外国人は日本のどこに興味を持つか?

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

 この分野で活躍するユーチューバーは非常に多い。視聴回数もそれぞれかなり多く、外国人のユーチューバーとして確実に稼げるからだろう。ここではまず外国人観光客が絶賛する日本の良さに注目させたい。日本の様々な良さを挙げたうえで、その裏側に潜む困った点、欠点にも注目させ、その欠点が何に由来するのかを考えさせたい。物事を多面的に捉えるためのレッスンとしてこの分野は極めて有効だと考える。

 したがって一面的な「日本礼賛」に陥らないよう、日本文化の裏側に注目する動画を有効に活用していきたい。

参考動画

🇯🇵】日本の最大の天然資源は《文化》である:日本文化と宇宙社会の親和性を渡邉

    賢一さんと会議。縄文から続く文化の油田、アニミズムの潜在力、占領政策で失わ

    れた歴史、日本人の物語を創造する力など。

    佐藤航陽の宇宙会議 2025/05/04 42:16

 自然との共生的関係、多様性を重視する日本の伝統文化、伝統的な美意識には分断と競争に明け暮れる現代の世界に通用する独自性、有用性が確かにあると思う。それを輸出することで日本経済を支えていくとともに、観光大国としてさらに発展すれば、それはもちろん日本の安全保障にも資することにつながる(=ソフトコンテンツ防衛戦略)だろう。

    したがって埋もれかけている日本の伝統文化をもう一度、掘り返してしっかりと加工し、海外に輸出できるよう、アニメのように上手に商品化していく努力が必要であることは理解できる。「クールジャパン」というかつての掛け声も、そうした国家戦略から出てきた言葉らしい。

    こうした戦略には首肯できる部分も多いが、どうしても懸念されるのが近代日本における天皇制にかかわる問題である。渡邉氏の見解を聞いていると、それまではアニミズム的で多種多様な土俗性を帯びていた日本の伝統的な神道が、残念ながら近代以降、国家神道として中央集権化され、豊かな多様性を失い始めてしまった側面、あるいは天皇をあたかも唯一絶対神のように祀り上げてしまった側面など、日本の伝統文化に決定的な変質、劣化をもたらした負の側面を、どうやら肯定的に捉えているように感じてしまうのだが、いかがか。

 大日本帝国憲法下での天皇制ファシムズ、およびそれを支えた日本の国家神道、いずれもあっさりと無反省に肯定されるべきものではあるまい。日本の文化コンテンツに磨きをかけるためにもこの点は政府としてしっかりと検討しておくべきではなかったか。

 A級戦犯容疑者として逮捕されながらも、結局は処罰されなかった岸信介氏の血をひく安倍氏の無責任さ、危険性が、仮に「クールジャパン」というスローガンに秘められているとすれば、この提案に私としては素直に従えない。

島に住んでいる英国人達は日本に興味があるのか|移民や移住者が上手くやっていく

   には【英国人の相棒のおしゃべり #4】

   英国の小さな島に住んでいます  2024/05/24  9:12

 日本人女性と結婚した小さな島暮らしのイギリス人による思慮深いトークが深く考えさせられる内容に満ちていて大いに参考となるだろう。外国人観光客による様々な日本人との軋轢、特にクルド人やベトナム人などの移住者が日本で引き起こしている様々な問題を考える上で重要なヒントとなるに違いない。

観光客が初めて食べるトンカツに衝撃が走る

   Momoka Japan  2024/06/30 15:15

 オーストリアから来た男性の、強烈な日本愛がよく伝わってくる動画。この分野は食ネタから入ると興味が湧きやすいだろう。あらかじめ外国人が好みそうな日本食をアンケートでいくつか挙げさせておくとさらに教材として興味深くなるかも。トンカツという一つの食材を使って日本ではどのような料理へと変貌させるか…欧米の人が驚くのは日本人の素材への深い拘りと味変の多彩さなのかもしれない。

鳥居懸垂問題にマーティ・フリードマンが言及!!世界的スターの言葉に海外ニキか

   ら共感の声が殺到!!#海外の反応

   ジャパンと海外ニキの声  2024/10/18 11:16

   かなり大きな反響を呼んだ案件であり、生徒たちからも様々な意見が出てくるだろう。ぜひ、授業で視聴させ、議論させたい。

   忘れてはならない点は日本人であっても若い人を中心にお寺と神社の区別が出来ない人たちが増えてきており、鳥居の役割を知らない人たちが増えてきている、ということ。また外国に行く日本人もまた件の女性の様に外国の風習や宗教、文化に無頓着な者は決して少なくない、ということ。

   いずれにせよ、国を問わずそれが誰であっても異文化への敬意を持ち続け、差別や偏見の原因ともなる無知を減らしていく努力の重要性は強調しておきたい。

【悲報】アメリカ人が持つ日本人への偏見が酷すぎる

 Chase & KenKen  2023/11/25  9:02

 この動画はこの分野や差別の授業で絶対に視聴させたい。日本と深く結びついている同盟国アメリカ側に日本が良く思われていると思い込んでいる日本人はかなり多いだろう。授業でこの動画を見せる前にアメリカ人は日本人について本音ではどう思っているのか、生徒たちにアンケートしておくと面白い展開になりそうだ。

 日本の観光業の隆盛ぶりで現在、「日本万歳」に陥りがちな生徒たちの多さが予想できる。しかし多くのアメリカ人の本音、実態はおそらくこんなものなのだ。でなければアメリカは二度も日本に原爆を落とさないだろうし、いまも図々しく日本の各地に基地を持っていないはずである。

 沖縄などで米兵の暴行事件が後を絶たない背景にアメリカ人の日本人、アジア人を見下す偏見や差別が広範に存在することを決して忘れてはなるまい。

外国人が日本を愛する50の理由【外国人の初めての日本】

   Jason Ray ジェイソン  2024/03/01  16:15

 外国人が日本の何に魅了されているのか、日本の魅力がほぼ網羅されている。

日本人には当たり前だけど外国人に見習って欲しいところはココ❗️Things  Americans SHOULD Learn From Japan!

 スティーブ的視点 Steve's POV  2024/05/24  11:05

 日本通で知られるスティーブ氏の鋭い指摘が興味深い。

【日本の新たなブランドイメージ】欧米都市でリサーチした理由/2015年以降の変

 化/マンガ・ゲームを超えた深い興味/文房具、建築、インテリアが人気/新旧融

 合という価値/7つのキーワード/4つの提供価値

 PIVOT 公式チャンネル  2024/06/17  42:43

 欧米における日本への理解が徐々に深まってきており、マンガ、アニメ、ゲームへのオタク的関心を超えて日本の伝統文化への本質的理解に基づく関心が強まってきている。その結果、日本の包丁や文房具、建築、インテリヤ、古着、自然豊かな田舎での生活体験、熊野古道、四国巡礼への関心が生じてきており、さらに多様な観光の展開が見られるようになったという。

 日本の様に古い伝統文化と新しい文明とが融合している国家は世界的に珍しく、ヨーロッパ型の観光地としてヨーロッパ人の共感を得られやすいのかもしれない。

 海外向けにアピールしたい日本の四つのポイント、多様性に満ちていて奇抜なエンタメコンテンツ(「かわいい」の多様性…)、静寂を重んじる文化(禅、茶道、霊山…)、健康で安全、快適な生活(和食、長寿、トイレ、交通機関、犯罪の少なさ…)、丁寧な物作りとサービス(職人技、おもてなし…)を踏まえて、日本好きの外国人による宣伝効果をもっと活用すべき、との指摘は重要だろう。

 また日本へのネガティブイメージとして「同調圧力が強く、排外的」「男性優位社会」「柔軟性に欠ける」「官僚的で意思決定が遅い」「働き過ぎ」「意外にも環境意識が低い」が挙げられている。こちらも今後の日本のあり方を考える上で大いに参考となるだろう。

参考記事

劇場版「鬼滅の刃」無限城編が新記録!「アニメをサブカルと呼ぶのはもう無理」

    ―台湾メディア Record China 2025.7.25

「倍の値段がする」 ドイツ人が母国と日本の物価の違いを実感 「食べられなくなる

   のが困る」ほど虜になったものとは   Hint-Pot の意見   2024.11.28

 ビッグマック指数でブラジル(30位で636円)よりも日本((44位で480円)の方が低いことに注目したい。「早い、安い、美味い」を目標とすることが日本の飲食業界をブラックにしている可能性は低くないだろう。

「衰退ニッポン」が外国人労働者から見捨てられる日

   現代ビジネス 河合 雅司 2024.11.28

   日本の観光業、飲食業、教育、介護などの世界にはびこる「低価格・高品質・高サービス」を主たる武器とした経営戦略はもっぱらそれらの業界で働く人の低賃金とサービス残業によって支えられてきたとも言えるのではあるまいか。低賃金、長時間労働は国内の消費を抑制し、景気をも抑制してしまうだけではなく、来日外国人による犯罪、迷惑行為などを誘発しかねないだろう。

 物価上昇を上回る賃金の引き上げを即座に行わないと、いよいよ労働力不足は深刻になり、若者は闇バイトの世界へ引きずり込まれていく懸念が高まる。出生率の低下にも歯止めがかかるまい。

外国人が日本に来て『驚くこと』5選 文化の違いで賞賛されている意外なことは? 

   シュフーズ の意見 2024.11.24

   論点を整理する上で役立つだろう。まずは予め生徒に「5選」を予想させると面白い。外国人にとって日本の良いところだけではなく、困った点も予想させたい。

メディアで取り上げられる日本人像は嘘ばかり…実際の日本人との間にあるとんで

   もない乖離 現代ビジネス

   小笠原 泰(明治大学国際日本学部教授) の意見 2024.8.25

   日本のあり方について公平な立場から客観的に論ずることは難しい。どうしても身びいきになるか、自己嫌悪になるか、どちらかの両極端にブレやすい。特に伝統文化について触れる場合、多くは「日本万歳!」の論調にブレやすくなるだろう。したがってこの記事の指摘は公平さを保つうえで極めて重要な視点を提供してくれる。この分野の最初で触れておくと、議論の偏りを修正しやすくなるだろう。

「カスハラ」連発の今の日本は「優しい国」じゃない…海外の人が抱いている「正

   直な感想」現代ビジネス 片岡 亮(フリージャーナリスト) の意見 2024.6.15

「嫌なら帰れ」「一理ある」外国人が熊本市長に「元号わかりにくい」「給食は宗

 教に配慮して」要望で大論争 SmartFLASH の意見 2023.11.4

 ちょっとした討論のネタにはうってつけの話題。意見の出やすいテーマなのでこの記事を導入として使ってみても良いだろう。

「世界で最も魅力的な国ランキング」日本の順位は?52万人の投票で決定、2022

   年は2位 ハフポスト日本版 の意見 2023.10.6

   観光旅行先として海外では日本の人気がきわめて高いことはこれまでも繰り返し報道されてきた。しかし移住先として日本を考える外国人は極めて少数派である。観光と居住との間に広がるこのギャップはどこから生じているのか、なぜ居住先として日本が避けられているのか、その理由を生徒たちに考えさせたい。討論のテーマにしても良いだろう。

 ちなみに移住にまつわる情報交換のためのオンライン・コミュニティ「インターネイションズ」では、外国人が住むのに最高の国ランキングを発表していて、最新版となる2022年版では、181の国と地域に住む海外赴任者や海外採用者など、計1万1970人が調査に協力したという。

 「生活の質(社会インフラなど)」「定住のしやすさ(住人の友好度など)」「海外での仕事(労働文化など)」「家計」「海外生活の必須事項(デジタル環境や言語障壁など)」のカテゴリから、計最大56の項目を7段階で評価している。50 人以上の回答を得られた52の国・地域をランキング対象とした…

 その結果、日本は「生活の質」が比較的高く、世界17位となっている。だが、「定住のしやすさ」で下位に沈み、同カテゴリ内の「文化と歓迎」「住人の友好度」「友人の作りやすさ」のいずれの項目でも40位台ないしはそれ近くとなった。デジタル化の遅れも深刻で、ドイツに次ぐ世界ワースト2位となっている。…

 最終的に日本は移住に適さない国ワースト6位。やはり外国人労働者の雇用改善と社会のデジタル化は今すぐにでも取り組むべき課題だろう。特に外国人にとってアパートなどが借りにくい状況は国が先頭に立って真っ先に改善すべき点である。

 外国人、特に裕福な欧米の高齢者が終の棲家として安心して日本を選ぶように仕向けないと、日本のブラックな観光業、医療福祉業界の体質改善は難しいだろう。

参考動画

世界一幸福な国で「人口減少」が進む理由がヤバすぎた

   原貫太・フリーランス国際協力師  2024/02/12  23:21

 所有権の概念がほとんど無いことによって一見、平等で幸福な社会を営んでいると言われてきたフィジーの人々が直面している問題は思ったよりも根深いようである。 幸福度の低い日本の若者が移住を希望している国の一つが世界一幸福度の高いフィジーであるが、その現実は必ずしもパラダイスとは言えない側面がありそうだ。

 フィジーの若者が凄まじい勢いで海外に移住している理由に血縁によるコネが物言う不平等さがあるという。今でも人々は食べる上ではほとんど不自由していないようだが、教育の機会が富裕層に限られているため、自己実現の欲求が満たされない不満が少なからず、若者たちの間で蔓延しているらしい。特に労働力としてインドから移住してきた人々の不満は強いという。

 国際比較するうえで多角的な観点からの検証が必要不可欠であることが実感できる点でこの動画は役立つだろう。なぜフィジーの若者が世界一幸福なフィジーを捨てて海外移住を目指すのか、動画を見せる前に予想させておくと面白いだろう。

日本のすごいとこトップ5|日本在住30年のスウェーデン人に聞いてみた |Nord-

   Labo 北欧研究室  2024/02/03 20:07

 日本在住30年以上のスウェーデン人の話は説得力豊かで非常に興味深い視点に満ちている。ただ単純に北欧との比較で日本の悪さをあげつらう事は不毛。むしろ欠点の裏側に長所が隠れている、といったようなバランスのとれた理解が得られるだろう。社会科教師必見の動画としてイチオシ。

外国人が驚く日本特有のアニメ表現が意外すぎたw w w

   MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》  2023/07/15  22:35

 これは授業で視聴すればかなり盛り上がる動画で、動画の随所で生徒の発言や共感の声が続出するだろう。漫画やアニメでは日本人と外国人との感じ方の違いが表現の違いとなって表れてくるのだろうが、感じ方や表現の違いが生じてくる背景について考えさせたい。特に性的表現が子供向けのアニメにおいて頻繁にコメディタッチで描かれる日本に対して欧米では意外なほどに厳しい反発や批判が生じてしまいがちとなる背景に何があるのか、ぜひ問うてみたい。

元世界トップユーチューバー(外国人)が日本を評価した結果が驚きだった!  

   MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》  2023/08/21  28:20

 意外にも深い話が出てくる動画。他のチャンネルでも外国人から指摘されていることだが、日本独特の静けさが外国人に瞑想的な気分を生み出して彼らに精神的安らぎを感じさせ、次第に自然の美しさにも目を向けさせる…日本がいつの間にか果たしている環境としての効用に着目している点は見逃せないポイントだろう。

 ただし日本の場合、やたらに無意味なルールが多いのはやはり見直すべき欠点であると思うが、いかがだろう。

外国人が「日本語の素晴らしさ」を母国語と比べて語り尽くしてみた!【日本人も

   気付いていない】MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》

   2022/11/26  22:21

 やや長めの視聴時間になってしまうが、日本語と外国語との違いに気付くことは極めて重要だと思われる。日本語特有の敬語などが示す相手への敬意や漢字混じりの文章の理解しやすさは日本人では気付きにくいポイントだろう。

海外で日本旅行が超人気な理由が意外すぎたw w w

   MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》  2023/07/25  25:49

 同様の趣旨で作成された動画は数多く、枚挙にいとまがない。その中で比較的バランスがとれていて重要ポイントの多くを整理できている点でこの動画の視聴を推薦する。時間に余裕があれば授業で視聴させても良いだろう。

【外国人が驚く】日本にしかないものが意外すぎたwww【海外にはない!トイレは

   革命的?】MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》  2023/04/04  26:47

 だいたいのポイントが押さえられているので手っ取り早く理解するには便利な動画。やや長いが、時間に余裕があれば授業で視聴させても良いだろう。

インバウンド回復で全国に悲鳴! 急悪化するオーバーツーリズム問題 解消策はある

   のか?【日経プラス9】(2023年11月3日)

   テレ東BIZ 2023/11/04  15:32

 あらかじめオーバーツーリズムの問題は検討しておく必要がある。「安くて高品質」を武器に「量」の拡大を第一目標とするだけの争いから一歩、距離をとり、長期滞在型の高級ホテルを誘致することで来日する観光客の量を減らして質を上げ、客単価を高める工夫は一つの方法。もちろん体験を軸とした高付加価値のサービスを目指す方策とともに交通や宿泊面など、大量の観光客を受け入れられる体制を徐々に整備していくといった「量」への対応策も同時に求められているだろう。

修学旅行でアメリカの中学生60人が初来日‼︎「教師&生徒が日本で驚いたことと

 は?」【外国人の反応】in伏見稲荷

 カチョックTV・ティナちゃんねる 2023.8.5 17:20

 伏見稲荷は以前から外国人観光客に一番人気のスポット。丁寧な語り口で日本のどこが観光客の関心を惹くのか、ポイントを把握できる。外国人観光客に人気のスポットを生徒に予想させ、挙げさせていくと面白いだろう。

「世界12カ国の外国人が日本で驚いたこと」🇯🇵各国の視点の違い‼️【国別カルチャ

 ーショック】 2022/05/15 

 カチョックTV・ティナちゃんねる 11:55

外国人が驚く日本のTop8!スウェーデン人に聞いた、日本のここがビックリ|

 北欧在住ゆるトーク Nord-Labo 北欧研究室  2023/04/29 15:17

 重要なポイントが分かりやすく整理されていて便利。ここから深堀していくことも可能。まず動画を視聴する前に生徒たちにビックリする点を出来るだけ数多く予想させておき、黒板に箇条書きしてから視聴させたい。

スウェーデン人が驚く日本の習慣トップ8!パート2!日本では当たり前?でも外

 国から見ると…?北欧在住ゆるトークNord-Labo 北欧研究室  2023/07/01

 パート1では不十分な面もあるのであえて視聴させる必要は無いが、ポイントは押さえておくべきだろう。プリントや板書で紹介しておくと注目すべき観点がかなりそろってくるはず。

初来日の外国人が感激の涙!来日外国人に日本の好きなとこ聞いてみた【外国人の

 反応】 タロサックの海外生活ダイアリーTAROSAC  2023/06/10  25:32

今回の日本旅行で、最も心に残ったもの、感動したものは何ですか?

 パリちゃんねる  2023/05/25  12:47

 生徒たちに答えを予想させてから視聴させたい。日本人の礼儀正しさ、清潔さ、温泉、ガチャ、ラーメン、すし…

【海外から見た日本①】YOUはどうして日本好き?独学で日本語を勉強、日本学科

 で日本の何について学ぶ?交換留学先の長崎大学へ、海外大学生と日本大学生の大

 きな違いとは。日本が大好きなオランダ人の物語。

 ゆうくんの海外人生録チャンネル  2023/05/18  14:25

【海外から見た日本②】日本人に感じる会話の違和感。外国人から見る日本人の特

 徴とは?初めてのカラオケ、歌った選曲はあの名曲!日本のある技術に来日して驚

 きが隠せない。知らなかった日本を知るインタビュー

 ゆうくんの海外人生録チャンネル  2023/05/20  10:45

 アニメなどを通じてヨーロッパでの日本への関心が高まっている様子が伝わってくる。

【急増する外国人観光客】原爆資料館でインタビュー!広島で何を感じた?

   インタビュー THE ワールド 2023/05/02  14:11

なぜ原爆資料館へ?平和記念公園で外国人観光客にインタビュー!in 広島

   インタビュー THE ワールド  2023/07/22  12:11

 上の二つの動画を視聴して気になってくるのは、ここで登場する外国人観光客の日本に対する興味・関心の強さ、日本に関する知識や理解の深さである。

 ならば日本の若者はどの程度まで自国の歴史、文化に対する知識や理解、興味・関心を持ち得ているのか…外国人は皆、学校で広島について学習していると語っているが、日本ではどうだろう。そもそも日本人で一度でも原爆資料館に行ったことのある人は一体どのくらいの数なのだろう。また広島への原爆投下が日本にとって、あるいは人類にとって何を意味しているのか、日本人の多くはどこまで考えているのだろう。ロシアによるウクライナ侵攻が核戦争への危機感を高めている中で多くの外国人がアメリカも含めて広島への関心を強めてきているようだが、果たして日本人はどうなのか…

 動画を視聴させる前に、日本の伝統文化や戦時中の出来事、特に広島、長崎のことをどれだけ知っているのか、詳細な知識を問うアンケートを行っておき、その結果を踏まえた動画分析を軸とする授業を行えばその後の議論が一層深まるに違いない。

 ※参考動画

  ◎アメリカ】広島・長崎「原爆投下」…アメリカの若者“意識”に変化が

   日テレNEWS  2023/05/02  5:03

外国人に人気の日本旅行先はどこなのか?【外国人に聞いてみた】

 国際教養学部 【外国人に街頭インタビュー】  2023/03/10  13:59

 視聴前に生徒たちから外国人から人気の日本での旅行先を列挙させて、人気ランクの順位を予想させたらさらに面白いだろう。できればアンケート形式で人気の理由まで考えさせたい。もしアンケートするならば、「あなたが外国人にお勧めするスポットを5つ挙げてお勧めする理由を簡潔に説明してください。」といったような設問を加えてみたい。

【気になる!】外国人が称賛 意外な「日本土産」

 日テレNEWS  2023/02/28  5:09

「日本土産」という観点は分かりやすく、導入として使いやすい。

「日本から母国に持ち帰りたいモノ」を外国人観光客に聞いたら回答が面白すぎ

 た!|日本の好きなところ【海外の反応】

 国際教養学部 【外国人に街頭インタビュー】 2023/04/25  12:05

 これも視聴前に日本の何を持ち帰りたいか、予想させたら面白いだろう。

今『日本に憧れるフランス人』が激増している本当の理由がすごい!

 ボンソワールTV BonSoirTV  2022/02/09 13:38

 ヨーロッパからの観光客を増やすことが日本の観光政策の大きな課題とされている。フランスで注目されている日本の魅力は何だろうか?動画を視聴する前にあらかじめアンケートをとっておくと良いだろう。フランス人が行く都道府県ランキングの予想もさせてみたい。ここでの課題は沖縄が9位であること。沖縄に行くヨーロッパ人を増やすことは観光収入拡大に必要不可欠。

【フランス人が感動】初めての日本庭園で日本の美に触れてみた🍵🇫🇷🇯🇵

 Bebechan - 日本のフランス人  2021/04/30 15:16

 外国人観光客の中にはこの方のように日本の伝統文化に深い理解と知識を持つ人がいる。彼らが日本の文化のどの部分にどのような感想を抱くのか、非常に興味深い。それにしてもこれほど深く日本文化を愛してくれているフランス人がいることに感謝したくなる。他方で今の日本人が日本の伝統文化をどれほど理解できているのか、少し不安になってくる。

 ※参考動画

   フランス人男性が暴力事件を起こした件について、フランス人が思うこと🇫🇷🇯🇵

   Bebechan - 日本のフランス人  2023/04/19  8:34

「日本は天国!」外国人観光客に日本の印象を聞いたら回答が面白すぎた!【海外

 の反応】国際教養学部 【外国人に街頭インタビュー】

 2023/04/22  11:38

 マレーシアの方の「日本は自分の世界に没頭できる」という感想は日本文化の本質の一端をついているかもしれない。

【衝撃】外国人になんでマスクしないのか聞いてみた結果...

 2022/03/08 タロサックの海外生活ダイアリーTAROSAC 14:43

導入としては近年、話題となっているマスク問題から入るとスムーズに話題を展開していけるかもしれない。日本の規律正しさの裏側にある同調圧力の強さ、窮屈な空気感はマスク問題にも反映しているようである。

衝撃】日本の常識は世界の非常識海外でこれだけはするな!!

 2022/06/07 タロサックの海外生活ダイアリーTAROSAC 16:33

 複数の国のマナーを知ることが出来るのでこれも導入として使えるだろう。

スウェーデン人が嫌がる日本人の行動トップ10!| 北欧在住ゆるトーク

 Nord-Labo 北欧研究室  2023/06/24  12:17

 視聴する前に生徒に予想させてみたい。

 

Q.初めて来日した外国人が驚くこととは?

 10個くらい挙げさせてみても良いだろう。

Q.アメリカについてどんな印象を持っている?

 アンケートを通じてもっと詳しく尋ねてみても良いだろう。

 

【治安悪化】なぜ集団略奪?オフィス街がゴーストタウン化?警察が住民を助けな

   い?カリフォルニア在住者に聞く|アベプラ

   ABEMA Prime #アベプラ【公式】  2023/10/05  15:42

 アメリカ社会の闇の部分も知っておくと日本社会の良さがはっきりする側面はあるだろう。なぜアメリカの治安が悪くなってきたのか、なぜ、経済的、政治的停滞が目立つ日本社会の治安が今も安定していられるのか、問いたい。

[ゾンビ?] 全米最悪な道の日常を観て思う事

 2022.6.25 BrooklynTokyo 10:41

 アメリカの属国扱いに甘んじていいはずがない。

日本の公衆トイレに感激するアメリカ人

 2022/06/15 BrooklynTokyo 4:25

 世界最高レベルの日本の公衆トイレ!

日本のトイレが最高だと確信する3つの理由【海外の反応】

 2022/08/31 北のアリョーナ 8:00

 日本特有のトイレ事情が分かりやすい。ミクロな観点からでも興味深い発見がある。これも3つのポイントを予想させた.い。

日本人が礼儀正しい5つの理由?2022/05/26 BrooklynTokyo 9:09

 非常に重要なポイントが挙げられていて参考になる。行き過ぎた調和社会が陥りやすい全体主義的思考様式への言及もあって是非、視聴させたい動画。

 この分野の最後にまとめとして視聴させても良いだろう。

外国人が日本から離れられない理由【日本人が気付いていない日本の素晴らしさ】

 自分の国にはもう帰れない|コラボ

 2022/04/09 MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》 16:23

日本で“はじめての体験”をする外国人観光客に密着! 日本の当たり前に驚愕!? 意外

 なニッポングルメ 

 TBS NEWS DIG Powered 2023/08/06 8:53

 食文化から日本の特色を捉える事は不可欠の視点。

 参考記事

  日本食が世界で大流行のウラで…「日本人の店」だけイマイチ繁盛しない「納得のワケ」

   現代ビジネス 片岡 亮 の意見 2023.6.1

   日本食が世界に普及していく過程で現地の好み、風習を取り入れ、日本食の伝統に様々なアレン

   ジを加えていく柔軟性を持つ外国人が経営する日本食店が成功する傍ら、伝統にばかりこだわる

   日本人が経営する店は長続きしない…日本の頑固な寿司職人からすれば噴飯物のアボカドにマヨ

   ネーズがかけられたような欧米風の「寿司」が人気を得ている理由に注目すべきだろう。

何故日本で落とし物をするのはほぼ不可能なのか?

 2022.5.7 BrooklynTokyo 9:13

 「落とし物」という視点がユニークで面白い。導入として利用できる。

日本の治安は本当にいいの?ビックリした5つの理由【海外の反応】

 2022/09/08 北のアリョーナ 10:26

 日本の治安の良さを語る5つのポイントを予想させると良いだろう。逆にロシアの治安の悪さも把握できるかもしれない。

アメリカ人の俺は何故こんなに日本🇯🇵が好きなのか?オバタリアンを愛してやまな

 い外国人🇺🇸の面白トーク!笑 Things That Made Me Fall in Love With Japan

 🇯🇵 2022/05/18 スティーブ的視点 Steve's POV 14:09

 日本人が聞いたら泣きそうになるくらい、日本の良さを絶賛している。

◎外国人が日本のセブンイレブンで驚いた!

 2022.6.10 BrooklynTokyo 10:26

 日本のコンビニは外国人に絶賛されている。

驚愕?!来日前の日本のイメージ5選【イギリス人の感想】【日英字幕】

 2021/11/23 Squishy Talk スクイシートーク 8:04

 外国人が抱きがちな日本へのイメージが5つ挙げられている。これも事前にアンケートで生徒たちに予想させておきたい。

日本人が気付かない、日本のすごいところ!【国際交流員ワクワク動画】

 2021/07/21 国際交流員ワクワク動画 12:25

 多くの異なった視点から発言されている点は参考になるだろう。

外国人が日本に住むのが嫌いになる理由?

 BrooklynTokyo 2021/12/11 19:13

 異国文化に適応していく上での四つの段階ズがあるとの指摘は極めて貴重。やや視聴時間が長いが、ぜひ、授業で利用したい。

日本でしてはいけない12の事? 

 2022/02/02 BrooklynTokyo 16:30

 こうした観点も面白い。導入でも利用可能。

海外の人から見た日本の嫌いなところってどんなところ?調査してみた!

 2021/10/03 Kevin's English Room / 掛山ケビ志郎 22:03

【本音】外国人が抱く日本人のよくあるイメージについて実際に聞いてみた結果

 が...2022/02/04 タロサックの海外生活ダイアリーTAROSAC 17:31

 外国では日本人が金持ちであるという印象は完全に過去のものとなっている・・・という認識が今の日本人には必要不可欠。

外国人に聞いた!『日本の良くないと思うところって何?』

 2021/09/09 タロサックの海外生活ダイアリーTAROSAC 19:42

【真実】外国人から見た日本人の悪いところがリアルすぎた

 2022/04/01 タロサックの海外生活ダイアリーTAROSAC 13:16

北欧がトップで日本が低い「世界幸福度ランキング」を深掘り!日本を「不幸」と

 する2項目はこれだった|  Nord Labo -北欧研究室- 2022/06/18 20:21

 非常に重要なポイントが沢山、指摘されている。特に多様性が尊重されている北欧社会と同調圧力の強い日本社会との差異は最大のポイントではないか。ただし同調圧力の高さが日本社会の規律正しさ、「おもてなし文化」を支えている側面も見逃せない。また動画の最後で述べられている、幸福度の調査結果に対する二人の感想が「オトシドコロ」としてピッタリの印象を受けた。日本社会の長所、短所をバランス良く概観するにはかなり役立つ動画の一つと考える。

 参考動画

  【カスハラ】「お客様は神様」いつまで続ける?感情に寄り添いすぎ?従業員が壊れないための企

   業の責務とは|#アベプラ《アベマで放送中》

   ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】 2022/04/09  12:17

 

参考記事

日本大好きで留学した欧州の若手研究者たちが「日本ヤバイ」と感じた理由 日本好

 きな研究者が見た日本 前編

 現代ビジネス 栗田 路子 の意見 2023.10.28

偽情報や陰謀論…「日本好き」欧州の若き研究者が「日本社会も劣化している」と

 語る理由 日本好きな研究者が見た日本 

 現代ビジネス 栗田 路子 の意見後編 2023.10.28

 この二つの記事は外国の専門的立場から客観的に観察された日本の現状の悲惨さを分かりやすく指摘していてとても面白く、非常に参考になる。長文なので適宜、抜粋要約しておき、参考資料として配布したい。

日本人は「世界一礼儀正しい」が「世界一イジワル」だった...「自分の利益より他

 人の不幸を優先する度合い」を測る実験で「日本人ダントツ」の衝撃結果がヤバす

 ぎた 現代ビジネス 週刊現代 の意見 2023.8.19

 日本人の規律正しさと「おもてなし」文化の裏側にある、他人の不幸を喜ぶ「イ

ジワル」な心性は村社会的同調圧力の副産物なのかもしれない。…「日本人は自分がもっとも得をするようには行動せず、自分が得をすることよりも、相手のタダ乗りを許さずに、少しでも相手の足を引っ張ろうとする傾向があります。こうした経験をしてしまうと、タダ乗りを狙っていた人も次回からは参加せざるを得なくなる。したがって、日本の社会では、みんなが仲良く協力的に事に当たっているのではなく、協力しないと罰を受けると分かっているから協力せざるを得ない社会だということが示唆されます」…という考察にはかなりの説得力がありそうだ。

「日米経済格差」の根本原因が、グランドキャニオンに行けばわかる訳

 プレジデントオンライン 藤巻健史 2022.12.29

 これも非常に面白い観点。自己責任の国アメリカと規則だらけで格差是正を優先する日本との対比。

 

・労働慣行を巡る話題

『これは日本だけのものです!』 アメリカの有名な美容師が東京を訪れてビックリ

 した理由 MJGA  2023/04/21 7:46

 理容美容に興味を持つ生徒が多い学校ではこの動画から入ると授業参加度を高めることが出来るだろう。ただしサービスの質の高さで有名な日本の理容美容業界は残念ながら他方でホテル・旅館業界や飲食業界と並んで従業員の待遇が悪く、時間外労働も多い、いわゆるブラックな体質を持つ業界、との指摘があることは触れておくべきだろう。

 いわゆる日本の伝統的なお家芸である「おもてなし文化」は一概に言えることではないにしても傾向として労働者の過剰サービス、過剰労働によっても支えられてきた側面があることは見逃せまい。

日本のサラリーマンVS🇺🇸のセールスマン!?

   2022.6.10 BrooklynTokyo 11:36

   日本のオフィスの特色をアメリカとの比較で面白く浮かび上がらせている。導入として利用する上で非常に良い動画であろう。

【カスハラ】「お客様は神様」いつまで続ける?感情に寄り添いすぎ?従業員が壊れ

   ないための企業の責務とは|#アベプラ《アベマで放送中》

   2022/04/09 ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】 12:17

【漫画】「なぜ、日本の職場は世界一ギスギスしているのか」をわかりやすく解説

 【要約/沢渡あまね】 2022/05/12 フェルミ漫画大学 12:50

 

参考文献

「海外メディアは見た不思議の国ニッポン」クーリエ・ジャポン編

 講談社現代新書 2022

・・・労働生産性の低さにどのような背景があるのか、デジタル敗戦、年功序列、労働市場の閉鎖性、男女格差、若者の内向き志向、戦後の天皇制が孕む問題など、興味深い指摘が並ぶ。特に日本のメディアでは真正面から論ずることの難しい戦後の天皇制について、外国のメディアがかなり踏み込んで論じている点は大いに参考となる一方で日本のマスメディアの機能不全を大いに感じざるを得ない。

 

㊽兵庫県知事パワハラ問題がはらむ闇

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

参考記事

斎藤知事『辞任か続投か』県民100人調査で「辞任63人・続投37人」2カ月前の調査

    と“正反対の結果 橋下徹氏は「知事失格。最悪の権力行使」

    FNNプライムオンライン 2025.5.29

 これほど毀誉褒貶の激しい知事も滅多にいないだろう。改めてネット社会の怖さを思い知る。この段階に至っても、斎藤知事の続投を支持する県民がそれなりに存在することに民主主義の機能不全を痛感する人は少なくあるまい。立花氏による情報のかく乱が生み出した洗脳現象は知事の再選を実現させただけではなく、今も斎藤支持の姿勢を県民の一部に後遺症として残しているのだ。

 ネット社会における民主主義のあり方を考える上で、今回の件は大きな教訓を残しているに違いない。ぜひ、授業で扱いたいテーマである。

斎藤知事側近の元総務部長を懲戒処分へ 告発者私的情報の漏洩を認定 停職3カ月案

 も 産経WEST 2025.5.24

兵庫漏えい問題 告発者の人格を貶める卑劣さ    読売新聞 2025.5.29

 ようやくこの事件の核心に触れる問題の一端が明るみに出ようとしている。これまでマスコミの興味本位による週刊誌的煽り報道や根拠に乏しい立花氏による扇動が続くことによって、斎藤知事によるパワハラやおねだり、あるいは反斎藤派による「斎藤潰し」といった陰謀論などに世間の注目が集まってしまった。

 結果的に多くの人々、とりわけ兵庫県民は内部通報者への知事側による一方的処断という、内部通報制度の根幹を揺るがしかねない深刻な問題から関心を大きく逸らされてしまいがちとなっていたと思うのだが、いかがだろう。

 日本では企業、お役所、学校や警察などの組織内部でたとえ人権を大きく侵害するような重大な不祥事が見聞されたとしても、これまでは「守秘義務」を口実に口封じされてしまう、あるいは肝心の当事者が自ら口をつぐんでしまうケースが過半であったと思われる。20年ほど前に騒がれた、「食の安全」を脅かす数々の事件が表面化した背景には日本の組織の伝統的な宿痾と言うべき隠蔽体質が根強く、かつ広範に存在していたことが背景にあったに違いない。また学校でのイジメ事件がこれまでもっぱら被害者の泣き寝入りに終わってきたのも、事件の真相究明を妨げつつ組織の存続を最優先する一方で、個人の人権を軽視しがちな日本社会の強固な組織風土に根ざす側面があったのではあるまいか。

 長く「人権後進国」と揶揄されてきた日本社会の暗部がどうやらこの問題にも凝縮されてい るように私は思う。これまで旭川女子中学生凍死事件やこの事件にしつこく注目してきたのも、そうした日本社会にありがちな組織的病理がこれらの事件に見え隠れしているように感じたからである。個人的には今後もこの事件の行方を注視していきたい。

※参考記事

    〇旭川いじめで初弁論 市側は争う姿勢も、争点は「係争中で話せない」

         朝日新聞社 2025.6.6

    旭川いじめ 黒塗りない「報告書」流出、市教委が刑事訴追に向け調整

        朝日新聞(奈良山雅俊) 2024年7月3日

 【速報】和歌山市職員が職場の不正“公益通報” 復職後に自死…遺族が約8800万円の賠償求め市を

  提訴 読売テレビ 2025.6.11

    

参考動画

元県民局長の情報流出疑惑 第三者委「県職員の関与の可能性は極めて高い」

    サンテレビニュース 2025/05/13  2:35

    確かに県職員による守秘義務違反がまず疑われるだろうが、加えて元県民局長及びパソコン内の記録に登場する県職員のプライバシーへの大きな侵害が生じており、侵害された被害者の救済も図られるべきだと思うが、いかがか。

「選挙って儲かるんですよ」の裏側 ポスター代を水増し請求“選挙ハック”の実態

    【報道特集】TBS NEWS DIG Powered by JNN 2025/05/10 17:41

「真実かどうかよりも、極端なコンテンツほどたくさん見られる」選挙期間中に拡

    散される誹謗中傷や虚偽を含む動画 作成に報酬も…背景を取材【報道特集】 

    TBS NEWS DIG Powered by JNN 2025/04/05 23:23

    アルバイト感覚で誹謗中傷の切り抜き動画がネット上を横行するシステムの存在がよく分かる。立花氏がこれまでとり続けてきた法の未整備をついての誹謗中傷の連鎖をどう断ち切るのかが、今、問われているのだろう。勇気をもってこの問題に立ち向かっているTBSの報道姿勢に敬意を表したい。

「お前もとっとと自殺しろ」兵庫県議らに大量の脅迫メール 激化する“言論への攻

   撃”の実態「フラグを立てられたら終わり」【報道特集】

   TBS NEWS DIG Powered by JNN 2025/04/05  22:32

   斎藤氏再選の背後でどんなことが起きていたのか、よく分かる。そしてなぜ兵庫県警は何一つ動こうとしないのか、兵庫県民はなぜ声を上げようとしないのか、大きな疑問が湧いてくる。事務所や自宅に押し掛けて大声で喚き散らす人物を警察や周辺の住民が放置,、静観し、結果的に一方的な誹謗中傷が堂々とまかり通る…兵庫県の選挙には民主主義や正義の欠片も存在しないかのようだ。

 再三にわたって極めて悪質なイジメ事件を隠蔽し、教員間のイジメを放置して徹底的にこじらせてしまってきた兵庫県、特に神戸市の教育界の体質と兵庫県知事を巡る騒動とは、やはり地続きのものに見えてしまうのだが、いかがだろう。

【ヨコスカ解説】「パワハラ」「公益通報保護法違反」認定 第三者委員会が調査

   報告で重視した視点、社会に投げかけるモノ 斎藤知事の疑惑

   読売テレビニュース 2025/03/20  15:37

   よくまとめられていて分かりやすい。授業で視聴させても良いが、教師としては必ず視聴しておきたい動画。

斎藤知事の複数の“パワハラ”を認定 県の対応は一部「公益通報者保護法違反」と

   指摘 第三者委員会 読売テレビニュース 2025/03/19 5:06

   弁護士たちからなる第三者委員会の報告書でも知事の違法性が指摘された。結局は当初の報道によって醸成された世論と大差ない結論に達している。もちろん知事の「おねだり」などを盛った、マスコミの過剰な報道ぶりにかなり問題はあっただろうが、本質的な問題であったパワハラと公益通報者保護法違反は認定されている。とすると昨年9月の知事に対する兵庫県議会の不信任決議自体は間違っていなかったと言えるだろう。

   N国党の立花氏による不確かな根拠による故人への誹謗中傷と百条委員会への批判もまた、法に触れる可能性が出てくる。知事の再選がもっぱら立花氏の策謀によって実現できたとすれば、斎藤知事の立場は非常に危ういものとなるに違いない。立花氏に煽られ、騙されて齊藤氏の再選を実現させた兵庫県民の責任も、決して小さくはあるまい。

「首吊れ!」誹謗中傷被害者が語る現実 兵庫県にはデマが渦巻く… 誹謗中傷す

   る人の正体とは?【かんさい情報ネットten.ゲキ追X】

   読売テレビニュース 2025/03/21  15:29

   SNSの悪しき側面を理解したい。ただし授業で視聴する際は竹内県議の件を少しぼかす必要があるだろう。

ヤバいやつチェックリスト。第二、第三の立花孝志を出さないために

   せやろがいおじさんチャンネル 2025.3.15 20:07

   兵庫県知事選の教訓としても非常に役立つ、示唆に満ちている動画。ネットを利用した授業を展開する教師としては必ず視聴しておくべき動画の一つではないかと思うが、いかがだろう。ネット社会で飛び交う情報のファクトチェックは極めて難しく、誰であれそれなりに煽られてしまうことは少なくいあるまい。発信する側と情報の受け手が双方、心がけるべきポイントが良く整理されていて分かりやすい。

ネットとデマに振り回される社会をどないするか、考えてみよ〜

 せやろがいおじさんチャンネル  2024/12/04 22:58

 なかなか兵庫県知事選をめぐる問題が良く整理されていて、分かりやすい。特にN国党の立花氏によるデマ、根拠無き誹謗中傷が生み出す問題、立花氏の言動によって浮き彫りにされた兵庫県民の政治意識に潜む問題が見えてくるだろう。

 授業での視聴は「5:45」までで十分。その後の解説は教師が視聴しておき、動画の解説に役立てれば良い。

斎藤知事の罪「公益通報者保護制度」について深堀り!一部疑惑を認める

 マスコミの責任も 長谷川良品「テレビ悲報ch」 2024/07/19  19:47

 斎藤知事が3月に「嘘八百」「公務員として失格」などと証拠を提示することなく一方的に批判すること自体が公益通報者保護制度に違反する行為であり、まして停職三か月の処分を下したことは重大な問題、さらに通報者を特定するに至った知事側の動きもまた違反行為であるとの指摘は非常に大きな意味を持つだろう。

【解説人語】匿名告発者を捜して処分 兵庫県の対応に違法性は 知事自身が調査

 を指示 3つの問題点を解説 朝日新聞デジタル  2024/08/08  6:05

 斎藤知事らにどんな公益通報者保護制度への違反が疑われているのか、3点に要約されていて理解しやすい。

4つの選択肢 兵庫県知事の決断は? 解散なら県政史上初

   FNNプライムオンライン 2024/09/19 8:43

   これは民主主義とは何なのかを考える上で格好の動画であろう。ぜひ、授業で視聴させて討論に持ち込みたい。まず兵庫県知事らの不祥事は知事らを辞職させ、新しい知事を選ぶだけで本当に済む話なのだろうか、さらに知事選プラス県議選は費用がかかるので県議選を不要だとするような白鳥教授の意見にも賛否を問うてみよう。

 また兵庫県民の中にはこの状況を「恥ずかしい」と捉えて知事の辞任を要求する意見が多数あるようだが、はたして兵庫県民に恥ずかしい思いをさせてしまったのは本当に知事たちだけなのだろうか?こちらも問うてみたい。

 仮に主権が国民にあるとするならば、政治の腐敗や失敗は不適切な政治家を選んだ国民にも少なからぬ責任が及ぶはず。この知事を選挙で選んでしまった兵庫県民の責任と、この知事を推薦した自民党及びこの知事を担いだ維新の会の責任はいずれも極めて重いはずである。したがって今後、知事選を行うだけではなく、知事を担いだ自民党及び維新の会、さらには県民の責任を問うべく、直ちに県議選を行って県民の反省を促すとともに県政、県議会の一新を図るのはむしろ兵庫県としてマストの対応ではあるまいか。

 民主主義の基本が国民主権であることは言を俟たない。日本が国民主権の民主国家であるならば国政失敗の責任はまず不適切にも不出来な与党を選んでしまった点で、一義的に国民が負うべきである。また知事の不始末を県民が尻拭いするのは民主主義の原則に沿う、県民としての当然の報いであろう。したがって知事選、県議選併せて30億円余り要するとしても、それは民主主義的観点からは不可避の支出であり、その結果、県民の負担が増えてしまうのはむしろ当然の報いとすら言えるだろう。

 いや、斎藤氏がこんなことをするとは知事選の時には思いもよらなかった…という県民の言い訳は今更通用するわけがない。安芸高田市を見ればこの理屈はよく分かるだろう。石丸氏の後を受けて新市長に当選したのは石丸氏が激しく批判してきた清志会のメンバーであった。当然の成り行きながら清志会の新市長はそれまでの石丸市政を次々と否定し、再び、市の財政が悪化するような市政の改悪に続々と着手しているようだ。その結果、先々北海道夕張市のように財政破綻し、安芸高田市が一気に荒廃してしまっても、その責任は現市長を選んでしまった市民にいずれはのしかかる。これも当然の報いであろう。

 知事選、県議選の二つの選挙を行って兵庫県の財政が傾いたとしても、それは兵庫県民が県政の当事者意識、主権者としての自覚を欠いてしまっていたせいであろう。知事へのリコール運動を起こす素振りすら県民が見せてこなかったツケが県民に回ってきたに過ぎない…国民主権が本当に成立している国ならば、それ相応の結果責任を選挙民たる国民が負うのは原則として避けられないはずである。

 では生徒たちに究極の質問を投げかけたい。はたして日本国民には本当に主権があるのだろうか?もしも日本の国民には主権が実質的かつ十全に保障されていない…ということであれば、以上の主張の論拠はほとんど崩れてしまうだろう。

 まずは日本国民が主権を持つと規定されているはずの日本国憲法第一条をもう一度確認してみよう。この条文の規定に不自然な部分はないのだろうか?また国民が持つとされる主権が実質的に機能するためにはどのような条件(知る権利の保障等)を満たしていなければならないのだろうか?日本国は現在、その条件を十分に満たしていると言える状況にあるのだろうか?

 以上の検討をしてみた結果、仮に日本国民には十分な主権が保障されていないとすれば、日本国の場合、主権の有無や主権の所在自体も問われなければなるまい。実際に日本の主権が国民には十全に認められていないとすれば、日本の主権は一体どこに分散されて存在するのだろうか?核兵器の持ち込みや米軍基地問題に見られるように実はアメリカ側にも日本の主権の重要な一部が委ねられてはいないのだろうか?

 ここまで問いを重ねてくると、私たちが一方的に兵庫県民の責任を問うこと自体、妥当なことなのかどうか…かなり迷いが生じてくるはずである。

   参考記事

  財務省が「欠落」としていた森友文書74点、一部見つかった 赤木雅子さんの開示請求への説明と

   食い違い 東京新聞 2025.5.23

【兵庫県の斎藤知事】高校生からの手紙"応援メッセージ"紹介 心理状況に専門家

 「自分に都合のいい情報を取り入れる確証バイアス」【出直し選挙決断で会見】|

  アベヒル ABEMAニュース【公式】  2024/09/27  12:09

 確かに斎藤氏の会見から、心理学の専門家ならば彼の心理的状況をある程度まで読み取ることはできそうだが、この件において本質的な問題はそこには無いだろう。確かに「確証バイアス」という認知の歪みを知ることは有益だが、ここでは肝心な問題から市民の目を逸らせてしまう危険性があるので触れない方が良い。

 大切なのは番組の後半に出てきた中室氏の指摘の方であろう。まずはマスコミが斎藤氏の「おねだり」に対して世論を煽るような報道を繰り返している点を批判し、パワハラや公益通報制度への違反行為に焦点を当てて報道すべきであるとの指摘は極めて的確であると思うがいかがか。

 また中室氏が紹介したメキシコでの研究成果は非常に示唆に富み、大いに参考となるものだろう。地方政治家の不祥事、スキャンダルの報道が長引くことで高校生の万引きやカンニングがどうやら有意に増えたとのことである。すなわち政治家のスキャンダル報道は結果的に「社会的に成功するためには多少の不正も許される」というヤバイ認識を若者に植え付けてしまうらしい。

 日本の若者の政治離れの背景にも、政治家たちの不正、スキャンダルが続々と発覚する日本の現状があるのではないか。特に兵庫県ではかの「号泣議員」や差別発言を繰り返す裏金議員…といった政治家のスキャンダルや今回の知事の問題だけではなく、神戸市を中心にかなり以前から学校教育の極めて深刻な問題が相次いで報道されてきた。

 現在、神戸市から明石市などへの若い世帯の人口流出が話題にのぼってきたことをも考えあわせると、兵庫県での児童生徒、若者の心がこうした報道によってどれほど蝕まれてしまうのか、大変気になるところである。加えて齊藤氏は失職して「出直し選挙」に臨むことになった。齊藤氏のこの厚顔無恥さ、傲慢さが今後さらに若者を政治から遠ざけ、児童生徒の精神的な「荒れ」が増大してしまう危険性を個人的には強く感じるのだが、いかがか。

 古くから言われる通り、子どもや若者は大人たちの背中を見て育つ…であるならばタイミングとして既に遅きに失している感は否めないものの、兵庫県民、神戸市民の大人たちが主権者としての何らかの社会的動きを起こさないと、神戸市のみならず、兵庫県全体の人口流失が早晩、若者を中心にして一気に加速するかもしれない。

【選挙報道】“オールドメディアvsネットなぜ?西田亮介「甘んじていたツケ。報

   道の表現の技法を試行錯誤すべき」兵庫県知事選を分析|アベヒル

   ABEMAニュース【公式】 2024/11/22  15:44

   フォロワー数、登録者数、視聴回数、「いいね」数などの調査を通じて、SNS、特にXやYoutube動画の若者への影響力がいかに甚大なものであったかが推測できるだろう。データとして非常に貴重なものがあり、授業ではぜひ参考資料としてこの動画での統計データを紹介したい。ただし授業で視聴するにはやや難易度が高く、多くの高校では無理があるので、プリント等で統計データと分析を分かりやすく紹介しておきたい。

【橋下徹氏が斬る】「SNSからの疑問にTVは答えなかった。それは信用力がない」

   選挙報道めぐる“既存メディア”の対応どう見る?【兵庫県知事選挙】

  (2024年11月18日)MBS NEWS  2024/11/19  35:32

   テレビや新聞といった大手メディア、オールドメディア側と新興勢力のSNSとの間にしっかりとしたキャッチボールが見られない点が大きな課題、とする橋本氏の見解に同感。特にテレビ各局はそれぞれの立場を鮮明にして固有の意見を表明しつつ、対立する意見同士での建設的な議論を我慢強く続けていく姿勢を最後まで保つべきだろう。そしてSNSで横行している事実誤認を正し、SNSによる誹謗・中傷・デマの拡散を批判する役割をこれからのテレビは積極的に担っていくべきだとの指摘にも同意する。

   別の動画で宇野常寛氏が指摘していたように、きちんとしたファクトチェック、事実確認を欠いたまま、ひたすらSNS上での空中戦が続くようでは、議論が永遠にかみ合うことなく、不毛な対立を煽るだけとなり、無駄な時間ばかりが過ぎ去るであろう。こうしたSNSが陥りがちな欠点を是正できるのは、それなりの取材力、検証力のある大手メディアだけではあるまいか。

「法の抜け穴を悪用する政治家たちと公職選挙法の課題」【中島岳志】2024年11

   月26日(火)小島慶子 武田砂鉄 砂山圭大郎 中島岳志【大竹紳士交遊録】 

  【公式】大竹まこと ゴールデンラジオ!2024/11/26  11:41

   立花氏の選挙への関与についての法的問題点が分かりやすく解説されている。授業で視聴させるのは中島氏の解説部分だけで良いだろう。

「YouTubeの拡散指示が支持者LINEグループの登録者に聞く 斎藤元彦氏

   再選の舞台裏【報道特集】|

   TBS NEWS DIG Powered by JNN  2024/11/30  21:59

   これまでの経緯を動画で復習する上で便利。何はともあれ元県民局長に対するプライバシーの保護を含めた公益通報者保護の観点こそ、この問題の核心であることを改めて確認したい。

参考記事

SNS中傷で住所晒しも自死した男性に何が?取材に応じた当事者「報道のつもり

    でやってますので」【報道特集】

    TBS NEWS DIG Powered by JNN 2025/04/19  22:48

    齊藤知事の支持派や立花氏の取り巻きらはSNSなどを使い、対立する人のプライバシーを酷く侵害した挙句、誹謗中傷を組織的かつ執拗に繰り返してきた。これによってついに自殺まで追い込んでしまったケースが、元県民局長を含めると3件も発生していることになる。

    今までも立花氏は数多くの裁判沙汰を引き起こし、反斎藤派や反立花派へ圧力をかけて追い込んできた。しかも立花氏側は二つの案件で自ら訴訟を取り下げている。

 つまり立花氏は勝敗の見通しとは無関係に訴訟を起こす事で、相手を被告の立場に置き、精神的、経済的、時間的ダメージを与え、他方で自らを精神的に優位な立場とすることを主たる狙いとしているようだ。したがって立花氏自体は裁判に勝つことをほとんど目的とせず、裁判結果などは最初から眼中に無いと見える。

 加えて立花氏側は攻撃対象の住所をネット上に晒すことで彼らの家族にも危害が及びかねない状況を意図的に創り出しているようだ。これは明らかな違法行為であるが、これまで警察側が動いた形跡を私は一件も知らない。すなわち立花氏側は繰り返し相手のプライバシーを侵害して誹謗中傷を集団的に行っているにもかかわらず、一度も警察沙汰とされないまま、とうとう犠牲者が3人も出てしまった、という事なのだ。はたしてこれで日本は法治国家と言えるのだろうか。

 旭川女子中学生凍死事件においては被害者側の重要なプライバシーが二度も第三者委員会の外部に漏洩したにもかかわらず、その犯人は特定されないまま今日に至っている。遺族が今も悲嘆に暮れている一方で、プライバシーを流出させた犯人は、おそらくまったく反省することなく今も平然と過ごしているに違いない。この時も法律違反者はお咎めなしの野放し状態であったのだ。

 今回の犯人は兵庫県議会議員の3人と立花氏、元総務部長、元副知事らであろうが、彼らもまた依然として逮捕されていないし、罰金すら科されていない。他方で被害者の遺族は今も住所などが晒されたまま、彼らから一方的に悪者扱い、犯罪者扱いをされ続けている。日本は今、実に不公正な無法社会となっているのだ。

【公益通報】職場の悪事、見て見ぬ振りしたら起きること。兵庫県の斎藤元彦知事

   めぐる内部告発と保護法改正の行方   ハフポスト日本版 2025.4.3

   旭川女子中学生凍死事件におけるイジメ隠蔽の件も、故人や遺族のプライベート情報を漏洩させることで事件の解明を妨害し、調査に関わる関係者を極度に委縮させて当該中学校の元校長、元教頭らへの責任追及をかわそうとするかのごとき極めて卑劣な動きが、新旧の第三者委員会の周辺で二度も生じていた。この件では最初の第三者委員でしか知りえない情報がネット上や旭川市議にリークされたにもかかわらず、結局はリークした人物が特定されないまま、ウヤムヤの内に調査が終了してしまった。

   今、問われているのは内部告発制度の根幹にかかわる兵庫県知事周辺での事件であり、是が非でも元総務部長や元維新県議らの動きに対して旭川のような曖昧さで事件を収束させるわけにはいくまい。日本社会の自浄機能を維持、回復させる上でもしっかりとした司法、警察の捜査が入るべき案件だろう。

【独自】第三者委の報告書に対して片山元副知事がコメント 元県民局長の告発「不

   正目的ではない」に疑問 斎藤知事には「誹謗中傷の対象となった職員らを守る責務

   がある」 FNNプライムオンライン 2025.3.28

 片山氏は元県民局長が徒に斎藤知事らを「誹謗中傷」した、との確たる根拠を十分に示してきたのだろうか。これは傍から見ればただの空中戦に見えてくる。

   懲戒処分にいたった事案であるのならば、告発文が「嘘八百」であったと判断した証拠を知事側は当初からきちんと公開しなければならなかったはずだ。仮にそれがプライバシーの侵害や公務員としての守秘義務に違反する恐れあり、と考えたのならば、知事側は明確な根拠を公的に示せないがゆえに、その段階で「変な勘繰り」を避ける上でも内部告発者への保護をむしろ最大限に優先すべきであり、「誹謗中傷」の事実認定と判定を第三者に委ねるべきだろう。

   すなわち告発文書発表当初の段階から、第三者委員会などに調査と判断を委ねる他、知事側には元県民局長の告発に対応する手段が無かったはずである。それを知事側はいつまでたってもしっかりと事の真偽を公の場で明らかにしないまま、元県民局長を目の敵にして上から力ずくで葬り去ろうとしたのではなかったか。そして県政の混乱と停滞を自ら招いてしまったのではないのか。

   だとすれば知事側が自ら招いたであろう県政の停滞を理由にして元県民局長の告発をクーデターだと決めつけ、告発文書問題を早期に解決しようとするのはあまりにも無理筋だと思うが、いかがか。

   元県民局長側にプライバシー上の重大な問題があったと仄めかして、元県民局長が自分たちを一方的に「誹謗中傷」した、といったような被害者気取りを知事側がしているのはやはりまったく解せない。それは県政を主導する立場の人間として許容される言動ではあるまい。そもそも事の真相がある程度まで明らかにできない内は、元県民局長のプライバシー上の問題と内部告発者保護の問題とをとりあえず切り離して対処するほか術が無かったはず。プライバシーの問題があるからといって元県民局長の告発をすべて「嘘八百」と決めつける事は、傍からすれば「憶測」に基づく一方的な断罪であり、知事側のパワハラだ、とのそしりを免れないはずである。

 本当に「誹謗中傷」されたのは一体全体どちらなのか…斎藤擁護派、反斎藤派のどちらにせよ、強固な信者を除けば兵庫県民の多くは判断材料の不足から、いまだにしっくりとくるほどの納得感を得られていないのではあるまいか。

 もしかすると元県民局長に対して常日頃から敵愾心を燃やしていた知事側が、この告発を機に反斎藤派を一掃しようと一種のカウンタークーデターを試みたのだ…という勘繰りだってできないわけではあるまい。

 最大のポイントはそれがどんなものであれ、元県民局長のプライバシー問題には無いだろう。それよりも第三者によって真相究明が十分になされていない段階で時期尚早にも知事側が一方的に元県民局長を懲戒処分とした事の妥当性にあるはずだ。

 プライバシーの問題や各種のパワハラ問題はその裾野に広がる、イマイチ説得力に欠ける傍証、エピソードの類に過ぎないと感じる。今後、裾野の問題にばかり目を奪われてしまうと議論百出し、収拾がつかなくなるかもしれない。少なくとも県政の分断と停滞は当分続くように見えるが、いかがか。

「斎藤知事は続投か辞任か」緊急調査 兵庫県民100人のうち68人が『続投すべ

 き』兵庫県立大の学生は「若者支援が充実。授業料の無償化大きかった」と続投支

 持 関西テレビ 2025年3月27日 木曜 午後6:5

 マスコミが「マスゴミ」と揶揄される所以はこのような報道のあり方にも顕著に表れていると感じる。わずか100人のインタビューで「兵庫県民100人の内…」といった乱暴極まる表現をしてしまう事自体、明らかに公平さ、妥当性を欠く、ただの煽り報道だろう。この程度の小さな規模のインタビューであたかも兵庫県民の総意を掬い上げたかのような表現をするのはいかがなものか。

 授業料無償化の恩恵を受けた兵庫県立大学の学生による「若者支援が充実」との言葉を受け、あたかも斎藤県政が若者全体を支援してきたかのように印象付けているのも解せない。他大学の学生ならば違う言葉が返ってくるかもしれないではないか。

 数字を用いるといかにも客観的で公正なイメージを我々に与えるが、少しでも統計を知る者ならば、この報道はただの「煽り記事」にしか見えてこない。齊藤支持派と反斎藤派との間に深まった亀裂、兵庫県政の分断はまさにこのような報道のあり方からも生じていると考えるが、いかがか。実に罪深い報道であると個人的には思う。これでは誹謗中傷を用いて斎藤擁護を煽ったと考えられる立花氏を、マスコミとして公正な立場から批判することはできない…いかがだろう。

兵庫維新3人の県議、無制限会見のてんまつ 5時間半にわたって語り続けた「正当

   性」 産経新聞 2025.2.24

   もちろんパワハラやおねだりなど、さしたる確証があるとは限らない案件を持って斎藤氏批判を煽ったマスコミの責任は軽くあるまい。それらの報道はむしろ元県民局長の公益通報者としての立場や彼のプライバシーの保護をめぐる本筋の議論から県民の目を逸らすことで斎藤氏に利する結果となった感もある。

   とはいえこの三人がしっかりとした検証をすることなく安易に立花氏を信頼してしまった責任も決して軽くはあるまい。これまでの立花氏の言動に怪しげな側面があることぐらい、誰でも分かっていた事である。実際、竹内氏や奥谷氏を、マスコミによる斎藤批判に悪乗りした悪人と見なして糾弾した立花氏の論拠は、後日、本人が認めて謝罪した通り、憶測に満ちた謬見に基づく側面があった。

 にもかかわらず、彼らが現在も「立花氏はデマを流していない」と強弁するのはいかがなものか。彼らは立花氏のいい加減な情報や、プライバシーの侵害によって成り立っていた不当な個人攻撃を、無理くり正当化することで結局は自己保身を図っているだけであろう。

 つまり、彼らは今後もこの件に関して一切、反省する気持ちも謝罪する気持ちも持ち合わせてはおらず、維新の会に迷惑をかけたことくらいしか反省していない。このため、いずれ隙あらば県民を再び怪しげな情報発信で煽り立てて、立花氏の政党に鞍替えし、ついには国政に進出するやもしれない。

 あらためて兵庫県民の良識に期待したい。

"黒幕文書"を立花孝志氏へ提供疑惑「渡したのが誰か...記憶おぼろげ」渦中の維

   新・岸口実県議が釈明 文書渡しは公選法違反や百条委の規則違反なのか...

   専門家の見解 MBSニュース 毎日放送  2025.2.19

   専門家と称する白鳥氏の見解にはガッカリさせられる。増山氏と同様、岸口氏の行為は「軽率」などとの言い訳で済むような話なのだろうか。本当にただの「イメージやモラル」の問題に過ぎないのであろうか。仮にそうだとすれば、旭川女子中学生凍死事件やこの事件の様に、関係者を極限まで追い詰めてしまうようなプライバシーの深刻な侵害がこれからも日本各地で続発してしまうだろう。

 いずれも事件の真相究明にあたる、公平で客観的な立場であるべき機関から、いまだ調査中の真偽不明な情報が漏洩してしまっている。それも極めて際どい内容のプライバシー情報である。漏洩のタイミングを考えれば、明らかに世論の流れを都合よく変えようとする、特定の目的を持って組織的に行われた「リーク」そのものではあるまいか…と疑われても仕方あるまい。

 「記憶おぼろげ…」とする岸口氏の言い訳には、過去、「記憶にございません」とシラを切り続けてきた日本の政治家たちの、往生際の悪いふてぶてしさ、不誠実さがにじみ出ている。そしてこうした人物が百条委の副委員長であった事自体にも、一定の組織的意図を感じてしまうのだが、いかがだろう。

「内部告発なんてしなければよかった」公益通報後に解雇や異動 障がい者施設で勤

   務の3人"不当な処分を受けた"と訴える 施設側は「報復の可能性はない」と主張 

   MBSニュース 毎日放送 2025.2.21

   組織内の和を重んじるあまりに上司や組織への批判を封じ込め、過度に協調と忖度を強いる社会は自己チェック機能、自浄機能を失いがちになるであろう。せっかくの内部告発が組織の改善に生かされることなく、むしろ告発者への報復が横行してしまう日本社会…授業ではひたすら「黙働」を強いられる組織における閉塞感を戦時中の少国民教育を例にしてリアルに想像してみたい。

デマや誹謗中傷でついに死者が 「流言」を言いっぱなしにする立花孝志氏と「真実

   を知り全てがつながりました」と言っていた有権者は...

   文春オンライン プチ鹿島 2025.1.28

   SNSとマスメディアとの関係はどうあるべきか、今回の兵庫県知事選をめぐる混乱をどう整理するか、考える上で非常に役立つ記事。

兵庫・斎藤知事 立花孝志氏公開の元県民局長公用PC内の私的情報「見てないです」

  「第三者委員会でしっかり調査」 よろず~ニュース 2025.1.9

   立花氏が公開したPCの私的情報を見ていないとすれば、元県民局長の公益通報に対して斎藤氏がただの誹謗中傷に過ぎないとした根拠は一体、何だったのか、がまずは問われるだろう。そもそも齊藤氏は押収したPCの内容をどこまで把握していたのか、もう一度、明確に示すべきである。そして立花氏が公開した情報と斎藤氏自ら把握した情報との付き合わせを、誰よりも先頭を切って行うべきなのは第三者委員会よりも斎藤氏自体であると考えるが、いかがか。

   第三者委員会側は斎藤氏の意図とは独立して同じことをじっくりと調査すればよい。知事として今なすべきは、県政の停滞を防ぐためにその辺りの不信感を一刻も早くぬぐい落す努力の方なのではあるまいか。第三者委員会の報告を待つ、という、当事者としてあまりにも悠長で、時間稼ぎが疑われるような姿勢はかえって斎藤県政への不信感を強めるだけであろう。

   立花氏のSNS上の活動や知事選参入を抜きにして斎藤氏の再選はありえなかったはずである。民意の形成に大きな影響を与えたであろう立花氏の公開した情報に、仮に誇張や憶測、一方的な中傷誹謗が含まれていたとすれば、斎藤氏の再選自体が胸を張って正当化できるものではなくなるだろう。そしてこうした疑念がくすぶり続けている内は、県政の健全化には程遠く、兵庫県民は相変わらず県政の「蚊帳の外」に置かれたままであろう。

緊急対談・西田亮介×安野貴博 なぜ「マスゴミ」は石丸・玉木・齋藤現象を予測で

   きなかったのか…! 現代ビジネス 週刊現代 2024.12.9

   マスコミ側の問題点としてここで指摘されている点は参考になるだろう。

斎藤元彦兵庫県知事を再選に導いた立花孝志氏の3つの”ウソ”と『オールドメディ

   ア』の犯した過ち FRIDAYデジタル 2024.12.3

NHK党立花氏公開の「プライバシー情報」 斎藤兵庫知事「本物かどうかわからな

 い」 産経新聞 2024.12.2

 これまた凄い展開。そもそも元県民局長が不倫等の問題を抱えていた事こそ、斎藤氏が告発文書をただの中傷と決めつけた最大の要因ではなかったのか。それなのに立花氏の公開した元県民局長のプライバシー情報を今更「本物かどうかわかならい」として、第三者委員会の設置を知事側が検討するとは一体どういうことなのだろう。

 本来、非公開であるはずのプライバシー情報をウソを交えて公開してしまった立花氏の行為は明らかに法に触れる可能性がある。しかし非公開のプライバシー情報に基づいて元県民局長を内部通報者保護法の対象外とみなし、拙速にも処断した斎藤氏側も十二分に違法性があるだろう。齊藤氏の違法と思しき行為は見過ごされ、元県民局長だけが一方的に悪者と見なされている異様な現状が続いている。不可思議というほかあるまい。

 多くの兵庫県民はまたしても県政の「カヤの外」に置かれてしまっている。有権者へはついに最後まで信頼できる情報が十分に与えられないまま、知事選が行われ、立花氏の真偽不明な「プライバシー情報」の公開が功を奏したことも手伝って斎藤氏は大差で再選を果たしている。つまり、いまだに元県民局長をめぐる事件は「藪の中」にあるまま、二期目の斎藤県政は既にスタートを切ってしまっているのだ。この不明朗過ぎる事態の進行ぶりに何やら釈然とせぬ思いを抱くのは私だけではあるまい。

 最近の斎藤氏にかけられた公職選挙法違反の嫌疑といい、今回の件といい、副知事の人選を巡る混乱ぶりといい、すべてが真相不明のまま繰り返される騒々しいほどのマスコミ報道…相変わらず私たちは「兵庫県政の闇は深い」とぼやくほか術がない。

兵庫県知事選に見た選挙の根本的な問題 「自由競争ができる選挙にはなってない」

   ライター・畠山理仁氏 AERA dot. 太田サトル 2024.11.30

   ほぼほぼ同感である。現時点での妥当な落としどころではないだろうか。

兵庫知事選、稲村氏陣営のXアカウント凍結で刑事告訴へ 組織的に一斉通報か 

   神戸新聞NEXT/神戸新聞社 2024.11.21

   SNSの利用はもはや政治家にとっても必要不可欠であり、いかにして効果のある利用が出来るかで当落が決定しかねないのが、今日の選挙であろう。そんな時に立候補者側のXアカウントが二度も凍結されたという。どうやら稲村氏に対して組織的な選挙妨害が行われたと考えられる。これもまた兵庫県政の闇の深さを感じられる出来事だろう。裁判の行方を見守りたい。

立花孝志氏を刑事告訴、百条委の奥谷謙一委員長「虚偽のSNSで名誉毀損」…

   出てこい奥谷」演説でも被害届 読売新聞 2024.11.23

   現在、法廷で係争中ではあるが、都知事選でも某政党による凄まじい選挙妨害が見られた。立候補者ならば選挙期間中、何をしても構わない…のだろうか。会期中の議員不逮捕特権と同様、立候補者にも選挙期間中、何らかの正当性を欠くレベルでの特権があるように思えてくる。

   そもそも奥谷氏の自宅前で敢えて演説し、「出てこい」と煽ること自体、明らかな違法行為ではないか。この段階で直ちに警察沙汰になってもおかしくはあるまい。ネットで煽り、賛同者が一定程度の数に達すれば平気で常識外れの事をしてさらに煽り立て、世間の注目を浴びる…まさにトランプの手法である。

   そういえば学校や教育委員会を舞台にお下劣な事件を頻発させ、差別発言を繰り返す、あるいはテレビカメラの前で幼稚なウソをつく議員たちを生み出した神戸市はすでにトランプの支持基盤と同様の体質を抱えているのかもしない。

   「…のトランプ」が世界中に出現してくるのかと思うと、空恐ろしい。授業では、望ましい選挙のあり方と望ましくない選挙のあり方についてそれぞれ生徒たちに列挙させ、アメリカ大統領選や都知事選、兵庫県知事選を「他山の石」としてもう一度振り返ってもらう必要があるだろう。

斎藤知事告発の県民局長「PCデータ」がSNS拡散したのはなぜ 側近に浮上した漏

   洩疑惑 産経新聞 2025.1.7

   兵庫県知事選を巡る混乱は元県民局長のプライベート情報がSNS上に流出した問題に起因する側面が大きいだろう。もちろん、出発点となったのは斎藤氏側の公益通報者保護違反への嫌疑となるだろうが、これは今後の解明に待つほかあるまい。

   旭川の女子中学生凍死事件においても秘匿すべき第三者委員会の資料が二度にわたって流出し、遺族を再三にわたって苦しめてしまったことは記憶に新しい。資料の作成、保管に携わったのはごく限られた人数であり、流出させた極悪の犯罪者を絞ることは極めて簡単なはずなのに、この件は今もお構いなしとなっている。極めて不可解であり、残念なことである。

 そもそも当該女子生徒を死に追いやった大きな原因の一つとされているのが、加害者側による性的な画像の流出であっただけに、再三にわたる第三者委員会資料の流出には許しがたい憤りを覚えるのだが、いかがだろう。これほどプライバシー保護の精神が執拗に蹂躙され続けた悪質な事件を私は他に知らないのだ。

 本来ならば厳格に秘匿すべきプライベート情報を敢えて流出させて、被害者遺族を繰り返し脅迫し、同時に事件の隠蔽、沈静化を図る卑劣極まる犯罪が今もなお野放しにされている…こうした点にも旭川市の闇深さはある。だが、実はこれとまったく同じ事が兵庫県でも起きてしまっているのではあるまいか。

 元県民局長のPCが個人の所有ではなく、公的に貸与されたものだからといって、それだけで個人情報を公開して良い、という結論にはなるまい。確かに元局長が公的に貸与されたPCを私的に利用した点は咎められる。だからといってPCの情報公開が直ちに認められるわけではなく、それが公益上、やむを得ないと第三者が判断した時に限り(たとえば法廷の場などで)限定的な公開が認められる、と考えるべきではないのか。基本的人権の尊重を日本国憲法の基本原理と認めるならば、プライバシー保護に関してその程度の配慮は必要だろう。

 すなわち立花氏が選挙期間中に行ったことは元局長に対する違法な私的制裁に等しく、遺族の人権を踏みにじる犯罪行為そのものと考えるが、いかがか。

   ※参考動画

  ◎【字幕付】正義と悪!政見放送 立花孝志【兵庫県知事選2024】我らがタイガースのサンテレビ

    版★パワハラした知事はテレビ歓迎され、パワハラしてない知事はテレビに嫌われる謎!裏側

    には何が? まかろに情報局  2024/11/10 6:11

   この立花氏の主張にはどんな根拠があるのか、具体的に明示されてはいない。百条委員会での報

  告に斎藤氏のパワハラが無かった、という証拠は見られない。「ネットは正義、テレビは悪」と決

  めつける根拠などそもそもあるわけがない。まさにトランプ並みの暴言の数々である。ところが兵

  庫県民にはこの主張がおおかた、受け入れられてしまった。

   授業ではまず彼の政見放送に対する感想をアンケートで書かせ、対立する意見を取り上げてディ

  ベート形式で議論させると盛り上がるかもしれない。ただし告発文書問題の経緯をあらかじめ示し

  ておく必要はある。事件の細部の真偽については各自ネットで調べさせたい。その際、おそらくネ

  ット情報自体に大きな偏り、真偽不明の情報がかなり見られるだろう。「ネットは正義!」と叫ぶ

  根拠なき立花氏の煽りにあっけなく乗せられない程度の心構えは兵庫県民でなくとも必要である。

百条委が兵庫県幹部の尋問映像公開、片山前副知事の「告発者の私的情報発言」は

   音声を消して対応 読売新聞 2024.11.23

   百条委員会側は片山氏の発言が故人のプライバシー侵害にあたると判断して尋問映像の一部を音声カットしたらしいが、それを立花氏が曲解し、一方的に隠蔽と決めつけて奥谷氏への個人攻撃を行ったものと考えられる。兵庫県民の多くが立花氏の発信を受け入れて斎藤氏に投票したとすれば、事は重大。

兵庫県の百条委 核心は公益通報への対応だ   読売新聞 の意見 2024.11.24

   もう一度、この問題の原点に戻って考えた方が良いだろう。元県民局長による告発が公益通報にあたるのか、それとも斎藤県政への根拠の無い誹謗中傷にあたるのか…そもそも4月段階で公益通報窓口に提出された告発文書の中身に公益通報に該当する可能性が少しでも認められるならば、それ以前のマスコミ宛ての告発を巡る議論はほとんど意味をなさないだろう。故人の不倫等の問題が仮にあったとしても、告発内容に多少とも事実が含まれている可能性があるならば、故人は当然、公益通報者として保護されるべき人物であったことになる。本件に関しては故人の性癖等は一切、問われるべきではあるまい。

   一つここで問題視すべきなのは故人のパソコンから個人情報を抜き出して公にリークした行為の方であろう。これは明らかに故人および遺族への重大なプライバシー侵害であり、まず厳しくその責任を問うべきである。当事者が単に辞職して済まされる話ではない。

 もちろん立花氏による選挙期間中の奥谷氏への行為は百条委員会への恫喝であり、奥谷氏への名誉棄損でもあるだろう。また稲村氏の件もこれに絡んでくるが、いずれも法廷の場で裁かれる予定となっている。これらに関しては今後の裁判の行方を見守るしかあるまい。

 気になるのは斎藤氏が知事選での勝利を背景に、いかにも禊が済んだかのような言動を見せ始めた点である。SNSによってあっけなく簡単に左右されてしまうような現状の脆弱な民意にはたして政治家を権威づけるほどの意味や力があるのだろうか…これは選挙制度の根幹にかかわる疑問であり、兵庫県に限った話ではあるまい。

 問われるべき問題の核心は、政治家を選ぶために欠かせない国民の知る権利を国家がこれまでどれほど保障してきたのか、という点だと思うがいかがか。今回の知事選でも、耳目に入ってくる情報の中で何が信用できるのか、最後まで分からずに迷っている人が多かったようだ。この点に関してはSNS、マスコミ、学校教育の責任が大きいだろう。授業でぜひ注目させたいポイントである。

兵庫県元総務部長 死亡した元県民局長の私的な情報を個人的に所持 百条委員会が証

 人尋問の録画を公開 読売テレビ 2024.11.22

 凄い事実が明らかになりつつある。元総務部長は元県民局長のプライバシーを侵害し、押収したパソコンから引き出した情報を仲間と共有して故人を脅迫していた可能性まで出てきた。元県民局長の自殺は彼らが不倫などをネタにして故人を脅すことで斎藤氏のパワハラ問題などを口封じしようとしたことが主因なのかもしれない。仮にそうだとすれば、故人の不倫の真偽や是非とはまったく関係無く、斎藤氏側はただの犯罪者集団に過ぎないことになる

【速報】前知事の斎藤元彦氏が当選確実 期日前投票は過去最多、投票率50%超 不

   信任・失職を経て出直し選挙で再選 兵庫県知事選

   MBSニュース 毎日放送 によるストーリー 2024.11.17

   さすが旧内務省出身者を選び続けた兵庫県民である。9月に県議会から総スカンを食らい、失職を余儀なくされた斎藤氏であるが、井戸県政への批判とNHK党立花氏の扇動を追い風に、政党の支援を受けられないという逆風をものともせず再選を果たしたようだ。再選の背景には乱立した対抗馬の不甲斐なさがあるだろうが、官僚出身者を偏愛してきた兵庫県民の体質もまた大きな要因と考えられる。

 広島の安芸高田市は石丸氏が去った現在、かなり迷走を続けているようだ。対して兵庫県が今後、どうなっていくのか、極めて興味深い。とりあえずは斎藤氏への不信任を議決した兵庫県議会の解散と県会議員選挙が行われる次年度の動向を待ちたい。その結果次第では兵庫県政の行方が大きく左右されてくるだろう。

 他方で、あろうことか、アメリカでトランプが再び大統領に当選し、大統領府の人事に大ナタを振るい始めている。齊藤氏が今後、どんな人事を行い、どんな県政を行っていくのが、県外から引き続き厳しい目で観察していきたい。

 授業ではぜひ斎藤氏再選の要因について生徒たちに問うてみたい。特にSNSの影響力には注目すべきだろう。また、兵庫県政の行方についても議論させてみたい。

 なお2023年度の都道府県別転出超過数の多いワースト3にかの広島県や兵庫県が入っているのは、これらの県の人口がそもそも多く、沢山の山間部を抱えているから、という答えももちろん考えられる。しかし本当にそれだけなのかは疑わしい。たとえば兵庫県のケースでは、神戸市から明石市への転出が多いことの理由まで考えあわせて検討した方が良いのではあるまいか。

<独自>告発した元局長の私的情報漏洩か 兵庫知事側近の前総務部長ら 県が調査検

 討 産経新聞 2024.8.29

 内部告発者を自殺に追い込んだ、最大の原因となる卑劣な犯罪行為を斎藤知事らが行っていたことが分かりつつある。告発者のパソコンを押収し、個人情報を抜き取って漏洩させる…知事側のこうした動きが事実として確認できれば、知事側の動きが告発者を精神的に追い詰めたことは明らかだろう。しかしリコール運動の動きは今も表面化していない。もちろん、知事から引責辞任の声は聴かれないままである。

 兵庫県の地方自治がいかに形骸化し、腐敗し切っているか、世間に広く知れ渡る残念な日々が続いている。実際、泉房穂氏が指摘するように兵庫県知事は60年以上にわたって天下り官僚が務めている。しかも戦争遂行に深く関わり、国民の人権抑圧に中心的役割を果たしてきた内務省、その解体後に発足した自治省、省庁改編後に登場した総務省の出身者ばかり(斎藤氏を含む5人)。これでは泉氏の言うように斎藤知事はもはや殿様気取りで執務に臨んでいるに違いあるまい。

 しかし、こうした地方政治の堕落は安芸高田市や神戸市を先頭に今や全国的展開を見せている。画一的な管理主義を武器にして児童生徒の民主主義的精神を圧殺し、その芽を潰すことばかりに専念してきた日本の公教育が招いたこの惨状を変えることができるのは、やはり学校教育の根本的な改革でしかあるまい。

【独自解説】“声を挙げた人”を保護する『公益通報者保護法』、死亡した元幹部職

   員には適用されず…なぜ守れなかったのか?兵庫県・斎藤元彦知事が下した“不適切

   な判断”を専門家が指摘   読売テレビ によるストーリー 2024.8.9

  やや長い記事だが、 公益通報制度の概要がよく分かる。同時に斎藤知事のパワハラ的言動もよく分かる内容。

「県警に内部情報漏らした」 町が職員を懲戒処分 熊本・玉東 

    毎日新聞     2025.6.12

 公益通報者保護への理解が不十分なため、公益通報を「裏切り」として断じてしまう風潮が兵庫県を皮切りに全国各地へ拡大していく恐れが出てきている。

斎藤兵庫県知事のパワハラ告発の元局長死亡 「つるし上げる」と維新議員から糾弾

   されていた AERA dot.   今西憲之 によるストーリー 2024.7.13

   元局長自殺の一因となる動きが見えてきている。公務員としての守秘義務と内部告発、公益通報との難しい関係も察せられる。教師もまた公務上、生徒の個人情報に接する機会が多く、その情報を次年度の担任に伝える際、校務用のパソコンを使うべきなのか、私有のパソコンを使っても良いのか…おそらく多くの教師は校務用のパソコンを使用するだろう。守秘義務に関わる生徒のプライバシー情報を私有のパソコンに入力すること自体、避けるべきであるのは当然だからだ。

 ならば今回のような問題が生じたとき、教師が使用した校務用のパソコンの情報を公の場で公開すべきだと言われたとしたら、それは誰もが拒否するに違いない。特にクラス担任が抱える生徒情報の一部は決して口外できない部類のものも少なからず含まれており、議場で公開して良いはずがない。…元局長の心中を察するに、胸が痛む教師たちは少なくないのでは…

【パワハラ疑惑】兵庫・斎藤知事、証人尋問でパワハラ認めず「県民としてお引き

 取り願う」県外からも「リコールしないの?」の声

 SmartFLASH によるストーリー 2024.8.30

 兵庫県議会は百条委員会を設けて知事のおねだり疑惑やパワハラ疑惑を追及するという、斎藤県政を改善するためのそれなりの努力と役割を果たそうとしている。しかし斎藤知事を選んだ責任はもっぱら兵庫県民にあるはず。したがって県政への当事者意識、主権者意識が普通にあればかなり早くから県民によるリコール運動が起きていたはずであり、民主主義の原則からすればリコール運動が起きない方が不健康だとすら考えられる。

 もちろん、リコールを成立させるには沢山の署名を集める必要があり、かなりの時間、労力、費用を必要とするだろう。しかしこれほど酷い状態を招いた知事の言動をこれ以上、県民が看過するのはいかがだろう。国民主権を土台とする民主主義が兵庫県ではまったくの機能不全に陥っているとしか、考えようのない状況ではある。

 泉房穂氏が指摘しているように、兵庫県知事は60年以上にわたり内務省、自治省、総務省官僚の天下り(斎藤氏を含む5人)が務めてきた。内務省は戦前、戦時中、国民の人権を抑圧して戦争遂行に協力した特高を擁する悪名高いお役所であり、そのためGHQによって戦後、解体されて自治省とされたが、実は特高のメンバーが戦後、警察学校の校長となるなど、その強権的体質にさほど大きな変化は無かったと見る立場もある。省庁改編で自治省の名前は総務省となったものの、結局は体質に大きな変化が見られなかったことは斎藤氏の強烈なパワハラ体質にうかがえるだろう。

 そもそも60年以上も天下り官僚を何一つ疑うことなく知事として選び続けた兵庫県民の政治意識にも大きな問題を感じるのは私だけではあるまい。リコールの成否を問わず、斎藤県政に唯々諾々と従い続ける兵庫県民にはもはや不気味さ以外、何も感じるものは無い、とすら言いたくなるほどの県政の乱れぶりである。

 過去、学校教育に関わる数々の異常な事件、不祥事を連発させてきた県都神戸市でも市民の動きは極めて不活発なものに見えていた。北海道の旭川市、札幌市でもしかり…どうやらこの状況は一部の地域に限られたものではなく、既に全国的なものなのかもしれない。だとすれば日本の民主主義は土台から崩壊しつつあるようだ。もしかすると日本の画一的で管理主義な学校教育がついには日本人の主権者意識、当事者意識を根こそぎ台無しにする負の効果を強烈に発揮し始めたのかもしれない。

「黙れ、一茂!」兵庫県知事問題で長嶋一茂が放った「県民批判」にブーイング殺

   到 アサ芸biz によるストーリー 2024.9.30

   長嶋氏の兵庫県民への批判的な見解は国民主権を土台とする民主主義の立場からすればむしろ極めて真っ当なものであり、これを問題視する報道側の方にも民主主義への理解不足があるような気がするのだが、いかがだろう。

   ただし、日本では本当に国民主権、民主主義が十全な意味で機能しているのか、きちんと根本から問い直した時、誰もが兵庫県民ばかりを責めることは出来なくなるのではあるまいか。たとえば日本国民が憲法の定めるとおりに選挙権を有していたとしても、政治上の重要事項や候補者、政党に関する情報が十全なレベルで有権者へ伝えられていなければ、その選挙は民主主義的な選挙の条件を満たしているとは言えなくなるからである。また学校教育においてやはり何らかの原因で生徒たちの多くが政治の実態をしっかりと学んでこなかったとすれば、やはり民主主義は将来的にもその健全な機能を阻害されてしまうに違いない。

 民主政治は多数の民意に基づいて行われるべきだ…などと世間では言われたりするが、マスコミや学校などが垂れ流す不十分な情報、偏った情報によって過半の民意が形成されてしまっているとすれば、民意はただの人気投票的な選挙の結果にのみ集約され、選挙結果がすべて、といわんばかりの洗脳による専制政治、ただのポピュリズムに直結してしまうのかもしれない。

 この記事は現代の日本政治の危機的状況に迫る上で、ある意味、それなりに役立てることができるものであり、授業においては批判的な立場から扱うと面白いだろう。ぜひ、長嶋氏の意見とアサ芸の意見について賛否を問い、議論に持ち込みたい。

問われる兵庫県知事の公益通報“保護対象外”判断(大渕愛子弁護士)

   労基旬報 によるストーリー 2024.10.6

   公益通報制度自体の欠陥もあって元兵庫県知事のパワハラ等の問題は意外にも混迷を深めているようである。告発には真実相当性が無い、との元知事側の判断の正当性、根拠が、本来ならば法廷の場で様々な検証を経て厳密に問われるべきだろう。しかし遺族からの訴えが無い時点では当分の間、第三者委員会の調査結果を待つほかに真相究明の道筋は見えてこない。

   リハック(2024.10.6)での元知事による発言で特に気になる点があった。自殺した元西播磨県民局長のコンピュータに記録されていた内容に「プライベートな内容でかつきわめて大きな倫理上の問題があった」ことが告発の真実相当性、公共性を十分に疑わせるものとした根拠の一つ、という点である。

   元局長側には公に出来ないほどの倫理上の深刻な問題が潜んでいて元知事としてはその内容をここでつまびらかにする立場にはない、とのこと。口には出せないほど、元局長がいかに酷い、倫理的にもとる人間性の持ち主だったか、言外に匂わす、極めて政治的な発言であったように私は受け止めたのだが、いかがだろう。

   ただし、それだけ重大な内容の報告があったにもかかわらず、部下がこれは知事の立場としては見ない方がよろしい、との進言に従い、元知事は直接、その内容を確認しなかったという。つまり、部下の報告に何ら疑いをさしはさむことなく、単純にも鵜呑みにしてしまった点に私は大きな疑念を持つ。しかも、その後も部下の報告を自らまともに確認することすらしないまま、分限に関わる重大な処分に踏み切る、という明らかな違法レベルの暴挙に打って出ている。

   私たちはリハックでの元知事の発言を通じて元局長の極秘にすべき倫理的問題点がいかなるものだったのか、まったく分からないままに元局長の人間性への強い疑念を巧妙に植え付けられてしまい、反対にマスコミや県議会から袋叩きにあってしまった元知事への同情をいつの間にか刷り込まれてしまっているようである。

   元局長の遺族にとっても決して公に出来ないような、個人の倫理的問題が本当にコンピュータの記録内にあったのか否か…現時点では部外者に不明のまま、明らかに故人への倫理面、人格面への深刻な中傷とも捉えられかねない発言が、大きな世論への影響力を持つリハックの中で元知事によってなされた、という事実が持つ意味は知事選を控えたこのタイミングの中で、計り知れない重みがあるのではあるまいか。

   これはどうみても世論操作的発言であろう。公に出来ない事柄を根拠にして故人を批判する…元知事の立場としては決して許される言動ではなく、これ自体、故人及び遺族への強烈なパワハラである、といっても過言ではあるまい。常識的に見ても「死人に口無し」の状況では、公に出来ない、すなわち公に立証できない事で故人を批判し、中傷することは明白な禁じ手であり、卑劣極まりない行為である。

   以上、とても知事という要職にあった者の言動とは思えない軽率さ,傲慢さを斎藤氏には感じる。リハックにおけるこの言動一つだけでも、斎藤氏の失職は不可避の出来事であるばかりか、刑事訴追の可能性をも考えてしかるべきレベルの卑劣な問題発言だろう。私としてはこの問題は法的権限に欠ける第三者委員会ではなく、司法の場で厳密に事実関係を明らかにしてから裁かれるべき案件だと思うが、いかがか。

「YouTubeに虚偽動画」 百条委委員の兵庫県議が削除請求

 毎日新聞 によるストーリー 2024.12.9

 ネット上では真偽不明、あるいは明らかに間違った情報に基づいて一方的に他人を誹謗中傷する事件が横行している。また個人のプライバシーを侵害するような情報を拡散させている、極めて悪質な事案もこの件では見られる。これら、ネット社会に特有の犯罪行為にどう対応すべきか、表現の自由、言論の自由との兼ね合いを考慮しつつ、真剣に考えていくべき段階だろう。

 

東京都は「黒塗り」、神戸市は「白塗り」…行政が秘匿し続ける公文書“のり弁”

   問題の理不尽さ 集英社オンライン 2024.10.15

   こうまでも国民の知る権利が蹂躙されていては選挙の際の判断材料が限定されてしまい、市民は行政の実態を十分に吟味できぬままに立候補者や政党のイメージばかりを手掛かりにして投票してしまいかねない。日本の民主主義を最も阻害しているのは神戸市や東京都で見られるような、行政側の「知らしめず、依らしむべし」の秘密主義、隠蔽主義であろう。

   この秘密主義と隠蔽体質は学校教育にも貫徹しており、加えて利益、売り上げを最優先するマスコミの、行政に対する追及の甘さが事態をより深刻にさせているのではあるまいか。

   いずれにせよ兵庫県と神戸市の闇は深い。

その1.性差別をめぐる話題(前編)

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

 性教育や男女共学、女子枠入試に関しては「カッパの伝言板㊺」で扱っています。

 

参考動画

中島みゆき【ファイト!】 LIONスタジオ  2024/08/22 6:23

         「ファイト」歌詞 (中島みゆき 1983年)

   あたし中卒やからね 仕事をもらわれへんのやと書いた

   女の子の手紙の文字は とがりながらふるえている

   ガキのくせにと頬を打たれ 少年たちの眼が年をとる

   悔しさを握りしめすぎた こぶしの中 爪が突き刺さる

 

   私、本当は目撃したんです 昨日電車の駅 階段で

   ころがり落ちた子供と つきとばした女のうす笑い

   私、驚いてしまって 助けもせず叫びもしなかった

   ただ恐くて逃げました 私の敵は 私です

 

   ファイト! 闘う君の唄を

   闘わない奴等が笑うだろう

   ファイト! 冷たい水の中を

   ふるえながらのぼってゆけ

 

        ・・・中略・・・

 

   あたし男だったらよかったわ 力ずくで男の思うままに

   ならずにすんだかもしれないだけ あたし男に生まれればよかったわ

 

   ああ 小魚たちの群れきらきらと 海の中の国境を越えてゆく

   諦めという名の鎖を 身をよじってほどいてゆく

 

   ファイト! 闘う君の唄を

   闘わない奴等が笑うだろう

   ファイト! 冷たい水の中を

   ふるえながらのぼってゆけ

 

【号泣】中島みゆき ~オールナイトニッポン最後のはがきより~

 なんせい  2021/02/26 3:06

 ニッポン放送の深夜番組「中島みゆきのオールナイトニッポン」は昭和の終わり近く、1979年から1987年まで放送されていた人気番組。長い間、テレビ出演を頑なに拒否してきた1952年生まれの中島氏の信念についても少し生徒たちに考えさせてみたい。また闘うことを諦めたような現代の若者たちに中島氏ならどんな声をかけてくれるだろうか、想像させてみたい。

レベチの石丸伸二  日本政治の希望 shorts

 地方自治体レベルにおいて合計特殊出生率というデータはほとんど意味を為さない、それはただ単に都会と田舎の違いを浮かび上がらせるだけの数値に過ぎない…という指摘は鋭い。おそらく「子育て支援策」は田舎においては多くの場合、ピンボケで的外れな対策に終わりがちなのかもしれない。

 意味を持つのはその地域の人口に占める年間の出生数の方であろう。統計の意味するものは何か、しっかりと理解していないと原因の追求自体、覚束無くなる。若い女性にとって魅力のある地域社会を創り出すことが自治体における最優先課題であることも同時に見えてくるだろう。統計の持つ意味を深く考えるための教訓となる動画であり、下の記事と併用して、ぜひ、授業で視聴させたい。

参考記事

少子化の原因「晩婚化・未婚化」71%、対策に「恒久財源」83%…読売世論調

 査 読売新聞 2025.6.2

参考記事

衆院の女性議員数が過去最多、比率15.7%に上昇も世界的には低水準

 Bloomberg 萩原ゆき によるストーリー 2024.10.30

 性差別を考えていく上で良いたたき台になる記事であろう。世界から見て日本での女性議員が占める割合の、あまりの低さに私たちはまず驚くべきだろう。そしてなぜ日本ではこのような状況が続いてしまっているのか、原因について生徒たちにじっくりと考えさせたい。

中高生のジェンダー意識「隠れたカリキュラム」が影響    リセマム 2025.5.1

 「隠れたカリキュラム」とは50年近く前に流行った「ヒドゥンカリキュラム」と同じ用語だと思われる。20数年前に学校現場では男女別名簿が性差別を助長する「隠れたカリキュラム」としてやり玉に挙げられ、男女混合名簿が一般化したことがあった。「男らしく…」「女らしく…」という表現も好ましくないものとして学校現場から徐々に消えていった。

    しかし体育などの教科では今も男女別授業が当然のこととされており、公立高校における女子高、男子校の存在も性差別が日本社会に色濃く残存する一因と考えられなくもない。スポーツ大会、体育祭における男女別の種目やオリンピックの男女別種目の問題も性の多様化を容認する風潮の中で批判される日がくるかもしれない。万博会場でのトイレ問題がくすぶる中、「隠れたカリキュラム」はこれからもその解釈次第でいかようにも対応すべき課題を次々と浮上させてしまう可能性があるだろう。

※参考動画

  【AI×教育最前線】教育分野の最新AI活用事例5選 / 「教育のAI活用は学力低下に繋がるのか?」

         問題【生成AI】安野貴博の自由研究チャンネル 2025/04/02 14:07 

        五番目の事例がジェンダーバイアスの減少にAIの利用が役立つ可能性を示唆している。

 

・少子化と男女格差

参考動画

【少子化】「まやかしだ」人口減はホントに問題?出生率の低迷=日本の大問題が

 テンプレになった弊害とは?内閣官房房参与 高橋洋一に聞く【ロンブー淳】

 ABEMAニュース【公式】  2021/04/14 16:53

 これほど現実と乖離したトンチンカンな議論は滅多に見られない点で興味深い。問題なのは人口減少の加速化と人口構成のアンバランスであり、地方と都会との格差拡大であり、それらの背後に潜む男尊女卑の残存などであるはず。

 現状では合計特殊出生率「1.2」のインパクトは決して小さくないだろう。もとより人口減自体は国土の広くない日本の場合、自然環境保護の面からしても好ましいくらいであるが、問題となるのはそのスピードの速さと少子高齢化というとんでもないくらいのバランスの悪さ、そうした現象の背後に潜む日本社会の女性差別を含む旧態依然の体質である。ただでさえ、時代の変化に対応する力が乏しくなっている老害政治家が牛耳る日本が果たして急速に迫っている人口減の社会に無事、不時着できるのだろうか…実に怪しい限り。

 授業ではこの動画の議論の不毛さに気付けるかどうかで、少子化議論の深まりが左右されるだろう。人口減少のみを問い続ける限り、議論は表層にとどまらざるを得ない。最大のポイントはまず日本の女性が結婚や出産を避けるようになった主な原因を探り、それへの打開策を考えることとなると思うが、いかがか。

【婚活イベントに女性がいない】なぜ若年女性たちは地方を去るのか?地方で感じ

 た生きづらさとは?”消滅可能性自治体”でも意識改革に取り組む(語り:安元洋貴)

 【クロ現】| NHK  2024/07/04 10:18

 地方での女性の社会減が進む背景には地方に残存する男尊女卑の文化が挙げられるだろう。日本社会の宿痾とも言えるこのテーマから国民の目を逸らさせるために保守系言論界では少子化問題をまやかしだとして問題をひたすら矮小化させているように見受けられるが、いかがか。

 ただし男女間の格差が解消していけば自動的に少子化が解消されるのかと言えば、そうなるとも限らない可能性はおおいにあるだろう。以前から繰り返し指摘されてきたように男女格差解消によって生じてきた女性の進学率向上と社会進出の増大はそれだけではむしろ少子化を促進する要因ともなってしまう。逆に保守的な言説である性別役割分業を前提とする専業主婦の増大を図ることの方がはるかに少子化を食い止めることにつながるかもしれない。

 当然、男尊女卑の風潮は改められなければなるまいが、女性の大学進学率の向上と社会進出の増大が日本の少子化に拍車をかけないようにする手立てが別途に講じられる必要があるはずだ。その手立ての一つとして考えられるのは男女ともに「働き方改革」をさらに推進していくことであろう。

 まずは産休、育休取得者が女性に偏ることで生じる男女間の所得格差、昇進機会の減少を今後、どう解消していくのか、しっかりと考えていくべきだろう。そのためにも日本人の働き過ぎを大胆に見直していき、DX化を促進してAIの活用範囲を拡大することなどで男女ともに労働時間を大幅に削減していくことが欠かせまい。

 授業では単なる男女平等の実現だけでは少子化を食い止めることが難しい、という視点を共有できるよう、議論を組み立てていきたい。

【人口減少】国は産んで欲しい?自分な生き方&キャリア選択を?減ったらダメな

 の?人口戦略会議メンバーと考える|

 ABEMA Prime #アベプラ【公式】 2024/01/17  17:10

   日本の人口減少、少子高齢化問題が日本社会に与える深刻なインパクトがイマイチ上手に整理されていないように思える議論。ポイントはまず若者、労働者人口が急速に減少することと平行して国家の収入が減少し、同時に急速な高齢化によって介護、医療費の支出が爆速で増大することによって日本の国家財政が一気に破綻する危機が迫っているという、人口構成の悲劇的なアンバランスに起因する問題点。また人口の社会移動も加わっての大都市圏と地方との格差の急速な拡大に起因する人口減に直面した地方の無残な疲弊ぶり。さらに世界でも最悪レベルに近い男女不平等な社会の残存。また日本企業の労働生産性の低さとブラック体質及び古臭い労働慣行の残存…

 人口問題は日本社会が抱えてきた様々な特質、問題点がそれぞれ複雑に絡みあって生じている大きなテーマであるため、細かく切り分けて論じられる部分はできるだけ個々に切り分けて分かりやすく一つ一つ丁寧に論じる必要がある。すべてを一まとめにして一遍に論じようとするのはあまりにも乱暴なテーマ設定であり、どう見ても有意義な議論には至らないだろう。

 授業ではアンバランスな形での人口急減が日本社会にもたらす破壊的な側面にまず注目させ、アンバランスな形での人口減少の原因をいくつか挙げさせて、それぞれの背景を深堀していきたい。その際、外国人留学生、外国人労働者や移民の受け入れを巡る議論は避けて通れない問題となるだろう。また時代遅れの性別役割分業の維持に貢献し、性教育に後ろ向きのままである旧態依然の学校教育のあり方にも批判の矛先を向ける必要があるだろう。

【衝撃の出生率】少子化対策は効いているのか

 ロザンの楽屋  2024/06/10  13:18

 日本の少子化の原因がどこにあるのか、比較的バランスよく論じられているので、少子化問題を扱うならばどちらかと言うと授業の終わりの方で「まとめ」として視聴させたい動画だろう。

 まずは女性の合計特殊出生率「1.2」の持つインパクトをきちんと理解させたい。日本では30年以上にわたって少子化対策が政策として実行に移され、近年は子ども家庭庁がっ設置され、少子化担当大臣まで設けられているにもかかわらず、日本の政治はこの問題に対して完全な無能、無力状態を長い間さらけ出してきた。ではなぜ日本の政治がこの問題に対して30年あまりの長きにわたって、無能、無力であったのか、アンケートや調べ学習などを通じてぜひ生徒たちにその本質的な原因を追究させたい。

 ポイントとなるのは日本の政治家たちの間にしぶとくはびこる男尊女卑の価値観と保守的な家族観、結婚観であろう。子ども家庭庁設置を巡る経緯や夫婦別姓への強硬な反対意見の論拠を探ってみると良いかもしれない。また女性政治家の圧倒的な不足も大きなポイントとなるであろう。

 そもそも男女平等度が世界比較で100位以内にすら入ることの出来ない日本が合計特殊出生率「1.2」となっても、実は何ら不思議ではない。まず最初に気付くべきはこの点ではあるまいか。

参考記事

「女性の働きやすさ」日本はワースト3位「国際女性デー」制定から50年 20~

   40代女性の「カラダ」「ココロ」の満足度は

   FNNプライムオンライン 2025.3.14

日本は「ジェンダーギャップ118位」 ネットの本音には負け惜しみが詰まっている

 NEWSポストセブン の意見 2024.6

 論点が整理されていて授業の資料としての利用価値が高い。ただし日本の教育に性差があまり見られない、という部分には大きな疑問が残るだろう。多少、利用する上で注意すべき点はあるが、性差別問題の導入に使う資料としてはこれで十分ではあるまいか。

日本のトイレは男女平等なのか? 台湾では女性用の数が3倍らしいが

 日刊ゲンダイDIGITAL によるストーリー 2024.6.30

 これも男性からすれば気付きにくい、女性に不平等なポイントの一つ。性差別問題の導入に使うと入りやすいだろう。

「選択的夫婦別姓」に異議あり 3割弱、国民は本当に求めているのか 橋本琴絵氏と

   近藤倫子氏が対談「高市氏ら保守派が音頭を」 Zakzak 2024.12.11

   保守派の論点が示されているが、対談を概括し過ぎたせいなのか、主張の多くは根拠が不明であり、解釈に困る。

 

・生理問題

 生理問題への理解を深めることがこの分野の学習の「一丁目一番地」だと思います

参考記事

生理が続くことで疾患が増加? 性感に影響しない?「意外と知らない子宮の事実」

 現代ビジネス 及川 夕子 によるストーリー 2024.4.18

 生涯における生理の回数が多いという事が女性の体に与える負担の重さについては知っておくべきだろう。

「生理でもプールに入れという先生がいる」教員の理解が不足している実態が明ら 

   かに【調査結果】 ハフポスト日本版 によるストーリー 2024.3.1

 この記事を生理問題の導入とすれば議論の見通しが立ちやすいかも。興味深い調査結果も紹介されていて利用価値は高い。

生理用ナプキン「学校にほしい」6割 無償提供を求める理由は

   毎日新聞 によるストーリー 2024.3.28

男性教師が実感した学校教育では足りていない「生理」についての正しい知識

 WANI BOOKS NewsCrunch によるストーリー 2024.2.12

「生理があるから女の子を守る」はNG 男子への生理を教えるときに大切なことを

   医師に聞いた コクリコ編集部 によるストーリー  2024.1.24

   見落としやすいポイントがよく整理されている。

「生理休暇」って無給なんですか? それなら「有給休暇」のほうが良いと思うので

   すが、どんな違いがあるのでしょうか?

   ファイナンシャルフィールド の意見 2023.11.6

 基本的な法知識は必要。こうした日本の法規定が働く女性にとってあまり有利にはなっていないと思えるが、いかがか。

「生理で追試」15道府県OK、11府県は対象外 公立高校受験

   毎日新聞 によるストーリー  2023.11.6

 生理問題の導入として最適の記事だろう。ぜひ、ここから議論を始めたい。

受験日に生理が重なってしまったら…「不安」8割超 民間調査

   毎日新聞 によるストーリー  2023.11.7

 前の記事と併せて授業で利用したい。

学校トイレに生理用品、小中学生の8割要望 困った経験37% 滋賀

   毎日新聞 によるストーリー  2023.11.7

高校教師が考える“生理” 「男女問わず思いやりを」現場が感じる課題とは

   日テレNEWS NNN によるストーリー 2023.10.19

 この問題の難しさと課題に気付くことが最初のポイント。

「議会で男性にタンポンの話をさせるのはセクハラ」杉並区議の発言に性教育

 YouTuberの見解は 女子SPA! の意見  2023.6.28

「男性にタンポンの話をさせるのはセクハラ」杉並区議夫婦の持論に非難殺到 

 「生理用品を何だと思ってるんですか?」女性自身 の意見  2023.6.19

 記事を読ませる前に男子生徒のみを対象とした生理用品に関する基本的知識を確認するアンケートを行っておくと迫真に迫る討論ができるかもしれない。あるいは記事の前半のみを示して本当に「男性にタンポンの話をさせるのはセクハラ」なのだろうか、生徒に問うてみるのも面白いだろう。

参考動画

【経血は"ヤギの皮"でしのぐ】アフリカの生理事情がヤバすぎた

 原貫太・フリーランス国際協力師 2024/04/27  18:09

【#4 世界25か国のYOUに徹底取材!学校での性教育ってどうだった?】

 テレ東フェムテック委員会 テレ東公式 TV TOKYO  2024/03/29  9:06

 導入に使える動画。

【漫画】女の子の日にありがちなこと【マンガ動画】

 フェルミ研究所 2021/03/13 3:45

【生理あるある】男は絶対に理解できない女の1日

 2021/03/26 ナたんとウたん 3:49

【生理あるある】女の子なら誰もが共感できる!世の男子に伝われ女子の大変さ卍 

 2020/09/23 平成フラミンゴ 4:37

 お笑いは抵抗感が少なく、授業の導入に使いやすいだろう。

私が高校までおむつしてた話。女の子はみんな頑張ってる!生理の愚痴や悩みが共

 感すぎたから分かち合おう。 2021/04/02 きりまる 13:16

【生理中の不満】彼氏に全部ぶつけてみたら男女の差が衝撃過ぎた...😨ぜひパート

 ナーと見て😢 2022/05/28 えみ姉 16:56

生理を話そう!“タブーにしない”【news23】

 2021/08/19 TBS NEWS DIG Powered by JNN 5:06

 日本での生理休暇の取得率の低さ、生理用品のCMの違いなど大切な視点が理解できる。

“生理休暇とれますか?” 浸透進まず 企業の取り組みとは

 2021/09/24 読売テレビニュース 9:44

 生理用品だけ黒い袋に入れられる事の問題点に気付きたい。この件もアンケートで生徒の意見を確認してみたい。続けて下の動画を視聴させるとより効果的。

【7割ガマン】「学校でも生理休暇を」生徒ら我慢のワケ

 2021/12/25 日テレNEWS 1:54

 生理問題の導入として使えるだろう。生理休暇を職場だけでなく学校でも適用することの是非をアンケートで問うてみたい。

【生理とスポーツ】女子高生&男性教諭が学ぶ!元・日本代表選手が伝えたいコト

 『news every.』16時特集 2022/06/12 日テレNEWS 8:01

 男性からすると見落とされがちな、重要な視点。運動部顧問必見。

【Talk up 1252】 #03 10代で知りたかったPMSとピルの話

 2021/10/11 スポーツを止めるな 9:19

 運動部顧問は特に視聴すべき動画。低用量ピルの有用性は注目される。

男子高校生が学ぶ!“生理”の授業 「これが日常茶飯事だとすごく大変・・・」

 男女の”見えない壁なくす社会へ|TBS NEWS DIG Powered by JNN 

 2022/06/18 3:15 

 これも生理問題の導入時に使えるだろう。

【男子校で"生理の授業"】生理への不安や困りごとに寄り添う大切さを学ぶ 

  防災の日 日テレNEWS 2022/09/02 2:14

 この視点は防災を考える上でも重要。

「性差」について考えた 高校生の声で実現した 新制度とは

 2021/04/22 テレビ大阪ニュース 8:04

[NHKスペシャル5min.] 月経 苦しみとタブーの真実 | 

 ジェンダーサイエンス 第2集 | NHK 2021/11/09 NHK 4:40

 保健体育でも視聴可能。

男性が「生理」について発信したらオカシイですか?

 2022/07/23 原貫太・フリーランス国際協力師 9:59

 日本人男性の生理問題への関心の低さが「生理の貧困」を見えにくくさせている。生理をタブー視する傾向が日本における女性の立場の弱さを助長しているのではないか…

【生理の貧困】女性の8人に1人。ナプキンを買えない衝撃の理由とは!?

 2022/07/29 原貫太・フリーランス国際協力師 17:48

 コロナ禍→バイト減少→生理の貧困(見えにくい貧困へ)…やや視聴時間が長いが、女性の貧困問題と絡めて理解できる点で役立つ、カッパオススメの動画。

[クロ現+] 生理の貧困 学生の5人に1人が「生理用品の入手に苦労」| NHK

 2021/05/25 NHK 4:36

 女性の貧困問題と絡めて理解できる点で役立つ、カッパオススメの動画。

“生理の貧困”広がる支援 背後に女性管理職の存在も

 2021/07/16 TBS NEWS DIG Powered by JNN 2:37

「生理の話」はもうタブーじゃない!【news23】

 2020/12/09 TBS NEWS DIG Powered by JNN 9:16

“タブー”だった生理への悩みに支援続々…コンビニは“割引”も(2021年3月12日

 放送「news every.」より) 2021/03/12 日テレNEWS 4:47

『#しかたなくない』生理などタブー視せず口に出して相互理解を目指す(2022年

 1月11日) 2022/01/11 MBS NEWS 4:11

【性教育】もしも彼女に「生理用品を買ってきて欲しい」と頼まれたら

 2022/04/02 夏山x瀧本の性知識アカデミー 22:40

 「生理の貧困」がなぜ日本でも問題となっているのか、これを視聴しておかないと男は理解できないだろう。やや視聴時間が長いが、教師必見の動画と言える。

「生理の貧困」に広がる支援、学校で お店で・・・無料配布【Nスタ】

 2021/04/09 TBS NEWS DIG Powered by JNN 3:17

 女性の貧困問題と絡めて理解できる点で役立つ、カッパオススメの動画。

RBC NEWS「つなごう沖縄 「生理の貧困」を考える」2021/10/07

 2021/10/07 【琉球放送】RBC NEWS 8:08

 沖縄の貧困問題の中で生理の貧困も考えていく視点が必要。中学校での学習例を通して日本の学校における性教育の遅れを自覚させたい。

アフリカの女の子が「生理」で学校を休むのはなぜ?

 2022/06/20 原貫太・フリーランス国際協力師 11:07

「アフリカの生理事情」の動画について、お伝えしたいことがあります。

 2022/06/28 原貫太・フリーランス国際協力師 11:06

 アフリカの問題と絡めてグローバルに理解できる。途上国支援においてこれは極めて大切な取り組みの一つだろう。

【男性から感謝の声多数!】生理周期“4フェーズ”を知って実生活に活かす!

 2021/07/31 夏山x瀧本の性知識アカデミー 12:11

【5分でわかる!】生理痛に神対応すると感謝しかされないから知ってみよう生理

 のこと【性知識5分study_#7】

 2021/02/15 夏山x瀧本の性知識アカデミー 7:52

【性教育】夏特有の生理の問題に対して女性にしてあげられること

 2022/06/06 夏山x瀧本の性知識アカデミー 11:18

 「生理問題4フェーズ・・・」は保健体育の時間だけではなく、社会科でも是非視聴させたいイチオシの動画。彼らの動画はこれ以外の分野も参考となるものが多いが、授業で視聴できる内容は限られている。ただ、この分野でも「多様性の尊重」がいかに重要な観点であるか、理解できる。

 

・ロキタンスキー症候群について

ロキタンスキー症候群のお話し🌈✨

 MRKH peer support.  2021/12/10  10:40

 あまり知られていない症候群だが、人知れず悩んでいる女性は決して少なくないという印象を受ける。

【約4500人に一人】ロキタンスキー症候群とは<知られていない女性の悩み> 

 瀧本いち華の性知識アカデミー  2024/04/27 10:24

 難しい問題であるが、この症状に悩みを持つ女性が予想以上に多いことは知られるべきだろう。

 

・性教育の遅れ

参考記事

若者の「性の悩み」に応じる街の保健室「ユースクリニック」 対面相談のハードル

 下げるのに必要なことは? 東京新聞 2024.4.8

 こうした取り組みがあるという事は知っておいた方が良いだろう。

理科教師が不適切性教育、過激な表現で自身の体験も 半数の生徒が嫌悪感訴える 

   産経WEST 2024.1.30

 この教師のどこが一番不適切だったのか、生徒に指摘させてみたい。また学校での性教育に必要な配慮とは何か、何を重視すべきなのか、できるだけ多くのポイントを挙げさせてみたい。もちろんこうした出来事を理由に学校での性教育全体を否定的に見るような方向は慎むべきではあるが…

県内エリート男子高で“性教育”の名の下セクハラにあった図書館司書46歳女性、教

   職員カーストで圧された声とは 女子SPA! の意見 2024.2.13

 学校での性差別問題の諸側面を垣間見ることの出来る、貴重な事例が紹介されている。エリート男子校、女子高の存在を学校の多様性、個性として擁護する意見があるが、事はそんなに単純ではない…等々、多くのことを考えるきっかけを与えてくれるだろう。


 

 

 

 

その5.自分とは何?~自意識と無意識(前編)~

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

・実際に授業で使用したプリント「自分とは何?」

 今回のテーマは「自分とは何?」です。覚醒している時、人は自分を意識出来ていると思っています。また気を失った時には「自分」と言う意識=自意識が一時的に喪失してしまったという理解の仕方をしている人は多いでしょう。気絶=「意識を失う」という表現もあるくらいですから。

 ならば睡眠中は自分という意識は完全になくなっているのでしょうか?いや、睡眠中でも時には意識がありそうです。たとえば夢を見ている時、「夢を見ている自分」と言う意識はあるように感じられます。

 逆に覚醒している時でも必ずしも人は自分を十分意識出来ていない瞬間があるのではないでしょうか?ボケてしまった訳ではないのですが、たまにふと自分が何のために今椅子から立ち上がったのか、分からなくなる瞬間があります。しばらくしてから、ああ、そうだ、メガネを探そうと思っていたんだ・・・などと立ち上がった理由を急に思い出したりします。

 そもそも意識という心の働きを支えている力として重要な要素は何なのでしょう。五感はもとより、自分を客観視する能力、自分に関わる記憶、自分の人格などが考えられます。従って今回は「夢と睡眠」、「記憶と学習」、「性格と人格」という三つの柱で自意識が成り立つ背景について少しだけ掘り下げて考えてみましょう。

 

(1)夢と睡眠

ヒトの睡眠は脳波などの研究からレム睡眠とノンレム睡眠の二つを繰り返しているといわれています。レムとは「Rapid Eye Movement」の各頭文字をとって名付けられたもので、睡眠中であるのに眼球がすばやく動いていたり、顔面や手足の筋肉もピクピクと動いたりする時間帯です。精神的な活動は活発で比較的浅い睡眠であり、睡眠らしくない睡眠ということで「逆説睡眠」という呼び名もあります。

 金縛り(=睡眠麻痺:意識は醒めているのに骨格筋が脱力している状態で、極度の疲労、強いストレス、不規則な生活等が原因。入眠期にいきなりレム睡眠が始まるときに発生)はもっぱらこのレム睡眠中に起こる現象であると考えられています。睡眠時間のおよそ四分の一をレム睡眠が占めます。

 これに対して深い睡眠に相当するのがノンレム睡眠です。睡眠時間の四分の三を占め、記憶の固定や整理に大きく関わっていることが近年、明らかになってきています。まず入眠時、次第にノンレム睡眠に入り、やがてレム睡眠に移行します。これを普通、約90分間隔で一晩に4,5回繰り返します。明け方に近づくほど眠りは浅くなり、レム睡眠の時間帯が長くなる傾向があるといいます。

精神的ストレスが強いときには寝言が多くなるといいます。レム睡眠のときには夢と関わる寝言が発せられるようですが、筋肉が弛緩しているために口ごもったような聞き取りにくい寝言となるのが特徴です。一方、ノンレム睡眠時は骨格筋の緊張が保たれており、比較的聞き取りやすい寝言となるようです。

 なおレム睡眠時の夢は物語性と情動性に富み、非現実的で奇想天外なものが多いのに対してノンレム睡眠時の夢は現実的でシンプルなものが多いようです。

レム睡眠では海馬の活動が活発になります。夢を見ているときに視覚野と記憶および情動を司る部位(海馬と扁桃体)が活性化している点から次のような仮説が呈示されています。

 生き残り戦略上、恐怖や不安といった情動的な記憶は重要であり、強く記憶に刻まれます。同じ状況になったときには即座に対応できるようにしておく必要があるからでしょう。そこで夢とは睡眠中に「危機回避のシミュレーション」を繰り返すために脳が作り出した仮想現実なのだ、という仮説です。

 

特集:黒澤明監督の「夢」

 2011年の福島原発の事故をきっかけに黒澤明監督のオムニバス映画「夢」(1990年公開)が再び注目された時がありました。果たして日本はこれまでの間、「夢は天才だ」と言った黒澤さんの言葉を活かしてきたのでしょうか?この映画の意義は世界の「危機回避のためのシミュレーション」として30年の歳月を経て現在、一層の重みを増してきているように感じられます。

 8篇のうち、3篇のあらすじをご紹介いたしましょう。

こんな夢を見た 「赤冨士」

 大音響と真っ赤に染まった空の下、大勢の人々が逃げ惑っている。「私」は何があったのかわからない。足下では、疲れ切った母と子が座り込んで泣いている。 見上げると富士山が炎に包まれ、噴煙を上げている。山の向こうの原子力発電所が6基とも爆発したという。居合わせたスーツの男は、悔恨の言葉を残すと近くの海に身を投げてしまった。 やがて着色された放射性物質が西風に乗って吹き付けてきた。

「私」は母子を守るべく上着を脱いで必死に振り払い続ける…

こんな夢を見た 「鬼哭」

 霧が立ち込める溶岩だらけの荒地を歩いている「私」を、後ろから誰かがついてくる。振り返って見ると、一本角の鬼である。 世界は放射能汚染ですっかり荒地と化し、かつての動植物や人間はおどろおどろしい姿に変わり果てていた。鬼もかつては人間であったときに農業を営んでいたが、価格調整のため農作物を捨てた事をしきりに悔やむ。

 この変わり果てた世界で何処へ行けばいいのか戸惑う「私」は、苦しみばかりで死ぬこともできない鬼に『オニニ、ナリタイノカ?』と問われ、ただそこから逃げ出すことしか考えない。

こんな夢を見た 「トンネル」

 敗戦後、捕虜となってひとり生き残り復員した元陸軍将校が部下達の遺族を訪ねるべく、人気のない山道を歩いてトンネルに差し掛かると、中から奇妙な犬(伝令犬)が走り出てきて威嚇してきた。何かに追われるようにしてトンネルを抜け、出口近くに差し掛かった「私」は戦死させてしまった小隊の亡霊達と向き合うことになる。自らの死を受け止められずに彷徨うことの空しさを説いて部下達を見送った「私」は地面に崩れ落ちて嗚咽する。が、たちまちあの犬が現れ、恐ろしいうなり声とともに吠えかかってくる。 「私」はただ、ただ戸惑うしか無い。

 

悪夢と明晰夢

 夢の中ではたいてい私達の思うようには事が運びません。思い通りにならなくて冷や汗、あぶら汗をかいたりすることもあります。しかしごく稀ではありますが、夢を自分の思い通りに操ることができる場合もあるといいます。これが明晰夢です。マレーシアの山奥に住むセノイという部族は夢を大変、重んじていることで有名になりました。毎朝、セノイの家族は夜見た夢を報告して話し合いをするといいます。そして彼らの幼児期に繰り返し見てしまいがちな猛獣に追いかけられるといった悪夢も朝の大人達の助言(また同じような夢を見たら今度は逃げずに振り返って猛獣をじっと見つめてみよ・・・)によって夢の中の猛獣はいつの間にか可愛い子犬になってじゃれついてくるのだとか。 

 東日本大震災時のPTSD(心的外傷後ストレス障害)によって毎日のように悪夢にうなされ、不眠状態で困っている(=悪夢障害)人を救う目的もあって明晰夢を意図的に見ようという研究があります。それによるとセノイのように毎朝目覚めたら昨夜見た夢を良く思い出し、特徴的な場面や場所、時刻、登場人物や動物、情景などを「夢日記」に記録して覚えておくと良いと言います。

 明晰夢を見るための最大のポイントは夢の中で夢を見ていることに気付くことができるかどうか…だそうです。根気よく夢の記録をつけておけば夢の中で見覚えのある情景に気付きだし、やがて夢を見ていること自体に気付けるようになるはずというのです。夢と気付いたら今度は自分の手や足を動かそうとしてみると良いようです。夢のなかでは自分の手足は思うようには動かないはず。動かなければこれは夢だと確信できます。そこでさらに体を軽くひねってみるのがコツ(理由はいまのところ不明ですが、回転イメージは夢から醒めてしまうことを防いでくれるようです)で、その時軽く回転できるようになれれば後は思うがままに夢を操れるとのことです。

 

特集:夢と現実のはざまに~パラソムニア(睡眠時随伴症)という病から~

一般には「夢遊病」という名で知られるパラソムニアに陥っている人は、睡眠中であるにもかかわらず、あたかも覚醒中であるかのような行動をとることがあるそうです。

 昔、カナダである男性が睡眠中、自分の妻の父親を殺してしまったという不幸な事件がありました。彼は何と夜中に起きだして車を運転し、数キロも離れた妻の実家にやってきて義理の親を殺害し、その後再び、車を運転して自宅に戻り、自分のベッドにもぐりこんだらしいのです。しかも彼にはその間の記憶が一切ありませんでした(ノンレム睡眠中の夢は覚醒後、思い出せないことが多いらしい。この患者はノンレム睡眠中に動き出してしまうノンレムパラソムニアにあたるようです)。ちなみに裁判では殺意の認定ができなかったということで、結局、彼は無罪となったそうです。

 あるダイエット中の女性患者はきびしいダイエットにも関わらず、体重が増え続けていました。真夜中、彼女に何が起きていたか…

 主治医が監視カメラを寝室とキッチンに設置したところ、夜中にベッドから起きだして冷蔵庫に直行、高カロリーの食材を駆使していろいろな料理を盛り沢山、作っては毎晩のように「ガッツリ」食べていた…そんな姿が映っていたそうです。ただ焼き肉をした晩はかなり危険だったようです。肉は生焼け、ガス消し忘れ…でも本人はまったく思い出せないのです。こうしたケースからはいわゆる多重人格障害や記憶喪失の症例も思い浮かびます。

 もちろんレムパラソムニアの患者も殺人事件を起こしたケースがあるといいます。こちらはもっと凄惨なのです。そもそもレム睡眠中の夢は感情的な展開になりやすいという傾向があるのだそうで…

 イギリスでの出来事。キャンプ中、駐車場で若者達とトラブルを起こし、さんざん暴力をふるわれてむしゃくしゃした状態で眠りに就いた中年男性がこんな夢を見てしまいました。夢では逆に無法者の若者を一方的にこらしめ、殴りまくり、その挙句にヘッドロックまでかけてしまったという、本人にとっては爽快感に満ち満ちた内容だったそうです。ところがです…

   いやな予感がするでしょう?

 そうなのです。翌朝、隣で寝ていた奥さんの見るも無残な…アアッ!が発見された…というのです。

 さて、これらの現象には一つ、重要なメッセージが含まれているようです。人間にとっては、ほとんど意識が無くとも大概の行動は可能だということ。つまり人は睡眠中であっても料理や自動車の運転など、かなり高度で複雑な仕事までできてしまうことを意味します。睡眠とは脳のすべての活動の休止を意味してはいません。脳全体の活動は低下しておらず、あくまでも「ローカルスリープ(局所的な睡眠)」なのであって、たとえ睡眠中であっても脳の一部は強く覚醒しているのです。

 逆に覚醒中であってもそれはあくまで「ローカルコンシャスネス(局所的な意識・覚醒)」に過ぎないという見方ができる、ということにもなります。これは「自意識」という現象を見直す上で極めて重要な知見といえるでしょう。

ところで人にとって意識の役割とは何でしょう?意識が無くともそれなりに行動できるならば、そもそも意識なぞ生物にとって不要なのかもしれません。実際、多くの生物の行動は無意識の自動制御に依存しているといいます。意識なしでも生きていけるならば、意識は何のためにあるのでしょう?さあ、あなたはこのことをどう思いますか?

 辛いことが重なったりしますと実際、「意識」や「心」の存在がお荷物に感じて投げ捨てたくなったりしますよね。皆さん、いかがでしょう?心・・・意識・・・こんなもの要らない…?

 池谷氏は人の意識=心の役割は行動を起こすためというよりも、むしろ「行動を取りやめる」こと、アクセルではなくブレーキの役割に求めております。前頭前野には自分の欲望を我慢し、行動を取りやめる中枢があります。とすれば自意識、意志、自我もまた前頭前野に深く関わっているのかもしれません。さらに右脳の角回(頭頂葉と後頭葉との境界)を電気刺激すると「幽体離脱」したような感覚(池谷氏によるとベッドに横たわる自分を2メートル程上方から眺める…まるで臨死体験にでてきそうな幻覚が生ずるらしい)が生まれるといいます。ここも客観的に自分を眺める中枢の一つなのかもしれません。

 確かに自分を客観視できる時には行動にブレーキをかけられることが多い気はします。とすれば人の意識、心はこうした脳の幾つかの部位のネットワーク、共同作業によって成立し、保持されているのでしょう。

人間が自己を客観視できる能力=自意識を持つのであれば、自己嫌悪、自己否定の挙句に自殺してしまう人が跡を絶たない事も一方でうなづけます。確かに犬や猫が自己嫌悪に陥り、その挙句に道路に飛び出して死んでしまう…とは思えません。彼らの死因のほとんどは事故死か病死だと思われますから。

 人が自己嫌悪に陥って最悪の場合、自殺に走ること、これもまたある意味、脳の進化が人類にもたらした悲劇、意識の誕生がもたらした副産物なのでしょう。

さてパラソムニアなどの話を聞きますと睡眠中、自分に何が起きているのか?本当は自分が何をしているのか、少しばかり気になってきますね?というか、そもそも今の自分は寝ているのか、起きているのか、その境界線自体があいまいになってきませんか?いや、むしろその境界線は私達が思っている以上にあいまいと言った方が良いのでは?だって私達が覚醒中に行っている行為の多くは実は無意識的に行っている、という指摘もあるくらいですから。

 今私は立っています。が、立つことに必要な筋肉すべてに対して私がイチイチ意識的に命令を下しているわけではありません。ほとんどの筋肉が無意識的に作動しているから、今、ここにこうして立っていられるのです。ある研究者によれば「話す」という、きわめて意識的、知的に見える活動ですら、その多くが無意識的でオートマティックなプロセスに依存しているといいます。

 私達は覚醒中であっても、ほぼ自動操縦されている。そしてごくまれに、危険や恐怖を感じて何かを思いとどまるため、突然意識的になって一部を手動システムに切り替える…生きているって実はそういうことの繰り返しなのかもしれません。あたかもジェット旅客機が離発着時を除けばほとんどの時間を自動操縦で飛び続けているように…

 さて繰り返します。私達が今現実だと思っているこの世界は厳密にいえば私達の脳が造り出している仮想現実=バーチャルリアリティ(VR)に過ぎません。そういう点では睡眠中に夢=仮想現実を見ている状態と、覚醒していて「現実」=仮想現実を見ている状態、この二つの間には私達が普段感じているほどの大きな差は無いと考えられるのです。

補足解説

 「体温と睡眠の関係」:体温と睡眠には深いつながりがあるようです。体温は一日のうち午後6時から8時にかけて最も高くなり、睡眠禁止帯と呼ばれるくらいに眠りにくい状態になっているようです。十代では午後9時過ぎに体温が低下し始め、睡眠に適した時間帯に入るといいます。睡眠中は大量の発汗作用(コップ一杯分)でさらに体温が低下し、熟睡できるようになっていますが、この体温低下のスピードが速いほうが寝つきはよいといいます。乳幼児は眠いと手足が暖かくなりますが、これも体温を低下させるために体表面の血流をよくして放熱しているからだそうです。

 深い眠りは免疫機能を高め、身体と脳の成長を促し、記憶力を高めることが分かってきています。寝不足は禁物!でしょう。うつ病患者が不眠に悩まされる原因の一つは深部体温の高さにあるとの指摘も(女性のうつ症状として冷えが挙げられる)あます。入浴後の深部体温の低下に合わせて寝ると寝付きが良くなるようです。早寝早起きを励行しましょう。

※睡眠のリズムが狂っているひとは朝日を浴びることで体のリズムをリセットできるといいます。逆に

 就寝時刻に強い光を浴びると生体リズムは2~3時間遅れるそうです。

   参考動画

 次期ノーベル賞候補×成田悠輔 「失われた30年の原因は国民総寝不足?」「日本は自覚できていな

  い睡眠障害者であふれている」世界的権威柳沢正史教授と成田 研究者同士のガチ対談!

  夜明け前のPLAYERS公式  2023/12/01  36:30

  健康になるための質の良い睡眠を十分な量、とるにはどんなことを心がけたらよいのか、最新の成

  果を踏まえて睡眠研究の世界的権威である柳沢先生が分かりやすく説明してくれている。非常に役

  立つ内容なのでぜひ視聴していただきたい。

 ◎【最強の睡眠術】睡眠学の権威に53の質問/「黄金の90分」で質が決まる/記憶力アップ/体温

  の調節がカギ/睡眠不足の病気リスク/就寝90分前に入浴/靴下を履いて寝るな【スタンフォード

  大学教授 西野精治】 PIVOT 公式チャンネル 2023/11/10  32:24

   落合陽一】国民病の「不眠」 良かれと思ってしがちなNG行為は?ブレークスルー賞・柳沢正史が 

    「睡眠」を徹底解説!“努力でショートスリーパーになれるは『全部ウソ』

     NewsPicks /ニューズピックス 2022/11/10  15:53

   ◎【落合陽一】睡眠不足でどんどん太る、認知症リスクが4倍に!睡眠の世界的権威、柳沢正史が解説

    「朝までエアコンが体に悪いは、都市伝説」不眠に悩む人が「長くベッドで過ごしてはいけない」訳

     とは?[再編ver] NewsPicks /ニューズピックス  2023/03/27  14:51

     最新の睡眠研究の概要は柳沢先生が登場する二つの動画で知ることができる

   ◎【漫画】眠れなくなるほど面白い 自律神経の話【要約/小林弘幸】

     フェルミ漫画大学 2021/01/22 10:58

     人が無意識のメカニズムに基づいて活動している側面に注目出来る。顕在意識だけでなく、身体や

     潜在意識の重要性に気付くことで体から心へのアプローチが可能となる。心理療法、運動療法、食

     事療法の理解に役立つ。

   ○[英語ニュース] 睡眠が記憶に与える影響|マシュー・ウォーカー| Matthew Walker |日本語字幕

     | 英語字幕 | Gariben TV 2021/10/01 5:23

     睡眠の大切さを短時間で興味深く説明

   ◎[サイエンスZERO] 夢に意味はあるのか?なぜ忘れてしまうの?夢研究の歴史と新発見 | NHK 

     2022/04/09   4:54

   ◎悪夢をなぜ見るか、解説します #不眠症#睡眠薬 #眠りが浅くなる原因

     2021/07/02 精神科医がこころの病気を解説するCh 9:30

   【快眠のために】「寝だめ」をするときの注意点!ベストな睡眠時間の確認方法とは?睡眠のウ

  ソ・ホントを世界的権威・柳沢正史氏の見解(2024年10月18日) 

  MBS NEWS  2024/10/20  11:15

 

(2).記憶と人格

 記憶はその保存期間から大きく3種類に分けられています。まず感覚記憶と呼ばれるもので、私達は大量の様々な感覚情報をとりあえず大脳皮質で受け取り、視覚情報の場合は0.1~0.5秒、聴覚情報で3~4秒の間だけとりあえず保存しているといいます。そのうちの複雑な情報は単純化されたり、多すぎるものは省略されたりする傾向があるようです(←錯視)。

 また印象の強いものや本人が関心のあるものは強調されたりして側頭葉、そして海馬に回され、次の短期記憶や長期記憶として保存されることになります。短期記憶は30秒~数分間ほど保存されますが、多くは長期に記憶する必要の無い情報としてたちまち消去されてしまうものです。短期記憶の特色は一度に記憶できる容量が限られている点。個数で言うとその数はおよそ「七つ」程度で「マジカルナンバー7」として知られています(曜日、音階等)。

 この分類表は記憶の階層にも則ったもので、顕在記憶は意識と関わる高度な記憶機能と位置づけられる一方、潜在記憶は生存に不可欠な要素が強く、下等動物に顕著な原始的記憶機能とされます。これは人間の成長過程にも適用でき、下の階層(手続き記憶~)から順に発達していくと考えられます。

 一番遅れて発達するのがエピソード記憶なので私達は生まれてから3~4歳頃までの記憶は無い(これを「幼児期健忘」といい、海馬は新生児では未発達で2~3歳にならなければ完全に機能できない)といいます。

 10歳頃までは意味記憶がよく発達し、単純な知識を大量に覚えこむことができます。その後はエピソード記憶が優勢になるようです。中学生の頃までは一夜漬けの丸暗記がある程度は効果的でしたが、高校生以降は理解して理屈を覚える努力や我が事のように感情移入し、エピソード化するといった工夫が必要ということになります。

 学習の成果である知識の多くが「潜在記憶」に分類される事は要注意!手掛かりなしでは想起できない記憶なので、肝心の場面(入試etc)で度忘れしやすい性質を持っています。

参考記事

「記憶ちがい」は必然だったーー思い出すたびに「記憶は変容してしまう」理由 

 現代ビジネス 澤田 誠 の意見 2023.5.20

参考動画

最高の記憶術!海馬を制する者は暗記を制す|しあわせ心理学

 心理カウンセラー・ラッキー 2019/02/13 11:55

【脳科学で解明】脳は見えないものまで記憶する!? 海馬の錯覚『境界拡張』

 を記憶術に応用する裏ワザ 解決の書棚 2025/05/13  24:11

 学習の効率を高める上で記憶のメカニズムを理解することは必須であろう。視聴時間はやや長いが、途中で止めて質問できる授業展開を考えておきたい。特に動画の前段で二つの設問があるので、アンケート用紙を用意してそれぞれ回答させ、結果を集計して動画内の結果と比べてみると面白いだろう。

・エビングハウスの忘却曲線と暗記法

 有名なエビングハウスの忘却曲線によると意味記憶を単純に暗記しようとしても人はたった一日で記憶した全体の四分の三も忘れてしまうようです。そこで長期的に記憶するためには「繰り返し学習」(復習)が必要となります。一説によりますと復習のタイミングは1日後、1週間後、1ヶ月後と三回行うのがベストだと言います。さらに恐怖や不安と言った情動と知識をリンクできれば意味記憶からエピソード記憶に変換しやすくなり、度忘れを防げるようになるかもしれません。

 海馬の記憶容量を左右する細胞(歯状回の顆粒細胞)は脳の神経細胞としては例外的に増殖することが最近、明らかになってきました。ただしこの細胞は死滅するスピードも速く、3~4ヶ月ですべての細胞が入れ替わってしまうようです。おそらくこの細胞には過酷な負担がかかり、次々と細胞がリストラされるか、過労死していくようなのです(ただし脳の細胞は神経回路=シナプスを増やすことで記憶容量を増大させているらしいのですが)。

 この細胞の死滅するスピードと増殖するスピードのどちらが上回るかによって記憶力の高低がかなりの部分決定することは確かなようです(なお海馬の記憶期間は長くても一ヶ月程度であり、それ以上の期間は側頭葉に保管)。

※ネズミの実験では親に毛づくろいをしてもらうなどの愛情を十分に受けた子ネズミは海馬の発達が良

 く、記憶力も高いようです。「皮膚は露出した脳」といわれるように発生的には皮膚と脳は兄弟関係

 にあるといいます。皮膚感覚は自己と外界との境界上に生じ、自己と環境との関係を直感的に捉えま

 す。鳥肌が立つ、身の毛がよだつ、トゲトゲした…対人関係のアンテナとしても皮膚感覚は前適応を

 とげていったのでしょう。人においても乳幼児における親子の肌と肌とのふれあいは脳の発達と心の

 成長に大きく関わるようです。実験では妊娠中のネズミに対してストレスを与えると生まれてくる子

 ネズミの顆粒細胞の増殖率が悪くなってしまうといいます。さらにやわらかいものばかり食べている

 と顆粒細胞の増殖能力が減ってしまう、大勢と交わって過ごす方がよく増殖する、適度な運動や軽い

 ダイエットも良いが、飲みすぎや心身へのストレスは悪い…といった気になる実験結果が近年、続々

 と発表されています。

 

補足資料:学習のコツ

 池谷氏は「脳のトリセツ」の中で以下のような学習の法則を挙げています。

テスティング効果

 英単語のテストに備えて・・・

 Aグループ:単語をひたすら繰り返して覚えこむ

 Bグループ:いきなり単語テストを繰り返す

 成績が良いのは・・・Bグループ

 出力の頻度が記憶力を決定する。物知りの人は「おしゃべり」。どんどんアウトプットせよ。

ツァイガルニク効果

 切りの良いところで勉強を終わりにするよりも中途半端な所で切り上げる方が良く覚えられる。予定の時間が来たら、悪あがきはせずにすぐに切り上げて何もしないで寝てしまおう。寝る直前にスマホなどを見てしまうと折角の学習が無駄になるだけでなく、寝付きを悪くしてしまう。

言語隠ぺい効果

 実験:六人分の顔写真を見せる。

 Aグループ:一人一人の顔の特徴を挙げてもらう

 Bグループ:ただ見せるだけ

 一週間後どちらのグループが顔を覚えているか?・・・Bグループ

 言語化することで言葉にできそうな部分に焦点が絞られてしまうため、顔の情報が歪曲され、正確な記憶にならなくなる。事件の目撃者が犯人の容貌を詳しく警察に報告するとかえって後で真犯人を見てもその容貌を思い出しにくくなる。言語化の落し穴に注意!

シロクマ抑制目録

 実験:5分間でシロクマに関する何かをできるだけ数多く想起させる。

 Aグループ:何の準備もなく、いきなり想起させる。

 Bグループ:あらかじめシロクマについて一切考えないよう5分間、努力させる。

 どちらのグループがシロクマに関することを数多く想起できたか? 

 BがAの3倍も数多く想起できる。

  ←人は忘れようとすればするほど忘れられなくなる傾向。

   「考えるな!」→「考えてしまう」

   「忘れろ!」→「忘れられない」

 忘れるためには無関係な趣味、スポーツに没頭させた方が良い。

 

 学習のコツは学習内容の「繰り返し」だけではなく、情報の「インパクト」と「面白さ」「イメージ化」そして「整理・分類」にもあると考えられています。また情動を生み出す扁桃体が興奮すると海馬の記憶能力が高まるといいます。実際、エピソード記憶のほとんどは喜怒哀楽の感情が絡んで想起されるはずです。感情移入、共感能力の高さが問われるでしょうか?

 さらに初めての場所に行ったり、初対面の人に会うと記憶力が活性化されるといいます。確かに何事でも初体験の事はよく覚えているように思えます。ということはチャレンジ精神旺盛な人は記憶力も良いはずです。

 加えて興味を持つと記憶力が活性化するようです。面白い、楽しいという感情も記憶力を向上させるようなので、脳のメカニズムの観点から見ても学習には知的好奇心が最も大切となるでしょう。

 視覚、聴覚、味覚、触角はすべて視床を通って大脳皮質に伝えられます。睡眠中は覚醒を防ぐために視床のゲートが閉じており、感覚情報は大脳皮質に届かないようにできています。しかし嗅覚は例外で、視床を経由せずに大脳皮質に届きます。このため睡眠中でも臭いは脳に感知されているのです。

 ちなみに睡眠中に香を嗅がせて記憶力を高める試みは成功しつつあるといいます。学習中に特定の香りを嗅いでもらい、ノンレム睡眠中に同じ香りを嗅がせると海馬の活動が高まり、学習効率が上昇するという実験結果があるようです。

 

※「夢を叶えるために脳はある」(池谷裕二 講談社 2024)より

・無実の罪を自白させる実験:「万引きで警察に連行されたことがある」という偽の記憶を巧みな誘導尋問(一日40分間、三日続けて行う)によって7割ほどの学生に植え付け、虚偽の自白を引き出すことに成功。ただし尋問する人は学生との親密な関係を築き上げる一方で、具体的で詳細な内容を例に出しつつ、犯行の細部まで思い出すよう働きかける。また適宜、程よい沈黙の時間を設けて自白のタイミングを創り出す。つまりかなり熟達した専門家でないと3割以下の成功率となってしまうらしいが、人の脳の記憶は脆いがゆえに、人の記憶を書き換えること自体はさほど難しくはない。

効果的な学習とは…

困難学習:楽に効率的に学習してしまったことはすぐに忘れてしまう。また容易に「わかった!」と感じてしまうと、人はもうそのことへの興味を失い、深く追及しなくなってしまいがち。むしろスッキリとは分からないモヤモヤをいつまでも抱えていた方が知識欲を維持し、思考停止、短絡的理解を防止できる。

交互学習:内容的にまとまりのある分野を集中的に学習する方が効率的で理解しやすいが、実はそれでは好成績をあげられない。テーマを絞って単元ごとに学習する、文科省では推薦される「ブロック学習」よりも、単元横断的に勉強する「交互学習」(国語教育の世界では古典となっている大村はま先生が取り組んだ単元学習の授業は「交互学習」に近いと思われるが、いかがだろう)の方が好成績をあげられるようだ。「交互学習」では「ブロック学習」に比べて達成感や「わかった!」という快感が乏しく、生徒たちに不安が残る学習である。にもかかわらず、成績が良いのは「困難学習」と同じ理屈であろう。脳は分かってしまったことへの興味を失う傾向を持つようである(学習内容へのモヤモヤ感を残す授業の工夫がむしろ必要なのだ。したがって討議形式の授業では明確な、誰もが納得できる、スッキリとした結論にたどり着く必要などない!むしろモヤモヤを引きずることの積極的な意味を教師は生徒たちに説明すべきなのだ)。

 

 後編に続く

 

その7.③学校のウソ臭さ

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

ブラック校則を自ら見直し? 「子どもの意見表明権」教育に取り入れ

 毎日新聞 2025.9.5

 …子どもの意見表明権は、1989年に国連で採択された「子どもの権利条約」の12条に規定。子どもが自らに影響を及ぼす事項に対して自由に意見を述べる権利を確保するとしている。

 日本は94年にこの条約を批准した。国内法は長く未整備だったが、子どもの意見表明権を基本理念に掲げた「こども基本法」が2022年に成立。その後初めての指導要領改定を迎えるため、学校での指導にも取り入れることにした…

 と記事にある。学校教育は児童生徒の将来に直結するため、教育内容に関して世界の進展に大きな遅れがあっていいはずがない。未来を生きていく児童生徒の歩みを学校教育が妨げていいはずがないのだ。特に児童生徒の権利に関してはなおさらであろう。まして科学技術の進展が目まぐるしい現代である。子どもたちの未来を預かるべき学校教育が、日本の場合、進取の精神を児童生徒から奪うような旧態依然のレトロ感をいつまでも醸し出し続けているのはいかがなものか。

 次の学習指導要領が学校現場に適用されるのは小学校で2030年度からである。中学校や高校はさらに遅れてしまう。つまり日本では子どもの意見表明権を規定した子どもの権利条約が国連で採択されてから41年、日本で批准されてから36年以降、ようやく小学校から順次、学校現場に反映される予定、というのだから驚き呆れる。この取り組みの鈍さ、遅さ…まさに「人権後進国」たる日本の面目躍如、というところか。

 これまでの長きにわたり、子供の人権条約の精神が日本の学校教育にしっかりと反映されてこなかったために生じてしまった、残念な事件事故は数多い。これによって犠牲となった児童生徒の数も決して少なくはない。政府、文科省はこうした世界の進展に対して大きな後れを取り続け、結果的に犠牲者を生み出し続けた失態を深く反省し、一刻も早く国民に謝罪すべきではないのか。

 実際にはかなり以前から児童生徒の意見を取り入れてブラック校則の見直しを推進している学校が出てきている現状は確かにある。とりあえず一部の動きにせよ、文科省の取り組みよりも学校現場の方が少しは早い…だからといって国民が安心できるわけではあるまい。

 30年以上にわたる日本経済の失速、経済や政治の停滞の背景に日本の学校教育の、余りにも時代遅れなあり方がある、と考えるべきだと思うが、いかがか。

教室にカメラ設置ってアリ? 「いじめを防ぐため」の案だけど「体育の着替え」

    は、「死角」はどうするの? 東京新聞 2025.4.18

    おそらく熊本市教委の人権意識の低さ、鈍感さがこうした安直な対応にも表れてしまうように思えるのだが、いかがか。ぜひ、授業で取り上げて監視カメラ設置の是非について議論させたい。まずは議論の手始めとしてイジメが発生する主たる原因とイジメへの対応のあり方が問われるはずだ。

    どういう環境下でイジメは発生しやすくなるのだろう。これまでの常識的発想ではこんなロジックで学校でのイジメが語られる傾向があったはずである。まず画一的な管理主義的教育体制の下で学校側が集団行動を偏重し続け、集団への同調圧力を過剰に強めてしまうと児童生徒の精神的ストレスは極めて大きくなってしまうに違いない。そのストレスはきっとイジメとなって発散されてしまう大きな危険性を孕むものだろう。あるいは集団主義的な校風になじめない児童生徒たちの間に数多くの不登校を生み出すかもしれない…

    とは言え、仮に集団主義、管理主義が大幅に改善されたとしてもイジメを社会から根絶することは不可能だと私も考える。そもそもどんな社会であれ、利害の対立が生じるのは不可避である。したがって利害の対立やイジメが生じたとき、学校側が問題の解決に向けてどう工夫し、どう対応するのか、が問われる。

 工藤勇一氏のように、集団間での対立、イジメの発生に対して児童生徒自らが対話を重ね、問題解決の方向に自分たちで歩み出せるように教師が工夫して対応できるのならば、イジメ問題の発生は学校にとってむしろ大歓迎ですらあるだろう。それは児童生徒にとって社会生活のあり方を、体験を通じて学ぶ、絶好のチャンスとなるからである。仮にそう考えられる教師集団ならば、イジメを無くす…という発想、教育目標は決して思い浮かばないはずである。逆に単なる学校や教師側の臆病な自己保身などから、イジメの未然防止のために監視体制を強化してしまうと、児童生徒の自律、自立のチャンスを奪うだけではなく、学校をさらに居心地の悪い場所にしかねないのではあるまいか。

 もちろん、学校における硬直化した画一的管理主義は今後も是正されていくべきであるが、それだけではおそらくイジメ問題の本質的解決には向かわないだろう。学校でのイジメ問題への対応は、日本の学校の根深い隠蔽体質も考え併せれば、イジメの発生防止という観点に軸を置くのではなく、イジメ発生後の対応の在り方の方に対策の軸を置くべきではあるまいか。

 イジメの根絶を図るために児童生徒への監視を強め、管理を強化せんとする熊本市教委の発想は、以上の点から問題の本質を完全に見誤っており、さらなるイジメのステルス化、陰湿化、悪質化をも招きかねないと考えるが、いかがか。

 そもそも今はやりのSNSによる誹謗中傷を、監視カメラの設置で防げるはずはないのだ。イジメは教室内での窃盗事件とはわけが違うし、監視強化によってイジメの発生を完璧に防げるという幻想も即刻、捨てていただこう。そしてイジメ問題をもっぱら児童生徒たちの力で解決できるよう、いかにして議論を組み立てていくのか、熊本市教委および教師側は真剣に考えていくべきであろう。

ニュージーランド公立小の"自由で刺激的"な日常 移民大国で根付く「ダイバーシ

   ティ教育」の実際 東洋経済オンライン 鳥羽 和久 の意見  2025.1.10

   教育においてダイバーシティを尊重するという事は一体どういうことなのか、ニュージーランドの取り組みを例にして具体的に知ることが出来るだろう。ダイバーシティ教育の実現には大きな予算が必要であることが繰り返し強調されている点も重要である。振り返って我が国の学校教育の残念なまでの低予算、教師の出血大サービス残業で無理くり体裁を整えているみすぼらしさと上辺だけのダイバーシティ尊重の掛け声を見るにつけ聞くにつけ、絶望的な感覚を覚えてしまうのは私だけであろうか。

30年変わらぬ体育館での雑魚寝「劣悪環境」の避難所が生む関連死 自治体任せから

   脱却を 備えあれ⑤避難力 産経新聞 2025.1.6

   阪神淡路大震災、東日本大震災・・・肝心なことの多くを過去の経験から学んでこなかったのは政治家だけではあるまい。能登半島沖地震から一年経っても被災地の復興の歩みの遅さ、ノロさは本来、安全で居心地の良い避難所として機能すべき学校の体育館で、寒さに震える「雑魚寝」状態が一向に改善されていない点にも伺える。果たして今回の災害発生後の避難生活における病死、自死の比率は30年前に比べてきちんと減ってきているのだろうか。

 思えば学校の体育館ほど避難生活を送る場所として不適切な施設は無いだろう。そこは大勢の人々が避難生活を送るために配慮され、設計されたものでは決してなく、本来は児童生徒らに忍耐と根性を養成する試練の場であり、むしろ積極的に快適さを嫌う空間であったはずだ。そこでは多くの児童生徒が退屈で長いだけの校長訓話をひたすら耐え忍び、季節によっては酷い暑さ寒さにも耐え忍ばねばならない、神聖にして厳格な「鍛錬」の場ではなかったか。どうみても図体がデカイだけのガランとした体育館の空間は暖房にまったくなじまず、ましてクーラーなど、教師たちにとっては想定外、論外…現代的な空調設備などは、ただただ児童生徒を甘やかすだけの、贅沢過ぎた余計な施設であったはずだ。

 冬はかじかむ手を握り締めて寒さを耐え忍びながらの始業式、終業式、卒業式が長時間にわたって繰り返され、夏は酷暑の中で大汗を書きつつ蒸し暑さを耐え忍びながらの終業式、講演会などが繰り返された。もちろん部活動では地獄の特訓が待ち受ける、恐ろしい試練の場であった。まさに戦時中の「皇国民錬成」精神の生き残りそのものだった体育館である。そもそも40人余りがぎゅうぎゅうに詰め込まれていた狭い教室にさえ、クーラーが本格的に導入され始めてからまだ20年も経ってはいないのが、経済大国日本の公教育の実態だったのだ。経済的繁栄の絶頂を謳歌していたあのバブル期でさえ、日本の公立学校の教室にはクーラーがほとんど存在していなかったことを思い返してほしい。

 災害時に学校に足を踏み入れた避難民は速やかに自身の学校時代の辛かった記憶を取り戻し、しばらくは我慢強く生活を送ろうとするだろう。が、もはや児童生徒たちの従順さと体力を持たない大人たちが長期間耐え続けられるほど、学校の施設は優しくない。元来が兵舎をモデルにした近代の学校施設は、野営よりは多少マシであるものの、今時の、冷暖房完備の御家庭とはまったく違う発想で設計されているのだ。

 日本の学校は決して生活する場ではなく、いまだに鍛錬の場である。そのことを痛感するのが学校での避難生活であったはずだ。この記事は日本の学校がこれまで抱えてきた、古色蒼然とした軍隊由来の発想と避難生活の場としての快適さを求める発想との相克をも伺えて実に興味深い。そして同時に教育予算と防災予算を徹底的にケチり、国民の幸福と安寧、生命を軽視してきたこの国の政治の貧困さをも痛切に思う。

 政府はこのまま有効な対応をサボり続け、連発しかねない南海トラフの大地震や首都圏直下型大地震、富士山の大噴火を漫然と待つつもりなのだろうか。防災、避難、後片付け・・・その多くをいまだに自助努力とボランティアに依存する国家を今後も「災害大国」などと日本が内外に喧伝し、自称していくのはいかがなものか。

 おそらくロシアや中国の侵攻、北朝鮮のミサイルを待つまでも無く、日本は自然災害によって一気に衰退するに違いない。きな臭い国際情勢が続く現在、確かに防衛費の増額も必要だろうが、確実にかつ目前に迫ってきた大災害への備えはさらに緊急性が高いのではあるまいか。他国の侵略で滅ぶ前に自然災害で滅ぶ方が先だとしたら、「災害大国」日本の名がすたるだろう。

 かつては優秀な人材を多数抱えて敗戦からの奇跡的な復興を遂げ、「人材大国」とも呼べるほどに国民の優秀さを誇ってきた日本である。しかし、ここ三十年余りの間にひたすら教育予算と社会保障費をケチり続け、全国に金権政治家、老害政治家を蔓延らせて、いまや酷いレベルまで子供や若者の未来を閉ざしてきた日本の現状を見た時、「人材大国」、「災害大国」と日本を呼ぶよりも「人災大国」と自称すべき時に至っているように思えるのだが、いかがか。少なくとも真剣に国民を守ろうとしない今の政府に税金を差し出す義務など国民にあろうはずがない。

 少子高齢化を含む様々な課題を先送りしてきた政府の責任はもちろん重大だが、主権を持つとされる国民の選択にも問題は多いに違いない。加えてこの問題の責任の一端は住民を欺いて避難設備の充実をさぼり、予算をケチってきたクセに、漫然と避難所を引き受け続けてきた地方自治体と教育行政側にもあるだろう。

 ところで教師たちはいざという時、自分たちの家族を放置したまま、周辺住民の避難生活をどこまでみすぼらしい学校の中で責任を持って支えられるのだろうか…疑問だらけではあるまいか。自宅ならば自己責任で防災用品を十分に整え、非常時に備えることは各自の判断でできる。しかし、いざという時、学校近くに住む教師たちはその自宅を離れてまともな設備や非常食の備えも無い学校に集合させられ、大勢の避難民のためにあくせくと働くのだ。冷たい体育館の床で一体、いつまで寝起きを強いられるのだろう。とりわけ問題とされるトイレや生理用品の件だが、これに関しても学校において何らかの改善や用意が出来ている、などと感じたことは一度も無い。

 こうした貧弱な施設と備えのままで果たして大地震や大噴火後の避難生活に現在の学校は、教師たちは、住民たちはどこまで耐えられるのだろうか。そもそも近隣住民は災害時における学校施設の不備をどこまで知っているのだろうか。実際、学校の現状を知る多くの教師は自分の家屋の安全が確認できさえすれば、本音の部分では家族とともに自宅での避難生活を望んでいるはず。

 こうして災害時の悲惨な避難状況をわずかに想像しただけでも、多くの人は教師にだけはなりたくない、と切に思うのではあるまいか。様々な点で避難施設としての条件を欠いたままの学校の惨状はもっと広く世間に知られるべきであろう。

長野県、自己実現できる「ウェルビーイング実践」70校決定

   リセマム 2024.12.7

   …飯田市では市内すべての小・中学校で小中一貫教育を導入。小・中学生の異学年が一緒に取り組む行事や学習、地域を生かした探究的な学びをつくる特設教科(教育課程特例校制度)を設置する。根羽村(下伊那郡)の公立学校では、小規模ならではの「学びの村づくり」として、時間割を子供たちが決定したり、地域の人が学校の教育に参加したりできる仕組みづくりを計画。栄村(下水内郡)の小・中学校では、制服や運動着、化粧やピアス、染髪などのルールは子供たちが決めるとし、揃える指導はやめ、多様な生き方や学び方を支援していくという。…

   長野県はこうした取り組みの準備期間として2025年度をあて、翌2026年度から本格実施されるという。正直に言って余りのスピード感に驚きと大きな不安を隠せない。ただし改革例として挙げられた取り組み自体は100年余り昔の取り組み(大正新教育運動)で見られたものとほとんど大差は無く、ICT化による個別最適化教育の推進以外に大した新しさはみられない。むしろこうした取り組みが事前にどれほどの計画性と予算を伴っていたのかを私たちは厳しく注視すべきであろう。

 大雑把に振り返れば大正新教育運動は大正デモクラシーの風潮に乗っかって、制度的、組織的、予算的なバックアップ体制を十分には構築できないままスタートしたため、ほぼ実験段階のレベルのままに収束している。計画性に欠けた拙速で無謀な取り組みによる失敗はその推進者が標榜していた人権尊重と民主主義の価値を結果的に貶める役割を果たしてしまい、昭和に入ると国民学校による皇国民錬成教育という恐ろしい反動を招き入れてしまった。どんなにきれいごとを叫んだとしても、それだけではきれいごとが実現するわけではない。わたしたちはこれまでも「教育改革」の名で再三繰り返されてきた、こうした目くらましに騙されてはなるまい。

 学校教育の改革の成否を握るのは法制度の整備や予算面などでのバックアップに加え、改革を推進する歯車となるべき人材の育成の進み具合である。これは教育学の世界では既に一世紀近く前から指摘されてきた。長野県では一体、こうした人材の育成をこれまでどうしてきたのだろう。どうみても人材の育成は一朝一夕にできるものではあるまい。実に怪しい限りである。

 まずは新しい改革の主旨を理解し、それを実践に移せる管理職が改革の先頭に立たなければ話になるまい。管理職の頭の中が「昭和」のままではまさに「ふてほど」そのものであろう。もちろん、一般の教師たちにも改革を推進していけるだけの知識と理解、それに心身の余力がなければなるまい。既に「教育改革」と称する過重労働ですっかりブラック化した学校にそれだけのゆとりが残されているのだろうか。この点でも大いに危惧される。実際問題として、県は児童生徒のウェルビーイングを言う前に、教師のウェルビーイングの方をまずは心配すべきではないか…

 かつての「教育改革」がことごとくそうであったように、長野県の取り組みが教師たちの疲弊を一層募らせ、挙句の果てに無責任な「絵に描いた餅」で終わらぬことを祈るばかりである。

「どういうつもりなのか」同級生から「ばい菌」扱いのいじめ…女子児童は100日

 以上欠席 急きょ「重大事態」認定に不信感 京都市 別児童のいじめでも一転し重大

 事態を認定 毎日放送 によるストーリー 2024.7.24

 2020年から始まっていたイジメを今頃になって教育委員会が重大事態に認定する背景に一体何が考えられるだろう。いじめ防止対策推進法に対する理解の程度が各地の教育現場ではかなりマチマチとなっており、殊に管理職によって大きな差異があることは容易に推察できるだろう。今回の件も担当者が新旧入れ替わったことでようやく表面化してきたと考えられる。

 しかし重大な案件に関しては統一的基準に基づく迅速な対応が求められるはずだ。法の規定に基づかない、現状の属人主義的な対応ぶりにはどうしても大きな危険を感じざるをえない。管理職の世界における年功序列、先輩後輩関係のあり方に深くメスを入れない限り、こうした事はいつでもどこでも起こり続けるだろう。

 とりあえず、今回の件ではこれまで重大事態としての認定を行わなかった当時の管理職、及び京都市教育委員会の担当者への厳しい処罰を下すべきである。たとえ後輩の身であっても、対応を間違っている先輩を厳しく処断できないようでは教育行政への市民の信頼は崩れる一方となるだろう。

この社会はまるで「寄生虫」のよう…いつのまにか「わたし」に侵入して内側から

 変えてしまう「おぞましい実態」現代ビジネス 

 内藤 朝雄(明治大学准教授・いじめ問題研究) の意見  2024.5.25

「一回いじめたら、止められない」「何か暴走してしまう」…意外と知らない「い

 じめの構造」現代ビジネス

 内藤 朝雄(明治大学准教授・いじめ問題研究) の意見 2024.5.25

 学校が果たしている社会的機能の一つ「社会化」のブラックな側面を寄主に対する寄生虫の不気味な影響力にたとえてみるのはイメージしやすくて効果的だろう。学校のどんなところが寄生虫の影響力と同じような不気味な感染力を持っているのか、生徒たちに問いかけてみたい。少なくとも学校とは「善」なるものと頭から決めつけて思考停止に陥っている生徒たちには刺激的な問いかけになるだろう。

<著者は語る>データの独裁許すな 『ヤバい統計 政府、政治家、世論はなぜ数字に

 騙(だま)されるのか』 統計学者 ジョージナ・スタージさん

 東京新聞 2024.4.28

 統計のウソを見抜くことは難しいが、常に疑ってかかる姿勢は保つべきだろう。特に政府、文科省の統計は怪しい限り。つまり「検定」なるものを通過した教科書や資料集ですら、全面的に信用するのは間違いだろう。授業では年度初めにこの記事を読ませ、統計資料の安易な利用に釘を刺しておきたい。

 とはいえ、政財界によるバイアスのあまりかからない、ごく基本的な統計資料(人口統計など)はきわめて有用なデータであり、こうしたデータをどれだけ授業に生かせていけるかが、教師の腕の見せ所でもあろう。

体罰を訴えた保護者アンケートを破棄して偽造 小学教諭を処分 岩手

 朝日新聞社 によるストーリー 2024.6.17

 アンケート調査の危うさはこうしたデータの偽造が絡むと一層厄介である。教師の評価が絡む児童や保護者向けのアンケートを教師自身が分析するのはやはり、やめた方が良いだろう。分析は保護者会や生徒会で行った方がデータの信頼性は高まる。回答者が忖度なしの評価をできるような条件を十分に満たさないアンケートならば行わない方が良い。安易な設計のアンケートは危険なだけで、悪用されかねない。

無意識に行動を操られる「ダークパターン」の危険 「妨害」「こっそり」など知るべき7

 つの悪質手口 東洋経済オンライン 酒井 麻里子 の意見 2024.4

 この知識は児童生徒たちがネット詐欺の被害に遭わないために必要な知識になるだろう。加えてこれまで学校教育で行われてきた「教育」という美名に隠れたある種の「洗脳」を自覚する上で役立つ知識だと思うが、いかがか。

 かつて教育社会学では学校での制服や男女別名簿、教壇などが無意識的に児童生徒に及ぼす影響を検証する研究がP.ウッズ(イギリス)らによって盛んに行われていた。つまり児童生徒を無意識的に一定の方向へとコントロールするある種の政治的目論見、「ダークパターン」の研究があったのだ。

 これはフランスのM.フーコーらの監獄への考察にも通ずるもので、軍隊由来の校舎や制服、体育での整列や行進と軍隊、刑務所との類似性が指摘されていた。たとえば日本ではランドセル、セーラー服、詰襟の制服、「気を付け」の号令と「休め」の姿勢などはいずれも軍隊由来のものであった。明治期に掲げられた「国民皆学」と「国民皆兵」というスローガンは近代的国民国家の形成と「富国強兵」を急ぐ明治政府の民衆に対するある種の洗脳政策といっても過言では無かったはず。

 今、学校教育を通じてどのような「洗脳」が行われているのか、冷静に振り返る視点は教師だけでなく、実際に「洗脳」の被害を被っている児童生徒たちにも「解毒」のために必要となっていると私は考えている。

修学旅行で預かった児童150人の財布、引率教員が無断で中身調べる…西宮市教

   委「不適切だった」 読売新聞 によるストーリー 2024.8.1

   学校にはイジメ事件に関しては生徒のプライバシー保護を盾にして事件の全貌解明を妨害し、隠蔽を図ろうとするクセに、普段は児童生徒のプライバシーの管理をおざなりにして時折、漏洩させてしまったりする残念な傾向があったりする。教師たちの多くはいかにも表向きは児童生徒の人権を尊重するフリをしているが、一部の教師の場合、子どもの人権条約すら一顧だにせず、残念ながら生徒指導を名目にして平気で児童生徒のプライバシーを侵害してくる。

 今回の件は不適切だった…では済まされないだろう。校長自身がこの指導に何ら疑問を抱くことは無かった、というから驚きだ。人権意識が今の今に至っても昭和のままであり、管理職や市教委からしてコンプライアンスの欠片すら存在していない、全くの時代遅れの認識にとどまっている、と批判されてもおかしくはあるまい。

 確かに40年近く前、高校でも修学旅行時、生徒たちの持ち物検査をしていた経験がある。当時はもっぱら酒、タバコ、ウォークマンやラジカセなどのチェックが主だったが、まだまだ校内暴力の余韻が残っていた時代でもあったため、検査すること自体はある程度まで仕方ないだろう、と感じないわけではなかった。事実、遠足の際、バスの後方の座席でお酒を回し飲みしていたグループの存在が発覚したことがあった。当時は中位層の高校でも最悪、ナイフ等の所持だって起こりうる時代であり、一切、持ち物検査をしないで済むような旅行がほぼほぼ無理な状況は確かにあったと思う。

 しかしその当時ですら所持する金額に関して上限を設けていたとしても学校側は一切、本当の所持金を確認してこなかった。生徒の所持金は保護者の所持金と同質のものであり、基本的には生徒及び保護者の判断にゆだねられるべきプライバシーそのものである。生徒にあまりにも多額の所持金がある場合、盗難や紛失の恐れが増し、いざという時、十分な事前指導を行わなかったと学校側の責任が追及されるような事態はもちろん想定しておく必要がある。だからこそ、事前に多額のお金を持参させないよう、保護者にも依頼するし、所持金の上限額も提示するのだ。しかし、その先はやはり保護者と生徒自身の自己責任に委ねるほか、手立てはあるまい。

 生徒たちにはこの件をどう思うのか、なぜこのようなことが学校ではまかり通ってしまうのか、じっくり考えさせたい。

 

・名古屋市教委金品授受問題

徹底追及 名古屋市教育委員会の金品問題 不可解な“名簿とカネ” 学閥で校長

 が…? CBCニュース【CBCテレビ公式】 2024/03/26 7:43

 ここでも寺脇氏の学校現場への無知がさらけ出されている。管理職候補を推薦する名簿の存在は千葉にも古くからあったはず。管理職採用を巡っては学閥や校長会の影響力もかなり大きいのは教師たちにも良く知られたことである。特に愛知教育大出身者が管理職の多くを占める名古屋市の場合には管理職採用試験にしっかりとした公正さがある、と思う方がおかしい。

 寺脇氏のような、学校現場への知識にまったく欠ける人物が文科省の官僚だったわけだから、教育行政が迷走してトンチンカンな政策をとり続けるのも当然であり、文科省の改革抜きで教育改革など完全に不可能なのである。

座長「なれ合い構造あった」 名古屋市教育委の金品授受問題報告書

 毎日新聞 によるストーリー 2024.8.28

 そもそも文科省の官僚だった寺脇氏が座長を務めるような調査検証チームが出す報告書なぞ、一体誰が信用するのだろうか。ただの茶番に過ぎないのは見るまでもなく明らかであろう。チームは「…名簿や金品による人事への影響は否定」したというから呆れる。一体、どんなデータ、資料を根拠にこんな結論が出されたのか…限りなく疑わしい。どうせまともな調査など、行われたわけがあるまい。

 他方で「教員集団の閉鎖的・排他的な仲間意識、なれ合いの構造があった」と厳しく批判したというが、これは明らかに口先だけ。世間を欺くただの茶番であろう。教育行政側のメンバーだった人物を座長とするような、厳格さ、公正さ、第三者性に欠けるこの調査検証チーム自体が市教委側と連携してズブズブの馴れ合いを演じているのは想像に難くない。教職員課長や教育長も務めた前市長の松原武久氏へヒアリングしたというが、こんなもの、岸田首相がオリンピック問題で行ったという森元首相へのヒアリング並みに信用できない。市教委および調査検証チームと馴れ合い、じゃれ合う関係性の中で松原氏が知らぬ存ぜぬを貫くのは極めて容易であっただろう。

教育関係者「闇深い」 名古屋市教委の金品受領問題報告書

 毎日新聞 によるストーリー 2024.8.28

 これ管理職の選考を巡る厳格さ、公正さに欠ける金品授受は教育公務員として見逃せないはずの大きな信用失墜行為であり、関係者の分限問題に関わるべきレベルの深刻さがある。にもかかわらず、調査検証チームの報告書には危機感の欠片も見られない、生ぬるさがある。再調査が必要なのは言を俟たない。

名古屋市教委の金品授受、総額1300万円超に…検証チーム「癒着と映らないか

   との視点が欠落」 読売新聞 によるストーリー 2024.3.30

 文科省の官僚だった寺脇氏が「…推薦名簿がまかり通っていたことも驚きだ」と指摘していることに驚く。文科省にいた人物が「推薦名簿」すら知らぬこと自体、恥ずかしい事だろう。学校現場の事を知ろうとしない人物が平気で官僚を務めている文科省というお役所のオワコンぶりに私はむしろ興冷めしてしまう。文科省がこんなテイタラクだから教育現場での不祥事が絶えないのではあるまいか。官僚たちの学校現場に対する無関心、無知、勉強不足こそが諸悪の根源なのかもしれない。

元校長らへの人事案「内覧」会合費にも支出 名古屋市教委の金品授受

   朝日新聞社 によるストーリー 2024.3.29

 金品の授受に関しては公にされると良くない、との認識が関係者の間で共有されていたという。同様の話はかつて名古屋に限らず、全国的にあったはずで、教員に採用されるためには教育委員会の有力者に金品を送るのが必須だった県があるとも聞いている。しかし声高にコンプラが叫ばれている現在、この悪習はとっくの昔に無くなっているものと不覚にも私自身、思っていた。まさに「不適切にもほどがある」ということだ。

 とはいえ数々のイジメ事件隠蔽など、大きな不祥事を繰り返してきたこれまでの学校社会の異様さを思えば、この程度の事があったとしてもさほど驚くほどのことではあるまい。世界や時代の進展に背を向け、百年一日のごとく因循姑息な、馴れ合いだらけの村社会に安住してきた日本の学校教育界である。おそらく同様の風習を続けてきた市町村が他にもあるに違いない。

 実は日本の学校社会全体が政治家の世界に負けず劣らず、とっくの昔に「不適切にもほどがある」状態であったはず。政治家の裏金問題は教育委員会の裏金問題とよく似た構造をはらんでいるのではあるまいか。

 

公教育のモデルつくるつもりが「法令違反」 奈教大付小教員の嘆き

 朝日新聞社 によるストーリー 2024.4.5

「文科省の二枚舌」元次官も憤慨、奈良県の教員“総取り替え”騒動で注目「学習指

 導要領は憲法違反?」SmartFLASH によるストーリー 2024.4.4

 前川氏の意見に同感である。20年以上前のことだが、君が代の歌詞を授業で教えていたら県教委のメンバーからそこまで教えなくともよい、との指導を受けてガッカリさせられたことがある。君が代をどのように、どこまで教えるべきなのかといった判断が文科省から明確に示されることなく、たかが教員委員会のメンバー一人の主観で指導を受けたことにも強い反発を覚える。

 そもそも君が代の歌詞を高校の生徒たちがこれまで一人も知らなかったこと自体、本来ならば大問題なはず。学校で歌うことを強制している「国歌」の歌詞と意味を学校ではきちんと教えてはならない、というような、ありえないほどの珍妙な指導がまかり通る教育行政の不思議さに国民はもう少し気付くべきだろう。

 一方で確かに義務教育段階では多少の統制が必要であり、学校や教師の間で教える内容に大差があるのは問題。しかし今回の件では大綱にすぎない学習指導要領があたかも「神の言葉」と敬われた大日本帝国憲法であるかのような仰々しさで金科玉条のごとく奉られている印象を受ける。これは教育界に戦時中の超国家主義的な発想がいまだ生き残っている証拠ではないのか。しかも文科省がズカズカと一学校の校内人事に全面介入するほどの逸脱が本当にこの小学校に存在していたのだろうか…怪しい限りである。仮に大学や文科省の今回の判断が正しいとするならば、かつて私が教えていた高校生たちに小中学校時代、しっかりと君が代の歌詞を教えてこなかった千葉県の小中学校の教師たちの方こそ厳しく処罰されるべきであろう。

 きっと文科省の指導の背景には政府与党の強い指導があったに違いない。だとすれば教育における政治的中立性を守るべき文科省や国立大学がいとも容易に政治的圧力に屈し、教員の半数を転出させるという違法なレベルでの厳しい人事介入を行った…すなわち政治的中立性の順守を謳った憲法や教育基本法を厳守すべき文科省が自らそれに違反するような指導を行った、ないしは黙認したということではないのか。

 やはりこの役所の堕落ぶりは想像を絶している。

「不登校の原因はいじめ=0.2%」という文科省と学校を信用できないワケ

   JBpress 石井 志昂,湯浅 大輝 によるストーリー 2023.8.18

 現場に長くいた人間からすれば、この手の調査結果は全くと言って良いほど信用できないに決まっている。

公立小・中学でのいじめ認知件数 自治体間で最大30倍の格差

 毎日新聞 によるストーリー 2023.6.21

 学校によってはイジメ認知件数がゼロのところもあったという。もちろん現実的に見て「ゼロ」はありえない数字である。といっても別に驚くことはあるまい。市町村によっては学校からの報告に虚偽が含まれるのは当たり前であり、むしろ普通のことではないのか。管理職が自らを不利にするような報告をお上にあげるわけがない、と思うのが教育界の常識。

   全国学力テストの結果がほぼほぼ信用できないのと同様に、学校の上っ面をフワッとなでる程度の安易な手法による報告や調査で学校現場の実態がつかめる、と思う方が今やあまりにも能天気なのだ。

 いや、もとより調査を命じた側も「やってます」感を演出するためだけに嫌々、調査を行なわせているに過ぎないはず。でなければ神戸市のようにイジメ事件の隠蔽が学校や教育委員会の中で執拗に繰り返されるはずがないのである。

   逆に文科省が各教育委員会や学校の牢固な隠蔽体質を知らぬわけがあるまい。所詮は「同じ穴のむじな」、この調査自体が国民を欺くだけの、ただの茶番だと思うべきだろう。

 

   しかし、こうしたアリバイ作りを主な目的とする虚しいだけの仕事だからといって決して侮ってはいけない。学校のブラック化はお上から送り付けてくるアリバイ作りのためだけのような文書の山が生み出している側面もあるからだ。

   教員不足が問題視される以前から指摘されていたのが、学校における管理職希望者の減少であった。実際、傍から見ていても教頭や教務主任の仕事量は異常なほど多く多岐にわたってきている。

 管理職として必要とされる能力はもはや学校教育への深い理解や豊富な経験、授業の力などではなく、膨大な事務仕事を滞りなく表面的にスマートにこなす事務処理能力の高さに特化してきているという印象が強い。

 形骸化した事務仕事の削減は文科省以下、すべての部署に共通した切実な願いとなっているはずだ。そしてこの願いが実現するためには予算と人員の増大が必要不可欠であることは言うまでもなく、しかも予算増の可能性は現政権下、限りなくゼロに近い。こうしたことに由来する先の見えない絶望感こそが現今、多くの教師の心身を追い詰めている最大の元凶なのではあるまいか。

いじめで不登校、学校からの認知報告は卒業後 保護者は再調査求める

 朝日新聞社 によるストーリー 2024.4.4

 一体、いつになったらこの手の問題が無くなるのだろうか。この種の問題が執拗に繰り返されている現状こそ、被害者側が学校や教育委員会に期待しているうちは問題解決がほとんど不可能だということを物語ってはいまいか。教師だけではなく、保護者もまた教育行政への過剰な期待を捨てるべきなのではあるまいか。

 

イメージは「しんどそう」だけど…将来の夢を「先生」にしてね 兵庫県教委が高校

   に職員派遣、やりがい語る 

  神戸新聞NEXT/神戸新聞社 によるストーリー 2023.7.7

 学校のブラック化を主因とする教師不足が深刻化する中で若者の教職離れを食い止めようと各地の教育委員会が躍起になるあまり、恥も外聞もなく教員採用試験のハードルをひたすら下げてしまおうとしている。これは言ってみれば教職の大安売り、たたき売りを全国規模で展開しているようなものであろう。

 

   この状況がどんなに酷く、みっともない話なのか、極端な例だが、分かりやすいので医者で例えてみよう。仮に深刻な医師不足を理由に医師会の判断で医師の免許を持たない人が医師として病院に勤められるようになったとしたらどうだろう。さて、免許を持たない人が今、あなたの目の前で不安げにメスを握っていて、これから震える手であなたの心臓を手術する…患者の立場からすれば身震いするほどおぞましい光景ではないか。

   実際、地方によってはほとんど教師養成教育を受けておらず、免許すら持たない人まで教壇に立たせる動きが出ているのだ。医者ほどの高度な専門性を要求されない教職ではあるが、それでも児童生徒の命を預かり、将来の進路にまで深く関わってしまう仕事ではある。

 

   「国家百年の大計」を委ねられた教師が今や希望すれば誰でもなれてしまう…どう見ても正常な事態とは思えない。しかしうがった見方をすれば現在の教職価値の暴落は軍拡のために教育予算を削減すべく、教師の賃金を低く抑え、待遇をさらに悪化させる口実には利用できるだろう。案外、政府や文科省、県教委の狙いもそこにあるのかもしれない。

   ただし教師に将来を左右されかねない児童生徒の立場から見ればこの新規採用を巡る人事はまさに噴飯物となる。今、教育委員会に蔑ろにされ、心底馬鹿にされているのは現場の教師だけではない。むしろ児童生徒やその保護者側なのである。

 

   しかも教師間のイジメやイジメ自殺事件の隠蔽などの悪質な不祥事が繰り返されてきた兵庫県では「やりがい搾取」の実態を放置してきた張本人の県教委がついに自ら高校へ乗り込み、無反省にも教職の「やりがい」をエサにして生徒たちをブラック職場に勧誘するという詐欺まがいの行為を行っているらしい。

   おそらく彼らからすれば学校というブラック職場は悪意ある第三者が作り出す間違った「イメージ」、すなわちマスコミが作り出した幻想に過ぎないのだ。現在の教師不足は無責任なマスコミが垂れ流した風評のもたらした被害の一つであり、我々はその後始末に追われている可哀そうな被害者…

   しかしもういい加減、騙されてはなるまい。これは有為な青少年の将来を徒に毀損し、人生をブラック化させかねない、まさに教育の名をかたる詐欺的犯罪行為そのものと見るべきなのである。これまで学校というブラック職場で心身を破壊され、命まで奪われた数多くの教師や生徒たち、その遺族の痛みを、実際、彼らはこれまでずぅーっと世間から見えないよう、巧妙に隠蔽してきたのだから。

参考記事

校長、教頭、教職員計78人を懲戒 異例の大量処分…出張旅費の不正受給が横行、服務規程も守られず 

 東京新聞 2024.2.15

 まさに公教育のメルトダウン、末期的症状とはこのような現象をさすのかもしれない。おそらくこれでも今回表沙汰になったのは「氷山の一角」に過ぎないだろう。これは川崎市における市立学校の多くが校長以下、全職員規模で完全にコンプライアンス無視の暴走を常態化させてしまい、どうにも止まらなくなってしまった結果だと思われる。

 ほとんど土砂崩れ状態でいったん足元から地盤ごと滑り出してしまうと、多くの人は踏ん張りが効かず、ひたすら状況に流されるままとなる。ここまで来てしまうと土砂崩れ現場の人間ではもはやどうにもなるまい。

 漫然としているといずれ千葉県でもいくつかの学校がこのような事態を招くのではあるまいか。こうした事件の背景にあるのは全教師レベルに蔓延する打ちのめされそうなほどの無力感だろう。多くの職員に共有される極めて低い自己効力感、組織効力感がついには学校の隅々まで沈滞させ、どんよりとさせてしまっているのではあるまいか。

 一体、何が彼らをここまで駆り立ててしまったのか…教育行政の責任は重大である。末端の職員をどんなに処罰しても事態は悪化するだけかもしれない。そもそも上級責任者が自分の責任を棚に上げて下々を処罰するだけの醜い人事が横行するような組織に明るい未来が来るわけはない。

「傍聴ブロック」なき今、強制わいせつ罪に問われた元校長に判決 被害者の不信を強めた横浜市教委

   のやり方 東京新聞 2024.5.25

 

・学校教育と政治

参考記事

京大総長からの学位記「受領は拒否いたします!」 学生のスピーチがSNSで話題 伝

    えたかったことは withnews 2025.5.31

※参考動画

トランプ政権が圧力 ハーバード大学で卒業式 「政府が何をするかわからず、なす 

    すべもない」日本の留学生ら不安ぬぐえず

    TBS NEWS DIG Powered by JNN  2025/05/30  3:22

【ハーバード問題】日本人教員「大半が大学を支持」分断が加速?入山章栄氏「米

    の反知性主義VS学費4000万円の超エリート」|アベヒル

    ABEMAニュース【公式】 2025/05/26  20:14

    政治と教育との密接な関係性が日本の京都大学とアメリカのハーバード大学での動きを巡って露わとなってきている。学校教育に対して政府が強い影響力を及ぼそうとすることは世界中で見られてきた。今回の件では大学における学問の自由が政府によって脅かされている点で共通しているが、日米では大学の動きが対照的である。ここではトランプへの批判よりも、日本の学校教育が政治や経済にひたすら従属してきこれまでの教育の在り方を根底的に問い直したい。

 

・横浜市教委裁判傍聴動員

形だけでは意味はない いじめ自殺対応で横浜市教委が失った信頼 神奈川 ノートの

   片隅で 産経新聞 2024.9.3

  「市教委が地に落ちた信頼を取り戻すには、子供を守る心からの行動を積み重ねるしかない」との指摘だが、この程度の精神論でイジメ隠蔽体質が改善できるわけは無かろう。教育委員会での人事評価の基準と画一的な管理主義を具体的に見直していく手順を自ら示せない内は何をしてもダメ。

 しかしこの組織に自浄能力を期待するのはもう辞めておこう。それに文科省自体が変わらなければ地方が変われる部分は小さいに違いあるまい。教育行政全体において上意下達の長老支配が終わらない限り、失われた信頼を取り戻すことは無理である。

横浜市教委、5人懲戒処分 裁判傍聴に職員動員問題、いじめ対応巡り

   毎日新聞 によるストーリー 2024.8.24

   横浜市立中2年の女子生徒が2020年、いじめを受けて自殺した件で、横浜市教育委員会が学校に対していじめを認知したことを報告する文書を取り下げるよう指示していたことが判明したという。神戸市でも似たような事件があり、学校以上に教育委員会の隠蔽体質が問われる結果となった。教師たちの中でどういう人物が校長や教頭になっていくのか…世間から疑われても仕方あるまい。

   裁判傍聴への動員問題でも隠蔽体質の根深さが表面化してしまっている。彼らが教員採用を行っているのだから、彼らに採用された横浜市の教師全体の資質にまで疑問が生じてしまいかねない由々しき事態である。この程度の処分で済ませられる問題だとはまったく思えないのだが、いかがか。

被害者側からの要請「明確な記録なし」 横浜市教委、傍聴動員問題で

 朝日新聞デジタル記事 堅島敢太郎 2024年5月22日 21時18分

 教員によるセクハラ等の事件を裁く裁判で大勢の教職員を法廷に送り込み、一般の人々の傍聴を阻止しようとした横浜市教委の件。教委側が保護者の要請によってこうした事態を招いてしまったという言い訳が実は自己保身のためのウソであったという可能性が出てきている。「明確な記録」が残されていないのに、被害者側の要請があった、とする往生際の悪さ…もしもウソという事になれば重大な責任問題に発展するだろうし、前教育長が法廷侮辱罪等で訴えられてもおかしくはあるまい。本来ならばこの時点で横浜市や神奈川県教委は前教育長及び関係職員への厳しい罰則を科すべきではなかろうか。

横浜市教委の「傍聴ブロック」、外部検証チームを立ち上げ 弁護士3人で6月中に対

 応へ 東京新聞 2024.5.27

   どうやら保護者の要請があったことは文書で確認できたそうだが、横浜市として弁護士を3人外部から招き、調査することになったらしい。詳しい調査結果が公表されるのを待ちたい。

監査を重く見ていただきたい」市教委に委員が指弾 横浜市裁判傍聴妨害めぐる監

 査請求 産経新聞 2024.7.5

 鹿児島県警と似たような、身内をかばうための隠蔽の可能性を強く感じる。

わいせつ教員裁判の傍聴動員を決めた前教育長、その後は「安易な前例踏襲や追

 随」で計11回 読売新聞 によるストーリー 2024.7.28

 やはり隠蔽としか思えない。

 

・鹿児島県警内部告発事件

 軍隊や警察と学校とは本質的に似た者同士と昔からよく言われてきた。この事件は学校でのイジメ隠ぺい事件が多発する中で軍隊や警察と学校とが実際に「同じ穴の狢」であることを確認できる格好の事例であろう。授業では学校と軍隊や警察が体質的に似通っている点を生徒たちに考えさせたい。まずこれらの組織が共通して引き起こしてきた隠蔽事件について様々な事例を生徒たちに挙げさせ、その背景にある恐ろしい非人権的な組織的体質を考えさせてはいかがか。

公益通報潰しに報道弾圧…前代未聞の「警察不祥事」、告発文書「返還」求めた鹿

 児島県警からの通話全容弁護士ドットコムニュース  2024.6.17

 …いくらなんでも鹿児島から札幌まで強制捜査に乗り込んでくることはあるまいと高を括っていたが、なにしろ相手は平気で報道機関を家宅捜索して取材の秘密をあっさり侵害してしまう組織。せめて問題の文書だけでも万が一の押収を回避したいと、札幌市内の弁護士に管理を委任することにしたのだった。もちろん、弁護士の名前は県警に伝えていない…という件に戦慄を覚える。鹿児島県警の隠蔽体質と人権軽視の強硬姿勢が露呈してしまっているからだ。

※参考動画

 〇容疑者コメント「本部長でなければ誰でもよかった」名指しの幹部を変えた理由 鹿児島県警情報

  漏えい事件 (24/06/10 19:20) 鹿児島ニュースKTS  2024/06/10 2:41

 ◎鹿児島県警元幹部「闇を暴いてください」元キャリアも指摘する異例さ【サタデーステーション】 

  ANNnewsCH  2024/06/08 10:31

 ◎文書受け取った記者『闇を暴いてください』と 県警本部長が議会で改めて「隠蔽」否定【報道ス

  テーション】(2024年6月11日) ANNnewsCH  2024/06/12 6:34

 ◎「証拠の返還を」鹿児島県警“情報漏えい”内部文書を受け取ったライターが証言 電話やりとりか

  ら浮かぶ捜査の一端【news23】TBS NEWS DIG Powered by JNN 2024/06/12  11:10 

  これが公益通報なのか、情報漏洩、守秘義務違反なのか、今のところ不透明ではあるが、いずれに

  せよ第三者機関がきっちりとした事実確認を行う必要はあるだろう。この件に関して県議会の及び

  腰がほぼ明らかなので議会による追及はまず期待できない。当然、県警の調査は信用できそうもな

  いので、検察が動けるのかどうか…今後の動向を注視したい。

 〇#656 【塩ちゃんねる】鹿児島県警の隠蔽がついに~長くかかりましたが、ようやく始まったばか

  り~ 塩ちゃんねる 2024/06/06 4:41

  国会議員も以前から注目してきた鹿児島県警の隠蔽体質、なかなか根深いものがありそうだ。

 

52.名古屋市教委金品授受問題

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

参考動画

徹底追及 名古屋市教育委員会の金品問題 不可解な“名簿とカネ” 学閥で校長

 が…? CBCニュース【CBCテレビ公式】 2024/03/26 7:43

「愛教大による支配を完全に崩壊させる」と河村たかし市長 名古屋市教委の金品

 授受問題  名簿とカネと学閥 CBCニュース  2024/04/01 5:33

【カネで人事は動いたのか…】名古屋市教委の金品授受問題 調査チーム最終報告

 中京テレビNEWS  2024/08/28  6:46

謎の教育助成団体「名古屋市教育会」 事務局員3人の給与に約900万円 市教委と

 勘違いする親も メ〜テレニュース  2024/09/20 5:23

 ここでも寺脇氏の学校現場への無知がさらけ出されている。管理職候補を推薦する名簿の存在は千葉県でも古くから知られていた。管理職採用を巡っては学閥や校長会の影響力がかなり大きいのは教師たちにとってはむしろ常識でさえある。とりわけ愛知教育大出身者が管理職の多くを占める名古屋市の場合には管理職採用試験にまともな公正さがある、と思う方が圧倒的に非常識であり、ピンボケなのである。

 メーテレニュースでは児童生徒の保護者たちからほぼ半強制的に集めた資金で運営される名古屋市教育会という奇妙な団体が実は退職校長会と相部屋であった場面が動画の中で一瞬、垣間見えた。年功序列と学閥が物言う世界では斯界の長老たちが人事に幅を利かす傾向は少なからずあるだろう。まさに学校教育界は長老たちによる内密の打ち合わせ…つまり「院政」時のような恣意的人事が行われていたといえる。しかもこの任意団体、恐ろしいことに年間の活動費3000万円近くの内、1000万円ほどを会の専従3人の人件費に充てている。河村市長が怒るのも無理はない。

 40年ほど前だが、私も元校長たちが次の某高校の校長人事について話し合っていた場面に遭遇したことがある。そうした様々な経験(実際、この場では書けないような、余りにも酷過ぎる場面を数々見てきた)を重ねてきた結果、私は千葉県において校長や教頭の人事が公正な試験で決定しているはずは絶対に無い、という信念を抱えて退職の日まできている。40年ほど前、「東の千葉か、西の愛知か」と呼ばれたほどに愛知県と肩を並べて管理主義教育が徹底されていた千葉県である。さすがに名古屋市ほどでは無いにせよ、管理職人事の不公正さや隠蔽体質に関しては千葉県も大差あるまい。

 何はともあれ、しつこいようだが寺脇氏の見事に現実離れした、学校現場の実情に疎いがために発せられる空疎極まりない見解には暗澹たる気分にさせられる。

 北海道旭川市教委もまた北海道教育大学旭川分校出身者で占められているらしい。学校での不祥事が続発する地域にありがちな問題である。特定の大学出身者に偏っている市町村教育委員会は他にも沢山あるだろう。全国的にも突出して学校での不祥事を連発してきた神戸市などにもはたして出身大学の偏りは見られるのだろうか…

 寺脇氏のような、学校現場への知識にまったく欠ける人物が堂々と文科省の官僚となって教育政策を主導する立場にいたわけだから、教育行政が迷走してトンチンカンな政策をとり続けるのも無理はない。文科省の抜本的改革抜きでの教育改革など、文科省の官僚が口にするのも愚かである。今の日本では政府や文科省による教育改革など決して許容できるものではあるまい。

 授業では上記の動画を随時、視聴させて日本の学校教育が抱える問題とそれが日本社会の将来に与える悪影響についてしっかりと考えるきっかけにしたい。

参考記事

絶対評価のはずが「A B Cを1:2:1目安に」名古屋市の中学校で相対評価”促す内部

    文書 現役教師「改ざんになる」   FNNプライムオンライン 2025.5.6

 こうした事が起きてしまう背景には同じような成績でも学校や教師が異なると教科の内申点にかなり差が生じてしまい、結果的に高校入試の際、学校間や教師間で少なからぬ不公平が生じている危険性がありはしまいか…といった事への強い懸念、疑惑が生徒や保護者たちの間に広くくすぶっている…そうした現状が名古屋には強く見られると推察するが、いかがか。

 また兵庫県の様に公立高校の入試において内申点の占める割合が比較的大きく、結果的に学校の内申点の付け方に中学校の生徒や保護者がかなり神経質になっている可能性も同時に考えられる。

 ただでさえ以前から、学科における成績においても平常点、態度、意欲などの観点を加味することで結果的には生徒たちをじんわりと管理統制することに貢献する評価のあり方が強化されてきた。そしてついには学業成績だけではなく、委員会や部活動等の活動実績も内申点の大きなポイントとされてきた。

 学力に偏ってきたこれまでの評価を是正し、学業以外の取り組みも評価の対象とすべきだ、たった一度の学力検査だけで高校入試の合否が決定するのはおかしい…などといった、いかにももっともらしい表向きの理屈に流され、その実、学校生活の隅々にまで教師たちの管理と評価の眼差しが及び、生徒たちはいつの間にか自主性を奪われ、学校生活にひたすら順応することばかりが求められる。こうして画一的で窮屈な管理主義的教育体制が名古屋の公教育全体にわたり、再確立してきたのだと思うがいかがだろう。不登校がひたすら増加してきたのも当然の結末ではないのか。

 そういえば愛知県はかつて「西の愛知、東の千葉」と言われたごとく、50年ほど前に全国で吹き荒れていた校内暴力をいったん管理主義的教育で沈静化してみせた、千葉県と並ぶ管理主義教育の先進県であった。その燦然と「輝ける」伝統が今また、息を吹き返したのかもしれない。

 授業を含む学校生活における態度や意欲への評価はどうしても教師の主観に左右されがちとなる。こうした評価のあり方が教師に対する過剰なまでの迎合、忖度を生徒たちに強い、挙句の果てに学校の意向に服従する傾向を生徒、保護者間に生み出してきたのではあるまいか。名古屋教育会なる怪しげな組織が生まれ、つい最近までその存在を許さてきたのも、こうした愛知県特有の息苦しい教育風土があったからこそではなかったか。

内申点の評価実態、名古屋市が全中学校調査へ 教育長「非常に驚き」

   朝日新聞社 2025.3.25

   この記事の内容には驚愕させられる。名古屋市内の中学校で一部、相対評価的性格の評価方法が適用されていることに、教育長や市長が憤激しているというのだ。中学校の内申点は進学校以外では高校入試の際に大きな評価ポイントとされることがある。したがって中学校では内申点ができるだけ公正な観点から評価され、かつ保護者や生徒に対してそれなりの説明責任を負えるよう、あらかじめ用心深く工夫されているはず。

 教師の立場からすれば、特に五段階評定に関してはできるかぎり教師の主観を排除し、明確に数値化された客観的基準によって機械的に算出された結果であると児童生徒や保護者に説明しておきたいだろう。なぜこの評定になったのか…これも観点別に細かく数値化すれば誰に対しても説明しやすい点においていかにも公正に見える。だから部活動の実績も数値化することは好ましい…少なくとも一般的にはそう考えられているはずだ。

 とはいえ、数値化できることが評価のすべてではない。しかも部活動の実績や平常点の数値化がどこまで妥当性、信頼性があるのかは極めて疑問である。いったん数値化されてしまうと、外部からは数字が独り歩きして公平性や客観性を帯びて見えてしまうが、教育的評価として怪しいケースは決して少なくあるまい。部活動で県大会に出場できたとしても、種目の状況、ブロック内の他校の状況等によってその難易度には大差があり、単純に一律、内申点として加点するのは明らかに不公平なのだ。

 現実問題として高校は調査書の内申点において「県大会出場」を絶対評価、それとも相対評価、どちらとして捉えているのだろう。おそらく個々の事情を勘案するヒマは無いので一律、「~点」と絶対評価しているのだろうが、本来ならば個々の事情を勘案してきちんと相対評価した方が、より公正であるはずだ。

 評価には絶対評価と相対評価に加えて他にも形成的評価のような、よりきめの細かい、かつ児童生徒個々人の学びと成長に寄り添った評価の考え方が世界にはある。どちらが真の意味での教育的評価なのか、といえばただの絶対評価や相対評価よりも形成的評価の方であるのは一目瞭然である。しかし、大勢の生徒を相手に画一的で一斉講義形式の授業を続けてきた、旧態依然の日本の学校では多様性と個性を重視した形成的評価を行うこと自体がまず不可能である。

 加えてこの記事も市長も教育長すらも、評価のあり方には多様性がある事、それぞれに長短がある事にきっちりと向き合おうとはしていない。単純に絶対評価が好ましく、相対評価が「悪い」と一方的に決めつけているだけである。しかもこうした人々の多くはおそらく、日本の画一的な一斉講義軽視の授業と硬直化した評価方法という現実を疑うこともせずに自明の前提としている。

 そもそも相対評価は「悪」なのだろうか。そんなことはあるまい。教師がこの単元の達成目標をどのあたりに設定し、これまでにどんな授業をしてきたのかによって、テスト問題は学校間、学年間、教師間で大きく異なる場合が出てくる。もちろんその年の学校やクラスの様子によって、授業のレベルや内容、テスト問題の内容や難易度を少しばかり変えることはやむを得ない時もあるだろう。テスト問題作成者が問題を簡単にし過ぎたり、難しくし過ぎたり、出題分野が偏り過ぎたりしないよう、状況に応じてテスト内容を柔軟に変えていく事自体はむしろ教師の腕の見せ所ですらある。

 しかし厳密に考えれば、そうした工夫が場合によっては異なる学年間に不公平を生み出すかもしれない。実際、教師たちの児童生徒の現状に合わせようとするそうした柔軟な工夫こそが、実はかの「悪の権化」とされがちな相対評価の考え方にも通ずるものなのだ。ただ現場の種々の実情を考慮せずに相対評価を排除し、上辺だけ絶対評価を取り入れれば事が済む…ほどに教育評価は単純ではない。

 一方で毎年、同じ問題を出題することは一見、公正に見えるが、当然、生徒の先輩から当該教師の出題傾向が後輩に伝授されることもあり、それがどんなに優良な問題だからといって結果的に公正とは限らない。したがってどうしても教師は毎年、出題内容を多少、変える必要を感じている。そしてその都度、教師たちはが学年間、クラス間の調整に悶々として頭を悩ませるのだ。

 昨今の思考力を育てようとする試みは、場合によっては評価のあり方を、どうしても相対評価側に偏らせていくだろう。思考力育成のために論述問題を導入しようとすれば、その採点基準は大抵の場合、特定の集団の中での位置づけ、すなわち相対的評価となるほかあるまい。仮に絶対評価を絶対的な「善」と見なすのならば、社会科や国語科では論述問題の出題自体をためらうことになるはず。そして正解が一つに限られる選択問題や単語穴埋めの客観テストにいよいよ偏りがちになるだろう。得点に対する説明責任を果たしやすいからだ。授業もこれまで通り、必然的に暗記中心に偏らざるを得ないはずだ。これらは論述の採点基準を誰もが納得できるように標準化して他者に説明できるだけの余力を、ほとんどの教師が持たないのだから、仕方ない。

 定期考査の重みを考えつつ、評価はテスト点を評価の7割程度にして、残りの3割程度は普段の提出物や発表などをいわゆる「平常点」として加味する、といったささやかな工夫を個人的には行ってきた。テスト問題も400字程度の論述問題を1~2問出すことで思考力も生徒たちに問うてきた。ただし、これが必ずしも評価として理想形でないことは百も承知である。一クラス35人を基準とするクラスで様々な雑務に追われる教師が出来ることは極めて限られている。

 ブラック化した学校を放置しておいて、無責任にも上から目線で学校現場で苦悩する教師を何やら「相対評価」し、一方的に責め立てている名古屋市の教育長様、かの名古屋市教育会の責任問題はどうなっているのでしょう?世間を唖然とさせたあれだけの不祥事を、ただ会を解散し、一部の職員を減給処分だけで済まそうとする市教委の厚顔無恥さと傲岸不遜さには誰もが呆れるほかあるまい。

名古屋市教委の金品授受問題 職員20人を減給など処分 直近7年間で総額1300万円

   以上の金品授受 中京テレビNEWS によるストーリー 2024.11.8

   元校長らがいわゆる「内覧」を行っていたことが判明し、彼らが管理職人事に深く介入していたであろうことはほぼ明らかである。あたかも摂関政治の時代のような、恐ろしく時代遅れの閉鎖的で恣意的な人事が横行する名古屋市の教育界…これはまさに「老害」教育行政を象徴する人事介入であり、こんな密室の中での管理職人事が今後もまかり通るようでは、ただでさえ保守的で牢固な隠蔽体質が芯まで染み込んでいる学校教育界に新風を吹き込むことなどまったく不可能といえるだろう。

 しかも名古屋教育会という、極めて怪しげなネーミングの組織の実態が結局は明らかにされず、ウヤムヤにされたまま。職員20人の処分も形だけの極めて軽微なものに過ぎない。加えて地方公務員法により、退職した元職員を罰することは出来ないらしい。まさに公務員は「やり得」、「逃げ得」である。

 はたしてこんなレベルで名古屋市教委は失われた公教育への信頼をしっかりと取り戻すことができるのだろうか。これで完全決着させるつもりなのか、はたまた有効な再発防止策を打ち出せるのか…名古屋教委の良識が試されているだろう。

名古屋市教委の金品受領 「最終報告は分析不十分」 シンポで批判

   毎日新聞 によるストーリー 2024.9.28

   やはり調査する側の人選に大きな問題があったようで問題の核心に迫る調査とは程遠い、極めて薄っぺらな最終報告であったようだ。教員やその管理職の人事が実際にどのような基準で行われてきたのか、この際、新たに第三者委員会を設けてもう一度精査し直すべきだろう。

 特に名古屋教育界といういかにも怪しい団体が保護者から集めた資金を用いて3人の専従を雇い、年間であわせて1000万円近い給与を与えていた、非常に闇深い問題の究明も、この際、新しい第三者委員会で行うべきだろう。3人の専従が一体どのような基準で選ばれていて実際にどんな仕事をしていたのか…まさか裏側では元校長たちのサロンに過ぎず、彼らの悠々自適な老後を支えるための団体…ではないはずだが。

 この組織の実態と本当の役割をぜひともはっきりさせてもらいたい。どこをどう見てもその存在自体が公的に許されるような性格の組織ではない雰囲気が、他の報道からはプンプン漂うのだが、いかがか。

座長「なれ合い構造あった」 名古屋市教育委の金品授受問題報告書

 毎日新聞 によるストーリー 2024.8.28

 そもそも文科省の官僚だった寺脇氏が座長を務めるような調査検証チームが出す報告書なぞ、一体誰が信用するのだろうか。ただの茶番に過ぎないのは見るまでもなく明らかであろう。チームは「…名簿や金品による人事への影響は否定」したというから呆れる。一体、どんなデータ、資料を根拠にこんな結論が出されたのか…限りなく疑わしい。かつて現実を見ようともしなかった寺脇氏のことである。どうせまともな調査など、行われるわけがあるまい。

 他方で「教員集団の閉鎖的・排他的な仲間意識、なれ合いの構造があった」と厳しく批判したというが、これは明らかに口先だけ。世間を欺くための、やはりただの茶番であろう。教育行政側のメンバーだった人物を座長とするような、厳格さ、公正さ、第三者性に欠けるこの調査検証チーム自体が市教委側と連携してズブズブの馴れ合いを演じているのは想像に難くない。

 教職員課長や教育長も務めた前市長の松原武久氏へヒアリングしたというが、こんなもの、岸田首相がオリンピック問題で電話を通じて行ったという森元首相へのヒアリング並みに信用できない。市教委および調査検証チームと馴れ合い、じゃれ合う関係性の中で松原氏が知らぬ存ぜぬを貫くのは極めて容易であっただろう。

教育関係者「闇深い」 名古屋市教委の金品受領問題報告書

 毎日新聞 によるストーリー 2024.8.28

 管理職の選考を巡る厳格さ、公正さに欠ける金品授受は教育公務員として見逃せないはずの大きな信用失墜行為であり、関係者の分限問題に関わるべきレベルの深刻さがある。にもかかわらず、調査検証チームの報告書には危機感の欠片も見られない、生ぬるさがある。再調査が必要なのは言を俟たない。

名古屋市教委の金品授受、総額1300万円超に…検証チーム「癒着と映らないか

   との視点が欠落」 読売新聞 によるストーリー 2024.3.30

 文科省の官僚だった寺脇氏が「…推薦名簿がまかり通っていたことも驚きだ」と指摘していることに驚く。文科省にいた人物が「推薦名簿」すら知らぬこと自体、恥ずかしい事だろう。学校現場の事を知ろうとしない人物が平気で官僚を務めている文科省というお役所のオワコンぶりに私はむしろ興冷めしてしまう。文科省がこんなテイタラクだから教育現場での不祥事が絶えないのではあるまいか。官僚たちの学校現場に対する無関心、無知、勉強不足こそが諸悪の根源なのかもしれない。

元校長らへの人事案「内覧」会合費にも支出 名古屋市教委の金品授受

   朝日新聞社 によるストーリー 2024.3.29

 金品の授受に関しては公にされると良くない、との認識が関係者の間で共有されていたという。同様の話はかつて名古屋に限らず、全国的にあったはずで、教員に採用されるためには教育委員会の有力者や政治家に金品を送るのが必須だった県があるとも聞いている。しかし声高にコンプラが叫ばれている現在、この悪習はとっくの昔に無くなっているものと不覚にも私自身、思っていた。相も変わらず「不適切にもほどがある」ということだ。

 とはいえ数々のイジメ事件隠蔽など、大きな不祥事を繰り返してきたこれまでの学校社会の異様さを思えば、実はこの程度の事があったとしてもさほど驚くほどのことではなかったのかも。世界や時代の進展に背を向け、百年一日のごとく因循姑息な、馴れ合いだらけの村社会に安住してきた日本の学校教育界である。おそらく同様の悪習を続けてきた市町村が他にも少なからずあるに違いない。

 一皮むいてしまえば日本の学校社会全体が政治家の世界に負けず劣らず、とっくの昔に「不適切にもほどがある」状態であったはず。政治家の裏金問題は教育委員会の裏金問題とよく似た構造をはらんでいるのではあるまいか。

「大学教授は雑務に追われて研究時間がないから」は疑わしい…日本の研究力が落ち

   ている"意外な理由" プレジデントオンライン 竹中 亨 2024.12.13

   内部出身者の登用を禁止し、海外にも広く人材を求めるドイツの大学教員採用ルールは極めて魅力的であり、博士課程や博士号を持ちながら貧困に直面している日本の若手研究者にとっては救いの手となりうる要素を持っているだろう。同時に閉鎖的な地方大学の組織を改善して教育力を高めていく可能性も感じられる。

   名古屋市教育委員会にはびこる愛知教育大学出身者の学閥が様々な腐敗を生み出している元凶であることはほぼ間違いあるまい。また旭川市の女子中学生凍死事件も北海道教育大学旭川分校出身の学閥が元凶の一つとなっている可能性が極めて高いだろう。日本の教師社会を蝕んでいる学閥を徹底的に解体する上でも、ドイツ方式は極めて有効ではあるまいか。

名古屋市教育会、3月末で解散へ 保護者らから年2800万円徴収

   毎日新聞 2025.1.23

  「会費が集まりにくい状況となり、市教育会は運営の継続が困難と判断」したから3月末で解散…このあまりにもふてぶてしい解散理由にまずビックリである。盗人猛々しいとはこのこと。厚顔無恥にも程がある。あれほどその存在自体が問題視されていたはず。まだ自主解散していなかったことに驚きを禁じ得ない。

   教育会は何を言われようが「自分たちは子どもたちのために貢献しているのだ」と思い込んでいるらしいが、見当違いも甚だしい。それほど立派な活動であるならば、入学時のドサクサに紛れて保護者から半強制的な献金で資金をちょろまかすのではなく、正々堂々とクラウドファンディングなどで広く活動資金を集めるべきだろう。もちろん、こんな団体に寄付する人が元校長以外にいるとは思えないのだが…

 怪しげな老害団体がいかにも偉そうに上から目線で、ただでさえ忙しい4月早々、クラス担任の手を集金で煩わせてきた…と考えるだけで、虫唾が走る。

 

 以下、参考までに名古屋市で生じた重大な学校の不祥事を一件だけ、挙げておく。教育委員会の対応に注目!この一件だけでも名古屋市の教育委員会の頑迷固陋な村社会的体質が良く伝わってくるはず。

・名古屋市中一女子イジメ自殺

参考動画

【衝撃の告白】隠ぺい不正の正体と真実。生音声公開!

 加藤秀視 2022/12/04 37:04

 自死から5年近く経ってもほとんど進展を見ない事件。マスコミへの露出度が高い名古屋市長の河村氏だが、この件に関しては神戸市と同様、市長の真剣さとリーダーシップがやや不足しているのは否めないだろう。このままではウヤムヤのままで終了しかねない状況。不誠実な対応しか出来なかった当時の教育委員会や校長の責任がまったく問われないまま時間だけが過ぎていく。

名古屋市いじめ問題 遺族が激怒 一言で救えたかもしれない命

 2021/09/10 CBCニュース【CBCテレビ公式】 11:15

 …イジメていた生徒達を「加害者」と呼ばないよう、教育委員会側が遺族の父親に対してお願いした時に父親が激怒した。にもかかわらず再度、執拗に父親が加害者と呼ぶことを否定し続けた教育委員会の頑なな姿勢をどう考えたら良いのか?是非、次の二つの動画も視聴させてから授業で討論の議題にしたい。

中1女子自殺、3年以上して「いじめ」認定、市教委が『家庭の問題』という先入観

 をもち対応か 名古屋  2021/10/13 5:17

「娘を返せ!歯を食いしばってきょうまで来た」父の心の叫び‥それでも教育委員

 会は‥責任はどこに? 2022/06/27 CBCドキュメンタリー 10:18

 この動画を最初に視聴すると良いだろう。「お気持ちはよく分かりますが、イジメた生徒の事を加害者と呼ばないで欲しい」という教育委員会側の発言の趣旨とそれに対して遺族(父親)が激怒した理由を問いたい。

娘がいじめを苦に自殺…「学校に責任」両親が訴えた裁判で市が争う姿勢「いじめ

 認識は不可能又は著しく困難」 東海テレビ NEWS ONE  2022/11/16 1:06

※参考記事

名古屋中1いじめ自殺事件「なんですか、これは?」個人情報誤廃棄に遺族が怒

   り…国所管の独立行政法人で人為的ミス

   弁護士JPニュース によるストーリー 2024.10.5

   公文書管理の杜撰さがいつまでたっても改善されない背景には一体、何があるのだろう。やはり人手不足は大きな要因の一つであろうが、他にも思いつく要因はある。そもそも日本の行政はその古くからの根深い隠蔽体質も手伝って記録保存に前向きではなく、記録の改ざんや廃棄にかかわる事件が今も絶えない。

   いかにも文科省や子ども家庭庁の官僚が天下りしていそうな独立行政法人「日本スポーツ振興センター(JSC)」という組織(現理事長は元文科省官僚)の体質にも大きな問題がありそうだ。

   名古屋市教育委員会の問題も小さくはあるまい。災害共済給付制度について学校側が一年間、保護者に通知していなかった点は、このイジメ自殺事件に対して再三にわたって見せてきた学校側や市教委のイジメ被害者、遺族への冷淡な姿勢、イジメ問題に解決への消極的対応の表れだろう。

日本ばかり「いじめ加害者に甘い」のはなぜ?厳罰化の海外と広がる格差 

 DIAMOND online 吉岡 暁 2022/09/19 

名古屋市教委、いじめ重大事態の保護者を呼び捨て 発言を謝罪

 毎日新聞 によるストーリー 2023.11.9

 こういうふとした瞬間に教育委員会の職員の本音が見えてしまうのだろう。

 

 しつこいようだがもう一つ、例を挙げて名古屋市教育委員会の問題を確認したい。

下校時間は“男女別”やコートは許可が必要等…『驚きの校則』はまだあった 見直し

 や試験的に廃止する学校も 東海テレビ NEWS ONE  2023/06/29  13:18

 生徒指導提要の改訂に対する取り組みの鈍さ、遅さにも名古屋市教育委員会の体質が見え隠れしている。愛知県のブラック校則は40年ほど前からつとに有名だったことを考えると、その保守的体質の根深さに驚かされる。教育委員会だけでなく、愛知教育大における教員養成教育の内容にも強い疑念が湧いてくるだろう。

 まず第一に北海道教育大旭川分校もそうであろうが、愛知教育大の教員養成教育に携わっている教員の内、少なからぬ人が母校の大学出身者であるはず。しかも中学校や高校の校長や教頭、教育委員会のメンバーであった人物がそれなりの数で大学でも教鞭を取っているだろう。もちろんそうした経歴の持ち主全員を丸ごと批判しようというのではない。学校現場での体験がまったく無い教員が大学で教員養成教育に携わるのはむしろ好ましくないとすら思える。

 問題は教員養成に関わる大学教員の技能や知識が、本当に将来の学校教育を担う若者を育てる上で十分に必要なレベルまで達しているのか…という一点に絞られるだろう。個人的に知っている範囲でも、特に大学院修了者ですらなく、本格的な学習、研究すら重ねてこなかった元管理職を平気で教員養成教育に充てている地方大学は決して少なくない。元管理職、という肩書だけで採用している大学は意外なほど多いだろう。どう見ても彼らが全員、本当に世界レベルでの最新の授業技術、学校論を身につけているのか…に関しては明らかに怪しいのだ。将来の教師として必要不可欠なはずの最新の知識や技術に大きな欠損、欠陥のある斯界の長老教員が大学において旧態依然の学校教育のあり方をひたすら再生産している可能性は決して低くはあるまい。

 巷では長年、研究者として安定した地位に就けずに厳しい貧困状態となっているオーバードクターがあふれかえっているにもかかわらず、学校の元管理職だった者だけがマスター、ドクターですらないのに優先的に地元の大学で再就職でき、安定した地位を得る…この状態は遅れに遅れている日本の学校教育の刷新が焦眉の急となっている現在、はたして健全と言えるのだろうか?

 おそらく地方私大では教員採用試験合格者数を増やして大学の評判を上げたいがために、元校長らを積極的に教員養成教育の担当者として採用しているのだろう。しかしその背後には名古屋市のような、学閥と長老が新規採用での人事にも強い影響力を持つという旧態依然の体質を逆手にとって利用しようとする経営戦略がきっと潜んでいるに違いないのだ。これは結果的に大学と教育委員会の癒着を生み出しすだけでなく、画一的管理主義教育の再生産にも寄与する…世間ではあまり目につきにくいが、その実、極めてヤバイ馴れ合いの人脈形成システムとすら言えるのではあるまいか。

 河村市長にはそうした構造にも深くメスを入れて名古屋市の学校教育界の刷新を図ってもらいたいのだが、おそらくこの構造的欠陥、腐敗は旭川市と同様、想像以上に根が深く、かつ様々な利権と裏で広く、かつガッチリとつながっているに違いない。

 市長の立場であってもそうやすやすとは変えられないだろうが、教育に携わってきた者として、せめて今後の成り行きだけはしっかりと見守っていきたい。

⑦手遅れの弥縫策

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

参考動画

定員割ればかりの私立大…文科省の対応は遅すぎる!

    コバショーの受験最前線【CASTDICEサブ】2025/05/03  11:50

    コバショーさんもついに文科省の、あまりのいい加減さ無責任さ堪忍袋の緒が切れてしまったようである。とうの昔から日本の少子化が分かっていたはずなのに直近25年間で150校も大学数を許認可して増やしてしまった文科省の責任は確かに重いだろう。しかも家政学部や歯学部の人気が下がってきたにもかかわらず、学部設置を唯々諾々と許可してきた文科省にはデータを分析する能力以上に、教育の責任官庁として致命的なレベルでの自覚不足が糾弾されるだろう。今はまさに「財務省解体」デモ以上に「文科省解体」デモが必要となっているはず。

 高校生には切実なテーマであり、視聴後、ぜひ討論させたい。

先生がいなくなる 日テレNEWS NNN 2024.10.30 5:35

 学校の教師が置かれている状況を理解してもらうために視聴すべき動画としては時間的に見てもこの動画が一番ではないか。

参考記事

「うちらは捨てられてる」先生が教室に現れず、授業を受けられない子どもが増

 加…教育現場で今起きている“非常事態” 

 文春オンライン いしい しんじ によるストーリー 2023.6.19

 学校教育の隠蔽体質は、ただでさえブラック化した学校において正規教員の不足という最悪の事態の進行をも招いてしまった。学校自らが教師不足という致命的な事態を世間一般からは見えにくくしていたのだ。それが社会問題と化し、表面化してきた現段階に至ってしまっては最早、手遅れに近いほどに学校の病巣は進行し、肥大化しているのではあるまいか。

 もはや手の施しようのない末期患者と同様、日本の公教育は大げさに言えば存亡の危機に直面しているのではないのか。垂れ流し状態の「教育改革」の連打がいかに学校現場を疲弊させ、限界まで追い詰めてきたか、改めて教育行政の責任を問いたい。

学校の保護者対応、民間で 教員負担軽減へ文科省モデル事業

   共同通信  2025.2.1

   文科省の迷走ぶりには呆れるほかない。教師たちのストレスは膨大な仕事量によって本来、力を入れるべき授業準備が疎かになっている点に由来する側面が大きいだろう。教師の校務の一部に保護者対応があり、いわゆるモンペアへの対応は確かに強いストレスを教師にもたらす。しかし、だからといって保護者対応を民間機関に任せることがはたして良策なのだろうか。

   学校や特定の教師への保護者による強い抗議や要望の中には、公務員が厳守すべき守秘義務の対象となりうるものも少なからず含まれている。おそらく守秘義務に関わる重大な内容の多くは外部の民間機関に委ねるわけにはいくまい。つまりそれらは学校側や教育委員会側が相変わらず受け付けることになるのだろうが、それでは教師の仕事量の実質的削減にはほとんどつながるまい。

   強烈なストレスを教師たちに与える保護者対応の多くを、結果的に学校や教育委員会が引き受けることとなってしまうのならば、この施策にどれほどの意味があるのだろう。これはまさに文科省が表向き教師の負担軽減のために一生懸命「やってます」感を演出するだけの、ただの見せかけに過ぎないのではあるまいか。

 こんなゴマカシに無駄な労力や経費を費やすヒマがあるのならば、もっと有効な対策に集中すべきだろう。まずは学級の定員を30人に減らして教員の数を増やす。それが当面、無理ならば学校行事を大胆に軽減して部活動の地域移行を徹底する、校務の合理化、DX化を加速させる、スクールロイヤーの増員と配置、学校カウンセラーやケースワーカーの増員と常駐化、彼らの待遇改善…

 文科省がやれること、やるべきことは山ほどある。文科省のお役人たちだって余分なことをしているヒマなど無いはずだ。教育行政としてやるべきことは多々あるだろうが、まず最初に着手すべきは政策の基礎基本たるしっかりとした学校の現状把握。そこが恐ろしいほどいい加減だから、文科省はその場しのぎで的外れの政策をひたすら繰り返してきたのではなかったか。信用できるはずのない教育委員会からの報告を鵜呑みにして自ら直接、学校の現状確認をサボり続けてきた文科省の責任は重い。

教職調整額13%実現へ、日高教が署名提出 リシード 2024.12.4

 …教員業務には、教科指導や生徒指導、進路指導、キャリア教育、ICT教育、特別活動の指導、部活動指導、高校魅力化推進活動、地域連携活動などが含まれる。これらの業務を遂行する過程で、生徒対応や保護者対応、地域連携対応、特別支援対応、いじめ対応、不登校対応、貧困およびヤングケアラー対応、危機管理対応など多岐にわたる対応が求められる。教員は多くの知識と専門性を駆使し、日本の未来を支える人材の育成を行っている。

 教職調整額13%の実現は、教育が多様化・複雑化し、多くの知識や高度な専門性を必要とされる現代の教師という仕事の特殊性に対し、教師の尊厳とプライドの対価として支払われるものだと考えられている。教職調整額は、教師の残業代として支払われるものという誤った認識があるが、時間外勤務の代償は、学校における働き方改革の延長線上に、残業手当としてあるべきである。・・・

 ほとんど学校教育の現状を知らない者たちの聞き捨てならない妄言というほかあるまい。現在の高校教師たちの中で「教科指導や生徒指導、進路指導、キャリア教育、ICT教育、特別活動の指導、部活動指導、高校魅力化推進活動、地域連携活動」のすべてにわたって高度な知識、専門性を持つ人物など本当にいるのだろうか。仮にいるとすればそれはまさに「スーパーマン」そのものであろう。我こそはスパーマンなりと自負する教師がいるのなら、ぜひ、名乗り出てもらいたい。

   現今の採用試験の倍率、大学での教職教養の講義のレベル、教員に向けて教育委員会が行う研修のレベル…どれをとっても、大抵は世界標準で「教師の尊厳とプライド」を満足させるものからはほど遠いものだったはず。それが日本の教育事情であろう。むしろ高校教師のほとんどは処理能力の限界を遥かに超えたレベルで複雑多岐にわたって多様化し、日増しに高度化する業務の重圧と膨大な事務仕事量に耐え兼ね、働き方改革が遅々として進まない学校の現状に絶望しつつあるのではあるまいか。

 世の中は広い。確かに「生徒対応や保護者対応、地域連携対応、特別支援対応、いじめ対応、不登校対応、貧困およびヤングケアラー対応、危機管理対応」といった業務をすべて満足のいくレベルで遂行できている、と平気でホラを吹く教師たちが世の中にまったくいないわけではあるまい。しかしそれらの内、一つでも専門的な教育を受けたことがある教師ならば即座に断言できるはずである。そんな超人的な仕事をこなせるのはスーパーマンだけなのだ。

 出来ないことを出来る、というウソはもうつかないでほしい。今、出来ること、あるいは近い将来、出来そうなことに教師たちが専念する体制作り、すなわち教師の業務の大幅な削減と事務仕事の大胆な合理化を即刻、文科省は断行すべきではあるまいか。給与や残業手当の件はその次に着手すべき課題であると思うが、いかがだろう。

持ち帰り業務、約56%が実施…教職員の勤務環境調査   リシード 2024.11.29

   学校での残業時間が減る一方で自宅への持ち帰り業務が増えていくことは以前から予想されていたことである。この調査に特に目新しい発見は無い。そもそも全体の業務量を減らさない中で、学校での残業時間を数字だけ減らそうとしている事の間抜けさ、トンチンカンさに呆れ果てる。

   文科省に業務量を削減する意欲は見られず、さらにやる能力すら無いのならば、今後も時間の無駄が続いてしまうので、まずは文科省自体を一刻も早く解体すべきだろう。存在価値が認められない省庁を存続させる意味は無い。

教員給与の段階的引き上げ 現場は評価もサービス残業を懸念

   毎日新聞 によるストーリー 2024.11.8

   給与の引き上げ、残業手当の支給などによる教師の待遇改善は無論必要であるが、それよりも急がれるのは職務の大胆な削減の方だろう。下手に給与の引き上げが先行してしまうと、流れとして職務の削減が不徹底になりやすい。すなわち給与が上がったくせに、しかも公務員のくせに仕事をさぼるのか・・・といった民衆の不満がこの景気低迷の中で政府やマスコミによって煽られ、変に暴発しないとは限るまい。

   教師たちの心身を追い詰めているのは決して給与の低さではなく、ほとんどブルシットジョブと思えるような、大量の事務仕事と部活動、学校行事の数々である。それらこそが教師の時間と体力と精神的ゆとりを奪い、心身共に疲弊させている張本人であろう。にもかかわらず敢えて給与引き上げを先行させようとするのは、こっそりと教員のタダ働きを継続させることで財政支出増の元を取ろうとする文科省、財務省など、政府側の悪だくみの様にしか思えないのだが、いかがか。

財務省の「教職調整額10%へ段階的引上げ」に反論…文科省

   リシード 2024.11.13

   …教師の時間外労働は改善傾向にあるとしたうえで、勤務時間の縮減を給与改善の条件とする提案は、学校教育の質の低下につながる…という文科省の反論には呆れるしかない。本当に「教師の時間外労働は改善傾向にある」のだろうか。一体、どういう調査結果に基づいているのだろうか。

   どうせ都道府県教委からの報告に基づいた見解なのだろうが、そもそもそうした調査報告がどこまで信用できるのか、文科省は一度でも疑ってみたことがあるのだろうか。教師たちの在校勤務時間は確かに減ってきているだろうが、業務量自体にはさほどの変化がなく、ただ単に自宅への持ち帰り残業が増えただけではないのか。重要なのは各教師の心身におけるゆとりが実際に回復できているかどうかであろう。

   …教職員定数等の充実をすることなく、単に学校現場の業務縮減の努力のみをもって学校における働き方改革を進めようとする提案は、学校現場への支援が欠如している…という、一見もっともらしい見解を文科省は示しているようだが、これも噴飯物である。給与引き上げと教職員定数等の充実を前提としてしまえば、今後、学校での仕事量削減への反発が強まり、むしろ仕事量の増大すら招きかねない。「学校現場の業務縮減」という面倒な作業を何とか後回しにし、できればそれをサボりたい文科省の本心が透けて見えるようだ。

 学校が出来もしないレベルの量と質をもつ雑多な仕事をあまりにも請け負い過ぎてきたことこそ、諸悪の根源であろう。教師の業務削減こそ最初に着手すべき改革であり、順序を間違えると事態はさらに悪化しかねないと思うのだが、いかがだろう。

   ※参考記事

  〈教員の残業〉「働いた対価が得られないなんて意味不明」「まじめな教師ほど病む」“教職調整

   額見直し”報道に現役教師たちが吐露するもっと深刻な問題

    集英社オンライン 2024.11.9

不登校の小中学生、初の30万人超 コロナ禍以降で15万人増

   朝日新聞社 によるストーリー 2024.10.31

   不登校が増えた理由をもっぱら外部的要因たるコロナの流行や児童生徒本人の意欲低下等に求めているようだが、これで良いのだろうか。そもそも文科省の調査は児童生徒の不登校の原因の選択肢に教育行政や学校側の要因をほとんど入れていないという、まさに責任逃れで片手落ちの内容となっており、調査そのものに信頼性、妥当性がまったく欠けていると私は考える。

 文科省は家庭側の要因や教員不足、専門的対応の不足などに多くの課題を求めているようだ。しかし最も重大な原因がこれまで看過され、その解決がひたすら先送りにされてきたからこそ、不登校児童生徒の増加、イジメ重大事態の増加といった危機的状況を招いているのではないだろうか。すなわち日本の教育行政の長く続いた迷走と停滞により、日本の学校現場が徒に混乱させられてきた。そのことによって時代の急激な変化から学校は完全に取り残され、もはやガラパゴス状態となってしまった。そこから生じた様々な不具合こそがこうした問題の背景にあるのではあるまいか。

 多様性や個性、主体性を重んじ、話し合いによる協同作業を軸とした授業内容と授業方法の抜本的見直し、管理主義的、画一的教育行政の変革、教員養成教育と教員人事の見直し、学校の業務量の大幅な削減…どれもが一瞬たりとも先送りできないはずの巨大な課題が山積する中でついに表面化してきた教員不足という恐るべき末期的症状。この公教育の深刻な危機を小手先の弥縫策で乗り切れるわけがあるまい。

小学校教員採用予定の倍以上が合格しても募集人員確保できず 辞退7割 高知県教委

 テレ朝news によるストーリー 2024.10.31

 いよいよ文科省や都道府県教委の行った教員不足解消策が完全な的外れであり、かつまったくの「手遅れ」であったことがよく分かるデータであろう。高知大学の教育学部学生がかなりの人数で教師としては地元に留まらなくなっている、という事実が物語る現実はあまりにも過酷なものとなるだろう。学校での教員不足によって生じる諸問題の悪化が予想されるという、当然の帰結を招くだけではあるまい。極端な少子高齢化に直面する高知県での若者の人口減が一層加速し、県全体レベルでの過疎化がより進行してしまう、ということでもある。

 ただでさえ南海トラフ地震による大津波が予想され、高知県に居住する人々の不安が強まっている。そうしたタイミングでのこのニュースは県政をほぼ致命的なレベルまで追い詰めてしまう可能性があるだろう。

 ただの教育問題に過ぎなかったはずの教員不足を何一つ解消できず、むしろ若者の教師離れを加速させてしまったことがもたらすであろう地方の未来は暗い。教育問題を過疎の問題に直面する地方での急速な少子高齢化、人口減という大きな社会問題にまでこじらせてしまった、無能で無策な文科省、政府の責任は極めて重大である。

不登校のキミはどう生きるか? 鴻上尚史が解く「不登校」の背景 学校・教師が抱え

 る問題とスマホの悪影響 コクリコ編集部 の意見 2024.10.31

 日本が教育予算をケチってきたがために様々な問題が生じてきているのは間違いあるまい。なぜ手遅れとなるまで学校教師を放置してきたのか、政治責任が厳しく問われるだろう。

 鴻上氏が参考にしたユネスコのデータを下に紹介してみる。

 

・公的教育費の対GDP比率 国際比較

 単位 : %  出典:UNESCO  データ更新日:2024年9月20日

 ・世界の公的教育支出・教育費の対GDP比率 国際比較統計・ランキング。

 ・各国の公的教育費に対するGDP比率と国別順位を掲載。

 ・単位は%。

 ・公的教育支出は公的機関における教育上の全ての支出を含む。

 ・公的機関は中央政府・地方政府・地方自治体・市町村及び他の公的教育関係機関を含む。

 ・ランキング表示では当年のデータが無い場合、過去のデータで補完表示。

 

 以下、トップ10に加えて日本の順位の周辺にある国も併せて列挙してみた。このデータがどこまで信用できるのかについてはトップ10の国名を見ると、特に途上国のデータはかなり信頼性が欠けるように感じられる。したがって本来ならば比較的データが信頼できる先進国間での順位を重んじたいが、途上国込みのデータ自体の衝撃度はかなり大きいので、今回は途上国こみの順位の方を紹介する。

 なお日本の順位は男女平等度の国際比較での順位と極めて近く、子どもや若者、および女性を尊重しようとしない歴代内閣の政策がものの見事に反映されているように思えるが、いかがか。

 

     トップ10

1 キリバス       14.20       

2 ツバル        12.85       

3 バヌアツ       10.64       

4 ミクロネシア連邦   10.54       

5 キューバ        9.39       

6 ナミビア        9.04       

7 ソロモン諸島      8.29       

8 ボツワナ        8.06       

9 ナウル         7.81       

10モントセラ       7.61      

 

   日本の順位と周辺の国々

119      フィリピン           3.62  

120      アゼルバイジャン   3.58  

121      ザンビア              3.58  

122      アンギラ              3.55  

123      パラオ               3.44  

124      サンマリノ           3.43  

125      コートジボワール   3.43  

126      パラグアイ      3.41  

127      ベナン        3.38  

128      パナマ        3.37  

129      ルーマニア           3.32  

130      タンザニア      3.26  

131      セルビア              3.24  

132      日本         3.24  

133      カタール              3.23  

134      グアテマラ           3.18  

135      エルサルバドル    3.17  

136      ヨルダン              3.16  

137      マダガスカル       3.14

前年比1.4倍に大幅増の「いじめ重大事態」 調査する校長にも大きな心身への負担 

 「今でも涙が出る…」 医療機関にも通院 弁護士を自費で雇おうともしたが

 TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー  2024.11.1

 教育予算の不足はイジメ問題の解決を一層、困難なものにしている。

なり手不足が深刻化 教員採用改革をどう進めるか? 文科省で全国教育委員会連絡会

   採用試験の全国統一化も検討 受験者の負担を減らす狙い

   TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2024.10.8

   文科省が「教員採用改革」をテーマとしている限り、教員不足や不登校、イジメ問題など、山積する学校の課題は何一つ、改善しないだろう。これまでの文科省の対策の多くがただの弥縫策であり、学校教育行政が本来着手すべき問題の矮小化、ゴマカシに過ぎないことは既にこのブログでも繰り返し指摘してきた。

 むしろ教員採用試験の全国統一化を進めることで、大学での教員養成教育への国家による統制の強化を図らんとする文科省の小賢しい狙いが透けて見えてくる。今回の検討事項もまた「教員不足への対応」という大義名分に便乗せんとする、ただの悪質な詐欺的改悪であると断じて良いのではあるまいか。

 文科省が直ちに検討すべきなのは自ら大きな痛みを伴う自己改革の方であろう。上意下達の管理主義的統制を排した文科省自体の改革、とりわけ文科省の官僚が都道府県の教育長に天下りするような悪習の廃止や年功序列的教育行政人事の根本的な見直しではあるまいか。さらに教育内容の大幅な自由化、正解主義で一方通行の詰め込み教育を排し、教育の個別最適化と協働的学習を軸とした教育方法の改善、授業力向上を柱とする教員養成教育の刷新…等々であり、これらの方向性を踏まえた上での教員採用改革であるべきだと考える。今回のような、改革の名を借りた怪しげな方向性を模索するだけの文科省のプランに学校側がやすやすと乗っかるわけにはいくまい。

学校内に「居場所」設置46% 不登校対応、文科省整備加速へ

 共同通信 によるストーリー 2024.8.29

 記事で紹介されている文科省の措置はあくまでも対症療法であり、その場しのぎの応急手当てに過ぎない。重要なのは学校教育の魅力をより一層増大させて不登校に至る児童生徒を出来る限り少なくすることの方だろう。

 学校生活のメインとなる授業を楽しく、分かりやすく、有意義なものにしていく努力・工夫に加えてブラック校則の見直し、部活動の地域移行の推進、イジメ問題への対応力の向上、教員養成教育の見直し、教育行政の民主主義化、児童生徒の主権回復など、文科省以下教師に至るまでやるべきことは多い。それぞれが「居場所」の設置以上に重要な施策である。また文科省や教育委員会自体の組織改革も不可避となるだろう。さもなくば教師たちの「不登校」も増えてしまうに違いない。

教員確保の実現へ危機感 国や自治体の努力不可欠 中教審が給与アップを答申 

   産経新聞 2024.8.27

 中教審の答申や文科省の取り組みは西村氏が懸念するように肝心のポイントを巧妙にずらして組み立てられた、その場しのぎの誤魔化しに過ぎない、と思うがいかがだろう。当然、教員の給与引き上げは必要であるが、それ自体は児童生徒への還元が約束されない点で根本的な改革とは程遠いものである。さらに教員の増員と業務量の削減も同様に急がれるべきであるが、やはりそれだけでは必ずしもその成果が児童生徒に還元されるものとは限るまい。

 児童生徒が学校での生活にそれなりの喜びと意義を見出して生き生きと学校で過ごしていけるための最大のポイントとなるのはやはり授業であろう。もちろんブラック校則の見直しは言うまでもないが、それを実現するためにも児童生徒の人権が一層認められる授業内容と授業方法が模索されるべきである。一日あたり6時間をも占める授業こそが学校教育において最も比重の重い時間になるべきであり、授業改革を伴わない改革にはさほどの意味が無いと考える。

 もちろんIT化を推進して学習の個別最適化を図ることは重要であるが、それだけでは片手落ちの誹りを免れまい。より重要なのは時事問題に対する児童生徒の意見表明および話し合いの機会を豊富に設けて、彼らに社会と積極的に関わろうとする当事者意識を育むことだろう。この問題を考える上で工藤勇一氏の論考に加え、「子ども若者抑圧社会・日本」(光文社新書 2023)を著した室橋祐貴氏の考察も非常に適格で有効だと思われる。

 室橋氏はこの本で選挙権取得年齢の引き下げを主張するかたわら、日本の学校教育の問題点についてかなり詳しく触れている。児童生徒をあくまでも「未熟」な存在と捉え、その権利を幅広く制限しようとするこれまでの日本の管理主義的学校教育のあり方が現在の「子ども若者抑圧社会」を拡大再生産してきた、とする点は工藤氏の指摘と重なる点が多い。

 現今の教員不足と各種の学校を巡る事件、事故の背景に画一的で硬直した管理主義があると考え、そこに本質的な原因を見る立場からすると、教員の増員や給与引き上げ、仕事量の削減などはあくまでも副次的で対症療法的な対応に過ぎない。

 加えて児童生徒の意見表明や討論の機会を拡充するには教員養成教育の大幅な改革が不可避である。授業で児童生徒に意見表明の機会を数多く設けて多様な意見を交流させる討論型の授業を成立させるには、どうしても大学での少人数による濃密な授業体験の繰り返しが不可欠となる。子どもの権利条約の学習機会は大学においてもあらかじめ十二分に設けられてしかるべきである。

 中教審や文科省の打ち出す表層的な改善はかえって根本的な改革を先延ばしし、日本社会の停滞を延命させることになりかねない、と思うのだがいかがか。

全公立中学校に不登校やいじめ対応専任の「生徒指導担当教員」、文科省が体制強

   化…来年度から配置 読売新聞 によるストーリー 2024.8.23

   ほとんどその場しのぎのゴマカシで無意味な対症療法しか思いつかない文科省の停滞ぶりには呆れるほかあるまい。自分たちの責任を棚に上げ、不登校やイジメの増加は教師の力不足や人員不足から生じているとの、政府の浅はかな考えが透けて見えてくる。責任官庁が責任転嫁ばかりする文教行政に明るい未来は期待できない。

 生徒たちには文科省の対策が本当に功を奏るのか、考えさせたい。

教員8割超、外部人材活用で負担減予算は不足 リシード 2024.8.8

多忙化か薄給の2択? 現役教員らが中教審提案の新ポストを疑問視

 毎日新聞 によるストーリー 2024.8.3

 給特法の改正が根本的な解決につながらないことは言を俟たない。教師の給与を少しばかり上げたところでもはや「焼け石に水」であり、根本的な解決とは程遠い。もちろん教師の給与を上げること自体に反対しているのではない。問題なのは中教審や文科省に蔓延してきた、学校現場への無知、無理解に基づく頑固極まりないある種の偏見であろう。何だか知らないが教師どもが騒いでいるようだからエサをあげればきっと大人しくなるに違いない、と言わんばかりの言い草には辟易する。こうして繰り返される不真面目極まりない教育行政側の姿勢の背後に、学校現場への致命的なレベルでの無理解と理解しようとする意欲の乏しさを強く感じてしまうのだ。

 今年度の教員採用試験の志願倍率を見れば一目瞭然であるが、根本的な課題は教師の業務量の大幅な削減の方にある。今の若者は明らかにブラックな職場を敬遠しつつあり、それは教師採用試験の倍率低下、中途退職や休職の増加、教師不足の現状となってここ数年、表面化してきている。給与が高くて多少のやりがいがあればきっと若者は食いつくだろう、といった、明らかに若者と学校現場をなめ切ったような観点から繰り出されるどんな施策も、わずかな効果すら期待できるはずがない。

 近年、現役高校教師として果敢に発言している西沢氏が指摘するような「魔改造」レベルの施策しか考えられない中教審の無能さには呆れるほかあるまい。主幹教諭に加えて主任教諭を設けたところで、大幅な教員定数の見直しや業務の削減といったような肝心の支援措置の見通しはまったくといってよいほどに不透明…実にトンチンカンも甚だしいのだ。これでは教師脂肪の若者と現役教師の間には将来への絶望感しか湧いてこないだろう。

先生が足りない! 教員採用試験前倒しは解消に繋がる? 1クラス1人の担任制を廃

 止し「チーム担任制」を導入した小学校も【news23】

 TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2024.6.18

 教員採用試験前倒しがその場しのぎに過ぎないとの指摘は正しいだろう。またこうした泥縄式の対応策が続く原因の一つに文科省の官僚が学校現場への無知があるとの指摘も納得できる。とはいえ文科省による画一的で管理主義的な教育行政こそが教員不足と学校の荒廃をもたらしている根本原因との認識が見られない点に個人的には不満が残る記事である。

狙いは「ブラック職場」隠し? 文部科学省の逆ギレ抗議の怪しさ 教員の「定額働か

 せ放題」NHK報道めぐり 東京新聞 2024.5.25

文科省、NHK報道に抗議 中教審の教員確保策巡り

 共同通信 によるストーリー  2024.5.21

 「定額働かせ放題」という表現を一部の教員や学者によるものとする報道にも呆れ

るが、文科省の厚顔無恥な責任転嫁の姿勢にも呆れるほかない。ここまで深刻な若者の教職離れを推し進めてきたのは一体どこのどなたなのだろう。

 若者の教職離れを促進している学校のブラック化はもっぱら文科省と政府の責任である。画一的な管理主義的教育行政を根本的に見直すと同時に部活動の廃止などの施策が断行される上での教員確保策でなければまったく意味が無い。今、文科省が取り組んでいるのはすべて泥縄式の誤魔化しばかり。しかも言葉尻を捉えて己の責任を棚に上げ、NHKに抗議するというトンチンカンさが文科省というお役所の深刻な劣化ぶりを示していると考えるが、いかがだろう。

先生の6割が「3年以内の離職・転職」を考えている教員不足で現場に起きている

 ひずみの数々 東京新聞 2024.4.10

   なぜ、教師たちの不足が生じているのか、その原因を生徒たちに考えさせて対応策を提案してもらうとその後の議論が深まるだろう。

「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」(2023.10.17 文科省)

 文科省の頑なで傲慢な姿勢は相変わらずだ。教職員に対するこれまでの20年余りにわたる、息つく暇も与えないバカげた「教育改革」の連打こそが現今の学校教育問題大量発生の土台にある。そうした基本的認識すら欠如していたことが直近における深刻な教員不足を招いた最大の問題点ではなかったか。過去の間違いだらけの教育行政を反省することなく、こうした不毛な弥縫策を飽きることなく次々と現場に押し付け、現場をひたすら混乱させ、疲弊させる…こんな悪循環をいまだに断てないのも、学校現場の疲弊ぶりを本気で探ろうと努力しない、もはや探求する意欲と自省する力を一切失っている文科省自身の欠陥が一番の原因ではないのか。

 一体、いつになったら学校現場の実情が文科省の役人たちに伝わるのか…やはり絶望的にならざるを得ない。地方の教育委員会から上がってくる怪しい調査結果、どうにでも取り繕える信頼性の低い数字ばかり相手にしているからこそ、こういう悲劇的事態を招いているのだ。いい加減そのことに気付いて現実を直視していただきたい。

 教育委員会や管理職が事実を歪曲したり、表面を金メッキで糊塗できないよう、まずは自分たちの目で「お忍び」「潜入」を敢行してでも直にありのままの学校現場を視察すべきであろう。こうした組織が学校を含めてどれだけ酷い隠蔽体質を抱えているのかを示す資料は、このブログでも紹介してきたように、枚挙にいとまがなく、既に膨大な数に及んでいる。

 したがって地方からの報告を鵜吞みにすることが現場を信用している事の証…などともしも文科省が言い訳しようとするならば、それは文科省がいかに現場の実態を知らないか、知ろうとすらしていないかを証明しているようなものである。県教委を牛耳っているのは文科省からの天下り役人=都道府県教育長であり、現場の実態を知らない、などと文科省に言わせてはなるまい。

 適当に弥縫策を打っておけば当分の間、国民の目を逸らすことが出来る…という小ズルい判断を文科省が持っているとしたならば、「国家百年の大計」は早晩、崩れ落ちるに違いない。行き当たりばったりの対症療法でごまかすのはもういい加減止めていただき、公教育の在り方を本腰を入れて根本から見直すべきではあるまいか。

   たとえば「不登校特例校」を「学びの多様化学校」と名称を変えてみてもただのごまかしであり、根本的な問題から一時的に目を逸らさせるだけのことに過ぎまい。特例として特殊な目的を持つ学校を一握り創り出すことで公教育の根幹部分には一切手を付けさせず、温存させておこうとする魂胆がそこには透けて見えるのだ。

 あくまで「ガス抜き」としての特例に過ぎない学校を設ける…そんな事では、なぜこれほどにまで学校が忌避されているのか、なぜ学校がイジメの温床となっているのか、その本質的な問いをスルーしてしまうに違いあるまい。根本的に変えるべきは上意下達の教育行政と画一的、管理主義的学校の在り方全体であろう。

 もちろん、教員の働き方改革などの対症療法も急がれるのは確かであるが、本来、改革すべきはもっと根深いところにあるはず。画一的、管理主義的教育の徹底的な見直しだけではなく、教員養成教育の抜本的な見直しも急がれる大きな課題の一つであるだろう。これは安倍政権下を中心に進められてしまった諸々の「教育改悪」を全面的に修正するだけでもまだまったく不十分。戦後教育の全面的なリニューアルをともなう大改革が今、日本の教育界に切実に求められていると思うのだが、いかがか。

いじめ・不登校対策を前倒し、過去最多の認知件数で政府方針…早期に兆候発見狙

   い 読売新聞 によるストーリー 2023.10.11

 対症療法が無意味だとは言わないが、あくまでもその場しのぎの弥縫策に過ぎない点は忘れてはなるまい。なぜ、イジメや不登校が増加の一途をたどっているのか…日本の学校教育の在り方に問題は無いのか、根本から問い直すべきでは?

参考動画

【不登校】国家を根幹から崩す?フリースクールの選択肢は?無理やりでも登校? 

 親の責任論は的外れ?大空幸星&元当事者|アベプラ

 ABEMA Prime #アベプラ【公式】 2023/10/25  19:10

 この問題をフリースクールや特例校を設けることで解決させてはならないという点で大空氏の見解に同意する。根幹となるべきは公教育の根本的な見直しであり、特例校の設置はあくまでも応急措置の対症療法に過ぎないことを私たちはしっかりと理解しておくべきだろう。

 

参考記事

東京の小学校教員、採用試験が定員割れ寸前に 「休めない」職場環境に学生も不

 安? 東京新聞 2023.11.2

 案の定、付け焼刃の対策も効無し。千葉県でも全体で2.2倍程度の倍率なので教員の不足に加えてついに質の低下が懸念される危機的状況となっている。そもそも、若者人口減少が続く中で優秀な人材は海外に流出する一方であり、学校に限らずとも日本全体が若い人材の不足と質の低下に直面している。

 長いこと教育予算をケチり、教育改悪にばかり励んできたツケがいよいよ本格的に日本社会を襲い始めたのである。しかも残念ながら基本的には「時すでに遅し」というほかあるまい。

教師を取り巻く環境整備…緊急提言踏まえた取組み徹底を通知

 リシード 2023.9.11

 ようやく文科省が中教審の提言を受けて重い腰を上げようとしているが、これまでのことを考えるとやはり期待薄であろう。なぜならここまで学校のブラック化を招いた張本人は、誰あろう政府と文科省である。

 特にかつて実施されていた教員免許更新制は教師の意欲を喪失させるうえで決定的であった。そしてその後も強要される意味不明で役立たずの官製研修の数々。これまでの「教育改革」と称する政策への真摯な反省と長く現場を混乱させ続けてきたことへの謝罪の言葉一つ見られない点に絶望的なものを感じてしまう。

 

 あたかも地方の教育委員会や学校の努力や工夫がまだまだ足りない、と言わんばかりの、あからさまな上から目線…

 

 こうした教育行政の、自らの責任を回避しようとする姑息なあり方は先頃、性加害を巡って行われたジャニーズ事務所の会見に少し似ているのかもしれない。

 敢えて文科省の通知の言葉を借りるならば、文科省自身がまさに「自分事」としての切実な認識に欠け、責任転嫁の意図を見透かされるような、他人事の文言に終始している点に気付いていない…といった批判、ブーメランを返されてしまう情けなさを私は感じている。

 

 やはりこのお役所に学校のブラック化を改善できるなどと期待してはなるまい。

 

教員不足解消へ全国調査 文科省、教委の具体策確認

   共同通信社 によるストーリー 2024.1.23

   教員不足の原因はあたかも教委の努力、工夫の不足だと言わんばかりの居丈高な姿勢がこの調査の背景に見えてこないだろうか。長い間にわたり教師による独自の努力工夫の芽を摘まみ、踏みにじり、ブルシットジョブの嵐で体力、気力、時間を教師から奪い続けた挙句の教員不足ではないのか。犯人が自分の罪を棚に上げて犯行原因をこともあろうに犯罪の被害者に捜査させようという、凄まじいほどの転倒が起きている。そもそもこの調査自体がブルシットジョブそのものだろう。

   文科省の言う事を素直に聞いていればこんなことにはならなかったはずだ…ということか。ただの罰として強制される、まったく無意味な調査を敢えて最も忙しい時期にやらされる身にもなってもらいたい。

精神疾患により離職した教員 公立の幼小中高校で過去最多の「995人」 文科省調査

 TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2023.7.28

 2022年度における教員の精神疾患による離職者数、および転職による離職者数が過去最高を記録したという事実の重みをおそらく政府や官僚はきちんと受け止めることが出来ないだろう。

   結局は教員の不足を補うためにペーパーティーチャーの雇用促進や教員免許の無い人材の登用、教員採用試験の日程調整等による青田買いといった逆効果を招きかねない弥縫策を続けるしか能は無いのだ。すなわちこうした教職の安売り、大バーゲンセールは教職の価値をさらに暴落させ、教職離れを一層、加速させかねないだろう。

【発明】成田悠輔「価値を言語化しないとダメ」研究者が消える?すぐに成果を求

   める日本社会の壁 ABEMA Prime #アベプラ【公式】  2022/06/08  25:00

【研究者の給料】准教授で30万円は安すぎ?「日本は例外的 研究開発・人材育成に

 お金を投じてない」【西田亮介】|アベヒル

 ABEMAニュース【公式】  2023/09/25  14:01

 人口100万人当たりの博士号取得者数が日本は現在、ドイツ、アメリカ、イギリス、韓国などの半分以下、ほぼほぼ三分の一近くにとどまっているという衝撃のデータはこの20年余りの文教政策の誤りが日本経済の低迷と深くつながっていることをよく示しているだろう。それは高校以下の学校における職場としてのブラック化とだいたい並行して進んでいると思える。若者の未来をこれほどの酷さで一貫して暗く閉ざすような国家に明るい未来が訪れるはずはない。

維新の「高校完全無償化」が教育を破壊する可能性も…目先の人気取りに偏った政

   策の“2つの問題点”   文春オンライン 竹山 幸男 によるストーリー 2024.1.12

   高校授業料の無償化が一体、何を目指している政策なのかはしっかりと疑ってかかった方が良い。維新の会が持つ本質的な危険性がそこには見られるに違いないからだ。行政による教育への介入が強まることで私立高校の多様性、個性を成立させている基盤が崩れてしまいかねない点は特に憂慮される。

 教育の多様性と個性化への道は高校の場合、私立高校の取り組みに期待するところが極めて大きい。文科省以下、行政組織にがんじがらめにされて工夫の余地がわずかしか残されておらず、予算も人手も不足がちな公立高校に出来ることなど極めてちっぽけなものに過ぎまい。画一的で管理主義的な学校教育を変えたいのならば、今の日本では公立を二の次にして私学の活躍しやすい環境を整え、私学の定員を増やしていく事の方がはるかに現実的で有効だと考えるが、いかがだろう。

 貧困家庭に対する私学での授業料減免措置は今の制度の枠内で十分に実現可能なはずである。なぜ、敢えて今、「高校完全無償化」などと大阪万博の強行で今後一層財政難に苦しむはずの地方自治体が主張するのか…その真意はこれまでの維新の会の政策から見て明らかだろう。どうせ弱肉強食の競争原理をさらに大きく公教育に持ち込むことで公立高校の淘汰を進め、教育予算の削減を図るとともに学校教育への国家主義的統制の強化に努めることと私はかんぐっている。

 

・カッパ一押しの教育本「コロナ後の教育へ~オックスフォードからの提唱~」(苅谷剛彦 中公新書ラクレ 2020)

 「コロナ後の教育へ・・・」で日本の教育行政に対し「・・・エセ演繹型思考と法治主義をセットにしたアプローチでは、設計段階での欠点や欠陥を見過ごし、思った成果を上げられるかどうかを不明にしたままでも制度改革が出来てしまう。さまざまな副作用についても思慮の外に置かれる」(p.63)との苅谷氏の指摘は実に鋭い。

 立て続けに断行されてきた教育改革の発想の根幹を揺さぶるものであろう。また政治家や官僚側が常に自分達の謬見や過ちを棚に上げて学校を一方的に断罪し、改革と称する学校現場の破壊的政策をひたすら推進してきたこれまでの経緯の背景が見えてくる点で教師必読の書と考える。

その2.VRの科学と水槽の脳

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

   

その2 「VRの科学と水槽の脳」

   前回に引き続き心理学ネタをご紹介いたします。今回のテーマはVR(仮想現実)の科学と水槽の脳をテーマにして脳科学、AI、ロボット工学、IT技術の進歩によって人の知性がどこまで解明されてきているのか、ちょっとだけのぞいてみましょう。ただし前回とは異なってここでは著作権上の問題からyoutubeの動画や画像のほとんどをそのままの形ではブログでご紹介できません。学校における対面授業ならばパワーポイント等で多くの動画や画像を利用できると思いますので、授業での利用をお願いいたします。ここではテーマ別にカッパが視聴を推奨するyoutubeの番組名の紹介に留めさせていただきます。

 

   近年、VR(バーチャルリアリティ=仮想現実)の技術は家庭用ゲーム機にも取り入れられていてかなり身近なものになっています。かつてはディズニーランド等の大型アミューズメント施設やプラネタリウムなどでしか体験できなかったVR体験。

しかしゲーム機やアミューズメント施設でなくともちょっとしたVR体験は出来るのです。駅に停車中の電車内でボーッとしていると、突然、電車が動き出したと感じてハッ!としたこと、ないですか?でも実際に動き出したのはホームの反対側の電車だったりして・・・この自己運動知覚における錯覚をベクションといいます。

実は視覚20度以上の広い視野に運動が提示されたときに自己運動知覚(ベクション)が生ずることが確認されています。したがって大画面のスクリーンに列車の運転席から前方を移した映像を流せば運転手並みの臨場感あふれる体感が生じるはずです。これは自分が静止しているならば、広い視野に見える光景は現実世界では背景として静止している確率が圧倒的に高いため、まず脳が勝手に静止していると判断。ところが静止しているべき光景が動いたときには自分が動いたからだ、と感じてしまうことからもたらされる錯覚だろうと考えられています。
 この錯覚を応用しているのがプラネタリウムやアミューズメント施設。座席のわずかな動きと画面の動きとが連動することで観客の体感に驚くほどの大きな自己運動知覚を生じさせているのです。

※こうした各種の錯覚を本格的に体験できる施設としては東京都の科学技術館などがある。

 

  2021年12月に日本で公開されたSF映画「マトリックス・レザレクションズ」の予告編動画には以下のようなセリフがありました。

 「現実としか思えない夢を見たことは?」

 「その夢が覚めなかったら夢と現実を区別できるか?」

   SF映画「マトリックス」シリーズが表現している世界はVR(仮想現実)技術の究極的形態の一つかもしれません。人間は発電機として培養液に浸された上で脳に電極が接続され、巨大なコンピュータによってシミュレートされた「世界」を脳に直接送り込まれます。人はAIによってその「世界」を生きているように信じ込まされ、その実、ひたすら電気をコンピュータに供給しています。

 「世界」はほぼ完全にリアルであり、人と「世界」とのやりとりも自然に行われているように感じられます。どれがシミュレートされた「世界」でどれが本当の現実世界なのか、渦中に置かれた人類が識別するのはきわめて困難になっている・・・という設定です。

   パトナムという哲学者は「水槽の脳」という思考実験で、身体による脳の神経活動パターンによる体験とシミュレートされ脳に直接送り込まれた人工的な神経活動パターンによる体験とは区別できるか…という命題を立てました。答えはもちろん「区別できない」です。なぜなら錯視体験を通じ気付いたように私たちの知覚世界自体が脳の作り出したVRに他ならず、VR技術は脳の知覚機能をなぞっているに過ぎないとも言えるからです。

 ただ現在の技術水準は完全なVRの実現からは程遠いようです。特に統制の難しい嗅覚と味覚のディスプレイ開発は難航しているといいます(化学変化を媒介とした感覚は刺激のオフが難しいのだそうです)。

参考動画

メタバース】「生活してるだけ」仕事も食事も睡眠もVRゴーグルを被ったまま?

  週100時間もダイブする住民の日常は?バーチャル空間と人格|

  #アベプラ《アベマで放送中》 2021/12/15 16:34

 フェイスブック社が「メタ」と社名を変更したことが2021年、話題となった。ザッカーバーグの読みがあたるかどうか、議論しても良いだろう。あるいは仮想現実の世界で四六時中過ごすことへの賛否を問うことも出来る。

 

・水槽の脳

   水槽の脳とは「あなたが体験しているこの世界は、実は水槽に浮かんだ脳が見ている夢なのではないか」という仮説。哲学の世界で多用される懐疑主義的な思考実験で、1982年にヒラリー・パトナムによって提唱されました。

 正しい知識とは何か、意識とはいったい何なのか、といった問題、そして言葉の意味や事物の実在性といった問題を議論する際に使用されます。水槽の中の脳、培養槽に浮かぶ脳、桶(おけ)の中の脳、水槽脳仮説などとも訳されます。

   「マトリックス」の描く未来世界はコンピュータに支配された家畜のような人類の惨めで異様なあり方です。が、VR技術が人類に貢献する側面も大きいといいます。テーマパークでのアミューズメントだけでなく、宇宙開発、医療、教育訓練などの分野ではその貢献が大いに期待されているようなのです。火星探査機では1996年からVR技術を導入し、小型探査機の操縦が(リアルタイムとはいきませんが)行われています。また恐怖症の治療においては行動療法の立場からVR技術を応用した「エクスポージャー(暴露法)」が取り入れられています。これはリスク、経費、操作性などの点でメリットが大きく、治療効果も絶大だといいます。
 難病の網膜色素欠損症などで失明した患者のためには人口網膜の開発が進められています(ただし近年は再生医療への注目が高い)。解像度がまだ不十分で実用化には時間がかかるようですが、いずれ多くの人の視力が回復することが期待されています。聴覚障害者にはすでに人工内耳の埋め込み手術が始まっており、多くの患者が救われてきています。いまやパイロットの訓練を始め、手術の訓練、リハビリ、はてはスポーツの世界にも徐々にシミュレーショントレーニングが浸透してきているといいます。学校でも空間認識を高める(空間認識能力を必要とする学習は地理、天体の動き、算数・数学の図形等けっこう多様である)ためなどにVR技術の導入が実験的に進められているそうです。

 

・サイボーグとアンドロイド

 HAL(ハル、Hybrid Assistive Limb)は生体電位信号を読み取り動作する世界初のパワードスーツ。筑波大学によって開発されています。 現在2タイプが存在し、HAL 3は脚部のみが稼動しますが、HAL 5は腕、脚、胴体の全てが稼動するようです。HAL 5は現在、装着者が本来持てる重量の5倍の重量を持つことができる性能があるとのこと。 装着者の皮膚に取り付けられたセンサーを通して微弱な生体電位信号を感知し、内蔵コンピュータによってその信号が解析され、装着者の動きを補助するようにスーツが動作するといいます。身体障害者や高齢者の運動補助のために開発されており、将来的には労働用のHALも開発する予定だそうです。

参考動画

意識の誕生–どうやって意識は獲得されたのか

 世界をわかりやすく Kurzgesagt  2023/12/21 9:57

知性とは何か。その始まりは?

 世界をわかりやすく Kurzgesagt  2024/03/07 9:42

【神回】成田悠輔が悶える…"感覚を共有"ボディーシェアリング技術を体験!

 研究者・玉城絵美とテクノロジーの未来を考える

 2022/07/23 ABEMAニュース【公式】 16:09

【天才共演】成田悠輔×研究者・玉城絵美|感覚を共有する"ボディーシェアリング

   技術"を語りつくす 2022/07/27 ABEMAニュース【公式】 47:27

玉城 絵美 / 受賞者プレゼンテーション World OMOSIROI Award 8th.

   2022/05/18 ナレッジキャピタル / Knowledge Capital 28:26

「寺田家TV.サイボーグパパ」【車椅子卒業】一生治らないはずの障害が治りまし

   た【息子のおかげ】2020/08/09 11:11

 HALを装着して歩く訓練の様子が感動的。

世界初の装着型サイボーグ!?サイバニクスがもたらす新しい社会とは(前編) 

 2022/02/04 堀江貴文 ホリエモン 18:03

装着型サイボーグ「HAL」で難病患者の歩行機能が改善する理由とは?サイバニク

 スがもたらす新しい社会(後編)2022/02/05 ホリエモン 23:13

   MITのヒュー・ハーは21世紀末、サイボーグ化した人類が羽を持ち、空を飛べるようになるのではと大胆にも予言しています(TED:2018年の講演 youtubeで視聴可能)。今や、科学技術の進歩により(神経系がある程度残されている場合に限りますが)義肢は人の肉体と一体化し、感覚を持ち始めているようなのです。足を切断してしまったヒュー・ハー自身が義足を用いて山登りまで挑戦しているといいます。確かに四肢を欠損してしまった人々にとってこれらの技術が将来への明るい希望となっているのは間違いないでしょう。

参考記事

人類初「AIと融合」した61歳科学者の壮絶な人生~「ネオヒューマン」の生活は喜びと

   希望に溢れる~藤田 美菜子 : 東洋経済オンライン 2021/06/11

「64歳で逝去「人類初サイボーグ」が世界に遺した物 東大教授追悼

 「ネオ・ヒューマンは生き続ける」  稲見 昌彦 東洋経済オンライン2022/07/06 1

参考動画

[クロ現+] 人類初のサイボーグ 難病と闘うピーターさんの挑戦 | NHK

 2022/01/07 NHK 4:03

   …イギリスのロボット科学者であるピーター・スコット-モーガン博士(2022.6.15死去)は、全身が

 動かなくなる難病ALSで余命2年を宣告されたことを機に、人類で初めて「AIと融合」し、サイボーグ

 として生きる未来を選んだ。彼はなぜ、そんな決断ができたのか。「人間がAIと融合」するとはどう

 いうことか。それにより「人として生きること」の定義はどう変わるのか。ピーター博士が自らの挑

 戦の記録として著わし、発売直後から世界で話題騒然の『NEO HUMAN ネオ・ヒューマン――究極の

 自由を得る未来』(原題『Peter2.0(ピーター2.0)』)が、6月25日、ついに日本でも刊行され

 る。・・・以下略・・・東洋経済オンライン (2021/06/11)より引用

【不老不死】「人の意識を機械の中で生かす」20年以内の実現を目指す研究者に聞

   く!肉体に縛られない不死の世界【渡辺正峰】|#アベプラ《アベマで放送中》

 2020/08/20 ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】 40:18

意識の研究が不老不死の実現に繋がる…!?専門家と「意識」を解き明かす(後

   編)2021/10/15 堀江貴文 ホリエモン 13:25

機械に意識は宿るのか?そもそも意識とは?専門家と「意識」を解き明かす(前

   編)2021/10/14 堀江貴文 ホリエモン 25:20

意識と肉体を切り離して考えることで、人と社会は進化する!?【川上量生×堀江

   貴文】 2022/03/13 堀江貴文 ホリエモン 12:22

【ホリエモン×川上量生】『ニコ動』産みの親と考える「ヒトの意識と100年後の

   AI論」 2022/02/28 NewsPicks /ニューズピックス 10:08

将棋もAIを真似する人が勝つ時代?今後の人間社会とAIの関係【川上量生×堀江貴

   文】 2022/03/16 堀江貴文 ホリエモン 10:36

 

   さてロボットスーツと言えばどうしてもアニメのガンダムやエヴァンゲリオンを連想してしまう中高年の方は多いでしょう。あるいは「攻殻機動隊」のシリーズを思い浮かべる方もいらっしゃるに違いありません。いずれにせよ私たちはAI搭載のロボットが軍事利用される危険性も常に肝に銘じておく必要があるのです。

   大阪大学の石黒浩氏は人間に近いロボット(アンドロイド)の開発で有名です。ホンダのアシモを遙かに凌ぐボストンダイナミクスの各種ロボットの機敏な動きはいつの日か人類の技術がサイボーグ(人主体)とアンドロイド(機械主体)の交わる領域に到達する可能性を示しているようです。凍り付いた路面で足を滑らせながら移動したり、雪道を転ばないように歩いたり、家事手伝いをしたり、バク宙したり・・・既に薄気味悪いほどに彼らの動きが本物の生き物のようにスムーズになっていることがよく分かるでしょう。(「Boston Dynamics」 youtubeで幾つかの動画あり

   人型だけではなく、各種の生物型ロボットも登場してきました。その内に本物の生き物と見分けのつかないロボットたちがゾロゾロと出現するに違いありません。そしていつの間にか私たちをいつ、どこに居ても監視し続ける時代が来るかもしれません。(各種の生物型ロボットもyoutubeで視聴可能

 確かに以下の中国に関する記事を見たとき、科学がもたらす人類の未来は手放しでバラ色とは言えなくなるでしょう。

参考記事

 中国、「革命的兵器」開発急ぐ=AI・脳科学で対米勝利目標
  時事通信 2020/12/28 18:05

 思考でドローン操縦、脳と機械つなぐBCI技術がもたらす未来     

      - 新華社通信 - 2021年1月22日

参考動画

【成田悠輔】「人間関係を緩められる」自分がもう一人!?"人間臭いAI"デジタル

   クローンが作る未来とは 2022/08/24 ABEMAニュース【公式】 15:46

   「デジタルクローン」の利用価値、可能性について討論できるだろう。50年 以上前に放映されてい

  たアニメ「パーマン」に登場するような自分ソックリの代理ロボットに仕事や宿題などの面倒なこ

  とを全部押しつけて人が好き勝手に遊び暮らせる時代は果たしてやって来るのだろうか?

 

・ロボットと人類との共存は可能か?

 ディープラーニング=深層学習の機能がコンピュータに備わったことでAI(=人工知能)搭載のロボットが人類にとって脅威となるほど、ロボット技術は急速な進化を遂げつつある。囲碁の世界ではアルファ碁が2016年、世界チャンピオンクラスを次々と打ち破り、コンピュータが人類の力を上回りつつあることを世界に知らしめた。しかしチェスでは既に2005年にコンピュータが世界チャンピオンを撃破していた。その10年後の2015年、ホーキング博士やイーロン・マスク(実業家)、ウォズニアック(アップル創業者の一人)といった著名人らが人工知能国際合同会議の場で自動操縦による無人爆撃機やAI搭載型兵器の急速な進歩に警鐘を鳴らしていた。「ターミネイター」や「アバター」といったSF映画の世界が今、足下まで近付きつつあるようだ。

   ついには「AIが人間を殺す日」(小林雅一 集英社新書 2017)という衝撃的なテーマの本も登場してきた。果たしてロボットと人類の平和的共存は可能なのか?AIやロボットの技術は一体どこまで進化を遂げつつあるのか?そしてその進化が人類にとってどんな影響を及ぼすのか?これらの疑問に答えようとする時、「人とは一体、どんな動物なのか?」「生きるとはどういうことなのか?」といった根本的な問いに突き当たるに違いない。

 まずはロボットの歴史を概観してみよう。何か答えに近づけるようなヒントがロボット開発の歴史の中に隠されているのかもしれない。

 そもそもロボット(1920年、小説家のカレル・チャペックが創り出した言葉でチェコ語の「ロボッタ」=強制労働やスロバキア語の「ロボトニーク」=労働者から考案)とは人の代わりに何らかの作業を自律的に行う装置、もしくは機械のことを言う。AIやセンサー技術、IoT(Internet of things:様々なモノがネットにつながり、情報交換されている状態、あるいはそれが実現されている社会)の発展により自動運転機能のある自動車(日本は2025年までに完全自動運転の実現を目標としている。アメリカではグーグルがこの分野にも本格的に参入)や家電製品の一部(お掃除ロボット「ルンバ」など:ルンバはネットとつながることで部屋の見取り図が拡散し、プライバシーの侵害や防犯上の問題が生ずるとする批判も招いた)も最早ロボットと呼ばれる域に達しつつある。

 人に似せて創られたロボットは特に「アンドロイド」(人造人間)といわれる。映画に登場したターミネーターはアンドロイドということになる。紛らわしい言葉としてはサイボーグ(サイバネティック オーガズム)があるが、これは生命体としての人体と機械とが合体したもので2014年に生活支援ロボットとして世界から初めて認証されたHALは「パワードスーツ」と呼ばれるタイプ。HALは生体電位信号を読み取って装着者の動きを補助する、障害者や高齢者向けに開発されたロボットスーツであり、2008年に世界で初めて製品化されている。

 1950年、SF作家のアイザック・アシモフがロボット工学三原則を打ち出したことは有名である。「人間への安全性」「命令への服従」「自己防衛」という三つの目的に沿ってロボットは開発されるべきだというのである。しかし自動操縦による無人爆撃機は既に実戦に利用され、ドローンを用いた殺人兵器も開発済みである。アシモフの提唱した三原則は必ずしも守られていない。AIが搭載されたハイテク兵器が、今後、自律的に動き始めることが許されることがあれば確かにターミネーターの世界はもうすぐそこまで来ているのかもしれない。前掲書「AIが人間を殺す日」では「自動車」「医療」「兵器」に組み込まれるAIの危険性に注目している。これらの分野がとりわけ「人間への安全性」や「命令への服従性」を脅かす危険性が高いからである。

 AIの怖さはどこにあるのだろう?2015年、高度医療で有名なアメリカのマウントサイナイ病院が「ディープ・ペイシェント」と名付けた病気の予測システムを開発している。これは身長、体重、血液や尿検査のデータを元に各種のガンや糖尿病、統合失調症といった78種の病気に関して他のあらゆる技術をしのぐ精度で発症確率をはじき出すことが出来るもの。並外れた予知能力があることが分かったが、実は「ディープ・ペイシェント」がなぜそうした予知をはじき出したか、その根拠はどこにも示されなかった。つまりコンピュータの思考回路は余りにも複雑で高速なために、人間には見えない「ブラックボックス」と化しているのだ。私たちは最早コンピュータの示す診断結果に疑問を差し挟むことはできない。高度化したAIは既に警戒域に達していると見て良いだろう。

 AIが得意としているのは大量のデータからある種の規則性(=パターン)を見いだす事だと言われる。このパターン認識においてAIは今や人間を抜き去っている。従ってパターン認識を仕事とする分野はAIに仕事を奪われるかもしれない。2013年にオックスフォード大学が、2015年には野村総合研究所が将来的にAIやロボットにより雇用がなくなる恐れのある職種を数百種挙げて警鐘を鳴らした。しかし本当に雇用を失うのは株式投資に関わるファンド・マネージャーや運転手、放射線科医などパターン認識に関わる限られた職種に過ぎず、AIが新たに生み出す雇用も考えられるという。雇用問題に関してはAIの脅威論はどうやら誇張され過ぎた側面があるようだ。

 深刻に見えるのは「シンギュラリティ(技術的特異点)」、「2045年問題」の方かもしれない。レイ・カーツワイル(発明家)が提唱してきた問題で彼によれば2045年頃にはコンピュータの処理能力があらゆる点で人間の能力を上回り、AIが意識や感情までも備えるようになる。やがてAIやロボットが人類を支配し、その生存を脅かす恐れが出てくるかもしれない。これに異を唱える専門家は多いが、ホーキングやイーロン・マスクが同調した点は見逃せないだろう。

 AIの専門家の間で広がってきた問題意識は「human out of the loop」と呼ばれるもの。今後、急速にスーパーオートメーション化が進むと人類の制御が効かない自律性をAIが持ってしまう、といった危険性である。自動運転車では様々な想定を描いて試行錯誤が繰り返されているが、現時点では滅多に起きることの無い、おびただしい数の非常事態まで想定することは不可能とされている。たとえば赤信号では止まるとプログラムされていても工事中のため、信号ではなく、人の指示に従うといったケースではいずれを選択して良いか判断できないため、自動運転は停止してしまう。現実は複雑すぎ、コンピュータが苦手とする不良設定問題に充ち満ちているのである。であるにも関わらず完全自動運転を強行すれば人間だったら避けられた重大事故が自動運転により発生してしまう恐れが生じてしまうだろう。AIの暴走や誤作動によって生ずる被害は事と場合によっては桁違いに大きなモノとなる可能性がある。そこで現段階では自動運転の場合、「human in the loop」、すなわち人間の判断や操作も加味した「半自動運転」の方向も模索されているのである。問題は制御の輪に人間を入れるべきか?入れるとするとどの程度まで人間に任せるべきか?運転の主導権を巡る機械と人間との綱引きが当分は続くものと考えられる。

 日本では1963年に日本初のテレビアニメ「鉄腕アトム」が人気を博して以降、ロボットへの恐怖感よりは愛着の方が強まっていった傾向がある。特に1980年代は産業用ロボットが自動車などの生産ラインに次々と導入され、ガンダムを始めとしたロボットもののアニメが一世を風靡した。しかし工場を除くと庶民がロボットを目にするのはしばらくの間はアニメの世界に限られていた。しかし1996年に本田技研が二足歩行する人型ロボット「P2」を発表し、世界中で注目された。本田技研はさらに2000年、「ASIMO」の開発に成功し、軽量化をはかるとともに階段を上らせるなどの改良を重ねた。新型のASIMOは歩くだけではなく、手のひらや指のセンサーを備えて紙コップにお茶を注ぐことや、3人の音声を同時に認識できる、周囲の動きに合わせて衝突を回避できる、片足ジャンプできるなど、急速な進化を遂げている。 

   ソフトバンクは画期的なロボット「Pepper」を2015年に発売した。感情機能を持つAIを搭載し、人の笑顔や反応を記録分析学習できる。またネットを通じて他のPepperの学習内容も取り込むことが出来る。「ASIMO」の機能と「Pepper」の機能とを併せ持つロボットが登場すれば私たちは様々な場でロボットを見かけるようになるだろう(実験的にはロボットだけで対応する喫茶店がすでに試みられている。ただしpepperに関しては近年、見飽きられて次第に物珍しさが無くなり、客寄せ効果が薄れてきたことや限定的機能の割りに維持費がかさむなどの点から急速に顧客を失いつつある)。

   2016年、イギリスの学者デビッド・レビは「2050年にはAIを搭載したロボットと人間とが結婚する日がくる」と断言した。日本マイクロソフトの「りんな」は雑談力に磨きをかける。大阪大学の石黒浩は2015年にアンドロイド「エリカ」を開発し、「同じ部屋に一ヶ月住めば必ずエリカを好きになる」と豪語する。AI搭載のアンドロイドはいずれ私たち人類と見分けがつかない存在になっていくだろう。当然、人類も機械を一部体内に取り込んでサイボーグと化し、徐々にアンドロイドに接近していくのだろう。将来的には「AI vs. 人類」という二項対立的な捉え方自体が成り立たなくなる日が来るかもしれない。

   遅かれ早かれ人がロボットを操っているのか、ロボットが人を操っているのか,

制御の主導権がどちらにあるのかすら不分明になる時が来てしまうかもしれない。問題が複雑になりすぎて手に負えなくなる前に人類が知恵を結集し真剣になって考えておくべき事がありそうである。

 

   確かに科学技術の発展はその悪用を防ぐことが可能であれば輝かしい未来を人類に用意するだろう。しかし原子爆弾、原発事故、環境破壊等、科学には負の遺産も多いという見方がある。新しい科学技術がどのように使われるのか、情報公開を通じて国際的に厳しく監視できるシステムの構築が今後必要不可欠となるに違いない。さもなければ「マトリックス」や「A.I.」が描いた無残な未来が人類を待ち受けることになるだろう。実際、既にVR技法は軍事訓練にも取り入れられている。そしてAIが搭載された殺人兵器としての無人戦闘機はとっくに実戦に投入されている。

   今やAI対策は人類全体にとって喫緊の課題となっていると考えるが、皆さんはどう考えるだろう?

参考記事

DeepMindの研究者が「AIが人類を滅ぼす可能性は高い」との論文を発表

   Gigagine  Dick Thomas Johnson 2022/10/09 20:00

イーロン・マスク氏らが人工知能に警鐘 映画『ターミネーター』のような世界を危

   惧 よろず~ニュース によるストーリー  2023.4.2

参考動画

【AI 2027】「今後2年でシンギュラリティは来る」AIの進化で注目される企業

     (palantir、BigBear.ai、CrowdStrike、Palo Alto Networks)CEOの展望は 

    柏原迅 | AIマーケティング戦略 2025/05/02 26:46

[NHKスペシャル5min.] AIと戦争の危険な合体 忍び寄る新たな戦争の脅威 |

   NHK 2021/07/13 4:40 ・・・必見!

【ゼノボット】複製して子孫残す!カエルの細胞から生まれた“生体ロボット”|#

   アベヒル《アベマで放送中》 2021/12/15 9:50

 機械と生物との境界がさらに曖昧なものになる。

【日本が危ない!】いま、世界は幕末!?未来から来た女が言う『日本の危機』と

   は【未来から来た女 Vol.1】 2019/01/24 5:32

年金制度が崩壊し、日本から若者が脱出! そして2040年に世界大戦が起きる・・・?

 【未来から来た女 Vol.2】 2019/01/31 6:23

日本に残された道は「○○○○の放棄」しかない!?そして起こる『シンギュラリ

 ティ』とは【未来から来た女 Vol.3】 2019/02/07 6:48

AIが実現した『シンギュラリティ』 そして訪れる人間の『変化』とは・・・【未来か

 ら来た女 Vol.4(最終話)】 2019/02/21 6:46

 日本の近未来について楽しく考察する上で良い「たたき台」となる。4話に分かれるがそれぞれ短い

 ので授業で利用しやすい利便性もある。ただし4回すべて続けて視聴させてしまうと論点を整理する

 ことが難しくなってしまう。展開によってはvol1と2だけ見せて、日本の将来を見据えたどのよう

 な対策があり得るのか、生徒達にまず問い、意見を募っておく。その後vol3以降を視聴させ、生徒

 達およびアニメの論点を整理してから討論のたたき台に使う・・・といった工夫が必要かもしれな

 い。もちろん第4話で人々の「善意」を落としどころにしてしまったのは甘すぎる・・・とは感じ

 る。トランプのような人が現れて人々の悪意を組織化し、集団的に暴走させることを防ぐにはどうし

 たら良いのか、人々の善意をどのようにして政治的力に組織していけるのかが、SNSの発達した

 今、最も問われていると思われるが、その点に関する言及や提案がイマイチ足りない。控え目に見て

 もシンギュラリティが人類に都合の良い方向で実現する保証はなかろう。

  まずはどういう方向性が妥当なのか、日本のあるべき方向性を他の資料も示しながら全員でじっく

 り討論させてみたい。

  なおAIやITの発展、NFTやメタバース等の発展によってもたらされる社会の変化については

 本ブログ第6章「あなたと日本の進路問題」でいくつかの資料を紹介している。

参考動画

【最新版】今、自分はどこに居てどこの世界を生きているのか?本当にあなたは分

   かっていますか? 成田悠輔の未来論

   半熟仮想株式会社 2023/11/03  11:23

[英語スピーチ] ホモサピエンス最後世代になる皆さんへ|ユヴァル・ノア・ハラリ|

  ホモサピエンス | Yuval Noah Harari |日本語字幕 | 英語字幕|

 Gariben TV 2021/10/04 17:24

[英語ニュース] あなたの心は今読まれる | ユヴァル・ノア・ハラリ | 2020年度卒

 業祝辞 | Yuval Noah Harari |日本語字幕 | 英語字幕 | NO BGM

 Gariben TV 2020/11/18 6:30

 ハラリの動画はまとめとして視聴することを推奨。時間が足りないときはこの動画を、時間に余裕が

 あるときはこの一つ前の動画(緑字)が良いだろう。ハラリの発音は聴き取りやすいのでちょっとし

 た英語の聞き取り訓練にもなる。

【成田ロボ】「人間はポンコツ」なぜロボットは人型なのか?己の分身に思いを馳

 せる?/3体のPepperと共生する女性&成田悠輔が議論|

 #アベプラ《アベマで放送中》 2022/01/22 ABEMA 19:27

【落合陽一氏の先輩が天才過ぎる】ボディシェアリングの起業家 玉城絵美氏はノー

 ベル賞級/個人の感覚を拡張、他人やロボットと共有/生活もビジネスも一変する

 /茂木健一郎氏も驚愕のテクノロジー

 PIVOT 公式チャンネル 2023/06/14 41:36

 視覚、聴覚、皮膚感覚なども含むVRで牛として搾乳されてみたら、人はどういう状態になってしまうのか…極めて示唆に富む実験が紹介されている。

【2029年に人生は3倍になる】科学者玉城絵美氏の未来予想図/日本は人間拡張研

 究をリードできる/農業と観光が変わる/理工系の学部に女性が少ない理由【玉城

 絵美×茂木健一郎 後編】 PIVOT 公式チャンネル 2023/06/15  44:03

人型ロボットはここまで来た | WIRED.jp 2022/03/18 WIRED.jp 7:36

Robots that work alongside humans - a peek into the future | Daniel

  Fitzgerald | TEDxChandigarh 2020/08/15 TEDx Talks 9:38

 

その2の主な参考文献

「だまされる脳」日本VR学会等 講談社ブルーバックス 2006

「皮膚感覚の不思議」山口創 講談社ブルーバックス 2006

「進化しすぎた脳」池谷裕二 講談社ブルーバックス 2007

「サブリミナル・インパクト」下條信輔 ちくま新書 2008

「単純な脳、複雑な『私』」池谷裕二 朝日新聞社 2009

「謎解き・人間行動の不思議」北原義典 講談社ブルーバックス 2009

「錯視入門」北岡明佳 朝倉書店 2010

「脳はなぜ心を作ったのか」前野隆司 ちくま文庫 2010

「和解する脳」池谷裕二・鈴木仁志 講談社 2010

「脳と心」ニュートン別冊 2010

「知覚の正体」古賀一男 河出ブックス 2011

「錯覚する脳」前野隆司 ちくま文庫 2011

「知覚の正体~どこまでが知覚でどこからが創造か~」

  古賀一男 河出ブックス032 2011

「脳と意識」ニュートン 2012 5月号

「脳には妙なクセがある」池谷裕二 扶桑社新書154 2013

「心の多様性~脳は世界をいかに捉えているか~」

  中村哲之他 大学出版部協会 2014

「脳がつくる3D世界」~立体視のなぞとしくみ~」

  藤田一郎 Dojin選書064 2015

「自分では気づかない、ココロの盲点 完全版」

  池谷裕二 講談社ブルーバックス 2016

「皮膚は心を持っていた!」山口創 青春出版社 青春新書 2017

「AIに心は宿るのか」松原仁 集英社インターナショナル新書022 2018

※VRに関しては「だまされる脳」、AIとロボットに関しては前野隆司氏と松原仁氏の本が大いに参

 考になりました。脳の働き全体に関しては繰り返しになりますが、分かりやすさと面白さの点で池谷

 裕二氏の本が群を抜いていると思います。

 

 

 

 

 

 

⑰オリンピックと万博の裏側

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

参考動画

落合陽一氏が大阪・関西万博から見た“面白い国・日本”を取り戻す未来のヒント

   【切り抜き】(G1サミット2025 第9部分科会【政治】より)

    GLOBIS学び放題×知見録 2025/05/01  4:22

    1970年の大阪万博と今の万博とは何が違うのか、落合氏の感想が面白い。しかしただ日本の衰退ぶりを再確認できる絶好の機会を得るためだけに、これほどの巨額の税金を投じてまで万博をやる必要があったのか、は厳しく問われなければなるまい。

批判を排除する空気は「あの時」にそっくりやろがい…! #大阪万博

 せやろがいおじさんチャンネル 2025.4.14 16:29

 まさに戦時中の言論統制に類似するような報道規制が始まっているようだ。兵庫県政の混乱ぶりも考え併せると、自分たちに批判的な言動を嫌悪し、一方的に排除しようとする、維新の会の体質があるように感じるのは私だけであろうか。

 確か東京オリンピックの時も結局は同様の空気感が漂っていた。特に罪深いと思うのが、こうした行事に国家が各教育委員会を通じて学校行事という名目で児童生徒たちに半強制的に参加させているという現実であろう。

 そういえば東海村の原発関連施設でも、40年近く前、「原発万歳」といわんばかりのポスターを周辺の児童生徒に作らせて展示していた。NHKの朝ドラ「鳩子の海」(1974~75)やTVアニメ「鉄腕アトム」(1963~66)なども、今から見ると原子力の平和利用促進に向けたマスコミによる国民や子どもたちへのあからさまな洗脳、といった要素が見え隠れしている。

 国家が特定の政治目的実現のために児童生徒を動員し、かつ集団的に洗脳しようとするのはそもそも公教育における政治的中立を謳った教育基本法に違反しかねない…と思うのだが、いかがだろう。

参考記事

「水増しだ」「情けない」万博入場者は〝来場客+スタッフ〟で計算 協会発表に批判

 噴出 産経新聞 2025.5.1

 あまりにも低次元の情けなさに呆れて物も言えなくなる。反対や不安の声を圧殺してまで開催した万博の裏側に潜む真の意図が透けて見えてくるようだ。

 

・阿部詩選手号泣の件

参考記事

パリ五輪で試合前に十字を切った柔道家が5か月の資格停止も「謝罪するつもりは

 ない」 東スポWEB によるストーリー 2024.9.20

 日本の柔道が神道の振る舞いを外国人選手に強要することがあってはならないのと同様に、外国人が自身の信仰に基づく行為をみだりに柔道連盟が禁止することは不適切に思えるが、いかがか。

 信仰上の行為が試合時間の遅延になるなど、競技の上で邪魔になったり、危険になるような場合はもちろん禁止すべきだが、さほどの支障が生じないのであるならば基本的にOKとした方が多様性の尊重と信教の自由の保障にもつながるだろう。

「もはや日本の柔道精神はない!」柔道混合団体、畳に“唾吐いた”ブラジル選手に

   ネット騒然「子供たちが見たらどう思うだろう」【パリ五輪】

   THE DIGEST によるストーリー 2024.8.4

 この件は生徒たちにとって議論しやすいテーマであり、授業に取り上げてみても良いだろう。この記事の内容への賛否を問うてみたい。

   畳の上は「神聖」だから唾を吐いてはいけない、という日本特有の宗教じみた論理が世界にすんなりと通用するとは思えない。単純に衛生面や競技上の観点から「唾吐き」を禁止すれば良いだけだろう。

   大リーグではマウンドの上で唾を吐く投手はザラにいる。マウンド上に選手が顔をつけるような事態はプレーとしてほとんど生じないので、アメリカではその行為が必ずしも不衛生とは感じられないのだろう。しかし柔道という種目では寝技などがあるため、畳に顔などがつく場面は決して少なくない。その際、畳に誰かの唾が着いていたとしたら、さすがに欧米の選手でも抵抗感を覚え、汚いと感じるだろう。もちろん唾で畳が濡れていたことで足が滑りやすくなってしまうことも考えられる。やはり柔道での「唾吐き」は汚いだけでなく、危険かつ競技の妨げにもなりかねない。だからこそ柔道では畳に唾を吐く行為を固く禁止すべきではある。

 日本の場合、柔道や剣道では道場に神棚が祀られている事が多く、道場内自体が神社の境内と同様の聖域とされてきた。しかしオリンピックの会場に神棚を持ち込んで選手全員を神道のルールに従わせることなぞ、選手たちの信教の自由を否定することにつながるので絶対的に不可能である。つまり畳の上は神聖である、という日本人の観念を選手全員に押し付けることは出来ない。

 柔道がオリンピックの種目である限り、柔道場は他の種目と同様にただのスポーツ会場でしかなく、日本のような意味での聖域では決してないのだ。

【柔道】斉藤立を破った韓国・金民宗の〝煽りパフォーマンス〟が物議「武道家で

   はない」 東スポWEB によるストーリー 2024.8.3

   これも阿部詩選手の件と同様に柔道を武道として捉える立場からの批判である。試合に勝った選手が礼をする前に派手なガッツポーズをしたことは相手選手への礼を欠く行為として好ましくないという。そういえばかつて甲子園でもヒットを打った、あるいは三振を奪った選手が派手なガッツポーズをすることが相手チームへの敬意を欠く行為として教育的見地から批判されたことがあった。

 確かに勝って兜の緒を締めよ、というようにかねてから日本では勝者の慎ましい振る舞いが称賛される一方で、相手がいる前で自らの勝利を大袈裟に喜ぶのは恥ずべき行為とされてきた。もちろんここで競技相手がいる場面では勝った喜びを押し殺し、負けた悔しさを面に出さないことを武道家として守るべき礼儀としてきた日本の武道の伝統を一方的に否定するわけではない。むしろ日本の誇るべき美風の一つとして大切にしていくべき心構えとすら言えるだろう。ただし「武道」としてではなくもっぱら「スポーツ」の一種目としての理解から柔道が1964年の東京オリンピックに採用された経緯を踏まえれば単純には判断を下せまい。

 日本では柔道の10倍もの競技人口を誇る剣道だが、オリンピックの種目として採用されたことは一度もない。柔道が一足先に解禁された際も、剣道は学校の体育で教えることをしばらくの間、禁止されてきた。その背景に剣道界が柔道以上に武道としての伝統に拘ってきた経緯があるからではあるまいか。

 ここではとりあえず武道の伝統の是非を論じる必要はあるまい。大切なポイントは現在、世界の柔道家がどこまで武道としての柔道とスポーツとしての柔道との差異をきちんと区別できているのか、であろう。また紛らわしいのが武道と武士道との関係であるが、この二つは明確に区別されるべきものであり、封建的主従関係を前提とする武士道と近代オリンピックの精神とはまったく相いれないものがある。

 近代的スポーツの観点では武道と武士道とを切り分けて考えるべきであるのと同様に、既に指摘した神道と武道とを切り分けていかないと武道を近代的スポーツに位置づけることは難しくなるだろう。神道的発想を闇雲に選手たちに押し付けることは信教の自由を踏みにじることにもつながりかねないはずである。

 武道と武士道及び武道と神道とを切り分けて武道を近代的スポーツの枠組みに位置づけようとする取り組みに対しての共通理解が日本を含めて世界的に成立しており、しっかりと柔道関係者に共有されているのならば、今回の騒動の是非は疑う余地が無いほど明確になる。

 IOCや国際柔道連盟がこの件に関する明確な統一見解を世界に向けて公表しなければ、今後も特定の柔道選手に対する的外れな中傷誹謗を徒に招くだけではあるまいか。SNSの発達は一旦、炎上すると恐ろしいほどの速さで選手たちの精神的健康を蝕んでしまう。悲劇的な事態を防止する上でも柔道の位置づけを一刻も早く明確にさせ、その共有をはかりたいものである。

パリ五輪日本選手団が緊急声明 相次ぐSNS誹謗中傷に「法的措置も検討」 大会中

 に異例の警告「不安や恐怖を感じる」自制求める

 デイリースポーツ によるストーリー 2024.8.2

「何がいけない?」柔道・永瀬の”表彰台事件”に対する韓国人記者の反論と浮かび

   上がる「文化の違い」 FRIDAYデジタル によるストーリー 2024.8.3

   こちらも阿部詩選手の件や金民宗選手の件と同じで柔道を武道として捉える日本の立場からの考察である。日本と外国との間に柔道という種目への捉え方の違いが原因でこれだけ数多くの軋轢を生んでしまうのならば、IOCないしは国際柔道連盟による何らかの統一的対応が現時点で必要となっているのではあるまいか。

 スポーツにおける過度な勝利至上主義への批判がこうした軋轢を生む大きな原因となっている、と考えるのであるならば、いっそのこと日本の武道精神に基づく礼節を弁えた振る舞いをすべての競技における模範的振る舞いとして世界に喧伝するのも決して悪くは無かろう。本当にオリンピックが「平和の祭典」としての役割を国際社会で果たそうとするのならば、国家間での熾烈な金メダル争いはかえって無用な軋轢と誹謗中傷を国家間、競技者間に生み出しかねまい。

 勝者も敗者も礼節ある言動を心がけることは、おそらく過熱しがちな競争主義をクールダウンし、無用な軋轢を避ける上で大いに役立つに違いない。もちろん、そうした効用は武道に限らず、ラグビーのノーサイド精神でも同様の機能を期待できるだろうが…(なお15人制のラグビーは種々の理由から未だにオリンピックの種目に採用されていない現状がある。また世界のラグビー界において「ノーサイド」という言葉はどうやら日本にのみ生き残った表現らしく、本場のイギリスですらまったく理解されなくなっているようだ。それほど長く「ノーサイド」の言葉に日本人が惹きつけられてきた背景に、節度、礼節を常に重んじる日本の武道精神がラグビーのノーサイドの精神と強く共鳴してきた可能性は十分にあるだろう。こうしたことをも考えると、JOCはIOCに対して柔道に限らず、すべての種目において選手、観客のマナー改善を強く訴えても良い立場にあるのかもしれない。少なくともこうした騒動を機に、現代のオリンピックが本当に「平和の祭典」にふさわしい状態にあるのか、問い直してみるべきだと思うがいかがだろう

「一種のいじめ」「何回言うの」 東国原英夫氏、阿部詩号泣に「周辺に配慮欠く」

 と再度苦言...コメント欄では共感得られず

 J-CASTニュース によるストーリー 2024.8.1

 おそらく高校野球の場合、甲子園での敗戦で号泣する高校球児への批判はこれまであまり無かったように思うが、いかがだろう。今回の東国原氏による柔道家に対する批判は極めて執拗なものであり、オリンピック連覇という重圧と長く戦ってきた敗者に対して何やら陰湿で容赦ない「上から目線」の怖さまで感じる。

 おそらく号泣しながら甲子園の土を持ち帰る高校球児たちの涙は美しく、感動的ですらあると多くの人は感じるだろう。しかしオリンピック会場で号泣する柔道家の姿は幼稚であり、非礼極まりないものである…と捉える東国原氏の感性は、一体、どんな価値観に由来するのだろうか。ぜひ、生徒たちに考えさせたい。

 いくつかの観点から考察できるだろう。一つは武道とスポーツとの違い、スポーツマンシップと武道家精神との違い。もう一つは国家を代表するとされるオリンピック選手と郷土を代表する甲子園球児との違い。やはり国威発揚を狙いとするようなオリンピックにおいて選手たちに求められるパフォーマンスと、甲子園球場で高校球児たちに求められるパフォーマンンスとはそれなりの違いがあるはずだ。

 なぜ私たちはスポーツに魅了され、スポーツ観戦に熱狂するのだろう。「礼に始まり、礼で終わる」武道において求められる冷静さと敗戦時に見せた阿部選手の号泣は果たして相いれないものなのか。体育の授業で武道が必修化された背景にどんな目的があったのか。オリンピックの意義とは一体何だろう。SNSによる選手たちへの誹謗中傷問題…考えるべきテーマは多い。

 以下に紹介する動画を視聴させて生徒たちの考えを広げ、深めていきたい。

参考動画

号泣に賛否【テレビの五輪報道の弊害】過剰な美談と武士道精神を考える

 長谷川良品「テレビ悲報ch」 2024/08/01  10:53

 オリンピックについて深く考えるきっかけとなるだろう最もタイムリーな話題がこれだと思うが、いかがだろう。敗北して泣きじゃくる阿部詩選手への否定的なコメントをどう評価するのかを、武道に由来する柔道というスポーツの特殊性から考察する長谷川氏におおいに共感する。

 確かに私も日本代表の野球チームを平然と「侍ジャパン」と名付け、女性サッカーチームを「なでしこジャパン」と名付ける日本のスポーツ界、マスコミ界の古色蒼然たる体質の古さに辟易する。

 ここを切り口にして日本のスポーツ界、マスコミ界、学校教育界が抱える体質の古さにも気付かせたい。

【阿部詩選手】号泣の賛否について ロザンの楽屋  2024/07/30  16:22

 武道とスポーツとの違いに注目する点は同じだが、武道を否定的に捉えるのか、肯定的に捉えるのかでロザンの視点は上記の長谷川氏とかなりズレてしまうと感じる。また柔道や剣道などを当初は格技として学校教育に取り入れ、ついには武道と改称、さらに必修として授業時数が増加している近年の日本の教育の動きをどう評価するのか…という問題にも多少は触れる必要があるだろう。

 以上のことを踏まえると阿部選手号泣の件はおよそ以下の様に考えられるのではあるまいか。まず試合直後の号泣は明らかに武道の精神だけでなく、ラグビーのノーサイドの精神にもふさわしくない。さらには過剰なまでの勝敗へのこだわりが感じられてしまった点で号泣は「平和の祭典」として行われるオリンピックの精神に必ずしも沿うものではあるまい。もちろん相手選手への敬意や配慮にも欠けた行為である。つまり、いくつかの点で確かに好ましくはない。

 ただし阿部選手の号泣は選手個人だけではなく、選手団全体の勝敗への過剰なこだわりにも起因しているだろう。さらには長期にわたって「国家の威信」といった過酷で明らかに余分なレベルでのプレッシャーを個々のオリンピック選手に背負わせてしまった日本の柔道界、スポーツ界、マスコミ報道、国民の多くにも少なからぬ責任はあるはずだ。

 どうやら私たちはオリンピック報道の過熱ぶりも手伝って柔道に対する「国技」としての過剰なまでのプライドを植え付けられてしまい、「日本選手ならば金メダルをとってしかるべき」といった行き過ぎた期待を国民側の多くが無意識のうちに抱えてしまっているように見受けられるのだが、いかがだろう。

 つまり阿部選手以上に不適切だったのは、まだ若く、武道家としては未熟であって仕方ないはずの阿部選手に対して、どう見ても過酷なまでのプレッシャー、過剰なまでの期待をかけ続けていた、私たち国民の方ではなかったか…

 だとすれば、あの場でまだまだ若い阿部選手に図らずも号泣させてしまった私たちの、大人としての責任の方が重く問われるべきだったはずである。そしてそのことを問うこともなく、阿部選手個人を批判するような大人たちの論評には長期にわたって奮闘してきた選手への思いやり、想像力に欠けた残忍な攻撃性をどうしても感じてしまう。そもそもオリンピックという行事が抱える負の側面や日本のスポーツ界が抱えてきた種々の問題への視点を抜きにして選手個人への攻撃を行うことにさほどの意義は見いだせないと思うのだが…いかがだろう。

【五輪反対論】開会式で波紋!メッセージが強まりがち?住民生活に影響も...開催

   する意義はある? ABEMA Prime 【公式】 2024/07/30  19:17

 オリンピックの意義をもう一度、根本から見直す必要はあるだろう。4年に一度の例外的なお祭り騒ぎに隠れてこの時とばかりに違法に利権を貪る一部の企業や政治家が存在するようなオリンピックの運営の仕方、あるいは国家間の対立を煽りかねず、少なくとも国威高揚に政治利用されがちな国家主義に偏るスポーツ界全体のあり方をみると、多くの人が「平和の祭典」という美名に酔うことに躊躇してしまうのは当然であろう。東京オリンピックの負の遺産は一体、どう清算されたのであろうか。

 サッカーの勝ち負けで戦争が起きかねなかった中南米の歴史もある。ラグビーのノーサイドの精神は他のスポーツには必ずしも十分に浸透していない。オリンピックの運営には莫大な資金が投入されるが、資金の流れは必ずしも透明ではない。

 表彰式で「君が代」が流れ、日の丸が掲揚されることの意義は本当はどこにあるのだろう。実際、君が代を歌う日本選手たち全員に君が代が孕んでいる国家主権をめぐる深刻な問題意識があるとは思えない。おそらく選手たちのほとんどは君が代の歌詞すら正確に書くことはできないだろう。どうみてもしっかりと考え直すべきポイントはいっぱいあるようなのだが…

 生徒たちにはオリンピック開催の是非を、その歴史的経緯からさかのぼって明らかにしつつ、近年の課題をいくつかピックアップした上で議論させたい。

 

・東京オリンピックとは何だったのか?

【恐怖】洗脳教育を受けた韓国人が韓国を嫌いになったワケ

 2021/08/07 コリプロ「ファンカイと韓国語」 14:18

 オリンピックの隠れた目的が見えてくるのでは?

【東京五輪の闇】日本経済衰退の戦犯「利権ビジネス」とは?【ドーム元社長・安

 田秀一】日経テレ東大学  2022/12/08 38:07

小泉演説 2021年7月 都内某所 (松下アキラ)

 イヌとネコ  2023/01/18 6:11

 東京オリンピックの問題の導入として利用価値が高い動画。かなり笑える。

汚職日本代表の活躍を見逃すな!

 ワラしがみ  2022/09/23 7:55

 東京オリンピックの問題点が分かりやすく面白く解説されている。

【なぜ儲からない】スポーツビジネスの転換が必要?【東京オリンピック汚職】日

 経テレ東大学  2022/12/13 37:42

【五輪汚職安倍政治と検察①】東京五輪でなぜ汚職が相次いで起きてしまったの 

 か?政権と検察の関係にも迫る!

 2022/09/24 中田敦彦のYouTube大学 -37:46

【五輪汚職安倍政治と検察②】戦後最長の安倍政権vs検察人事への介入

 2022/09/25 中田敦彦のYouTube大学 - 28:19

【五輪汚職】の授業を終えて中田が感じた事は?

 2022/09/26 中田敦彦のトーク - NAKATA ATSUHIKO TALKS 22:24

 中田氏が危険を冒してまで真情を吐露するに至った理由について討論させたい。これまでアマチュアスポーツ界における利害を超えた平和の祭典と美化されてきたオリンピックであるが、1984年のロサンゼルスオリンピック以来、プロスポーツ選手の参加が許され、運営上の巨額な経費を賄う上で企業の関与が一気に拡大していった。

 今回、東京オリンピックに絡む贈収賄が疑われている事件は巨額の資金が投じられるオリンピックに目を付けた企業と政治家との汚い関係が背後に潜んでいるようだ。コロナ禍のもと、開催に反対の動きが見られる中でオリンピックを強行した政権の隠れた意図が見え隠れしていよう。さらに安倍元首相殺害事件が加わり、オリンピック開催と統一教会の改名に深く関わってきたかつての安倍政権が目指した政治の実相が暴かれつつある。にもかかわらず、現岸田政権のもとで安倍氏の「国葬儀」が強行された。なぜ安倍政権が2016年から検察人事に強引な介入を繰り返したのか、その理由が疑われるだろう。

 2020年に安倍政権が検察人事介入に失敗した事が安倍氏の体調不良を理由とした退陣に繋がるとすれば安倍氏がこれまで行ってきた「忖度」政治の危うさがいかなるものかも深く考えていくべきである。2030年の札幌冬季オリンピック実現に向けて既に動き始めた現在、森友事件、桜を見る会の疑惑などとともに東京オリンピックに関わる贈収賄事件への徹底的な解明が待たれる。

 政治やスポーツの世界にはびこる年功序列の権威主義的体質はどうやら人脈を利用した汚職事件と親和性が高いように思われる。そうした中で事件に関与したと疑われている元首相で文教族出身の森喜朗元オリンピック組織委員長の功績を称えて森氏の銅像を建てようとの動きがスポーツ界に見られるとのこと。これまたどう見ても疑問だらけの動きだろう。疑惑の渦中にある安倍、森二人の元首相をこのタイミングで臆面も無く顕彰しようとする政治家達の動きに日本のスポーツ界が関与するとすれば高体連や高野連はどう対応するのか・・・公教育における政治上、宗教上の中立性が改めて問われるに違いない。

 統一教会についてはぜひとも「◎【YouTubeとの向き合い方】旧統一教会の授業をするまでの葛藤と覚悟 2022/09/01 中田敦彦のトーク 39:29」を参照していただきたい。中田氏が真剣に自己肯定感を高める上で何を失い、何を得てきたか、深く考えさせられる内容。民主主義の孕んでいる危険性が見えてきて社会科学習の究極的目標の一つが中田氏の発言に潜んでいるようだ。

 ※森元首相による女性差別的発言の件は§4「差別問題」で触れます。

国家の“機密”とは…使途が明らかにならない官房機密費 【風をよむ】サンデーモー

   ニング TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2023.11.26

   国民の知る権利を尊重しない日本政治の在り方は政治の腐敗をはびこらせ、民主主

義の欠点を最大化してしまうだろう。

【国民スポーツ大会】「ちょっと小学校からやり直した方がいい」 島根県の丸山

   知事が大会の在り方について苦言を呈す

   日本海テレビニュース  2024/04/12 1:18

   オリンピックだけではなく、国体も大きな問題を抱えているだろう。議論のたたき台としてこの動画を使いたい。地方と中央との格差、スポーツ行政のあり方など、論点はいくつか出てくるはず。

 

・大阪万博開催出来る?

参考動画

【解説人語】万博まで残り1カ月 売れないチケット、石破首相も後押しする背景 

   「始まれば盛りあがる」だと赤字も?朝日新聞デジタル 2025/03/13  11:37

   動画としてはまったく面白くないが、情報の整理には使えそうだ。

【責任者不在の大阪万博への疑問】藤本壮介氏に問う|橋下徹「IR構想」との関係

 名古屋造形大学は「1円単位で管理」|1911ドレスデン衛生博の功罪|日本の鉄筋

 工は世界一【山本理顕】文藝春秋PLUS 公式チャンネル  2025/02/24  31:23

【キシャ解説】万博開幕まであと2か月 万博チケット当日券販売の裏側 複雑なシ

 ステムなぜ? 石破首相が会場を視察「当日券はどこで買える?」「並ばない万

 博」にこだわりすぎ? 読売テレビニュース 2025/02/06 6:39

万博前売りチケット 開幕1カ月前で目標の約6割に伸び悩む 赤字の場合「協議」

 吉村知事認識 カンテレNEWS 2025/03/13 00:50

 既に予想されてきた事であるが開会直前の段階でかなりの赤字が確定する万博となりそうだ。その重いツケは確実に国民の肩にのしかかっていくだろう。どうやら責任者不在のなかで、閉会後、醜い責任のなすり合いが始まるに違いない。

参考記事

安全神話の「誤解」を教訓に 南海トラフ地震に「日常から備えを」 京大防災研・矢

 守教授 産経新聞 2025.1.17

 イチイチお説、ごもっとものなだが、なぜ大地震やf富士山の大噴火が迫るタイミングで東京オリンピックが開かれたのか、そして大阪万博がよりによって海上で開かれるのか…強い疑念が募ってくる。オリンピックではたまたま大地震や富士山の噴火が起きなかっただけであり、もしも会期中に大地震や大噴火が起きてしまったら、どれほどの犠牲者が出ていたのだろう。そして日本政府はこれまでの地震、噴火の予測に関して一体、どのように説明し、外国人の被災者や犠牲者に謝罪するのだろうか。

 南海トラフの大地震は海溝型であるため、東日本大震災の様に大津波が西日本中心に太平洋側沿岸部を襲うだろう。しかも地震発生後、わずかな時間で津波が到達する可能性は決して低くはないといわれている。となれば当然、大阪府の被害も甚大なものにのぼる事が予想される。にもかかわらず、なぜ、このタイミングで当初から反対の多かった万博が敢えて強行されなければならないのか、その合理的理由が私には見いだせない。

 本来が地盤の緩い人口の島、しかもただでさえ交通手段が限られ、大混雑が予想される会場で大地震による液状化、建物の倒壊、火災と大津波に一体どのような対策が計画されて、万全の備えが尽くされているのか…疑問は尽きない。地中のメタンガスが噴出して火事の勢いが増大し、巨大な木製のリングが燃え盛る中に残された大観衆が出口に殺到することになるやもしれぬ。会場の防備体制をよく知らない自分としては阿鼻叫喚する観光客の姿がマザマザと目に見えてしまう。会場にどれほどの消火設備、消火用水と消火に当たる人員が確保されているのだろうか。おそらく会場の外から応援の消防隊や救助隊が到着するまでには相当の時間を要するに違いない。そこに瞬く間に大津波が到来する。偶然にも火災は大津波が直ちに鎮火してくれるのかもしれないが、他方で大観衆は炎のかわりに濁流に飲まれてしまうのかもしれぬ。

 あるいは南海トラフの大地震に先行して、内陸部で阪神淡路大震災に類似した直下型の大地震が起きる可能性もあるらしい。会場のすぐ近くを中央構造線が走る地域性を考えても、決して安心できる場所ではあるまい。活断層が数多く走っているのは何も淡路島や神戸だけではない。南海トラフの地震と津波、さらに直下型地震の発生までもが予想され、警戒されている現在、なぜ、敢えてこの場所を選んだのか、その理由をぜひ知りたい。

 会場近くの多くの学校では遠足先として万博が選ばれている。遠方の学校でも修学旅行先として万博会場を訪れる児童生徒は少なくあるまい。会場での安全確保の状況を各教育委員会はどの程度、把握しているのだろう。仮に管理職や教育委員会がほとんど何も検証しないまま、安心安全を信じて万博会場に連れていかれた児童生徒、および引率教員が災害の犠牲者となってしまった時、はたして遺族は大人しく黙っていてくれるのだろうか。

 仮に観光客の被害が甚大であった場合、日本経済を牽引する産業として急速に成長してきた日本の観光業界に与える打撃も相当、深刻となるだろう。何しろ数々の自然災害を経験し、「災害大国」を自任する日本が敢えて阪神淡路大震災が発生したすぐ近く、それも津波の被害を受けやすい島で大勢の観光客を集める万博を胸を張って自信満々で開催するのだ。これまで「安心・安全」を観光の売り物にしてきた日本である。何が何でも外国人観光客の犠牲者を出すわけにはいくまい。当然のことながら外国人観光客は大阪万博でも世界一「安心・安全」な日本を満喫するつもりで、日本の児童生徒と同様、何一つ警戒感を持たずに来場する。だからなおさら、日本への期待と信頼を裏切るわけにはいかないのだ。

 仮に千人を超える犠牲者を会場で出そうものなら、日本は富士山の噴火も控えた状況である。外国旅行を考える外国人は怖くなってしまい、同時に日本政府や観光業への不信感を強めるだろう。日本を訪れる外国人観光客は間違いなく激減し、観光が好調だった北海道や沖縄にも大きな悪影響が及ぶだろう。そうなれば震災等の経済的損失に拍車がかかり、日本経済の立ち直りを不可能にしてしまうかもしれない。

 防災研究の第一人者ならば、そうしたことにも言及していただきたいし、新聞も言及すべきだろう。1月17日で阪神淡路大震災が発生してからちょうど30年がたつ。ただ単に形だけ当時を回顧すれば良いのではあるまい。震災の地元としてその教訓が十全に生かされている万博であることを、私たちは切に祈るばかりである。

万博、子ども無料招待10万人減 学校単位の参加、安全面で懸念

   共同通信 2025.1.30

12歳の少年が見た昭和45年 大阪万博「僕たちの未来は千里丘陵のあの場所にあっ

   た」 プレイバック「昭和100年」 産経新聞 2024.10.27

   <当時の出来事や世相を「12歳」の目線で振り返ります。ぜひ、ご家族、ご友人、幼なじみの方と共有してください。>という文章で始まるこの記事には1970年の大阪万博を12歳で迎えた少年が当時の世相をどう捉えたのか、ややセンチメンタルな筆致で回顧している。昭和33年生まれの私と同年齢の設定である。実際、あれから50年以上経って当時の事を振り返ると、一体何が見えてくるだろう。

   次々と起きていた過激派の事件に強い嫌悪感を覚え、三島由紀夫の切腹に理解不能な謎を突きつけられる一方で、万博会場の賑わいと「人類の進歩と調和」というバラ色のキャッチフレーズに心躍らせる、いかにも少年らしい思い。

   しかし万博が終わり、会場が瞬く間に取り壊されるうちに、祭りの後の様に募ってくる虚しさ…そして噴出してきた公害問題。少年の未来に対する希望的観測はたちまち、現実の醜さに裏切られていく。

   「三菱未来館のテーマだった50年後は2020年。僕はもう年寄りだが、公害などはすべて吸い取ってくれる掃除機が登場していると思う。車だって空中パイプのようなところを走るようになる。電話はすべてテレビ電話、人間洗濯機が体も洗ってくれる。もっと大きな話で言えば、人が月に行くのは当たり前だし、世界はベトナムも中東も関係なく、とっくに平和になっているはずだ。」

   しかし「…僕たちの未来は」決して万博が描いたようなバラ色の未来にはつながってはいなかった。私たちの多くは当時の過激派への激しい嫌悪感からノンポリに走り、青年期になるとかつて過激な学生運動に狂奔した上の世代からは三無主義、五無主義などと散々に揶揄されていく。

   とはいえ私たちは決して漫然と無気力な日々を送っていたわけでは無かった。「巨人の星」や「明日のジョー」に熱中していた私たちはそれなりの覚悟と熱意を持って受験戦争を闘い、成人して就職した後は「二十四時間、戦えますか」と煽られつつモーレツ社員を気取って過酷な残業にも勤しんできたのだ。

 「もう年寄り」となった現在、同世代の私たちは一体、何を目指して今までがむしゃらに生きてきたのだろうか…かつて私たちの多くが生きる目途としてすがっていた「人類の進歩と調和」という、人工甘味料のような甘ったるい幻想から私たちが目を覚ましたのは必ずしも遅いタイミングではなかったはずである。

 少子高齢化が進み、経済が沈滞している中で人権後進国と揶揄され続けてきた日本という国の、この30年あまり…昭和が始まって100年、令和を生きる私たちが目にしているこの社会が、何はともあれ「進歩と調和」のとれている状態でないことだけは確かである。

「万博以降、関西は経済的に地盤沈下が著しい」観光の専門家が明かす“大阪・関西

   万博”の“真の懸念点”とは   文春オンライン 佐滝 剛弘  2024.9.10

   オリンピックや万博の経済効果がもはやかつてほどの大きなインパクトを期待できなくなっている中で、この二つの国家プロジェクトが強行される背景に潜むものは一体何だろう。特定の企業と政治家が利益を独占する一方で不幸にして生じてしまった損失を国民の税金で賄うようであるならば、開催の意義自体が強く疑われるだろう。

   関西大阪万博は大阪府や大阪市長ら、維新の会の政治家たちが中心となって周囲の反対を押し切って強行した感が否めない。大きな損失が生じたとき、彼らは国家プロジェクトを口実に結局は一切の責任を負うことをしないだろう。それは齋藤兵庫県知事の振る舞いから見ても、当然、予想されることである。強固な隠蔽体質の蔓延する日本社会である。どんなコンプラ違反でも多くの場合、為政者、責任者の不正を市民が立証することは極めて難しいに違いない。

   とは言え、諦めることなく国民は万博の今後の成り行きと経済効果のほどを厳しく監視し続ける必要があるだろう。

警察当局で高まる大阪・関西万博の警備 喫緊のローンオフェンダー対策、安全神話

 継続を 産経新聞 2024.8.18

 ガス爆発の危険性、交通手段の問題に加えてテロ対策も万博の懸念材料となっている。仮にテロなどで遠足や修学旅行で訪れていた児童生徒に大きな被害が出る事態になったとしたら、沢山の懸念材料が指摘されてきたにもかかわらず開催を強行し、児童生徒の動員を半強制的に行おうとした大阪市、大阪府、維新の会の責任は極めて重大であり、弁解の余地無しとなってしまうだろう。首相クラスへの襲撃事件が続いた日本の警備体制の見直しは一体どこまで進み、万博でのテロ行為を未然に防止できるのか。しかも鹿児島県警の組織的問題が表面化し、警察自体への信頼まで揺らいでいる…加えて南海トラフ地震発生の危険性が高まりつつある現在、万博への不安は当分の間、解消できそうもないのでは。

大阪万博は防災対策も不安だらけ…南海トラフ地震でも「夢洲は液状化しない」大

 甘想定だった 日刊ゲンダイDIGITAL によるストーリー 2024.8.11

 安全確認すらまともにできていない万博に遠足や修学旅行で訪れる事の犯罪性について学校や教育委員会はきちんと考えておくべきだろう。

「どんどん場当たり的に」大阪万博「会場下見」要望に ちぐはぐ 対応引率する

 教師からあふれる「呆れ」と「憤慨」

 SmartFLASH によるストーリー 2024.7.24

 《遠足の下見がどういうものか知りもしないで、思いつきで方針を決める。現場はそのたびに振り回され、余分な仕事が増えて職員はますます疲弊する。同じ過ちを何度繰り返せば気がすむのだろう》…その通りであるが、この指摘は文科省、政府の教育政策にも当てはまるだろう。

万博、海外館14カ国「厳しい」 関西同友会の永井氏が懸念

 共同通信 によるストーリー 2024.6.14

「参加を催促し強要」万博招待の意向調査で大阪・交野市長が再び批判 出展取りや

 めも示唆 産経WEST 2024.6.10

 ただでさえ開催に疑問を持つ声が聞かれる中で、見学可能な展示館の詳細、団体予約可能な食事場所と収容人数、バス確保の可能性、ガス爆発の危険性の有無など、現時点でいまだに不透明な要素が多い。にもかかわらず、半強制的に児童生徒の見学を促す大阪府、大阪市の高圧的姿勢に学校側から反発が出るのは当然だろう。

大阪万博開幕1年前でも「関心ない」69%…読売世論調査

   読売新聞 によるストーリー 2024.4.21

   この調査、一体、有効回答数は何人なのか?世論調査の結果を発表する際には最低限の基本データくらい、記すべきだろう。この程度の初歩的ミスを大新聞が堂々と犯している現状が情けない。全国で実施されていても有効回答数が少なければそもそも調査として失敗であり、記事にするのは諦めた方が良いはず。仮にそれなりの有効回答数が得られている調査結果がこの数字であるとするならば、大阪万博は計画を大幅に見直すべき段階にきていると考えられなくもないのだが、肝心のデータが示されていないので国民はこの記事から何一つ、判断する根拠が得られない。これ、ただの根拠なき煽り記事である可能性すら疑われるだろう。

 生徒たちにはこの手の記事の怪しさにぜひ気付かせたい。

ラサール石井 2350億円の大阪万博と国立科学博物館の窮状を比較「この国は狂っ

   てる」 東スポWEB の意見 2023.11.8

   これは正論。文教費をケチる一方でカジノによる収益拡大をもくろむ大阪万博には湯水のように税金を投入する…確かにバランスが悪すぎる。

日本維新の支持率低下が止まらない…壮大な無駄を生む「IR・万博」で大ブーメラ

   ンの大阪維新がつけるべき落とし前

   現代ビジネス 伊藤 博敏 によるストーリー 2023.10.26

成功すれば維新の手柄、失敗したら誰の責任に…? 問題山積の「大阪万博」にただ

   よう「デタラメ感」 文春オンライン プチ鹿島 によるストーリー 2023.10.24

   絶妙な皮肉のきいた記事で大阪万博の裏側を突いている、読んで面白くかつ分かりやすい資料。このテーマの冒頭に紹介しておけば今後の展開がしやすくなるだろう。

万博建設費、協会が増額報告 最大2350億円、当初の1.9倍

   産経新聞 2023.10.21

大阪万博を開催する意味は本当にあるのか、札幌五輪断念を機に再考を

   JBpress 伊東 乾 によるストーリー 2023.10.13

大阪「カジノと万博の島」に鉄道は延びるか IR誘致の候補地「夢洲」へ3つの路線延

   伸案 森口 誠之 東洋経済オンライン 2018/06/16 6:00

大阪・関西万博の開幕まで2年 パビリオンの建設など課題に

   NHKニュース 2023年4月13日

大阪万博「関心ない」が65%「全世界辞退で恥かきそう」「まだ間に合う」準備進

   まずSNSで高まる「中止論」 yahooニュース 7/24(月) 23:36

 大阪万博、建設費が当初の1.8倍、2300億円に…巨額税金投入で中止論も

   文=Business Journal編集部 2023.9.30 

大阪万博建設費1・8倍、2300億円に三輪記子弁護士「前進だけでなく、やめます

   という選択肢も」スポニチ 2023/10/1 18:09

“存在しない”としていたメール…さらに7通見つかる 大阪IR用地の不動産鑑定 

 MBSニュース 毎日放送 によるストーリー 2023.10.31

   ※参考動画

  【スクープ】『3社の鑑定額が一致』大阪IRの疑惑...専門家が解説「100%ありえないです」

   さらに大阪市の審議会委員を取材で『新証言』も

     MBS NEWS  2023/01/31  15:39

   夢洲の土地価格の鑑定に際して鑑定業者間に談合疑惑が生じているらしい。当然、大阪市や市長

   らが情報をリークし、かわりに怪しげな「献金」を受け取っている可能性を疑うべき。ことと次

   第によっては維新の会の政党としての存在意義自体、疑われてくるだろう。

参考動画

【2】院内集会「日本の没落」―登壇:内田樹氏(神戸学女院大学名誉教授)

    Movie Iwj  2023/10/25  25:40

 データに基づく現実的な将来予測を悲観的過ぎる弱腰の敗北主義とけなして排除し、無責任な楽観主義的軍事行動を止めようとしなかった帝国陸軍参謀本部や福島原発を巡る東電及び日本の原子力政策の過ちを決して繰り返してはなるまい。

   大阪万博を強行しようとする政府、維新の会の動きに潜む、精神主義的な思考の欠点を語る内田氏の指摘は非常に興味深い。少子高齢化という現実を直視し、将来的に予測される労働力不足、あるいは巨大地震や富士山噴火などの悲劇的事態を出来るだけ多くあげつらい、それぞれの対応策を予め考えておくことは決して「敗北主義」ではあるまい。

   岸田政権は台湾有事ばかりを強調して軍事予算を一気に拡大させたが、日本に迫る危機は他にも沢山ある。プランAだけではなくプランB、C,Dを用意しておく必要があるはずである。

【未着手】大阪・関西万博が泥沼化?中止や見直しの声も?海外勢は撤退?誘致し

   た元政治家と考える ABEMA Prime #アベプラ【公式】 2023/07/21  16:21

【大阪・関西万博の苦悩①】国民の税金で行われるビッグイベントが大ピンチ!

   2025年までに間に合わないのか?

   中田敦彦のYouTube大学  2023/09/23 23:34

【大阪・関西万博の苦悩②】政治戦略として万博…岸田首相「私が先頭に立つ」 

   中田敦彦のYouTube大学  2023/09/24 21:02

【大阪・関西万博の苦悩】2025年の開催に向けた4つの選択肢

 中田敦彦のトーク  2023/09/29 17:02

課題山積の大阪・関西万博 開幕まで620日 海外パビリオンの建設はなぜ遅れて

   いるのか【Nスタ解説】|TBS NEWS DIG 2023/08/02  6:01

「ここが値上がりの最後」大阪・関西万博の会場建設費が450億円増額 背景に資

 材価格や人件費の高騰など|TBS NEWS DIG  2023/09/26 2:02

 東京オリンピックも問題だらけで強行されてしまったが、この大阪万博はもっと闇が深そうである。2025年開催はとりわけ会場の夢洲(ゆめしま)の軟弱地盤問題がおもなネックとなって開催自体、非常に危ぶまれる状況。ちょうど沖縄の辺野古への基地移転問題で地盤の軟弱さが工事費のかさ上げと工事期間の延長を招くことが分かっていても工事を強行しているのと同じような理屈なのだろうか。いったん動き出した公共事業は巨額の利権が絡んでいてなかなか止められない…

 加えて南海トラフを震源地とする巨大地震が今後30年の間に8割もの確率で発生する可能性が指摘されている。もっぱらごみ処理場として機能してきた夢洲の地盤強化には途方もない巨額の税金を投じる必要がある。しかし一時的な地盤強化に成功したとしてもその後の巨大地震による液状化は不可避であり、寿命の短い施設にとどまるだろうパビリオンや社会インフラ等の建設、整備は無謀としか言えない危険な投資。海底にトンネルを掘って鉄道を会場に引いてくる工事自体も難航が予想され、地震時の安全が確保できるのか、極めて疑わしい。

 維新の会が大阪府、大阪市を中心に万博開催へ向けて市民を引っ張り、2023年4月の地方統一選で大躍進を遂げたのは記憶に新しい。実際、予想以上の大きな民意を受けて大阪万博は開催に向けて動き出してしまったのだが、あまりの難工事に多くの建設会社がしり込みしてしまい、パビリオン建設は遅々として進んでいない。岸田政権が国の威信にかけて開催にこぎつけると8月31日に発表し、万博の主導権を維新の会から国が奪い取る形になったが、これは国家全体の税金が湯水のように無謀な万博建設へと投じられることを意味する。

 他方で大阪府立高校の場合、高校入学者数が一定数を満たさない状態が一定期間続いてしまうと統廃合の対象とするという原則を冷徹に厳守する姿勢は守ってきただけに、政策のバランス面でいかがなものなのか…疑念は少なからず残るだろう。

 東京オリンピックの時と同様、国民はまた騙されて税金を無駄遣いされ、関係者の誰かがこっそりと得をするだけで、結局、大増税という形で国民が尻拭いさせられることになるのかもしれない。

 岸田政権はウクライナ情勢や尖閣問題を背景として既に大幅な増税を前提とした防衛費の倍増を実現させている。高度成長期に建設された数多くの社会インフラが耐久年数を過ぎつつあり、補修、改修、建て替えが待ったなしで迫られてきている現在、本当にこれで大丈夫なのだろうか。政権はさらに子ども家庭庁を設置して少子化対策に本腰を入れ、教師の働き改革も待ったなしだと叫び続けている。加えて万博開催への大々的な国家関与…日本の国家的危機レベルがマックスに達しようとしているにも関わらず、政府は口先だけの、景気良さげなパフォーマンスを際限なく繰り返している。が、残念なことにそれでも政権への支持率は低迷したままである。

 巨額の赤字を抱えた国家財政と世界最悪レベルでの少子高齢化の進展、いつまでたっても止まりそうもない日本経済の地盤沈下、近い将来に予測されている巨大地震の発生と富士山等の火山噴火…こんな時に大した経済効果を望めない、むしろ巨額の借金を背負いかねないお祭り騒ぎに興じている場合だろうか?

 カジノ建設で泡銭を稼ぐのが裏の狙いと揶揄される大阪万博の強行開催はさらなる大増税となって今後の国民に降りかかるのではあるまいか。格差拡大は一層進み、若者の生き辛さが限界を突破する日が来るのも待ったなしの問題なのかもしれない。

参考記事

課題山積 「万博に行けるんですよね!」子供の期待に気をもむ校長 大阪府の子供招

 待事業 産経新聞 2024.6.10

爆発後に「他にはない」と断言したのに…可燃性ガス4カ所で発生 大阪・関西万博

   会場 「出ないわけないやん」 東京新聞 2024.6.3

万博無料招待、大阪の学校7割が希望 「不参加」の選択肢ない調査手法に批判も 

 産経新聞 2024.6.3

「本当に横暴」万博遠足アンケート巡り「現職の校長」が怒り 府内約7割の学校が

 訪問希望も課題山積   FNNプライムオンライン によるストーリー 2024.6.3

 同様の事態が東京オリンピックの際にもあったことを思い出した。数年前、ある高校でパラリンピックの応援を学校全体で行ってほしい、との打診が県の教育委員会からあった。立地的に会場周辺にある学校が不幸にも応援動員の候補に選ばれているようだった。しかも競技は夜間にまで食い込むという。パラリンピックの観客席に空席が目立つことを恐れた主催者側からの強い働きもあったに違いない。当然、教師たちから反対や疑問の声が噴出していたが、職員会議ではいつものように校長のゴリ押しで応援に行くことが決定してしまった。児童生徒に対してスポーツ観戦を名目に、応援を事実上強制することは高校野球でも同様の問題をはらんでいるだろう。

 コロナによってオリンピック開催が延期になり、私はその学校から別の学校に転勤となったので、実際に応援に行ったのかどうかは知らない。が、学校に対してのオリンピックへのほぼ半強制的な動員はおそらく東京を中心に関東圏内各地で組織的に行われていたはずである。ただでさえコロナ騒動で開催自体が危ぶまれていた東京オリンピックに学校の児童生徒を強制的に動員することを教師の意向を無視して独断専行で決定した校長、及びそれをそそのかした教育委員会…まさに国家総動員的「翼賛体制」には非常に危険なものを感じた。実際に応援に行かされたとすれば、夜間、強制参加させられた教師たち及び当該児童生徒たちにとってはいい迷惑だったに違いあるまい。ぜひともオリンピック、パラリンピックの見学を児童生徒たちに強制参加させることの是非を問いたい。

 大阪万博にも様々な問題が潜んでいるようだ。政界、財界の思惑が蠢く、疑問の多い国家的プロジェクトを強行し、無関係な児童生徒まで当然であるかのように半強制的に巻き込むオリンピック、万博の開催意義とは一体何だろう。生徒たちには万博遠足参加への賛否、その理由等を問いたい。

その1.画一的、管理主義的教育の弊害

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

参考記事

米アカデミー賞ノミネート 日本の公立小学校を追った作品に欧米が驚き 監督が教育

 法を取り上げた理由 AERA dot. 中村千晶 2025.3.16

 集団の和や協調性を重視する日本の学校教育が、日本社会の規律正しさ、礼儀正しさ、相手への敬意、おもてなしの精神…など、様々な社会的美徳を生み出している点は確かにあるだろう。しかし、他方で個性の抑圧、自己主張の少なさや集団的なイジメなどの問題を生み出してしまう負の面も、日本の学校文化にはあるに違いない。いたずらに自己批判や自己卑下を繰り返すことは非生産的であるが、同時に自己満足や自己賛美に走ることも決して建設的ではないだろう。当然のことだが、社会的事象は多面的に評価する必要がある。

 日本の公教育の良さは認めつつも、同時に多くの問題を抱えている点を見過ごすことは、日本のマスコミ報道として明らかに軽率の誹りを免れるものではないと考えるが、いかがか。

 何事も一面的な観察だけでは社会事象への理解を深めることはできないはずだ。この映像作品を取り上げるマスコミ側の、薄っぺらで偏ったな日本の公教育への評価、理解が、このような片手落ちの安易な記事を書かせてしまっているようである。まさにこれこそが典型的なマスゴミ的記事なのではあるまいか。

 個人を重視するあまり、公衆道徳が行き渡らず、他者への敬意を欠きがちなアメリカ社会からすれば日本の小学校教育を一面的に讃嘆する傾向になるのは理解できる側面がないわけではない。しかし日本のマスコミが欧米の称賛に軽々と乗せられてしまうとは実に恥ずかしく、「みっともない」の一言。

京都ノートルダム女子大、26年度以降の学生募集停止…29年3月で閉学見通し

 読売新聞 2025.4.25

    少子高齢化の進展に伴い、かなり以前から予測されていた事態ではあるが、令和5年度から定員割れを起こす大学が全体の過半数を超え、令和6年度にはその数がたちまち6割近くに達するという。この大学再編の驚異的なスピードには恐怖感すら覚えるかもしれない。しかもこの現象は大学の淘汰に留まるわけがない。当然、高校の淘汰も今後、一気に加速してくるだろう。

    こうしたタイミングでの高校教育での無償化政策はとりわけ公立高校の淘汰をより一層、加速させるに違いあるまい。昨日、地方の知事たちが文科大臣に公立高校への助成を嘆願したそうだが、時すでに遅し…何を今さら、である。早くから予測できたはずのこの事態に、なぜこれまでしっかりと対応してこれなかったのか、その不明と怠慢をこそ行政側はきちんと反省すべきである。

    今はむしろ高校における公教育の部分的衰退、撤退を前提とした施策が急がれるだろう。公教育を軸としてきた日本の初等教育、中等教育はとうとう「古くて貧しい」まま、ドン詰まりの状態で瀕死の時を迎えつつある。すなわち少子高齢化の副産物という他力本願的な側面を抱えつつ、日本社会の頑迷固陋の象徴であった公教育はようやく激動と再編の時代を迎えようとしているのだ。

    これを絶好の好機と捉え、画一的管理主義の悪しき伝統に決然と別れを告げる覚悟が行政側には強く求められてくるだろう。

参考動画 

【教育無償化は正しいのか?】教員の一番の悩みは「不幸せ」/無償化は私立に追

   い風/AI時代の教育/受験は知的好奇心を奪う/主体性と自主性は違う/経済界と

   金太郎飴/受験システムが崩壊する日/大学の統廃合

   PIVOT 公式チャンネル  2025/02/22  36:41

【偏差値という幻想】「仕事ができる」と学歴は無関係/都市と地方の教育格差/

   学力=考える力/テストスコアに意味はあるか?/部活動の意義/教員に求めすぎ

   る/教育の働き方改革【日本再興ラストチャンス】

   PIVOT 公式チャンネル  2025/03/01  23:55

   高校の「無償化」の恩恵はさほど大きくはないだろう。ただし確実に言えることは今後、全国的に公立高校離れが加速し、公立高校の淘汰再編も加速するということ。これ自体は決して悪い事ではないが、私学の躍進が必ずしも教育の質の向上を約束しないという点には留意したい。

   工藤氏が再三、強調しているように、私学が主体性と当事者性を育む教育を推進していけるのかどうかに注意したい。また高校教育の担い手が公立から私学に移ることが教育の質を高めていくことにつながるためには、とりあえず教育の画一的管理主義が緩和され、通信制を含む多様な教育手段を教育行政側が積極的に推進していくことが先決となると考えるが、いかがか。

【なぜ日本人は上司の言いなりになってしまう?】イノベーションと宗教の深い関

 係 /反抗する国民ほど一人当たりGDPが高い/日本企業が成功するために必要な事

 とは?【Business Skill Set】PIVOT 公式チャンネル 2024/07/17  27:01

 同調圧力が高く、権威に弱い残念な日本人の現状を再生産している学校教育の悪しき役割についても考える良いきっかけになる動画。今、問題視されている日本企業の競争力や労働生産性の低下、低迷の原因として日本社会において本来は貴重な特性であるべき同調圧力に屈しない尖った個性を抑圧し、平準化してしまうことですっかり台無しにしてしまうような学校文化や企業文化が存在しているのでは…といった山口氏の指摘は相変わらず刺激的。

【落合陽一】「なんでやねん!」と日本社会にツッコミまくるウスビ・サコ元大学

   学長「日本は監視社会」「自由がない」日本の教育システムの問題点、欠けている

   力を指摘!若者が自分の時代が一番大変と思う理由とは?

   NewsPicks /ニューズピックス  2024/07/11  17:38

日直や掃除に給食当番…世界中で日本式教育が導入される理由「TOKKATSU」の意

   義とは?イスラム教とも相性がいい?【クロ現】| NHK  2023/12/18 10:18

   日本の学校教育の良さをまず外国との比較から簡単にピックアップしておきたい。そのためにはこの動画が役立つだろう。長所を列挙したら、次はそれぞれの長所がはらむ日本の学校教育の短所を掴ませたい。長所と短所はコインの表と裏の関係と同じく、表裏一体の関係にある。日本の学校の良さがそれぞれどんな短所と裏表の関係にあるのか、あらかじめ理解しておくと今後、議論を進めやすくなるだろう。

【改革】日本は先進国じゃない?資本市場が変わる?なぜ根回し主義?挑戦する起 

 業家どう育てる?夏野剛と考える|アベプラ

 ABEMA Prime #アベプラ【公式】 2023/11/23  17:09

 日本の「失われた30年」を招いた本質的原因はズバリ、公教育の遅れだとする夏野氏の明快な指摘に共感する。公教育の使命を「保守」に絞り込んできたヒズミが日本社会の行き詰まり、低迷を招いている元凶なのだという共通理解が広く成立しなければ、この閉塞状態を打破することは難しいだろう。

参考記事

教員と学生が互いに首を絞め合う…「過剰管理」する日本の教育に決定的に足りな

   いこと 現代ビジネス 谷頭 和希 2025.3.13

   社会科の授業がどうあるべきなのか、考える上で非常に示唆に富む記事。高校でも3月中に、次年度の授業計画を教務に提出することになっている。それも学習指導要領準拠、教科書準拠であることを強いられる。年度末、年度当初の忙しさの中で結局、多くの教師は前年度の授業計画(他人が作成している場合も)を踏襲し、その内容は教科書の目次に少し色を付けただけのものとなる。しかも楽しい授業をする上では何の役にも立たない、こうした授業計画が、「順調」に消化できているかどうかを学期末に逐一、教務や教頭がチェックすることになっている。

   学習指導要領が忠実に守られているのかどうか…実際には授業への監視を行う道具に過ぎない学習計画には、当然、教師たちの創意工夫がほとんど反映されていない。したがって授業の工夫に力を入れる教師たちの実際の授業では、計画とはかなり異なる展開となる事も少なくあるまい。まさに「面従腹背」が一部の現場では横行しているといって良いだろう。しかも「面従腹背」できる学校現場の方がむしろ生徒たちにとっては人気のある授業が出来ているのかもしれない。かつては教科書を面白く教えられる教師が評価されていたが、今や面白い授業を教科書と関連付けて教えられる教師の方が高く評価されるべき時代になっているのではあるまいか。

 かつてアメリカでトランプとバイデンとが争う大統領選が行われていた際に、「現代社会」を教えていた新人の教師に選挙結果を予想させることも含めて大統領選を授業のネタとして取り上げることを提案したことがある。新人教師は私の指導を受けて早速、アメリカ大統領選の授業を始めたのだが、たちうまち体育科教師の方からそんな授業は生徒たちによろしくない…とのクレームが来てしまった。一体、何の資格、根拠があって他教科の教師がそうした介入をしてくるのか…まったく訳が分からない出来事だった(かつての村社会ではありがちなことだが…)。まさに今の学校は「監視社会」そのものなのだ。

 体育科の老害教師が授業に介入してきた背景には、もしかすると社会科はただの暗記科目、との決めつけがあったのかもしれない。仮にただの暗記科目ならば確かにどちらが当選したのか、大統領選の結果だけ暗記すれば事は済む…そして今は大統領選の渦中であり、この授業は成立しない…という思考が働いたのではあるまいか。もしも、そうだとしたなら実に失礼な話である。社会科には知っての通り「考える力」も養う義務があるのだ。

 たとえ「現代社会」と銘打っていても教科書が生徒たちの手に届くころには教科書のトピックス欄ですら過去の遺物に過ぎない。ネットで情報を手に入れている今時の高校生は最新の情報を扱おうとすらしない「現代社会」という科目の授業に大きな違和感があったに違いあるまい。ただでさえ「VUCA」と呼ばれる紆余曲折の激しい世界に、物事の結果だけ暗記する社会科の授業が一体、何の役に立つのか、教師自身がまず考えるべきなのだ。

 大統領選の最中から授業は始まっていたので、当時は誰もが選挙の結末を知らない。当然、年間の授業計画にもアメリカ大統領選は挙げにくい。何がどうなって選挙結果がどう左右されるのかも不明…ベテラン教師だって不断の授業準備が必要となる非常に面倒なテーマなのだ。しかし「現代社会」という科目のテーマにはしっかりと沿う授業となるはずだった。18歳で選挙権が与えられた現在、高校生であっても決して最新の政治の動きに無関心であってはなるまい。

 もちろんこうした授業には、下手をすると偏った、特定の価値観を生徒たちに押し付けてしまう危険性が少なからずある。なのでトランプ、バイデンの双方に一方的な肩入れをせずに、等間隔の距離をとってできるだけ公平に眺めることが心がけとして必要となるのは言うまでもあるまい。また、今なぜトランプが優勢(あるいは劣勢)なのか、原因について考えさせ、様々な意見を表明させたとしても、殊更に特定の意見をえこひいきするのはご法度である。つまり、こうした授業では生徒たちを一定の結論に誘導することだけは絶対的に避けるべきなのだ。むしろ多様な意見が自分たちの中にも存在する様をありありと実感させることこそ最優先すべきであろう。

 以上のような作法が守られるのであるならば、教科書に載っていなくとも現時点で大きな話題となっている事柄を授業で扱うことは、むしろ極めて大切な取り組みであると考えるが、いかがか。

   文科省も「働き方改革」をスローガンに掲げるのであるならば、学校の仕事が集中する最悪の時期に、わざわざ下らないだけで労力と時間ばかりを奪う授業計画や目標申告などを教師たちに強要すべきではあるまい。

生徒に開かれた校則作り求めた中学生の請願、市議会委「不採択に」

   朝日新聞社  2025.1.22

   この記事の奇妙な点は、中学生側に請願した理由を聞いておきながら、議会側が不採択とした理由をまったく説明していないという片手落ちの報道となっていること。なぜ、不採択としたのか、記者は幾人かの関係する市会議員に確認して回るべきだろう。こうした手抜きの取材は、生意気な中学生の出しゃばった行動…と見下すような老害議員を今後も蔓延らせかねないと考えるが、いかがか。

「学習指導要領」改定審議 初めてこどもの意見反映へ

   日テレNEWS NNN 2024.12.24

様々な学校教育の課題が山積する中で、こんなことすら本来、責任官庁であるべき文科省ではこれまでただの一度も試みてこなかった情けなさ、あまりの不甲斐なさに泣けてくる。口先ばかり児童生徒の意見を尊重して「教育改革、学校改革、教師改革」を唱えてきた文科省の体たらくぶりに呆れ果てるしかあるまい。このことこそが現今の日本の停滞ぶりを示す大問題ではあるまいか。

 学習者主権への関心の欠片すら持たない老害政治家、老害官僚、老害教師らが大手を振って跋扈してきた日本社会の致命的な老朽化こそ、真っ先に問われるべき国家的課題であることが、この問題でも鮮明となったと私は思うのだが、いかがであろう。

 ぜひ、このニュースに関する生徒たちの反応を知りたい。

なぜ日本の学校から「いじめ」がなくならないのか「納得の理由」

   現代ビジネス 現代新書編集部  2024.12.24

   かつて「学校社会の当たり前、常識を疑え」といったようなキャッチフレーズで日本の学校教育への批判が盛んに叫ばれていた時代があった。そこには時折、無政府主義的な観点がやや感じられ、1990年前後の社会主義国崩壊とともに今や、日本の学校文化を全体主義的として批判する思潮はいったん記憶の遥かかなたに押しやられたように私には感じられる。とは言え、現代新書編集部が指摘する視点には決して「目からウロコ」的新奇さを感じられない。

 現状ではイリイチらの脱学校論の影響力はほぼ消えつつあるように見受けられる。確かにイリイチを日本に紹介していた山本哲士氏らに難解な言葉遣いや左派特有の硬直した論調が多少、鼻につく面はあったに違いない。とは言え、戦後公教育が掲げてきた数々の美名の裏に潜む、ある種の全体主義的な洗脳教育、国家主義、管理主義の危険性を指摘していた点はそれなりの意義があったと思うが、いかがか。

 私はこの問題の主な源流を、日本の教育予算の少なさと日本社会の同質性の高さの二つにもっぱら由来する、集団的な同調圧力、忖度圧力の強さに求められるように感じている。教育予算の少なさは敗戦後の混乱期にはある程度やむを得ない側面があっただろうが、1980年代後半のバブル期になっても日本の場合、先進国内では相変わらず予算が低く抑えられてきた。その結果、一クラスの児童生徒の定員数が先進国では突出して多い、という低劣な教育環境を経済大国でありながらいつまでも長く放置したままであった。教師への待遇も、トップクラスの先進国の割には十分に改善出来てこなかったと言えるだろう。当時、戦後日本の驚異的経済成長はこれまでの公教育が上手く機能している証拠であり、学校教育に対して現時点で特に予算措置を講ずるほどの問題点、改善点は見当たらない…といったような保守的思考が長らく教育関係者のみならず、政財界の主流だったのかもしれない。

 常識的に見ても、40人以上の児童生徒を相手に一人の教師が、基本的にさほど面白くもない教科書的勉強を一方的に強いている日本の学校教育の構造は、不可避的にその現実的な対応、効率的手法として教師たちによる画一的、管理主義的一斉指導を招き寄せるに違いない。

 また、記事で使われている同質性の高い日本社会を覆う全体主義的な「膜」の正体は、おそらく日本人の伝統的な心性として個々人の多様性や個性、人権を、無意識のうちに非効率で余分な要素として邪魔者扱い(多くのイジメはそこから生まれてくるだろう)する傾向がある反面、集団的な効率性、斉一性、統一性、画一性を偏重しがちな傾向の中に潜んでいると私は考える。日本の学校社会も例外ではなく、むしろ突出して全体主義的で、かつ極めて強固な「膜」に覆われているに違いない。

 結果的に日本の学校教育がイジメ問題にうまく対応できないまま、いつまでも画一的発想、管理主義的一斉指導に偏ってしまうのも、ある意味で必然的と言えるのではあるまいか。

10年後「生き残る仕事」「なくなる仕事」の境界線 今後においてもAIにできないこと

 は何か? 東洋経済オンライン 川村 秀憲 の意見 2024.4.13

 …仕事は「意思決定」と「作業」に分解され、このうち「作業」に関しては、相当部分がAIに取って代わられる…「自分で何をするか決める仕事」は残り、「人から言われてやる仕事」はAIに取って代わられる…という時代の流れに沿った学校教育とは一体、どういうものだろう。ぜひ生徒たちに考えさせたい。

 …「その人」だから価値があると感じているものは、AIには入り込めない領域…であるならば個性、多様性を尊重する教育がもっと必要となるだろう。

 …AI時代の到来が本当に問うているのは、「あなたならどうするのか」ということだ…ならば自主的、自発的な言動がもっと尊重されなければなるまい。

 …問題は、大企業や組織力の高い会社に入ったことで、仕組化の歯車のひとつとなって、属人化を排除する組織の文化や風土に慣れて…しまう事だとするならば、徹底的な校則の見直しだけでなく、学習自体をもっと個別最適化させ、自由化すべきだろう。押しつけがましい「授業」のあり方は否定されるべきであろう。

 …これまで善とされてきた「標準化」「マニュアル化」はAIが担い、悪とされてきた「属人化」こそが私たちが生き残っていく術…であるならば、これまでの文科省の教育行政のあり方とは真逆に近い体制が再構築されなければなるまい。たとえば学習指導要領の大幅な見直し、画一的で管理主義的な教育の徹底的な刷新が求められるであろう。

小学校にもこんな「謎ルール」が 生活・服装・持ち物 先輩ママたちが驚いたリアル

 な経験談 コクリコ編集部 の意見 2024.4.13

 いきなり高校の校則問題に入るよりも、過去を検証する方が校則問題を検討するポイントがつかみやすく、生々しくないので意見も出やすいだろう。

小学校の「登校班」廃止か継続か 保護者を悩ませる、かつて好まれた「全員一律の

 扱い」AERA dot. 大塚玲子 によるストーリー 2024.4.11

 集団主義的行動を身につけさせる上でもそれなりの役割を果たしてきた集団登下校のあり方がコロナ禍を契機に見直されてきているらしい。生徒たちにとっては身近でとっつきやすいテーマであり、議論させるのに最適の記事だろう。集団登校のメリットとデメリットを挙げさせていきながら、登校班廃止の是非を問いたい。ただし都会と田舎の違いなどを個別に考慮しないと粗雑な議論となってしまうので当該学校の所在地の具体的な状況を踏まえた議論にしていきたい。

Nスペ「不登校」が大反響 教育現場・不登校経験者たちの〔徹底討論〕で分かっ

 学校に足りないもの・必要なもの コクリコ編集部 によるストーリー 2024.1.27

 総論的な捉え方をさせたいときには役立つだろう。討論後のまとめ、として読ませてみても良いと思う。

「学びの多様化学校」が子どもの成長をそっと支えていた…記者が見た「東京・高

   尾山学園」の取り組み 東京新聞 2024.1.28

 こうした取り組みがはらむ危険性は「学びの多様化」をあくまで例外的な特例として狭く位置づけてしまうことで、他の圧倒的多数派に属する学校へは多様性を尊重する精神が十分には行き渡らなくなってしまう可能性が出てきてしまうことではあるまいか。学習指導要領や教科書検定制の持つ画一的で管理主義的性格を見直すことは今や教育行政機関だけではなく、すべての公立学校の急務となっている重要課題だと考えるが、いかがだろう。

「よい教育が、押しつけられてできるのか」…自由でのびのびした小学校は、外部

 通報を機に管理教育へ舵を切った 学習指導要領に少しでも沿わない独自授業は「不

 適切」なのか 47NEWS によるストーリー 2024.5.20

 教科書を読み、解説するだけの授業にはたして児童生徒たちはトキメキを感じてくれるだろうか。教師がときおり発するギャグの面白さだけが、授業の面白さだろうか。生徒たちにどんな授業を面白いと感じるのか、授業のどの部分に面白さを感じるのか、ぜひアンケートをとって確認してみたい。

ZEN大学に出願者1000人超、「N高校」「S高校」生徒が全体の半分…来年

   4月に開学 読売新聞 2024.12.13

   N高校以降の角川ドワンゴ学園の快進撃がついに大学教育にも及んできた。個別最適化学習を実現する上で最も有効だと思われるのが通信制というシステムであると考える。加えて学費の安さも大きな魅力であり、次年度はもっと多くの出願者を獲得するに違いあるまい。この躍進ぶりには日本の閉塞気味な学校のあり方を劇的に変えていく突破力と牽引力を感じる。今後の活躍と新しい展開に注目したい。

 

 学校教育の問題点に関しては動画や記事も含めて膨大な資料が存在する。ここではYouTubeのオススメ動画やネット記事を紹介することをメインにした。教師によっては授業で扱いたくない、扱うべきではない、と考える方もおられるだろう。しかし日本社会の閉塞状況を生み出した張本人の一人、いや主犯格こそ、日本の学校教育であるとカッパは考えている。

 不登校や非行問題に数多く直面してきた身ならば猶更、学校そのものを政治的、経済的、社会的テーマとして授業で扱うべきであろう。教育困難校の生徒が授業に真剣に取り組むきっかけを作る上でも避けては通れないテーマの一つである。

 

1.大川小学校の悲劇

 日本の学校教育の不具合を考える授業の導入としてうってつけの事件であろう。生徒たちの積極的な発言を待ちたい。

参考動画

【なぜ子どもたちは避難できなかったのか】津波に襲われた大川小学校が“遺したも

 の”【東日本大震災から12年】 ABCテレビニュース  2023/02/24  16:24

大川小事故説明会「言うなよ」というサインを送る教育課長

 kl cc  2017/01/06 1:37

 教育委員会による悪質な隠蔽、責任逃れの決定的瞬間が映像で明確に捉えられている。山に逃げるべきだといった小学6年生の意見を無視して最も危険な川に向かうルートを選んだ教頭以下、教職員の判断ミスは致命的。亡くなった教職員を責め立てることはもはや無意味としても、現場の判断ミスを招いた指導責任、管理責任は校長や教育委員会に問えるはず。この教育課長が体を張って保護者・遺族の追求から部下を庇った…と教育村の住人は思うかもしれないが、最優先されるべきは部下の立場などではなく、児童・生徒の命であり、教育課長の行動は卑劣というほかあるまい。

VOICES:東日本大震災8年 「あの日」に向き合い続ける元教諭

 毎日新聞  2019/03/08 5:46

【東日本大震災】防災センターの悲劇を知っていますか?まさかの原因

 人が死なない防災 2022/03/11 8:45

 「なぜ子どもたちは避難できなかったのか」と合わせて視聴させたい。何か問題が生じたときには殊更、隠蔽と責任逃れが目立つ学校を含めた行政。その防災に関する指導・措置への信頼度はできるだけ低くしておいた方が今は無難だと考えておくべきだろう。学校はもはや信じるに足らぬ「伏魔殿」程度に思っておいた方が賢明だとすら思えてくるのが大川小学校の悲劇。

 緊急時においてもただ唯々諾々と学校や教師たちの指導に従うのではなく、三陸海岸での「津波、てんでんこ」の言い伝え通り、生徒各自があくまで自分の身は自分で守る他に無い、という痛切な認識を持つよう、少なくとも保護者、児童生徒たちには周知徹底させておきたい。現在の学校はもはや、その程度でしかないのだ。

小学生136人を救った“父の教え”【#あれから私は】

 TBS NEWS DIG Powered by JNN  2021/03/08 3:59

 この小学校児童を津波から守ったのはここでも教師ではなかった。この一点に、マニュアルに縛られた教師たちの悲劇を感じる。教師養成教育を含め、日本はこのままで良いのか、厳しく問い直すべきだろう。さらなる大地震が予想される現在、学校の防災体制、危機管理の在り方、教師の意識…検討すべき課題は極めて多い。

「壮絶な体験をした子どもたち」~経験を未来につなぐ

 TBS NEWS DIG Powered by JNN  2021/03/12 14:17

 すっかり美談として定着していた「釜石の奇跡」の裏側に恐ろしい事実が隠されていた。実は小学生は最初、避難していなかったが、逃げる中学生の後を追うようにして小学生たちが勝手に逃げ始めたらしい。つまり仮に中学生が逃げなければ小学生はまともな指示すらできない教師たちとともに校内にとどまり、石巻の大川小学校と同じ悲劇を迎えていた可能性があるのだ。

 自分でしっかりと判断できない児童が多い小学生を唯一守れる立場にあったのは教師たちであったはず。しかしここでも小学校の教師たちは管理職を含めて自らの判断で逃げることをしていなかったという事実が判明したわけだ。結局は釜石の件も石巻の件も、二つの小学校では判断すべき立場の教師たちがまともな判断をできなかったという点で共通していたのだ。これは大川小学校の悲劇が全国どこの小学校でも生じうる可能性を示しているということだ。果たして私たちはこんな状態の小学校にかけがえのないわが子の命を託すことができるのだろうか…今、国民すべてがそれぞれ自問自答を迫られているはずである。

【なぜ息子は命を失ったのか】津波に流され亡くなる・・・命を守る大切さを伝え続け

 る両親の思い東日本大震災から12年【newsおかえり特集】

 ABCテレビニュース  2023/03/10  16:34

 これも自分で考え、判断する練習を蔑ろにしてきた日本の学校教育が招いた悲劇で

はないのか。その弊害は今の教師たちの指示待ち姿勢にも表れてしまっていると考えるべきだろう。罪深い教育である。

参考記事

大川小・津波訴訟、2人だけの弁護団でも勝てた理由 吉岡和弘弁護士インタビュー

 弁護士ドットコムニュース 2023年05月25日

大川小・津波訴訟、行政の「組織的過失」にたどり着いた意義 吉岡和弘弁護士イン

 タビュー 弁護士ドットコムニュース 2023.5.25

 防災の在り方だけではなく、日本の教育行政の隠蔽体質や事なかれ主義、上意下達の弊害など、様々なテーマがこの事件には横たわっている。とはいえ「行政の組織的過失」がようやくにして最高裁で認められた事は画期的であり、今後、教育行政側に対しても様々な局面において「組織的過失」を厳しく問う動きが加速してくるかもしれない。

 

2.ブラック校則

「学生が髪を染めてはいけない訳」フェルミ研究所 2020.7.3 5:09

 ブラック校則問題の導入として最適の動画。この動画は高校生の多くが知っているので親しみが持てるだろう。以下、授業で扱う際のポイントを整理してみた。

地毛登録証明書:都立高校のおよそ6割が利用 ←40年前は制服すら存在せず

  つまり近年、学校では校則が人権侵害を疑われるほどに強化されてきた

  ⇒「ブラック校則」問題表面化(ツーブロ、下着の色指定・・・)

・りんと先生の言い分を整理

      りん                先生

人は見た目で判断してはいけない  vs.  人は見た目で判断される

(倫理的判断)               (現実的判断)

髪の毛を染めてはいけない理由が       校則に書いてあるからダメ

校則規定以外に見当たらない         社会通念上、仕方ないこと

=思考停止                 大人と子どもでは適用される

斉一性を強制するのは間違い         ルールが違う・・・年齢差別?

多様性や個性を尊重せよ           立場上、指導するほか無い

化粧禁止は年齢差別             ・・・学校のブラック化

                     (教師間のイジメ、過労など)

論点

・人は見た目をなぜ重視してしまうのか?・・・ルッキズムとの絡み

 人はとりあえず、見た目で相手を評価してしまいがち。これは「ヒューリスティック」とよばれる手早く判断する際の手抜き思考に基づく。この手抜き思考は無意識的に働き、実践的で役立つこともあるため、人々の思考や判断に大きく作用する(⇒心理学1.錯視現象)。このため、偏見や差別の原因にもなりうる。また就職面接や合コンの際でも「見た目」は無視できない要素であるため、学校教育上でも「見た目」を軽視できない現実がある。

 むしろ「人は他人を見た目でまずは判断している」という自覚が問題解決の出発点となるだろう。差別、偏見の分野で学んだように、人は差別や偏見を完全に無くすことはできない。ただし改善していくために人の認知、認識についてできるだけ自覚的であるよう、努力はすべきである。

 ただし袋小路に入ってしまったかのような日本の学校教育を日本人の立場のままで客観的な視点から俯瞰して冷静に評価するのは極めて難しいだろう。これは欧米との比較がどうしても必要となるテーマである。

 下記の「子どもの権利を考える…」動画も視聴させて、さらに意見を募りたい。

毛染めや化粧OKで風紀は乱れたのか校則を試験的に廃止した県立高校 影響を検

 証した生徒たちに“考える力” 東海テレビ NEWS ONE  2024/02/22  4:17

 こちらも授業で使えそうな動画。ぜひ、討論の題材にしたい。なお番組の途中で校長が校則の自由化で学習が疎かになったり、学力が低下したりすることを懸念するような発言があったが、これはいかがだろう?児童生徒の学力低下等の原因は家庭環境を除くともっぱら教師の指導力、授業技術の問題であり、生徒たちの服装頭髪のあり方に起因する部分は限りなく小さいと思われるが、いかがか?

 自分たちの指導力を不問にして生徒側にばかり、結果責任を押し付けようとするような校長の責任逃れのこざかしいズルサが垣間見えて実に恥ずかしい限りであり、教師として大人としてあまりにも情けない発言だろう。あたかも学力の維持と校則の見直しを交換条件とするかのような期間限定の校則の廃止なぞ百害あって一利なし。

 まずはブラック校則がもたらすであろう生徒や学校、社会への害悪を様々な観点から直視し、深く理解していくことから校則見直しの議論をスタートすべきであると思うが、いかがか。

 ただ時流に乗って深く考えもせずにブラック校則の見直しをしてしまうと、拙速のそしりを受けてしまうだろう。そんなことでは生徒も教師もブラック校則問題からほとんど何も学ぶことが出来なくなるに違いない。なぜ、日本はブラック校則を創り出してしまったのか、なぜ今、ブラック校則の見直しが急がれるのか、日本ではこれまでほとんど無視されてきたために学校文化になじんでこなかった子どもの権利条約をしっかりとにらみつつ、今こそ教師と生徒がこれらの問題の討議を通じて十分な時間をかけ、お互いに深く学んでいくべき時ではないのか。

 ※参考記事

  「ツーブロック禁止」校則減少、3年間で38校→1校に 千葉市教委 朝日新聞社 2024.9.26

   どうせ千葉市の事である。多くの学校では生徒たちとの話し合いや意見表明の場を設けることも

   なく、一方的に上から目線でツーブロを許可したのだろう。時流に乗っただけの取り組みは学校

   に良い変化をもたらすことはあるまい。

生徒指導の手引き改訂 生徒が主導する「校則の見直し」【アサデス。】

 福岡・佐賀 KBC NEWS  2022/09/15 8:20

 ブラック校則を巡る議論にはいつも重大な視点の欠落を感じてしまう。これまでの短くは無かった期間、児童生徒たちだけがブラックな規則で縛られてきたのではあるまい。教師たちも極めてブラックな、多種多様な規則や慣習によって不自由な思いを味わってきたはずである。実際、教育公務員特例法、学習指導要領、検定教科書制度など、教師を縛り付けてきた様々な法制度が今も存在している。生徒との話し合いで校則を考える際、この視点が欠けていると校則の撤廃が一方的な上からの、ただの恩恵に過ぎなくなってしまうおそれがありはしまいか。

 ブラック校則を生徒たちと話し合う上で教師たちもまた極めてブラックな法制度によって縛られてきた経緯をしっかりと生徒たちと共有すべきであると考えるが、いかがか。さすれば学校に関わるブラックな規則を変えていく事は決して生徒たちだけではなく、実は教師たち自身にも課せられている大きな課題、責務であることがお互いに理解できるだろう。

 規則見直しの努力を生徒たちだけに丸投げしておいて教師たちだけが高みの見物を決め込んでいて良いはずがない。教師たちもまた生徒と同様にブラックな環境にいるのであり、お互いに部外者的立場にはいられないこと、それだけは、この際、はっきりさせておきたい。でなければいつまでたっても児童生徒および教師たちが学校教育の問題に対しての、主権者としての当事者意識を持つことは不可能なままであろう。

 

【進撃/鬼滅】この作品たちがいつまでも愛される理由を解説します 山田玲司の原

   作が10倍おもしろくなる解説【山田玲司 切り抜き】 2023/04/21 

   制服の持つ現代的な意味について山田氏が説く解釈は非常に興味深く、面白い。ブラック校則的な観点から制服を批判するだけではなく、制服を身にまとったアニメキャラが今も人気を集めている背景に目を向ける必要を感じた。新鮮な観点から制服論争に一石を投ずる意義のある動画だろう。

子どもの権利を考える| 🇸🇪と🇯🇵の現場の違いや具体例 | 専門家へのインタビューも |  北欧在住ゆるトーク Nord-Labo 北欧研究室  2022/11/19 19:27 

海外の人が驚く日本の学校が特別だと思う理由が衝撃的だったwww

   MrFuji from Japan《目指せトリリンガル》 2023/06/24  30:05

   特に部活動における違いは非常に参考となる。生徒による掃除など、日本の学校の良さにも注目できる。

【アニメ】日本教育の闇!個性を伸ばさない義務教育に未来はない!?

 テイコウペンギン 2019/11/10

歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第2弾】「規制は破滅を生む 老子」 

 ピヨピーヨ速報 2019/01/31 3:39

 規制の現実的必要性と規制を強化することの弊害との関係性をどう考えるのか、討論の材料にうってつけの動画。特に中国の習近平政権やロシアのプーチン政権が持つ危険性を踏まえるとこの話題は学校教育の枠外にまで広げられるだろう。まずはこの動画を切り口にして日本の学校教育が抱えている負の要素を抉り出していきたい。

【番外編①】いまなぜ、教育現場でルールメイキングが必要なのか

 みんなのルールメイキング 2022/04/01 1:02:08

 多数決やアンケート結果で意見の集約を図る安易さ、危険性についてはあらかじめしっかりと理解しておくべきだろう。

【番外編②】ルールメイキングQ&A 先生のお悩み相談室

 みんなのルールメイキング  2022/04/01 26:23

 校則の見直しに関する疑問や不安にどう向き合っていくのか、大きなヒントになるだろう。特に姉崎高校の山村先生による取り組みが興味深い。まず手始めに世界史授業で学校教育の歴史や校則についての内容を取り込んだ事は校則見直しを進めていく上で極めて有効で重要なポイントだったと考える。

 ※参考記事

  「どうせ無理」とつぶやく生徒たちを変えたブラック校則改正プロセス

    Forbes JAPAN 太田美由紀 2022/11/04 08:30

   これも姉崎高校の取り組みを紹介したもの。同校はかつて県内でもトップクラスの荒れた状況が

   続き、退学者が毎年100人以上出ていた。そんな学校を立て直すために20年近く前、ある校長

   が先頭に立って「ゼロトレランス」方針を打ち出し、妥協無しの厳しい生徒指導を行う事で一躍

   有名になっていた。確かにこれ以後、暴力的な事件は少なくなり、おいおい就職指導にも力を入

   れたことで生徒の荒れはほぼ収まり、同校は地域からの信頼を取り戻しつつあった。しかし学園

   に平和を取り戻すことは出来たものの、学校から心なしか活気が消えてしまった感は否めなかっ

   た。おそらくさらなる取り組みが必要な段階に至っていたのだろう。若い山村先生を中心とした

   校則改正の取り組みは再び学校に活気をもたらし、生徒達を活性化させていくに違いあるまい。

   ブラック校則を見直していくための一つの方策を具体的に示している点でも貴重な資料である。

      ◎日本人の「ダサさ」に影響を与えたのは「学校」だった…アメリカの教育との決定的な違い 

   現代ビジネス 中川 淳一郎 によるストーリー 2024.1.13

   日本の学校教育の欠点が欧米の学校との比較で分かりやすく記されている。日本の校則・横並び

   教育が「他人の目恐怖症」を作る…といった指摘は強い同調圧力を発揮する忖度社会を学校教育

   が作り出している側面に注目させてくれる。

    最も能力が低い者に合わせる「全員平等」のいびつ…もまた足並みをそろえることへの日本人

   の異常なこだわりが生み出したものだろう。日本の経済的低迷を横目に、いろいろな問題を抱え

   ながらもアメリカの経済的競争力は世界トップクラスを今も維持している。まさにイーロン・マ

   スクのような「変人を認め、レールを外れても後ろ指をさされない社会」アメリカならではの実

   績なのだろう。日本の学校教育の罪深さに思いを深く致さなければなるまい。

なぜ感想文がうまく書けないのか?正解に悩まされる日本人たち【ディスカバリー

 レイジチャンネル】山田玲司のヤングサンデー  2023.4.17  10:31

 読書感想文という国語科の課題がはらむ深刻な問題点として「自分を消されていく」危険性が挙げられている。この指摘に日本の学校教育の画一性がもたらす本質的欠陥が集約されているようで、とても説得力を感じる分析だと思うがいかがだろう。校則問題と普段の授業のあり方とは深いところでつながっているのかもしれない。

【学校給食】クラス全員で「いただきます。」のリスクを考える

 ABEMA 変わる報道番組 #アベプラ【公式】 2022.10.19 15:35

 比較的、生徒達から意見が出てきやすいテーマ。画一的で同調圧力の強い日本の学校が抱える個人の事情を無視しがちな傾向を最もよく反映するのが学校給食であろう。学校が集団生活を学び社会性を身につける場であるから給食も全員同じメニューであるべきだとする意見には当然、反論もある。食べ残しの問題や多様な食物アレルギーを持つ児童生徒が増えてきた現在の状況などをしっかりと踏まえさせて議論に持ち込みたい。

歴史的偉人が現代人を論破するアニメ【第19弾】「常識」とか言ってくる奴がなぜ

 クソか、教えてやるよ デカルト ピヨピーヨ速報 2021/02/27 7:31

 これも討論の題材に使える動画。教師が一方的に押しつけてくる大人社会の「常識」を疑ってみることこそが学問そのもの。学問を学ぶ学校であるにもかかわらず学問的な姿勢を失った学校文化やその担い手たちである教師に対しても疑問をぶつけたい。

参考記事

多様性への理解は重要だけれど・・・ 性自認の強要や適性の無視へと暴走する一部

   の人たちも NEWSポストセブン によるストーリー  2024.1.7

  「多様性の尊重」という美辞麗句だけが独り歩きし、暴走してしまうのは当然好ましくはない。ここで大切なのは個々人の選択を尊重する姿勢であり、特定の価値観を強要することではあるまい。こうした暴走が学校を舞台に生じてしまう背景に特定の価値観を押し付けてきた日本の学校の悪しき伝統がきちんと見直されることなく、今も健在である点を考えておく必要があるだろう。そもそも人権にかかわる内容を相変わらず「上意下達」で強制的に教え込んでいこうとする政治家や官僚たちの、人権を踏みにじるような姿勢自体がまさに老害問題そのものなのである。

教員の3割が「子どもの権利」の内容知らず、誤って理解している回答も 教員調査、約

 半数が「子どもの権利教育」せず 2022/7/22 東洋経済education × ICT編集部

 子どもの権利に対する教師の認知度の低さがブラック校則やイジメの隠蔽、体罰を日本の学校にはびこらせている背景にありそうだ。また画一的で管理主義的な教育行政に起因する学校社会の強い同調圧力、根強い一斉講義形式の授業の残存もまたブラック校則等を生み出す土壌となっているように思える。つまり教師や生徒の個性を軽視して多様性を圧殺する日本の伝統的学校体質がその根幹から見直されていかなければなるまい。そもそも教師の人権が十分な保障を受けられていない状況で生徒の人権だけが尊重される事など期待する方もおかしい。日本の教師の労働者としての人権保障がこれまであまりにも不十分であり、そのことに教師自体が鈍感になってきている…そしてこの時代遅れな教師たちの労働環境が子供たちの人権保障に対する鈍感な教育風土を醸成してきたと思えるが、いかがか。

 「『中学生らしさ』なんて後出しで何とでも言える」元中学生教師がTwitterで“校

 則へのモヤモヤ”を代弁する理由 文春オンライン 

 渋井 哲也 によるストーリー 2023.4.18

「男女交際を禁止する校則は違法」自主退学した元生徒の訴え 東京地裁、

 「堀越学園」に97万円の賠償命令 ABEMA TIMES 2022.11.30

 ここでは校則違反に退学処分を下した学校側の非を問うのではなく、むしろ「男女交際を禁じた校則は合理生の範囲内」と認定した東京地裁の判断の是非の方を問いたい。そもそも学校は生徒の学校外における行動をも制約できるのか、見直すべきではあるまいか。学校側はどこまで生徒達のプライバシー領域に立ち入ることが許されるのか、ぜひ討論させてみたい。

日本はなぜ幸福度が低いのか? キーワードは「寛容さ」

  世界経済フォーラム  ForbesJAPAN 2022/10/20 09:30

 人生における選択の自由度の低さ他者への寛容性の低さが日本人の主観的幸福度を先進国最低のレベルとしている原因・・・だとすればその原因に大きく関わってしまっているのが多様な価値観を認めようとしない日本の画一的学校教育であろう。

日本人の「働く幸せ実感」、世界最低クラス!管理職だけが「幸福」な理由は?

  国際比較調査で判明...「権威主義・責任回避」企業文化が元凶だ

 J-CASTニュース の意見 2023.4.19

 日本企業の組織文化は「上層部の決定にはとりあえず従う」「物事は事前の根回しによって決定される」といった「権威主義・責任回避」が、ほかの国々に比べて比較的高い傾向にあるのが特徴だという。仮に日本の学校文化が日本企業の文化と極めて親和的であるという仮説を前提とするならば、この調査結果は当然、日本の学校教育の反省材料ともなりうるものだろう。大川小学校の悲劇はそんな組織文化が生み出したものではなかったか。イジメや不登校、若者の自殺率の増加にこれまでの学校教育がどれだけ悪い意味で寄与してきたのか…やはり多方面から見直していくべきではないのか。

「校則」は誰のためにあるのか――対立するのはいけないこと?

 ダイヤモンド社教育情報 真下麻里子 2022/09/29 06:00

金髪の転校生が来た→校則撤廃! 工藤勇一校長の学校改革秘話

 毎日新聞 2022.12.6

 ブラック校則問題を論理的に理解する上で役立つ。

いじめ訴えた日記に担任が「花マル」つけ返却 父親が学校側を提訴

 毎日新聞 によるストーリー  2024.5.9

 教師がイジメに加担してイジメの被害者をさらに追い込んでしまう事件は遡れば1986年の中野区富士見中での「葬式ごっこ」以来、数多くないものの連綿として続いており、後を絶つことは無いように思える。

 教師の中には集団内での支配的なムードを忖度することに長けた者こそ社会性に優れた人物とみなす傾向が多かれ少なかれ見られるだろう。グループ内のムードを壊す者を不適格者として排除しようとする気分が児童生徒だけでなく、教師集団を含めた学校全体に蔓延しているのだ。

 これもまた個性や多様性を軽視し、画一的で管理主義的、集団主義的な日本の学校教育の体質が生み出してきた弊害だと考えるが、いかがだろう。

「いじめ」1割増、過去最多の68万件…重大事態923件・「指導死」は2人 

 読売新聞 によるストーリー 2023.10.4

 いじめも不登校も小中高生の自殺も増え続けている。これらの問題に対して政府の無能ぶりが際立ってきているのだ。子どもや若者に無関心な老害政治家がはびこっている日本の政界が、現実を直視し、未来を見通す力を失っていることはもはや疑いようがない。このままではこの国の行く末がいかに暗く厳しいものになるか、はっきりと明示されていると覚悟すべきだろう。

 なぜイジメ、不登校、小中高生の自殺が増えているのか、その原因と対策についてまずはできるだけ数多く、挙げさせてみたい。そしてこの分野の学習の最後でまたまったく同じ質問をしてみたい。

 

3.体罰、虐待について

体罰95%から2%になったスウェーデン、体罰のないしつけに大事な3つ!|

  北欧在住ゆるトーク Nord-Labo 北欧研究室 2022/09/17 21:11

 子供との粘り強い対話を重視するスウェーデンの子育てと学校教育の在り方が1970年代まではびこってきた体罰の根絶に大きな役割を果たしていたようだ。子供達の意見にしっかりと耳を傾ける大人達の姿勢が子供達の自己肯定感を支え、積極的な社会参加を促してきた側面にも注目したい。こうした大人社会の忍耐強い努力の積み重ねが他者と多様性を重んじる北欧の福祉社会存続の軸とされてきた事に畏敬の念を覚える。さて、日本はいかが…

[サイエンスZERO] 体罰や暴言で傷つく子どもの脳 回復させる方法とは? | 

 “子どもの脳を守れ 脳科学が子育てを変える | 2021/08/11 NHK 4:47

 虐待やネグレクト、体罰や暴言が脳に大きなダメージを与えてしまう事は誰もが知っておかなければなるまい。

ニコ生×BLOGOS 体罰・指導死・教師の鬱...どうする日本の教育現場!

 BLOGOSチャンネル  2013/02/01 1:21:16

 古い動画だが、体罰が教育的指導の一つとして成立し難くなってきた経緯を含め、現在の学校が直面している種々の問題をこれほど包括的に分かりやすく説明してくれる動画は意外に少なく思える。特に若い教師にとってこの動画は極めて貴重であろう。宮台氏と藤井氏の解説は10年近く経った現在もまったく色褪せない的確さに満ちているように思うがいかがか。イジメの対応に関しても首長の積極的介入などが問われざるを得ないほどに学校教育村の自浄能力がほとんど失われているという指摘は間違いなく現在にも当てはまる。これまで学校が自らの努力でほとんど何一つと言って良いほど変われて来なかった点に情けなさを強く感じないわけにはいかない。当然の事ではあるが、そんな学校に「教育の中立性」を云々する資格は無い、と言われても仕方あるまい。

 学校の聖域化が進み、市民社会からかけ離れてすっかり自閉してしまった、まさに村社会としての教員社会における常識はもはや完全な時代遅れの硬直化した因習に過ぎないのだ。しかしそうした異常な事態に教師自体が一刻も早く気付けるような時間的、精神的、身体的ゆとりが今の学校にはそもそも切実に欠損している・・・その事こそ、現代日本における最大の教育問題なのかもしれない。

私立高校の野球部で監督らが暴言や暴行か…保護者会で謝罪 バドミントン部でも

 長崎市 日テレNEWS 2022.12.16

 スポーツ強豪校ではありがちな事件。1970年代に全盛期を迎えたスポ根アニメ、青春ドラマ、ホームドラマなどにつきものの体罰やしごきは今の60歳代の教師、さらにはその教え子の世代である50歳代、40歳代にも連綿として受け継がれている。結果を出さなければならない私立のスポーツ強豪校にとっては極めて克服が難しい問題であろう。中学だけではなく高校でも運動部指導の民間委託を徹底させる方がこの問題をスピード解決するには最適なような気がするが、いかがだろう。

【体罰教員】生徒の背骨を折った柔道部顧問が逮捕 過去に3度処分もなぜ現場に?

 体罰・指導ではなく暴行事件とすべきの指摘も【教育】|#アベプラ《アベマで放

 送中》 2020/10/15 ABEMAニュース【公式】 19:04

 内田氏が指摘する体罰を容認する学校の体質とは何だろう。実際、どの学校でも生徒指導部主任に体罰容認派の教師がつくことが多いのは事実である。また生徒指導部の多くは運動部顧問であり、体育教師が多い傾向があるのも否めないだろう。特に剣道や柔道の顧問が生徒指導の中心となる率は極めて高い。敗戦後、GHQによって禁じられた武道が近年、中学校で必修化された歴史的経緯も探る必要がある。確かに夏野氏の体育教師に対する不信感と体育不要論は極論に聞こえるが、果たして公平に見て実際、どうなのだろう。討論の俎上に載せてみたいテーマである。

【指導】「チームを強化するために」パワハラ解任の横浜高校元監督の失敗とは?

 安藤美姫が明かすコーチとの信頼関係と罵声?スポーツと体罰|2021/11/12 

 ABEMA 変わる報道番組#アベプラ【公式】 29:36

 安藤氏や夏野氏の意見に注目したい。頂点を目指すトップアスリートの世界では厳しい指導と暴言や体罰は紙一重であり、その場の状況や指導者と選手との信頼関係が問われてくる。必ずしも一律に外部から体罰や暴言が適用されるとなれば指導者側だけでなく選手側まで困惑しかねないだろう。しかし学校の部活動においては生徒達に退部の自由があるとは限らず、もはや指導者によるこれまでのような暴言や体罰が許される余地はほぼなくなってきていると見て良いだろう。

参考記事

体罰処分の教員、大阪市が全国最多 市立学校で8年間798人

 毎日新聞 2022.12.22

 イジメ事件隠蔽で度々注目を集める大阪だが、教員の体罰処分全国最多を誇るのも同じ大阪市であるという。大阪市教育委員会の闇は深い。

 

 後編に続く