京都駅から伏見方面に向かう…となれば、普通は電車利用となりましょうけれど、最初の目的地(今回の旅のきっかけのひとつではあるも、テーマからはいささか外れていますが)へ直結しているのがバス路線というわけでして。京セラ本社ビル内にあるというファインセラミックス館、ここへは京都駅八条口から出ている「らくなんエクスプレス」というバスでパルスプラザ前停留所で下車するのが至近でしたのでね。

 

さりながら、「らくなんエクスプレス」という名のついたバス、いったいどんなのであるかいね?と想像をたくましくして待ち受けたところ、単なる路線バスでしたなあ。停留所の数が少ないので、確かにエクスプレスではあるにせよ…。

 

 

タクシー待ちの旅行者の方々(ほとんどは外国から)を京都駅八条口に残して、らくなんエクスプレスは数人を載せただけで出発。ひたすら南へと走る車窓から見える景色は、いわゆる京都というイメージがどんどん削ぎ落されてごくごく普通の、日本中どこにでもある町の風景になっていったのですなあ。ま、今回は「いわゆる京都」が目的ではないので、さもありなむですが。

 

およそ20分ほどでパルスプラザ前のバス停に到着しますと、目指す建物は目の前にどお~んと。1959年創業の京都セラミックという会社は新興企業といった印象があったものですが、あれよあれよという間に世界を相手にする巨大企業・京セラになっていた…。当然にその本社ビルはそそり立っておるわけですね。

 

 

かなり場違いな服装(普段、近所に買物に行くのと同じような…)ながら取り敢えずは受付に立ち寄って「ファインセラミックス館はどちらでしょう?」と。これは場所を訪ねるのが眼目というよりも、エントランスを徘徊する不審者ではありませんよというアピールのようなものですな(笑)。もちろん、同社HPの指示どおりに予約もしてありますけれど。

 

 

広々と開放的なエントランスは、下手なホテルよりもよほどそれらしいロビーになってますなあ。ところどころに彫刻やら絵画やらが飾られていて、奥の方には商談スペースが取ってある…てな具合に、受付に断りもなしにやおら入ってきて写真を撮っていたら、やっぱり「あんた、何者?」ですよねえ。ところで、企業所有の美術作品が惜しげもなく?ロビーに飾ってある一方、惜しげもある?所蔵品はまた別のところにあるようですな。

 

「いわゆる京都」のエリア(主に京都駅の北側)には「京セラ美術館」がありますので、そこを思い浮かべたりもするところながら、あちらの方は京セラがネーミングライツを持っているだけといえばそれだけで、まるまる京セラの美術館ではないですしねえ。企業コレクションはこちらの「京セラギャラリー」(本社ビル1階)の方にあるということでありますよ。

 

 

「主な収蔵品は、ピカソ銅版画347シリーズ、現代日本画、洋画、彫刻、 中国清代の乾隆ガラス、ファインセラミック茶器です」(同社HP)となれば、やはり覗いておきたいところと予約の際に申し出はしたのですが、折悪しく展示替え休館中とは…(6月1日から春季特別展が始まるそうです)。う~む、残念。

 

 

ということで(案内に従い)ファインセラミックス館を覗くべく、吹き抜けの2階に上がってきました…ですが、振り返ると奥の壁面に何やら展示ケースのようなものが。傍には厳めしい警備員が立っておりましたが、ものともせずにそちらへ向かいますと、果たして企業コレクションの一端でもありましょう、乾隆ガラスなどが並んでいたのですなあ。

 

 

「乾隆ガラス」というのは「中国・清代に作られたガラス製品の総称」だそうでして、清朝皇帝・乾隆帝からその名がとられているわけですね。展示解説によりますと、その特徴はこんなふうであると。

乾隆ガラスは、世界のガラス史の中でも、きわめて特異な技法と様式を生み出したことで知られ、その最大の特色は、素地の乳白色や不透明感色、あるいは無色ガラスの上に、青、緑、赤などの色ガラスを被せ重ねて、2層のガラスで花瓶などの器を作り、その色ガラス層を削って、レリーフ文様を彫り出し、背景の乳白素地などの異なった色ガラス素地の上に、美しいコントラスト文様を浮かび上がらせる点にあります。

 

説明を読んでいるときには「切子」を想起しましたけれど、削り出すといっても鋭角的なものではなしに柔和な文様を表しているようで。中国といえばやきものばかりを思い出しがちながら、こうしたガラス工芸もあったのでしたか。でもって、乾隆ガラスの並びにはこのようなやきものの展示も。

 

 

 

美術館のような展示の専用空間ではありませんので、外光やら照明やらが入り込みまくっておりますが、光沢ある色合いはシンプルに美しいと言えてしまう見た目を持っているのですね。表示に「す寝台もし、返信メールを受けて「Meissen DESIGN」とあるからにはマイセンの磁器に連なるところがあるのでしょうけれど、どうやらファインセラミックス製でもあるような。

 

というところで、すっかり前振りばかりで話が長くなってしまいましたが、ようやっとファインセラミックス館へ入り込んで…と言うお話をこの次にいたしたいと思っておりますよ。