⑦手遅れの弥縫策

※この記事は常に新鮮なネタを提供すべく、随時、更新されています。

 

先生が足りない! 教員採用試験前倒しは解消に繋がる? 1クラス1人の担任制を廃

 止し「チーム担任制」を導入した小学校も【news23】

 TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2024.6.18

 教員採用試験前倒しがその場しのぎに過ぎないとの指摘は正しいだろう。またこうした泥縄式の対応策が続く原因の一つに文科省の官僚が学校現場への無知があるとの指摘も納得できる。とはいえ文科省による画一的で管理主義的な教育行政こそが教員不足と学校の荒廃をもたらしている根本原因との認識が見られない点に個人的には不満が残る記事である。

狙いは「ブラック職場」隠し? 文部科学省の逆ギレ抗議の怪しさ 教員の「定額働か

 せ放題」NHK報道めぐり 東京新聞 2024.5.25

文科省、NHK報道に抗議 中教審の教員確保策巡り

 共同通信 によるストーリー  2024.5.21

 「定額働かせ放題」という表現を一部の教員や学者によるものとする報道にも呆れ

るが、文科省の厚顔無恥な責任転嫁の姿勢にも呆れるほかない。ここまで深刻な若者の教職離れを推し進めてきたのは一体どこのどなたなのだろう。

 若者の教職離れを促進している学校のブラック化はもっぱら文科省と政府の責任である。画一的な管理主義的教育行政を根本的に見直すと同時に部活動の廃止などの施策が断行される上での教員確保策でなければまったく意味が無い。今、文科省が取り組んでいるのはすべて泥縄式の誤魔化しばかり。しかも言葉尻を捉えて己の責任を棚に上げ、NHKに抗議するというトンチンカンさが文科省というお役所の深刻な劣化ぶりを示していると考えるが、いかがだろう。

先生の6割が「3年以内の離職・転職」を考えている教員不足で現場に起きている

 ひずみの数々 東京新聞 2024.4.10

   なぜ、教師たちの不足が生じているのか、その原因を生徒たちに考えさせて対応策を提案してもらうとその後の議論が深まるだろう。

「不登校・いじめ緊急対策パッケージ」(2023.10.17 文科省)

 文科省の頑なで傲慢な姿勢は相変わらずだ。教職員に対するこれまでの20年余りにわたる、息つく暇も与えないバカげた「教育改革」の連打こそが現今の学校教育問題大量発生の土台にある。そうした基本的認識すら欠如していたことが直近における深刻な教員不足を招いた最大の問題点ではなかったか。過去の間違いだらけの教育行政を反省することなく、こうした不毛な弥縫策を飽きることなく次々と現場に押し付け、現場をひたすら混乱させ、疲弊させる…こんな悪循環をいまだに断てないのも、学校現場の疲弊ぶりを本気で探ろうと努力しない、もはや探求する意欲と自省する力を一切失っている文科省自身の欠陥が一番の原因ではないのか。

 一体、いつになったら学校現場の実情が文科省の役人たちに伝わるのか…やはり絶望的にならざるを得ない。地方の教育委員会から上がってくる怪しい調査結果、どうにでも取り繕える信頼性の低い数字ばかり相手にしているからこそ、こういう悲劇的事態を招いているのだ。いい加減そのことに気付いて現実を直視していただきたい。

 教育委員会や管理職が事実を歪曲したり、表面を金メッキで糊塗できないよう、まずは自分たちの目で「お忍び」「潜入」を敢行してでも直にありのままの学校現場を視察すべきであろう。こうした組織が学校を含めてどれだけ酷い隠蔽体質を抱えているのかを示す資料は、このブログでも紹介してきたように、枚挙にいとまがなく、既に膨大な数に及んでいる。

 したがって地方からの報告を鵜吞みにすることが現場を信用している事の証…などともしも文科省が言い訳しようとするならば、それは文科省がいかに現場の実態を知らないか、知ろうとすらしていないかを証明しているようなものである。県教委を牛耳っているのは文科省からの天下り役人=都道府県教育長であり、現場の実態を知らない、などと文科省に言わせてはなるまい。

 適当に弥縫策を打っておけば当分の間、国民の目を逸らすことが出来る…という小ズルい判断を文科省が持っているとしたならば、「国家百年の大計」は早晩、崩れ落ちるに違いない。行き当たりばったりの対症療法でごまかすのはもういい加減止めていただき、公教育の在り方を本腰を入れて根本から見直すべきではあるまいか。

   たとえば「不登校特例校」を「学びの多様化学校」と名称を変えてみてもただのごまかしであり、根本的な問題から一時的に目を逸らさせるだけのことに過ぎまい。特例として特殊な目的を持つ学校を一握り創り出すことで公教育の根幹部分には一切手を付けさせず、温存させておこうとする魂胆がそこには透けて見えるのだ。

 あくまで「ガス抜き」としての特例に過ぎない学校を設ける…そんな事では、なぜこれほどにまで学校が忌避されているのか、なぜ学校がイジメの温床となっているのか、その本質的な問いをスルーしてしまうに違いあるまい。根本的に変えるべきは上意下達の教育行政と画一的、管理主義的学校の在り方全体であろう。

 もちろん、教員の働き方改革などの対症療法も急がれるのは確かであるが、本来、改革すべきはもっと根深いところにあるはず。画一的、管理主義的教育の徹底的な見直しだけではなく、教員養成教育の抜本的な見直しも急がれる大きな課題の一つであるだろう。これは安倍政権下を中心に進められてしまった諸々の「教育改悪」を全面的に修正するだけでもまだまったく不十分。戦後教育の全面的なリニューアルをともなう大改革が今、日本の教育界に切実に求められていると思うのだが、いかがか。

いじめ・不登校対策を前倒し、過去最多の認知件数で政府方針…早期に兆候発見狙

   い 読売新聞 によるストーリー 2023.10.11

 対症療法が無意味だとは言わないが、あくまでもその場しのぎの弥縫策に過ぎない点は忘れてはなるまい。なぜ、イジメや不登校が増加の一途をたどっているのか…日本の学校教育の在り方に問題は無いのか、根本から問い直すべきでは?

参考動画

【不登校】国家を根幹から崩す?フリースクールの選択肢は?無理やりでも登校? 

 親の責任論は的外れ?大空幸星&元当事者|アベプラ

 ABEMA Prime #アベプラ【公式】 2023/10/25  19:10

 この問題をフリースクールや特例校を設けることで解決させてはならないという点で大空氏の見解に同意する。根幹となるべきは公教育の根本的な見直しであり、特例校の設置はあくまでも応急措置の対症療法に過ぎないことを私たちはしっかりと理解しておくべきだろう。

 

参考記事

東京の小学校教員、採用試験が定員割れ寸前に 「休めない」職場環境に学生も不

 安? 東京新聞 2023.11.2

 案の定、付け焼刃の対策も効無し。千葉県でも全体で2.2倍程度の倍率なので教員の不足に加えてついに質の低下が懸念される危機的状況となっている。そもそも、若者人口減少が続く中で優秀な人材は海外に流出する一方であり、学校に限らずとも日本全体が若い人材の不足と質の低下に直面している。

 長いこと教育予算をケチり、教育改悪にばかり励んできたツケがいよいよ本格的に日本社会を襲い始めたのである。しかも残念ながら基本的には「時すでに遅し」というほかあるまい。

教師を取り巻く環境整備…緊急提言踏まえた取組み徹底を通知

 リシード 2023.9.11

 ようやく文科省が中教審の提言を受けて重い腰を上げようとしているが、これまでのことを考えるとやはり期待薄であろう。なぜならここまで学校のブラック化を招いた張本人は、誰あろう政府と文科省である。

 特にかつて実施されていた教員免許更新制は教師の意欲を喪失させるうえで決定的であった。そしてその後も強要される意味不明で役立たずの官製研修の数々。これまでの「教育改革」と称する政策への真摯な反省と長く現場を混乱させ続けてきたことへの謝罪の言葉一つ見られない点に絶望的なものを感じてしまう。

 

 あたかも地方の教育委員会や学校の努力や工夫がまだまだ足りない、と言わんばかりの、あからさまな上から目線…

 

 こうした教育行政の、自らの責任を回避しようとする姑息なあり方は先頃、性加害を巡って行われたジャニーズ事務所の会見に少し似ているのかもしれない。

 敢えて文科省の通知の言葉を借りるならば、文科省自身がまさに「自分事」としての切実な認識に欠け、責任転嫁の意図を見透かされるような、他人事の文言に終始している点に気付いていない…といった批判、ブーメランを返されてしまう情けなさを私は感じている。

 

 やはりこのお役所に学校のブラック化を改善できるなどと期待してはなるまい。

 

教員不足解消へ全国調査 文科省、教委の具体策確認

   共同通信社 によるストーリー 2024.1.23

   教員不足の原因はあたかも教委の努力、工夫の不足だと言わんばかりの居丈高な姿勢がこの調査の背景に見えてこないだろうか。長い間にわたり教師による独自の努力工夫の芽を摘まみ、踏みにじり、ブルシットジョブの嵐で体力、気力、時間を教師から奪い続けた挙句の教員不足ではないのか。犯人が自分の罪を棚に上げて犯行原因をこともあろうに犯罪の被害者に捜査させようという、凄まじいほどの転倒が起きている。そもそもこの調査自体がブルシットジョブそのものだろう。

   文科省の言う事を素直に聞いていればこんなことにはならなかったはずだ…ということか。ただの罰として強制される、まったく無意味な調査を敢えて最も忙しい時期にやらされる身にもなってもらいたい。

精神疾患により離職した教員 公立の幼小中高校で過去最多の「995人」 文科省調査

 TBS NEWS DIG_Microsoft によるストーリー 2023.7.28

 2022年度における教員の精神疾患による離職者数、および転職による離職者数が過去最高を記録したという事実の重みをおそらく政府や官僚はきちんと受け止めることが出来ないだろう。

   結局は教員の不足を補うためにペーパーティーチャーの雇用促進や教員免許の無い人材の登用、教員採用試験の日程調整等による青田買いといった逆効果を招きかねない弥縫策を続けるしか能は無いのだ。すなわちこうした教職の安売り、大バーゲンセールは教職の価値をさらに暴落させ、教職離れを一層、加速させかねないだろう。

【発明】成田悠輔「価値を言語化しないとダメ」研究者が消える?すぐに成果を求

   める日本社会の壁 ABEMA Prime #アベプラ【公式】  2022/06/08  25:00

【研究者の給料】准教授で30万円は安すぎ?「日本は例外的 研究開発・人材育成に

 お金を投じてない」【西田亮介】|アベヒル

 ABEMAニュース【公式】  2023/09/25  14:01

 人口100万人当たりの博士号取得者数が日本は現在、ドイツ、アメリカ、イギリス、韓国などの半分以下、ほぼほぼ三分の一近くにとどまっているという衝撃のデータはこの20年余りの文教政策の誤りが日本経済の低迷と深くつながっていることをよく示しているだろう。それは高校以下の学校における職場としてのブラック化とだいたい並行して進んでいると思える。若者の未来をこれほどの酷さで一貫して暗く閉ざすような国家に明るい未来が訪れるはずはない。

維新の「高校完全無償化」が教育を破壊する可能性も…目先の人気取りに偏った政

   策の“2つの問題点”   文春オンライン 竹山 幸男 によるストーリー 2024.1.12

   高校授業料の無償化が一体、何を目指している政策なのかはしっかりと疑ってかかった方が良い。維新の会が持つ本質的な危険性がそこには見られるに違いないからだ。行政による教育への介入が強まることで私立高校の多様性、個性を成立させている基盤が崩れてしまいかねない点は特に憂慮される。

 教育の多様性と個性化への道は高校の場合、私立高校の取り組みに期待するところが極めて大きい。文科省以下、行政組織にがんじがらめにされて工夫の余地がわずかしか残されておらず、予算も人手も不足がちな公立高校に出来ることなど極めてちっぽけなものに過ぎまい。画一的で管理主義的な学校教育を変えたいのならば、今の日本では公立を二の次にして私学の活躍しやすい環境を整え、私学の定員を増やしていく事の方がはるかに現実的で有効だと考えるが、いかがだろう。

 貧困家庭に対する私学での授業料減免措置は今の制度の枠内で十分に実現可能なはずである。なぜ、敢えて今、「高校完全無償化」などと大阪万博の強行で今後一層財政難に苦しむはずの地方自治体が主張するのか…その真意はこれまでの維新の会の政策から見て明らかだろう。どうせ弱肉強食の競争原理をさらに大きく公教育に持ち込むことで公立高校の淘汰を進め、教育予算の削減を図るとともに学校教育への国家主義的統制の強化に努めることと私はかんぐっている。

 

・カッパ一押しの教育本「コロナ後の教育へ~オックスフォードからの提唱~」(苅谷剛彦 中公新書ラクレ 2020)

 「コロナ後の教育へ・・・」で日本の教育行政に対し「・・・エセ演繹型思考と法治主義をセットにしたアプローチでは、設計段階での欠点や欠陥を見過ごし、思った成果を上げられるかどうかを不明にしたままでも制度改革が出来てしまう。さまざまな副作用についても思慮の外に置かれる」(p.63)との苅谷氏の指摘は実に鋭い。

 立て続けに断行されてきた教育改革の発想の根幹を揺さぶるものであろう。また政治家や官僚側が常に自分達の謬見や過ちを棚に上げて学校を一方的に断罪し、改革と称する学校現場の破壊的政策をひたすら推進してきたこれまでの経緯の背景が見えてくる点で教師必読の書と考える。