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 絶対音感の人を除いては通常、人間の聴覚は低い音を弱く弾くと実際の周波数よりも高く感じる。逆に、高い音は弱く弾くと実際より低い音だと感じる。そこで、優れた調律師は低い音はより低く、高い音はより高く調律している。
 軽い低音を出したいのならより優しく弾くことが望ましく、重い低音を出したいならば強く弾くことが望ましい。高音においては、重い高音を出したいのなら優しく弾き、甲高い高音を出したいのなら強く弾くことが望ましい。

 あまり触れられることのない話題だが、このことは頭に叩き込んでおいて損はない。高音と低音では逆の減少が起こるからプレイヤーの頭の中で混乱が起こることも考えられる。以上のことは特にシンプルな曲を弾きこなす時に役に立つ。

 今言ったことを逆手に取って調律することも面白い。強弱をより広げる調律方法や、それを和らげる調律方法があることに気が付くはずだ。
 スピーカーの振動板は面積が広いほうが低音が出やすく、面積が狭いほうが高音が出やすい。
 低い音のほうが波長が長いからだ。

 このことはマイクロフォンも同じだ。
 バスドラム用のマイクロフォンの中には口径が直径16センチにもなるものもある。

 面積が大きいマイクで収録すればイコライザーで低音を上げなくとも重低音が得られる。電気的に低音を増幅した音は位相差を生ずるが、この方法を用いれば位相差を少なくすることができる。位相差が少ないことにより、豊かで、かつ引き締まった音を収録することができる。

 しかし、大型振動板を持つマイクロフォンは値段も高価でなかなか手が出ないものだ。そこで、スピーカーをマイクロフォンとして使う方法がある。大型のウーファーの末端を変換プラグでピンにして、それをミキサーなどに突っ込むのだ。
 もともと、マイクロフォンとスピーカーの機構は同じである。スピーカーをバスドラムにくっつけてマイクロフォンにすればよいのだ。
 30センチをこえるウーハーを使えば、高価な16センチマイク以上の性能さえ望めるというわけだ。
 ただし、スピーカーを壊してしまわないように注意されたい。
 最大出力50ワット 歪み率0.5%

 というスペックのアンプがあるとする。

 通常、スペックに表記されている歪み率は、1,000ヘルツの正弦波を歪み率系で測ったものである。
 1000ヘルツとは1秒間に1000回の空気の粗密波である。
 人間の耳は20ヘルツから20,000ヘルツまでの正弦波を感知するというが、その全ての帯域において歪みが0.5%を下回るわけではない。もしかしたら、1Wの時点で既に大きく歪んでいる音域があるかもしれないのだ。だから、スペック上の歪み率の表記は目安にしかならない。
 もちろん、詳細な歪み率カーブを表記しているモデルもあるが、メーカー側も公表しないことが多い。

 もうひとつ知っておきたいことがある。スペック上での歪み率の数値は、スピーカーを接続したときのものではないということだ。普通、歪み率を測定する時は、スピーカーのかわりに4Ωか8Ωの固定抵抗器を接続している。
 実際のスピーカーは音域によって抵抗値が違う。8オームのスピーカーでも低音と高音では60オームくらいになっている。

 例えば、50ワット/4Ω 25ワット/8Ω 12.5ワット/16Ω
というアンプがあるとする。実際のスピーカーは低音や高音においては抵抗値が4倍ほどは上昇している。すると、どうだろう。実際にスピーカーを接続すると数ワットしか出力できない音域があることに気づくはずだ。
 
 スピーカーが2台になれば倍の音圧が出る。また、歪みは半分になる。
 音圧は3デシベルで倍のエネルギーだから、最大音圧が100デシベルまで出せるスピーカーが2台あれば、103デシベルまで出せる。
 スピーカーを1メートル客席に近づけることが可能ならば、音圧が3デシベルあがる。スピーカーの台数は半分ですむ。

 近年のスピーカーで最大音圧レベルがスペックに明記されていることは少なくなってしまった。だから、技師が耳で確認するしかない。

 能率と対入力から最大音圧レベルを推量することも難しい。スピーカーの能率が1ワットあたり100デシベルと明記されていたとしても、2ワットで103デシベルの音圧が得られるとは限らないからだ。もしかしたら103デシベルの音圧を得るためにアンプから50ワットの出力が必要なスピーカーかも知れない。

 技師のカンと耳がもっとも重要だ。
 技師が実際の音を聞いて、歪んでいると感じれば出力の大きなアンプにするか、スピーカーの台数を増やすかを決定する。あるいは、ボリュームを絞って音圧を上げることを諦める。

 歪が出たときに、それがスピーカーの振動板の限界によって起こった歪みなのか、あるいはアンプの増幅限界によって起こった歪みなのかを聞き分けることは難しい。生まれもった感性と知性の両方が必要だ。

 音圧は3デシベルで2倍、振動板の面積が倍になれば音圧が2倍、そして面積が倍になれば歪みは半分ということだけは覚えておきたい。

 
 少しの電力で大きな音を出せるスピーカーを、能率の良いスピーカー。大きな電力を送らないと大きな音が出せないスピーカーを能率の悪いスピーカーと言う。

 一般的なスピーカーの能率は1ワットあたり85デシベルから100デシベルくらいである。

 能率85デシベルのスピーカーと、能率100デシベルのスピーカー。両者のスピーカーには15デシベルの開きがある。数字にすると僅かな差に感じるかもしれないが、実はこの両者のスピーカー、その音圧比は32倍にもなる。
 デシベルという単位は3デシベルで量的には2倍になるからだ。

 一般的にロックのコンサートでは120デシベルくらいの音量が出ると言われている。
 この120デシベルの音圧を出すために、能率100デシベルのスピーカーならば、ざっと計算して120ワットくらいの出力が出せるアンプを必要とすることになるわけだが、能率85デシベルのスピーカーで120デシベルの音圧を出そうと思ったら、なんと2000ワット以上のアンプが必要になる。

 そういうわけでスピーカーの能率を知ることは、アンプの出力を知る以上に重要である。


 山びこのような反響音をエコー、あるいはディレイと呼び、お風呂の中のような残響音をリバーブと言う。

 一般的に反響するまでの時間が長いものをエコー、短いものをディレイ、さらにディレイが何重にもかかったものをコーラスという。

 反響音や残響音を作り出すエフェクターを、何台も直列に繋げていくと、やがて音の鮮度は落ちてしまう。どんなに美しい残響を付加しても、死んだような音になってしまう。
 できれば、エフェクター(*1)は並列に接続し、ミキシングマシンで合成するのが好ましい。

ミキサー

↑ミキシングマシン(ミキシングコンソール)

 その場合は、エフェクターを通す前にプリアンプ(バッファーアンプ)で押しておくと良い。プリアンプで押しておけば、ケーブルを何メートル伸ばしても高音が劣化しない。また、エフェクターを沢山つないでもノイズがのりにくい。


*1:エフェクター
 エフェクターは、日本では何らかの効果(エフェクト)(英: Effect)を与えるもの、ここでは特に音響効果を与える目的で使用される機器のことを指す。和製英語であり、英語では(effects unit (pedal))エフェクツユニット、エフェクツペダル、俗称ではストンプボックス(stomp box)などと呼ばれている。
 電気楽器や電子楽器など電気信号に変換された音、あるいはマイクロフォン(マイク)で集音された音声に対して、スピーカーまたは録音媒体に至るまでの途中に挿入して一定の効果を与え、さまざまな音に変化させる。

*2:ダイナミックレンジ
 ダイナミックレンジとは、識別可能な信号の最小値と最大値の比率をいう。信号の情報量を表すアナログ指標のひとつ。写真の場合、ラティチュードと 同じ意味で用いられることが多い。ここでいうダイナミックレンジは音の大小のの比率で、単位はデシベルを用いる。



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 大きいレコード会社にはリバーブルームという部屋がある。

 まず、スタジオマイクで周音した音を電気に変え、リバームルームのアンプに送る。リバーブルームの部屋の中にはスピーカーがあり、送られた電気信号を音に変換して室内で再生されるようになっている。それをマイクロホンで再び周音し、その音を電気に変え、ミキサールームに送っている。
 最後にミキサールームに送られた音と、原音とをミクシングして(混ぜて)残響音を調整している。

 リバーブルームの中には角度が変えられる反響板がいくつか設置されている。この角度で響きを調整することができる。

 この反響板はミキサールームにあるツマミを回すことで遠隔操作される。大変大掛かりなリバーブ装置であるが、今でもメジャーレーベルの録音現場では主だって活用されている。

 このような装置がいまだに主流として活用されている理由は、デジタルではまだ計算しきれない倍音が、自然界に存在しているためだ。

 更に重要な問題は、人間の耳は反響音を脳内でカットしているために、人間の記憶に近い音を2台ないし、6台のスピーカーで再現する事は不可能であるためである。

 これは写真の逆光補正にたとえると分かりやすい。

 逆光を背景にした人物の顔を人間が識別できるのは、人間が脳内で逆光を補正するからであるが、何も補正を施していない、実像に忠実に撮影された人物の逆光写真の顔を識別することはできない。人物像は真っ黒に、背景は真っ白に、まるで影絵のような写真が見えるだけである。
 どういうわけか、実像に対しては人間の脳は補正がかかるというのに、写された写真に対しては人間の脳は補正を掛けられないのだ。ここに写真技術の悲しみがある。この悲しみのおかげで、撮影家は一生懸命脳内の像に近くなるように被写体に工夫を凝らして逆光補正をしなくてはならないのである。

 写真や映像における逆光補正の手法には2種類ある。
 ひとつは画像をコンピューターに取り込んで電気的に補正する方法。もうひとつは、被写体に(人物に)レフ板などを使って光を当て、明るい部分と暗い部分との明暗の差を和らげる方法だ。

 ファッションモデルやテレビの撮影シーンなどを目撃したことがある人ならご存知かと思うが、プロの撮影者は今でもレフ板を使って光を調整している。そして、最終的に刷り上った写真や映像が、人が脳で見ている像や風景に近いように、自然に写るよう、事前に工夫を施している。 あるいは、脳と実像が一致しないことを逆手にとって、撮影技術を駆使して人物の内面性を引き出すような写真を撮ったり、実像とはかけ離れた心象風景のような風景を作り出したりもしている。

 今述べたような撮影の現場で行われているようなことが、録音の現場でも行われている。 レフ板やライティングの機能がコンピューターの補正ソフトで再現きないように、リバーブルームもデジタル・リバーブには簡単にシフトできないのが実情のようだ。
 スプリングリバーブというマシンがある。
 1950年代に登場した残響装置であるが、仕組みは簡単で、音声ラインにスプリング(ばね)を張って、その両端に発信機と受信機を付ける。発信機はスピーカーのようなもの、受信機はマイクのようなものと思っていただけば分かりやすい。
 ばねを使って音声を物理的に揺らすというもので、濡れたような独特の音がする。

 おそらくもっとも有名なスプリングリバーブは、米フェンダー社が1950年代に世に出した『フェンダー・リバーブタンク』だろう。重量が5キロ以上と、今日のエフェクターと比べると大きく見えるが、これでも当時としては画期的に小型であった。

 このリバーブシステムはフェンダー社の多くのギターアンプに搭載され、一大エレキブームを起こした。しかも、なんとこのモデル、いまだに現行品として市販され、今でも多くの録音スタジオで使われている。

 フェンダーリバーブタンクの残響音はウエットでありながら、きわめて爽やかで、ベンチャーズやビーチボーイズをはじめとするサーフィン系ロックミュージシャンに愛用されてきた。

 音の爽やかさの正体は、ばね自体から発する鈴なりのような付帯音によるもので、さらにその付帯音がダイナミックレンジを擬似的に上げる効果もはたしており、ダイナミックでパンチの効いたサウンドを作り出している。

 このリバーブタンクの音を擬似的に再現するためには、少なくとも5種類以上のエフェクターを複雑に結び、2台のミキサーで原音と合成させる必要があったが、近年、BOSSというメーカーから、フェンダーリバーブタンクの音を擬似的に再現できる小型のエフェクターが発売された。

BOSS FRV-1 '63 Fender Reverb という製品名で、通常のフットスイッチ式のエフェクターである。音の完成度は極めて高く、しかも小型で使いやすい。なにより足で踏んで音が変えられる。ライブの現場で大いに活用されていることだろう。


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 スプリングリバーブで他に有名なものはというと、独AKG社のBXシリーズというモデル群をあげることができるだろう。これもアナログ式のリバーブとしては小型で、成人男性ならば持って移動することができる。 一般のユーザーが手にできるものではないが、20世紀の音楽を背負ったリバーブマシンとして紹介しておきたい。
 このリバーブボックスは、ステレオの左右のチャンネルにたすきがけにスプリング(ばね)を張る仕組みになっており、広がりのある残響音を作り出すことができるようになっている。
 スプリング式としては、鈴なりなどの付帯音は極めて抑えられており、落ち着いた音色を出すことができる。電子式のリバーブでは得られない高級な音で、女性の声を録音しても声が老けにくい。
 浅掛けの状態では、プレート式よりも音に近接感があり、耳元で吐息を吹きかけられるような官能的な音を聞かせる。


http://www.youtube.com/watch?v=4aD9dk_AiB8
 
 
 お風呂で歌っているような残響音をリバーブといい、それを作り出す装置をリバーブレーターという。
 エコーは英語で山彦という意味で、カベなどに反射した音が時差をつけて反響することで、それを作り出す機械をディレイ・エフェクターなどと呼ぶ。
 勘違いしやすいのがエコーマシンであるが、これはリバーブマシンと同意語である。紛らわしくなってしまったのは、まだ残響と反響の定義が不明確な時代に、エンジニア達が機械に名称を与えてしまったからである。
 紛らわしいので、タイプ別に分類したい。

リバーブ群
・リバーブレーター
・スプリングリバーブ=スプリングエコー
・鉄板エコー=プレートエコー=プレートリバーブ
・エコーチェンバー=リバーブルーム=エコールーム
・デジタルリバーブ

エコー群
・ディレイ・エフェクター
・コーラス・エフェクター
・フェイズ・シフター
・ダブリング・エフェクター

 リバーブは残響、エコーは反響であるが、総合して空間系と呼んだりすることもあるようだ。

 現代の録音ではリバーブとエコーを同時にかける事が多いが、かけ方には注意が必要だ。

 例えば、女性の声にディレイやコーラスといったエコーを掛けすぎると、実際より声が老けて聞こえる。そもそも録音において声が若く聞こえるようになるということはなく、ほとんどの場合で声は歳をとって聞こえてしまう。
 刺身を冷解凍すれば鮮度は落ちるが、それと同じである。

 特に著しく鮮度が落ちるのは子供の声、次に若い女性である。理由は波形の短さにあるが、ここでは難しい説明は割愛する。

 録音による加齢現象を抑えるには、ディレイやコーラスをかけ過ぎないことだ。加齢現象を避けて響きを得るならばエコーよりもリバーブが良いだろう。

 男性の場合はディレイやコーラスといったエコーが効果的になる。こもりのない独特のスカッとした音質になるからだ。この場合はリバーブをかけすぎないほうが良い。

 アメリカの有名なポップグループのカーペンターズでも、女性(カレン)の声にはリバーブ系、男性(リチャード)の声にはエコー系を中心かけている。
 オーディオの世界には長く、再生音を原音に近づけることを善しとし、原音から遠ざかった音を悪とする風潮がある。
 そこには2重の過ちがある。
 まず第一の過ちは、原音と同じ再生音を得ることは不可能であること。
 第二の過ちは加工された音による音楽を否定していることだ。

 演劇にしても、映画芸術は舞台演劇の複製品ではないはずだ。映画芸術と舞台演劇が、その芸術性において異なる性質を有している事と意味を同じくして、レコード芸術は生演奏とは、また異なった性質の音楽性を秘めている。

 現在のオーディオ評論が、生音と再生音との比較に終始していることは悲しむべき事実である。それは、間接的に音質を評論するスペースからポップ・ミュージックを追放している事に他ならない。
 ポップ・ミュージックの音は加工されているから、その音質には議論の余地がないという意見も横行しているが、結果として、それがポップ・カルチャーへの抑圧として働いている。

 考えてみれば、抑圧とポップ・カルチャーとは大きな関連性がある。ポップ・カルチャーおよび、ポップ・ミュージックの本質は、本能的な抑圧を解放することだとも言えるからだ。

 抑圧(よくあつ、独: Verdrängung)とは、『自我を脅かす願望や衝動を意識から締め出して意識下に押し留めることであり、意識されないままそれらを保持している状態である。精神分析において想定される自我の防衛機制のうち、最も基本的なものと考えられている。』

 
そういう観点から眺めてみると、ポップ・ミュージックがオーディオ業界からの抑圧を受けることは免れないことなのかもしれない。

 さて、ポップ・ミュージックにおける音質表現は、原音の復元性の追求ではないことは、既に説明の余地もないだろう。
 では、いかにして、その音質を評価するかということについては、ポップ・ミュージックの再生音の評価において、その再生音の動きがリスナーの感情をどのように動かしたかという事を評論するための一つの基準とすることだろうと思う。
 その場合の、論文は以下のような流れで書かれることになるであろう。

 ①まず、評論者が、あるレコードの性質について、自分の意見を述べる。そのレコードがどのような音楽性を有していて、また、どのような社会的な影響を与えたか、あるいは、与える可能性があるかなどについて記す。

 ②例えば、甲という再生装置と、乙という再生装置でそのレコードを聞き比べた際に、評論者の感情が、音の動きに対してどのように動いたか、その違いをそれぞれ述べる。

 ③評論者が複数の再生装置によって聞き比べた結果、気づいたことを述べ、改めてそのレコードの性質について考察する。

 以上の①~③の流れに従って評論する習慣をつければ、難しく考えることなく素早く簡単にポップ・ミュージックの評論記事を書き上げることができると思う。ポップミュージックの愛好家も、クラシックファンと同じように、よりよい音楽を知りたい。真に音楽的な体験がしたいと感じているはずだ。