進化は無駄を嫌います。ですが、30万年前に人族からホモサピエンスに進化して以来、人類は発達障害やメンタル不調の元のなる遺伝子をたくさん温存してきました。

 

その理由は、人類という種が生き延びて子孫を残すために必要だったからと考えられています。今回はADHD(注意欠陥・多動性障害)についてお話ししましょう。

 

多動性、衝動性、不注意といったADHDの特徴は、狩猟と採集に頼る原始時代には有効であったと考えられます。例えば、多動性や衝動性は、狩猟中や危機的な状況で素早く意思決定を行うのに役立ち、注意が散漫になりやすい傾向は、環境の変化や危険を察知するのに有効だったでしょう。

 

学校や職場では、「問題行動」とみなされるこれらの特性も、スポーツの世界では違ってくるようです。

 

アメリカでは、ADHDであることを明らかにしているトップアスリートが数多くいます。そのうち数人を紹介しましょう。

 

シモーネ・バイルズ

アメリカの女子体操選手であるシモーネ・バイルズは、リオデジャネイロオリンピックの体操競技で4冠を達成、東京オリンピックで2個のメダルを、2024年のパリオリンピックでは団体、個人総合、跳馬で金メダルを獲得した上に、 世界体操競技選手権では2013年から2023年現在までに通算で30個のメダルを獲得し、男女を通じて史上最多のメダル獲得者(うち23個の金メダルも男女を通じての史上最多の獲得者)です。

 

彼女は子どもの頃からADHDと診断され、治療薬を服用しながらこの偉業を達成しました。

 

ノア・ライルズ

2024年のパリオリンピック100m走で金メダリストのノア・ライルズは、ADHDと失読症で高校卒業までは苦労したそうです。でもその後ADHDを、「アスリートなら誰でも望むギフト」と考えるようなったとインタビューで答えています。

 

マイケル・フェルプス

オリンピックメダル獲得数史上1位のマイケル・フェルプスは、ADHDと診断を受けた9歳の頃を、「常に壁を叩きまわっていた」と回想しています。その有り余るエネルギーのはけ口として水泳に打ち込んだそうです。

 

彼ら以外にも、スプリンターとして多くのメダルを得たジャスティン・ガトリン、プロバスケットボール選手であり金メダリストでもあるブリトニー・グライナーなど、数多くのアスリートが、子どもの頃から、または大人になってから、ADHDと診断されています(参考サイト)。