吉祥寺美術館を訪ねた折、せっかく武蔵野市まで足を運んだのだからと予ていつかは立ち寄ろうと考えていた場所へ。吉祥寺駅からバスで武蔵野市役所へ出て徒歩数分、辿り着いたのはこちらでありましたよ。
基本的に木・金の午後しか公開されていないNTT技術史料館。予て折あらば訪ねようと考えておりましたので、まあ、KDDIミュージアムにだけ出掛けたとあっては片手落ちであるなということが、このほど背中を押すことにもなったのですな。
と、ところでですが、先日は電磁波がどうのこうの…と言ったりしていたわりに、KDDIだのNTTだのの企業博物館に出かけしますのであるか?という点ですけれど、もとより電磁波の利用そのものに疑義があるのではありませんで、気になるのは「どうも近頃、身の回りに飛び交い過ぎなのでは?」というあたり。こういった場所を訪ねてもっぱらの関心は、そもそもの始まりからの歴史の方ですので、まあ、それなりに整理は付いているような…。
ですが、そんな思惑のもとに訪ねたNTT技術史料館はこれまた些かの思惑違い。施設名に「技術」史料館とあることをしっかりと認識しておくべきでありましたなあ。
地下1階から地上3階までの広い展示スペースは「歴史をたどる」、「技術をさぐる」という2つに分かれて、下から上へと古いところから新しい時代へと移り変わりが示されておりましたが、技術関係のコーナーの方が明らかに広くとられている。昔の機器は何かと大きいということもありましょうけれど、技術史料館の名に恥じぬ展示であったわけですな。さりながら、(例えばですが)「ノードの技術」って何だ?と、のっけから…。
ということですので、必然的に「歴史をたどる」の見学ルートを眺める方が中心になるも、電信電話の普及史のようなところは先に見たKDDIミュージアムともややかぶるところではありますので、どうしてもNTT、すなわち昔の電電公社らしいところとなれば、こんな展示に目を向けてしまいますなあ。
実物大ではなくしてミニチュアの展示ですけれど、歴代の公衆電話ボックスです。公衆電話ボックスが登場したのは、1900年(明治33年)のことだそうですね。公衆電話機自体は先んじて、上野駅と新橋駅に設置されたということですが、電話ボックスは東京・京橋に置かれたのが第一号だということですが、デザインとしてはいかにも江戸東京たてもの園にでもありそうな。
最初は六角形であったものが、後に繋がる四角形になって登場したのがお隣。1927年(昭和2年)だそうで。そして、昭和世代に最も馴染みあるのがそのお隣(右から2番目)の電話ボックスでありましょう。そのカラーリングから「丹頂形」と言われるらしい電話ボックスは1954年(昭和29年)に登場したと。まさにひとつの戦後の象徴でもあるような。
さらなる進化系は全面ガラス張りで、これもまあ馴染といえば馴染ですな。まず最初に1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピックの会場付近で使われ、1969年(昭和44年)には全国展開されたとは、思いのほか早くからあったのですなあ。どうも記憶としては丹頂形がもそっと長く続いていたような気がしてましたが…。
そして、こちらが公衆電話ボックスの中に置かれた電話機四兄弟。左はじの、いわゆる「赤電話」は1966年(昭和41年)に使用され始めたもので、この導入にあたり公衆電話からダイヤル市外通話が可能になったのであると。それ以前は、交換を呼び出していたのでしょうなあ。市外通話用に10円玉を6枚まで導入することができたそうですよ。古い映画を見ると、硬貨投入口の近くに10円玉を積んで遠距離の電話をかけるようすがあったりしますですなあ。
お隣は1982年(昭和57年)登場のテレホンカード対応型。100円玉が使える(ただし、おつりは出ない)こととテレホンカードが使えるようになったことで、10円玉の山積みが不要になった画期的?な電話であったかと。今の若い人たちには想像もつかぬことでしょうけれど、友人(恋人?)と長電話するとあっという間にテレホンカードの度数が減っていった…ああ、懐かし(笑)。
さらにお隣は1990年(もはや平成2年です)登場、デジタル回線化に伴い、データ通信用のモジュラージャックが付いています。そして、何かとモノが小型軽量化する中、公衆電話も小さくなりました。1999(平成11年)に登場したICカード対応型です…が、この頃から時代は携帯電話へと移っていったのでしたか。
モノの小型軽量化という点では、携帯電話そのものも出たての当初は左側に見えているように大きなものであった(本体を肩に掛けて歩くような)のに、あれよあれよと手のひらに収まるサイズになっていったしまったのでしたですね。
とまあ何かと昔話が湧き起ってくるような展示の数々。これ以外にも、テレックスやFAX、ポケベルなどひと時代を画した通信技術があれこれ紹介されておりましたですよ。
結果的に技術面での展示解説はすっかり脇へ置いた形になってしまいましたですが、事前予約すればガイドツアーとして解説してもらいながら回ることもできるそうですので、リトライしてみてもいいかもしれんな…と、そのときは思ったものでありましたよ。