◆池田元博『プーチンの敗戦。戦略なき戦術家の落日』を読む



副題→「戦略なき戦術家の落日」



★要旨



・ロシア史を振り返ると、

13世紀から続いた「タタールのくびき」と呼ばれる、

モンゴル・タタール支配の時代からあり、

その後、17世紀末から18世紀までの

ピョートル大帝に象徴される西欧化の時代があった。



・ウクライナ戦争がどのように終わろうとも、

長期的にみれば、「大国ロシア」の失墜、国力の衰退、

国際的な地位の低下は、避けられそうにない。

それは結局のところ、

ロシアの敗北、プーチンの敗戦を意味する。



・2022年2月24日。

ロシア軍に、ウクライナでの「特別軍事作戦」の

開始を命じたプーチンは、

数日間、長くても1週間で戦闘を終了できると考えていた。



・侵攻当初、首都キーウを含めた、

ウクライナのほぼ全域で総攻撃を仕掛けたのは、

そのためだった。



・短期決戦を想定したのは、

過去に成功体験があったからだ。

2008年8月、

同じ旧ソ連のジョージアとロシアの間で

戦火を交えた「グルジア戦争」である。



・1998年、プーチンは、

KGBの国内部門を引き継いだFSB長官に任命された。

ただし、期待された任務は、

エリツィン・ファミリーを救うための裏工作だった。



・ロシアにとって「ドル箱」である、

原油、天然ガスの主要な輸出先だった「欧州」は、

「脱ロシア依存」へと大きく舵を切った。



・2019年9月、欧州議会は、

第二次大戦の開戦80年に合わせて、

「欧州の未来に向けた欧州の記憶の重要性」と

題する決議を採択した。



・決議は、

1939年8月、ソ連とナチスドイツが結んだ、

モロトフ・リッベントロップ協定と呼ばれる、

不可侵条約と秘密議定書が、

「第二次大戦勃発の引き金となった」

と明記した。

要は、ナチスドイツだけでなく、

ソ連にも開戦責任があったと断じたわけだ。



・秘密議定書は、

ポーランド分割を含め、

東欧・バルト地域での独ソ両国の勢力圏を画定した。

ドイツ軍は、この協定を締結した翌月の9月に、

ポーランドに侵攻した。



・対する英国とフランスが、ドイツに宣戦布告した。

ソ連軍もポーランドに侵攻して分割占領した。



・こうした歴史的経緯から欧州諸国の間では、

第二次大戦の開戦責任は、

ソ連にもある、との見方が一般的になっている。



★コメント

歴史と地理から、現在の情勢を分析したい。