ということで、京都市伏見区にあります京セラ本社ビルに来てエントランスを徘徊?(不審者と見られないふうに)しておりましたが、本来の目的地たるファインセラミックス館を覗くことに。なにしろ今回の旅立ちのきっかけのひとつですしねえ。
Ceramicsという英語は、土製品を意味するギリシャ語のkeramosを語源としています。もともとは陶磁器を、最近は耐火物、ガラス、セメントを含む非金属・無機材料をさして使用されることが多いようです。そのようなことから現在では、セラミックスというものを定義すると、「セラミックスとは非金属、無機材料で、製造工程において高温処理を受けたもの」とな…っています。
本来的には陶磁器全般を指す言葉であったところが、分化してきた。とりわけ「ファインセラミックス」という言葉は、(京都セラミックが創業当時から製造していた)「電子工業用セラミックス製品は、(高品位、高機能、高精密という意味で)すべからくファイン(Fine)なものでなければならない」として京セラ創業者のひとり、稲盛和夫が使い始めたのであるということですな。
ここまでの区分けの話を図示すると上のようになるそうですが、ここまで来て「ファインセラミックス」はむしろ「陶磁器」の方の区分けであるか…と思ったり。…と、まだまだ入口部分を見ていた段階で、たった今まで静かだった館内がざわざわが到来。どうやら中国の取引先の方々でしょうか、通訳を伴ったグループがやってきたので一時退避することに。ともあれ、一般観光客までは来ないであろうものの、わざわざ海外から京セラ本社の視察に来る人たちがいるくらいですので、ここの展示も分かりやすそうでいて、実は専門的といった微妙な線を行っている気がしたものです。もっとも、NTT技術史料館を訪ねたときの「太刀打ちできなさ」感ほどではありませんでしたけれど。
ということで、振り返りも自ずと文系頭で消化できる(ということは子どもにも分かるような?)展示にばかり目が向いて…てなことになりますが、取り敢えずはファインセラミックスの何がすごいのか?その特性が整理されておりましたですよ。
六角柱の展示コーナー、それぞれの面にひとつずつ、都合6つの特長が示されておりました。
- 熱的特性:約2,000℃以上にならないと溶けたり分解しないものもある。
- 電磁気特性:電気を賭さない「絶縁性」、電気を蓄える「誘電性」、力を電気に変えたり電気を力に変える「圧電性」などを持つ。
- 生化学特性:酸やアルカリに強い。人工骨や人工関節などの医療分野でも活躍。
- 機械的特性・硬度:硬い。ステンレス鋼の3倍、4倍、それ以上の硬度を持つものもある。
- 機械的特性・剛性:変形しにくい。圧力を加えてもたわみにくい。
- 機械的特性・比重:同じ体積ならば、鉄系の金属に比べて約半分以下の重さ。軽くて丈夫。
人工骨や人工関節にも利用されるといった紹介がありましたですが、それぞれの特性を製品に活かしているようでして、熱への耐久性でいえば自動車のエンジン(当然にしてガソリン車ですが)にも使われて、まるまる全てファインセラミックス製のエンジンというのもあったのですなあ。
もともと、電気絶縁の碍子を作るところが始まりですので基本的に民生品はあまり無いわけで、個人的にファインセラミックスと聞けばとにかく硬いという点から、包丁くらいしか思い浮かびませんでしたが、展示施設の外側にはしっかり包丁販売コーナー(?)もありましたですよ(販売員は不在でしたが)。
軽さの点でも勝手がいいので自宅でセラミック包丁を使っておりましたが、都度都度自己流の研ぎを繰り返していたら、包丁が小型ナイフくらいになってしまったのは研ぎが悪いのか、はたまた硬度の点で低ランクの安物を買っていたのか…。
ともあれ、一般に京セラの民生品という点では携帯電話、スマホの方が知られておりましょうかね。ファインセラミックスの説明展示に続いて置かれてあるショールームのコーナーには、今の京セラの事業の一環に通信・ネットワーク関連分野があることが紹介されておりました。
これまた個人的には、今や絶滅危惧種とも目される携帯電話ユーザーですけれど、考えてみると使っているのは「au」ブランドですので、KDDIのもの。そもKDDIはKDDとDDI(第二電電)とIDO(日本移動通信)の合併会社であって、DDIは京セラ絡みで立ち上がっている…てなことで、改めて所有する端末を見れば「あらら、京セラ製であった…」と今さらながら。てなことで、話はすっかりファインセラミックスから離れてきましたですが、展示としてはかような「やきもの通史」も紹介されておりましたなあ。
辿って見ていきますと、デルフト、マイセン、セーブルなどなどが後発なのだよなあと。やっぱり「やきものの歴史は東洋にあり」ですかね。ま、そういっては僻目が過ぎるとして、やきものの歴史の本来を考えれば「起源はオリエントにあり」とは言えようかと。ま、人類の文明自体がそうなのですけれどね。