都立小金井公園の中にある江戸東京たてもの園を訪ねたのは、実に久しぶりのことで。

前に行ったのは何十年前であろうかと思うところですけれど、

今回はとりあえず展示室で開催中の特別展「東京150年―都市とたてもの、ひと」を

覗きに出かけたような次第なのでありました。


特別展「東京150年-都市とたてもの、ひと」@江戸東京たてもの園

2018年(すでに過ぎ去ってしまいましたが)は明治維新により

江戸が東京になって150年ということでありましたですね。

それを節目として東京の150年を建築の側面から振り返ろうというわけです。


展示の構成は

1.洋風建築がやってきた~棟梁から建築家へ~
2.都市の愉楽と住宅の発見
3.関東大震災と復興~建築スタイルの乱舞、そして市井のモダン・デザイン~
4.モダニズムと戦後復興~木造モダニズムから世界の舞台へ~
5.タワーと超高層、そして21世紀の建築表現

という具合です。


最初のコーナーはいかにも「明治」らしい雰囲気が漂いますですね。

幕末の開港以来増えた外国からの来訪者にそれらしい町の姿を見せねばならない、

また実際に海外派遣を経た日本人も増えて、貧相な町並みをなんとかせねば

外国人に侮られるとも思ったのでありましょう。


洋風建築の試みが次々と模索されるわけですが、最初期に活躍したのは

要するに江戸期以来の大工の棟梁。彼らが「擬洋風建築 」なるものを日本各地に

それこそ見様見真似で作っていくのですなあ。


築地ホテル館

展示で紹介されていたのは築地ホテル館 でして、

1868年と言いますから明治元年に建てられた外国人の宿泊所でありました。

また、1872年に建てられた第一国立銀行も紹介されてましたですけれど、

この両者の建築に携わったのが清水喜助という棟梁。


それまでに建てたことのない洋風建築を、

それも江戸の時代にはお城以外でこれほどに大きな建物は無かったのではないかという

大きさの建築物を独力で創造していったのは大したものではなかろうかと。

後に喜助は、スーパーゼネコンのひとつとなる清水建設を創業するのでありますよ。


されど、擬洋風建築はやはり「まがいもの」であって、

欧米から来た人たちがみれば「ナニコレ?」の世界でしたでしょうから、

当然にして「ほんもの」を建てねばということになりますね。

多くのお雇い外国人に活躍の場が与えられることになるわけです。


そのひとりがジョサイア・コンドル、鹿鳴館を建てた人ですが、

明治政府としては欧米からの賓客を向こう風でもてなす迎賓館、

つまりロンドンやパリにあっておかしくないような建物を期待していたところながら、

コンドルには「建築は地域の風土・文化に根差したものを」といった思いがあったようですね。


鹿鳴館外交の旗振り役であった井上馨 あたりにとっては、

擬洋風建築と同じとまでは言わないものの、「なんじゃこりゃ?」という部分があったかもです。


ともあれ、コンドルは工部大学校(後の東大工学部)の教授にもなり、

日本人建築家の育成にも力を尽くしたのでして、

そこから辰野金吾 、曾禰達蔵、片山東熊といった日本の西洋建築黎明期を支える建築家が

輩出されることになっていくのですなあ。


ちなみに辰野金吾は日銀本店や東京駅を造り、

曾禰達蔵は丸の内の「一丁倫敦 」、慶応義塾大学図書館の建設に携わり、

そして片山東熊は東宮御所(現在の迎賓館)を設計したという人たちでありますよ。


…と、かようなペースで5つのコーナーを全て書いていきますと長編化必至ですけれど、

だんだんと駆け足で進むことを目しつつ、今日のところはこのへんで。