類は周囲の脅威に対して即座に戦うか、逃げる準備ができたのです。しかし、現代社会では、この反応が「生命の危機に直結しない状況」でも炎上して、慢性的な不安やストレスを引き起こすことがあります。

 

なぜそうなるかというと、以前のブログにも書いた通り人類史上、現代社会は始まったばかりの不慣れな環境なので、それに対応する能力が備わっていないからです。

 

交感神経が活発化した後には、副交感神経という不安感を和らげて闘争反応とは真逆の食欲を高め、睡眠の質をあげる神経系が活性化するようにできていますが、人間関係や長時間労働などの積み重ねから起こる現代社会のストレスには終わりがないので、副交感神経がうまく活性化できません。そこで起こるのが不安症です。

 

パニック症、不安症、うつ病、双極性障害、統合失調症などのメンタル不調は、人類と環境のミスマッチから、本来なら役に立つ特性がデメリットとなって出てしまったと考えることができます。

 

逆に言うと、そのミスマッチを少しずつ埋めていけば改善の可能性があるのです。