◆ムック『立川談志。落語の革命家』を読み解く



★要旨



・人生成り行き、風次第。



・「芸人なんて商売は、

基本的に非常識なことを考えて、語らなきゃいけない。

常識や道徳でがんじがらめになった人間の、

心の中のガス抜きをすることで、

世間が存在を許してくれている」(立川談志)



・落語には、人生のあらゆる場所で使える、

いい文句がいっぱいある。



・ユーモアは、不幸を忘れさせる。



・司馬遼太郎は、

あるところから神格化されてしまったけれど、

本来は、「話芸」の達人なり。



・司馬遼太郎の『新選組血風録』は、

朗読してCDにしてあるけれど、

そのまま高座にかけてもいいぐらい。

講談の呼吸がある。

まさに一席の読み抜きというやつ。



・師弟とは、価値観を共有できることである、

と談志は言った。



・古い歌謡曲については、

談志とまるで戦友のように語り合い、歌った。

(立川志らく)



・談志の趣向は、マニアックである。

特に映画に関しては、古すぎて、

お客にはほとんどわからない。



★コメント

いまなお語られる立川談志。

もっと研究していきたい。




◆宮地美陽子『首都防衛』を読み解く



宮地美陽子さんは、元・読売新聞記者。

現在は、東京都知事政務担当特別秘書。



★要旨



・首都直下地震による、最悪のシミュレーションは、

以下の通り。



・首都直下地震の発生翌日、

職場や外出先から自宅への帰還が困難になった帰宅困難者が

一時滞在施設の場所がわからず、避難所にも殺到した。

収容力を超える事態だ。



・通信の途絶に加え、スマホのバッテリーは切れ、

家族らとの連絡が困難になった人々がイライラを募らせる。

備蓄の飲用水や食料は限定的で、仮設トイレは衛生環境が悪化。

感染症が蔓延することへの不安も広がった。



・さらに自宅での避難生活を送っていた人も家庭内の備蓄が枯渇し、避難所に次々と訪れる。


・支援物資やボランティアの供給には地域でバラツキがみられ、

人々のストレスも増すばかりだ。



・東日本から西日本の広範囲で甚大な被害をもたらす3つの巨大災害は、

静かに、だが確実に迫る。



・注意しなければならないのは、その3つが同時期に発生すれば、

被害は「1+1+1=3」にはならないことだ。



・単発で発生すれば生産拠点を移したり、

安全な地を求めて移住したりすることができるが、

日本全体に同時多発のダメージが広がる「大連動」はそれを許さないだろう。



・首都機能に大きなダメージを与えるM7.3の

「都心南部直下地震」など8つのケースを想定し、

発災直後から1ヵ月後までに起こり得る事態を時系列で示した災害シナリオを初めて盛り込んでいる。 



・電力や上水道といったライフラインは寸断され、

通信や交通インフラがストップ。

物資が不足し、

救出・救助や被災地支援が遅れるなど被害が長期化する可能性も想定している。



・東海から九州にかけて巨大地震が生じれば、

経済被害は2011年3月に起きた

東日本大震災の10倍超にも達すると予想される。



・大地震の襲来だけではない。

2023年3月には山梨、静岡、神奈川の3県と国などがつくる協議会が富士山の噴火を想定した新たな避難計画を公表した。



・避難の対象地域を6つのエリアに分け、

気象庁が噴火警戒レベルを引き上げた場合などの対策を盛り込んでいる。 



・ある総務相経験者は

「二つの大地震に加えて、富士山の噴火が我が国を襲えば国力は大きく減退する。

明日、生じるかもしれないと思って対策と準備を進めるべきだ」

と危機感を強める。



★コメント

あらためて、

悲観的に最悪に備え、楽観的に対処したい。





◆土屋哲雄『ワークマン式。しない経営』を読み解く



★要旨



・『ワークマン式「しない経営」』では、


1、社員のストレスになることはしない。

2、ワークマンらしくないことはしない。

3、価値を生まない無駄なことはしない、


ことで4000億円の空白市場を切り拓いた。



・経営者のマイクロマネジメントのための

報告業務で社員が残業するのは悲劇であり、喜劇である。



・任せたら決して口をはさまない。 



・任せたのに細かく管理するのはマイクロマネジメントで、

米国系企業では毛嫌いされている。

日本の一部の経営者にはこれが本業化している。



・なにごとも新しいことは一気にやるのではなく、

少しずつやるのです。 

全社でやるのが難しければ、

自分の部や課でこれだけはできるなど

細分化してちょっとずつやってみるのです。 



・残業をなくすにはまず、

経営者が自分は凡人だと宣言し、

現場にどんどん権限移譲していく。



・ワークマンでは、ストレスは一切かけませんから、

社員の仕事の質は上がり仕事も早くできる。

自分の意欲で走るから。



・誰もやらされ仕事ではやる気が出ませんが、

自分の頭で考え自分で成功も失敗も体感できると

やる気になる。



・我々はこの世から残業を撲滅したい。

晩ごはんをお子さんととらないと、

子どもたちが加盟店を引き継いでくれないから。



・親が仕事に忙殺され、

日々ヘトヘトで帰ってきたら、

誰も加盟店を継ごうなんて思いません。



・多くの会社が間違っていることで一番やりがちなのが、ノルマを課すこと。



・ワークマンで大きな成果が出たのが、

社員にノルマを課さないことでした。

社員にストレスをかけないほうがいい。

多くの経営者は逆をやります。

ノルマを課し、ストレスをかける。



★コメント

逆張りの経営方式により、

学ぶところは多い。





 


◆丸尾孝俊『バリ島アニキ。幸せ金持ち計画』を読み解く


 


 


※要旨


 


 



・人生を育む人助けの法則

従業員から支持されるためには従業員の家族化計画

「隣人に幸あれ」は万人に対して行う



・人と会うことが自分の人生の指針になる

後悔せずに置き換えて楽しみを作る

人助けというのは金の絡まないこと



・他人の幸せを考えると、自分も幸せになれる

貸せるものを所有する、その最たるものが不動産

会社のマニュアルに不満があるなら開業を目指せ



・おいしいと思って食べることが健康の秘訣

過保護に育てるよりも抵抗力を身につけさせる

寛容な心を持つ男が良い男の証



・ビジネスに必要なのは「考える」ではなく「やってみる」

見てくれよりも本質を見極めよ

1日最低16時間働き、たくさんの人と知り合う



・個人がやらないようなことをやって印象に残す

相手の弱みにつけこまず面倒を看続ける



・目指すべきはマイペースの個人事業主

勉強するよりも先に結果を出せ

人口の増減が需要を決める



・多くの人が良いと思うものを作れば儲かる

まず扱っているものが良いのは絶対条件

国も個人も責任持って行動する



・世界に恥じない日本人になるべき

「何もない」という感覚を養えば寛容になれる

小さなことでも報告すれば喜ばれる



・余裕を可能性と置き換えて考える

観察眼を持つことで儲けの仕組みがわかる

家族のために3割、他人のために7割使う



・神様は人の心の中に住んでいる

絆を深めるためには1つ屋根の下、同じ釜の飯を食え

経営者としての心構えは率先して社内外の人の面倒をみる



・女性を口説くことがビジネスの交渉事につながる

事業を増やすためには責任を託していく

従業員が増えると会社に勢いが生まれ社員のやる気につながる



・増税するよりも稼ぐ国を作るほうがサワヤカ

たとえ怠け者であっても見捨ててはいけない。

それが情け

他人を大切にしている人はどんなことが起きても強い


 



※コメント

人間との付き合い方を

あらためて考えさせられる。

やはり最後は、人間関係力だ。








◆一田和樹『ウクライナ侵攻と情報戦』を読む



★要旨



・コロナ禍の中で陰謀論のコミュニティに

ロシアは深く食い込んでいた。



・陰謀論のコミュニティの影響力は

想像以上に大きく、選挙にも影響を与えた。

アメリカ議事堂襲撃事件のような事件にもつながった。



・日本から見える景色は、グローバルノース、

それも主としてアメリカを通したものがほとんどである。

グローバルサウスは、見えていない。



・ロシアは、世界トップレベルのネット世論操作大国なり。



・ロシアのプロパガンダツールは、世界に展開している。



・ロシアは、シリア、チェチェン、ウクライナに関する、

デジタル影響工作キャンペーンを繰り広げ、

アメリカのBLMに干渉し、大統領選挙まで影響を与えた。



・ロシアは、中国と並ぶデジタル権威主義大国なり。



・どちらの国も監視システムを持ち、

ネット世論操作を行っており、

超限戦あるいはハイブリッド戦と呼ばれる、

軍事、経済、文化などすべてを兵器として、

利用する戦争を世界に対して行っている。



・ロシアの監視システムは、

中国製に比べると監視性能は劣るものの、

安価で導入しやすい。

監視機能が劣る部分を法制度などでカバーしている。



・そのシステムの多くは、

旧ソ連関係国を中心とした近隣国に提供されている。

効果的な運用のために、

法制度もロシアを真似している国もある。



・デジタル権威主義国家の特徴のひとつに、

ツールを他国に輸出することによって仲間を増やし、

影響力を増大させることがある。

中国もロシアも、デジタル権威主義ツールを

関係国に輸出している。



・中国は、デジタル権威主義ツールを

一帯一路参加国を中心に輸出、展開している。

同様に、ロシアはユーラシアを中心に輸出している。



★コメント

ロシアなどの手法を学ぶことで、解毒剤としたい。







◆北村淳『2023年・台湾封鎖』を読む



★要旨



・なぜ「台湾封鎖」なのか。



・2023年が一番の危機である中国による台湾侵攻は、

「台湾有事」や「台湾危機」と言っても構わない。

しかし、ニュアンス的に「台湾封鎖」が一番ふさわしい。



・それは中国が台湾侵攻を始めるときは、

確実に、アメリカ軍に攻撃をさせない体制を作るからだ。

それがとれない限り、台湾侵攻をすることはない。

もちろん、日本の自衛隊にもいっさい手を出させない。



・台湾が侵攻されれば、次は必ず尖閣諸島であり、

そして沖縄なのだ。

いままでは香港があったが、その民主主義は

習近平の中国に破壊されてしまった。



・日本の短期激烈戦争への防御が、台湾への防御にもなる。



・現代世界の脆弱性。

海底ケーブル切断で台湾と日本、

そして世界が大混乱に陥る。



・台湾封鎖からの全面戦争で、

日本経済の損失は、100兆円を超える。



・半導体の供給ストップで世界の損失は50兆円なり。



・台湾を中国の一省と位置付けている中国共産党政府にとって

台湾に対する軍事力行使は、中国国内の反乱勢力を

制圧するための大規模治安維持活動という大義が成り立つ。



・いかなる大義名分を掲げるにしても

中国軍による台湾に対する短期激烈戦争は、

中国側が中国自身と台湾側の状況そして国際情勢などの

タイミングを見計らって

完全なる主導権を確保した奇襲攻撃となる。



・そしてその戦争目的は、

台湾軍の長射程ミサイル戦力、航空戦力ならびに海上戦力を

無力化して反撃能力を壊滅させるとともに、

台湾政府・軍当局の指揮中枢を麻痺させることによって

台湾指導部を投降交渉の座に引きずり出すことにある。




★コメント

戦後最大級の日本における危機がやってくることは間違いない。

できる限りの備えを行いたい。







◆江崎道朗『日本占領と「敗戦革命」の危機』を読む



★要旨



・戦争は恐ろしい。

実はこの戦争と同じくらい恐ろしいのが、共産主義だ。


→そして、共産主義の脅威は終わっていない。


現在進行形の「脅威」などだというのが、

アメリカのドナルド・トランプ大統領の認識だ。



・共産主義は、自由、繁栄、人間の命の尊厳とは

相容れない政治思想である。


・日本では、東西冷戦の終了とともに


イデオロギー対立の時代は終わったかのような

「誤解」が振りまかれた。


→だがトランプ大統領は、

共産主義とその変形である全体主義の脅威が

北朝鮮、そして中国において現在進行形であることを理解している、

極めて珍しい指導者なのだ。



・なぜ北朝鮮は、こうした残酷な共産主義体制になってしまったのか。

北朝鮮の悲劇は、ソ連・コミンテルンの工作と、

先の大戦および日本の敗戦の結果、生まれたのだ。


・敗戦直後の日本こそ最大の危機だった。



→このままだと、ゼネストから人民戦線内閣樹立、

そして敗戦革命へと一気に事態は展開する可能性もあったが、

こうした動きを「インテリジェンス」と「経済」の2つの分野で

阻止しようとしたのが昭和天皇であり、

吉田茂首相や石橋湛山蔵相ら保守自由主義者であった。


・昭和天皇が立脚されていたのは、

聖徳太子の十七条憲法、さらに明治天皇の五箇条の御誓文に象徴される、

保守自由主義的な日本の姿であった。



・約600万人もの軍事力が終戦時に残されていた意味。


・重光が間接統治を勝ち取ることができたのは、

1つには皇室の権威に日本国民が従っていたこと。


第2に、重光のような保守自由主義者たちが国際法を理解しており、

その知識をフルに使ってGHQと対等に議論する力があったこと。


→そして第3に、陸海軍がまた解体されておらず、

重光の背後に巨大な日本軍が存在していたことがあった。


・降伏したとはいえ、

完全な武装解除が終わるまでは、GHQにとって日本は怖かったのだ。



・国際政治は、軍事、経済、外交、インテリジェンスといった

力によって決定していく。


そして敗戦直後は、

天皇陛下の命令に従う600万人の日本兵が存在し、

連合国に対して圧力を加えることができたのだ。


→言い換えれば、日本軍の解体が進むにつれて、

連合国、GHQの対応は傍若無人になっていく。



・GHQによる直接統治を許せば、

一方的に日本を解体される恐れもあった。

だが、そうした重光の危機感を、

日本政府全体が理解していたわけではなかった。

実はあっという間に弛緩して、

まるで平時のような錯覚に陥っていたのである。


・重光は当時の政府内のこんな雰囲気を活写している。


「耳ざわりの好き部分のみに重きを置き、

全体的に日本の運命が敵の手中に陥った、

という冷厳なる敗戦の事実を認識し、

責任を感ずるものが少なかった」



→多くの指導者たちは、

終戦になったとたんに暢気に緩みきってしまったのだ。

敗戦革命に備えるどころではなかったわけだ。



※コメント

細かい歴史をみることにより、

歴史の本質を知ることができる。

細部をおろそかにしてはならない。




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◆兼原信克『安全保障のリアル。現実主義者のための』を読む



副題→「中国は必ず台湾、尖閣、南シナ海奪取に動く」



★要旨



・21世紀、新超大国、中国の台頭がもたらす緊張は、

誰の目にも明らかになった。


第一に、中国自身が超大国化している。


第二に、中国のナショナリズムである。

2008年のリーマンショック後、

中国は西側の凋落を確信した。

大中華の自尊心が膨れ上がる。


第3に、中国共産党は中国史上初めて、

津々浦々に支配のネットワークを張り巡らせた。



・超大国化した中国が最初に狙う大きな獲物は、

日清戦争の結果、日本に奪われ、国共内戦で蒋介石が

逃げ込んだ台湾の併合である。



・台湾併合を唱えることは、中国共産党の正当性を担保する。

独裁を続ける中国共産党が権力に居続ける理由は、

「日欧米列強と蒋介石を中国大陸からたたき出し、

繁栄する強国をつくり上げたのが中国共産党である」

という建国神話が求められる。



・その建国神話の有終の美は、

台湾併合でなくてはならない。

当然、台湾の人々の自由な意思は、

蹂躙されることになる。



・3四半世紀の間、言論の府たる国会と日本政府は、

国民に対して、現実的な戦略論、軍事論を提示することを怠った。

例外といえる首相は、吉田茂、岸信介、中曽根康弘、

小渕恵三、小泉純一郎、麻生太郎、安倍晋三の

7人のサムライのみである。



・台湾有事は、日本有事である。



・居合の構えが、紛争を抑止する。



・安全の花壇があって、繁栄の花が咲く。



・台湾の武力併合は、

建国の父である毛沢東にならぶ業績を求めてやまない、

習近平主席の野心であり悲願である。



・安全保障の基本は、将棋と同じである。

まず、相手の駒揃えを見る。



・中国は、さまざまなシナリオで

台湾侵攻の能力を備えつつある。

能力が備わってしまえば、あとは、

最高指導者の意思とタイミングだけの問題となる。



・台湾侵略に現実味はある。

中国を関与し、台湾海峡の平和と安定を確保し続けることが、

日本にとって、米国にとって、

最優先の外交課題であることは言うまでもない。



・「まさか」に備えるのが安全保障である。

防衛力整備には巨額の予算と長い時間がかかる。



・米国の太平洋同盟国も、あてになるのは日豪だけである。



・まずは16万人を数える台湾軍が、

どれほど持ちこたえるかが、カギになる。

米軍の本格的来援には時間がかかる。



・台湾有事は日本有事である。

中国軍は台湾侵攻の際、

あらかじめ日本の防衛力の一部無力化を図るだろう。

尖閣諸島は、中国にとって台湾の一部である。



・南西方面で、

中国はサイバー攻撃や電磁波攻撃によって、

自衛隊が依存する通信網や電力網などの重要インフラを破壊し、

自衛隊の戦闘能力を奪ってくることも考えられる。



・佐藤首相の兄、岸信介首相が政治生命と引き換えに

改定した日米同盟は、米軍が日本を核として守りながら、

日本にいる在日米軍が日本の基地を使って、

周辺の韓国、台湾、フィリピンを守るという構図が、

基本になっている。



・台湾はいま、自由の島である。



・居合の構えが紛争を抑止する。

台湾有事は起こさせてはならない。



・台湾有事が起きれば、米軍の本格来援まで、

台湾と日本が矢面に立つ。

日本は西太平洋の出城である。



・有事が起これば、数多くの在中国日本企業も、

米国企業も、出国を拒否され、送金を遮断され、

人質に取られるかもしれない。



・日本が輸入のほとんどを中国に依存する

レアアースも止まる。



・台湾が破壊されれば、

世界の最先端微細集積回路を搭載した、

半導体製造を一手に引き受けているTSMCは、

破壊されるかもしれない。

クリーンでデジタルな未来社会を支える半導体は、

現代社会の基盤たる戦略物資である。



・孫子の兵法の中国は、敵の虚をつく。

静かに腰を落とし、柄に手をかけて、

居合の構えを見せていれば紛争は起きにくい。

ぼーっとしているとまた「予想外」の有事になる。



・最高指揮権を持つ指導者が軍に出動を命じるとき、

それをだれも止めることはできない。

誰かが最高指導者を暗殺して命令を変えない限り、

軍は怒涛のように動き始める。

軍を止めるのは、軍しかいない。



・台湾海峡紛争を抑止すべきなのは当然である。

外交努力を積み重ねるのも当然である。



・外交が行き詰ったとき、

紛争が武力紛争に転じないように、

構えているのが軍の仕事である。

最良の結果を生もうとするのが外交官であり、

最悪事態に静かに備えるのが軍である。



・なぜティックトックは駄目なのか。

入力しているさまざまな情報、姓名、生年月日、

位置情報、クレジットカードの番号が、

おそらく全部、中国のサーバーに抜かれているからだ。



・彼らはそれをスーパーコンピュータを使って

高度なインテリジェンス情報に加工できる。

ごみの山からダイヤモンドが生まれるのだ。

AIは、人間がペーパーで情報を分析すれば

数年かかる作業を一瞬でやってしまう。



・一見どうでもいい大量のデータ自身が、

人工知能のおかげで

非常に価値の高いインテリジェンスを生む。

宝の山なのである。

中国やロシアには、これらはそもそも個人情報だから

盗んではならないなどという遠慮はない。



・20年前、小泉純一郎首相が

アフガニスタンでの米軍による

「不朽の自由作戦」に対して、

海上自衛隊の護衛艦などを派遣した。

首脳間では、人の戦争に自国の軍隊を出すというのは、

相手への最大級の貸しになる。



・デジタル・インテリジェンス・コミュニティは、

世界中の国にあって、

その中核は外務、防衛、情報機関である。



・日本政府は、いつも電話連絡で「もしもし」なのだ。

さすがにファックスでのやり取りはやらないが、

もっとも危険な情報のやり取りは、ペーパーで行う。

絶対にハックされないので安心ではある。

サイバー・セキュリティの脆弱さと、

その怖さを知っているからこそ、

ペーパーに逆行するのである。



・イスラエルのベエルシェバには

世界最高のデジタル・セキュリティの本拠地があって、

世界中の才能が集まっている。



・依然として日本のサイバー・セキュリティは

少年ハッカー対策のレベルにとどまっている。

外国の軍や諜報機関のプロが突っ込んできたら、

一瞬でやられてしまう。



・デジタルの世界やAIの世界は、

民間のほうが軍より強い。



★コメント

長年、政府中枢にいた人物の言葉には重みがある。

学び取りたい。








◆池田元博『プーチンの敗戦。戦略なき戦術家の落日』を読む



副題→「戦略なき戦術家の落日」



★要旨



・ロシア史を振り返ると、

13世紀から続いた「タタールのくびき」と呼ばれる、

モンゴル・タタール支配の時代からあり、

その後、17世紀末から18世紀までの

ピョートル大帝に象徴される西欧化の時代があった。



・ウクライナ戦争がどのように終わろうとも、

長期的にみれば、「大国ロシア」の失墜、国力の衰退、

国際的な地位の低下は、避けられそうにない。

それは結局のところ、

ロシアの敗北、プーチンの敗戦を意味する。



・2022年2月24日。

ロシア軍に、ウクライナでの「特別軍事作戦」の

開始を命じたプーチンは、

数日間、長くても1週間で戦闘を終了できると考えていた。



・侵攻当初、首都キーウを含めた、

ウクライナのほぼ全域で総攻撃を仕掛けたのは、

そのためだった。



・短期決戦を想定したのは、

過去に成功体験があったからだ。

2008年8月、

同じ旧ソ連のジョージアとロシアの間で

戦火を交えた「グルジア戦争」である。



・1998年、プーチンは、

KGBの国内部門を引き継いだFSB長官に任命された。

ただし、期待された任務は、

エリツィン・ファミリーを救うための裏工作だった。



・ロシアにとって「ドル箱」である、

原油、天然ガスの主要な輸出先だった「欧州」は、

「脱ロシア依存」へと大きく舵を切った。



・2019年9月、欧州議会は、

第二次大戦の開戦80年に合わせて、

「欧州の未来に向けた欧州の記憶の重要性」と

題する決議を採択した。



・決議は、

1939年8月、ソ連とナチスドイツが結んだ、

モロトフ・リッベントロップ協定と呼ばれる、

不可侵条約と秘密議定書が、

「第二次大戦勃発の引き金となった」

と明記した。

要は、ナチスドイツだけでなく、

ソ連にも開戦責任があったと断じたわけだ。



・秘密議定書は、

ポーランド分割を含め、

東欧・バルト地域での独ソ両国の勢力圏を画定した。

ドイツ軍は、この協定を締結した翌月の9月に、

ポーランドに侵攻した。



・対する英国とフランスが、ドイツに宣戦布告した。

ソ連軍もポーランドに侵攻して分割占領した。



・こうした歴史的経緯から欧州諸国の間では、

第二次大戦の開戦責任は、

ソ連にもある、との見方が一般的になっている。



★コメント

歴史と地理から、現在の情勢を分析したい。





◆石井徹也『十代目・金原亭馬生』を読み解く



副題→「噺と酒と江戸の粋」



★要旨



・金原亭馬生(きんげんてい・ばしょう)は、

古今亭志ん生の長男として、

昭和3年に生まれた。



・まわりの志ん生への反感から、

先輩の噺家仲間による数々のイジメにあい、

人生の辛酸を嘗め尽くしてもいる。



・馬生は、志ん生を父に、志ん朝を弟とし、

江戸の粋を伝えて、早世した。



・馬生は、端正洒脱な芸風で、

日常では酒を好んだ。



・30代まではあまり注目を浴びなかった。

しかし、昭和44年、新人賞を受賞。

多くの弟子を育てた。



・絵画をはじめとする古今東西の美術全般、

俳句、舞踊などの素養が豊かであった。



・リアリズムや芸術性を志向する噺家に

伴いがちな「自己顕示欲のいやらしさ」が

全くなかった。



・「落語らしさ」「東京人らしさ」こそが、

十代目馬生の世界である。



・速記を読み、録音・録画を視聴するだけでは

理解しえない、直接その高座に接して

初めて魅力と凄さが分かる点では、

口承芸能の典型のような芸の持ち主でもあった。



★コメント

伝統芸能から学ぶところは多い。

学び続けたい。