増幅素子(音を大きくする部品)に送られて来る電気信号、つまり音声が大きすぎると、電気信号は歪んでしまう。これを逆手に取ったのがエレキギターのアンプである。
ビートルズはレボリューションという曲の中で歪んだギターのサウンドを作るためにプリアンプを直列に接続し、2代目のプリアンプの動作を飽和させた。
近代のギターアンプやエフェクターは小さな電気信号、つまり音声でも増幅素子が歪み出すことができるように、素子を動かすために送る電気量を少なくするなどの工夫がなされている。
ちなみに、この増幅素子に送る電気を波立たせるとトレモロ・エフェクターになる。
増幅素子には主に分けて、真空管とトランジスターがあるが、素子の違いによって歪みの成分が違う事をご存知だろうか。
真空管の歪みは音量に対し、ゆったりと歪みを増していくが、トランジスターの歪みは、ある音量に達すると急嵯に歪む。これが音色の違いになる。
多くのギタリストが真空管式のアンプを好んで使用しているのは、真空管のもつ美しい歪みのカーブが演奏をより有機的にさせるためだ。
ただし、真空管にはデメリットがある。一つはノイズが多いことだが、なによりも具合が悪いのは、電力を食うことだ。
最近は9V電池や12V程度のACアダブターで動く真空管式エフェクターも存在するが、真空管という素子は、もともと数百ボルトで動作する代物である。そのようなエフェクターでは、美しいがパンチのある歪みが出せないというのが現状だ。
パワフルで、しかも美しくギターの音を歪ませるためには、大きな電源トランスが必要なのだ。
歪みのかかったギターサウンドも、歪ませる部分により音質が異なる。
ギターアンプを歪ませる場所は
・エフェクター
・プリアンプ(コントロールアンプとも言う)
・パワーアンプ(メインアンプとも言う)
・スピーカーユニット(音が出る部分のことである)
の4種である。
たとえば、マーシャルやメッサブギーが発売しているギターアンプの歪み成分は、プリアンプの増幅素子*によって作られていることが多い。(*増幅素子:音を大きくするための電気部品)
スピーカーを駆動するためのアンプをパワーアンプというが、プリアンプはそのパワーアンプを駆動するためのアンプである。
プリは英語で“事前に”という意味だ。またプリアンプは、音質をコントロールするという意味から、コントロールアンプとも呼ばれている。
ギターアンプの場合、ほとんどの製品がプリアンプとパワーアンプが合体した総合アンプであるが、マーシャルの場合プリでしっかり歪んだ音を作っておいて、パワーアンプは純粋に増幅するという考え方だ。
フェンダーのギターアンプはパワーアンプで歪んだサウンドを作るものが少なくない。したがって、音量を上げないと歪が得られないが、パワーアンプによる歪みは、スピーカーユニットから帰ってくるの逆起電力を伴い独特のサウンドが得られる。
パワーアンプの歪みはスピーカーの歪みも伴っているというわけだ。搭載しているスピーカーユニットの諸特性の違いによりそれぞれ異なった歪みが得られる。
”クランチサウンド”と呼ばれるものの多くは、パワーアンプの歪みによって得られたサウンドか、あるいは、それを模倣したサウンドを指す。
ローリングストーンズはパワーアンプで歪んだサウンドを作るバンドである。エフェクターは通さず、パワー部のボリュームは開放に近く、プリ部のゲインはほとんど上げない。
録音時は田舎のだだっ広いスタジオを借り、ライブ並みの大音量を出し、それをマイクで周音しているそうだ。
エフェクターはプリアンプに行く前に、音質を変化させる道具である。プリに比べるとノイズに弱く、供給される電圧も9V程度であるため、回路が制限されるが、様々な音質を手軽に得られる。
↓フェンダーのデラックスリバーブはパワーアンプ部分で歪みを作るギターアンプである。ゲインはなく、ボリュームだけが付いている。BBキングはこのアンプをフルボリュームにし、ギター側のvolumeだけで音量調整している。
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生で鳴らせば蚊の鳴くようなスカスカな音しか出ないエレキギターも、アンプを通せば堂々としたサウンドで鳴り響くものだ。
つまり、我々が耳にしているエレキギターの音色は、原音を忠実に増幅した音ではないということ。すなわち、それは歪みである。どんなにクリーンな澄みきった音でも、たとえ青空を連想させるような音だとしても、原音とは大きくかけ離れた音が出ているわけだ。音響工学的にはこれも歪みである。
つまりは多かれ少なかれエレキギターの音色は歪んでいる・・・というわけである。
ピュア・オーディオのファンは驚くかもしれないが、ギターアンプには実に多くの製品に真空管が使われている。それは、多くの人が、真空管のほうが効果的な歪が得られると考えているからだ。
真空管とは、音圧を上げるための電気部品のことだ。初期のラジオの頃から使われている原始的な増幅素子である。
通常のアンプで使用されている増幅素子には、安くて特性もいいトランジスターが使われている。 しかしながら、ギターのアンプという代物は、高級になればなるほど、特性が悪く、しかも、カタチも大きく、消耗の激しい真空管を増幅素子として使っているのだ。
歪みは場合によっては音楽に幸運をもたらす。しかし、勘違いして使うと不快でしかない。次回は少し掘り下げて歪みについて考えてみよう。
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同じ周波数特性*1を持つ2つのアンプ*2を、同じスピーカーで鳴らし比べても、どういうわけか低音の量感や高音域の量感が違って聞こえるものだ。
極めて平坦な周波数特性を持つ2つのアンプを比較再生しても、再生音が平坦に聞こえるとは限らないのである。
場合によっては、電線を変えるだけでも聴感上の周波数特性が変わったように聞こえる。
低音や高音の量感が変わったように聞こえるが、特性に変化はない。原因は諸説あるが、これと言って決定的なものはない。
人間の聴覚は時にすさまじい。我々人間の脳は、いまだに解読不能な点が多い。
聴覚は視覚ほど記憶力に秀でていないが、時間軸に対する反応は視覚以上である。
人の視覚は一秒間24コマで満足するが、聴覚は1万コマでも満足しないからだ。
音響装置には感覚的な部分と、頭脳的な部分が互いに混在している。
悲しいことに音響の良し悪しは、野球の成績のように数字で証明することができない。それは、また、音楽そのものにも言えることだ。
よい音楽を奏でるためには、その事をまず頭に叩き込んでおかなければならない。
音作りで頭が先行すると、先入観が強くなるあまり、感覚が育たなくなる。先入観というものは、いけない、いけないと思っていても付いてしまうものだ。
また、感性が先行しすぎる事も危険である。感性を重んじるあまり、印象のよい物に対しては、あばたもえくぼになり、印象の悪かったものに対しては不当なほど低い評価を下してしまうようになる。
智に働けば角が立ち、情に棹差せば流される。この世界は、高級品で全てを固めれば人を感動させる事ができるほど簡単ではない。よい音楽を奏でるには、中庸であることが肝要だ。大いに悩みたい。
(*1) 周波数特性:低音から高音までの音圧をグラフにしたもの。
(*2) アンプ: ここでは、電気を使って音を大きくするための装置のこと。
先日の記事の中で、歪み(ひずみ)には種類があり、それぞれ音質が異なるという話をした。
今回は、歪みの種類と性質について考えてみた。
大きく分けて、歪みには、偶数次歪と奇数次歪とがある。
一般的に偶数次歪は耳に心地よく、奇数次歪は耳障りな音がするというが、はたして本当だろうか?
偶数次歪( ぐうすうじひずみ)とは、アンプ増幅の際、元の音に対して付加される、2倍、4倍、8倍etc...の波長を持つ偶数倍音の歪み成分である。
例えば、音叉でドの音を鳴らし、それをマイクで集音し、アンプで増幅し出力したとき、ドの音に合わせて高いドの音が検出されたとする。ここでは、アンプが2次歪が発生しているという事が言える。
奇数次歪(きすうじひずみ)は、アンプ増幅の際、元の音に対して、3倍、5倍、7倍etc...の波長を持つ歪み成分である。ドの音をアンプに入力し、ソの音が同時に検出されたら、そのアンプは3次倍音が発生しているという訳だ。
そもそも、楽音自体が倍音のかたまりである。
クラリネットの音波は耳ざわりといわれる奇数次倍音を中心に構成されているが、すぐれた演奏家はこの楽器を用いてまろやかな心地よい音を奏でる。
フルートは耳に心地よいとされる偶数次倍音が多いが、演奏者によっては耳ざわりな楽音を奏でる。
どうだろう。奇数次歪とは耳ざわりな音だとは一概に言えないようである。
残念な話だが、アンプの歪み成分を解析して人間の脳がどのような反応を示すかという事まではアンプのカタログには記載されていない。
カタログでは、ただ単に歪み全体の歪み率が記載されている程度である。
結局、アンプ選びは自分の感性に従うしかないようだ。
音の質、音の動き
音響愛好家や演奏者は、音の質を求めていくと必ず、あるカベにぶち当る。それが「音の動き」という概念だ。
これは楽器選びにも、機材選びにも共通している。
通常、音の良さと言うと、音の質感の美しさをあらわすことが多い。音の滑らかさや、硬さ、柔らかさについて、あるいはステレオ再生(*1)で再現される楽器の定位(*2)や、音場空間(*3)の広さ、あるいは奥行き感について。
しかし、それは音の表面に現れている些細なことに過ぎない。真に音楽的な体験を求むるには、リズム感の移ろい や、演奏者の感情表現の移ろいに焦点をあて、時間を追って観察しなくてはならない。
我々が、「音の動き」というカベにつまづくのは、リズム感の良し悪しを知るためには、それを判断する人がリズム感を持たなくてはならないこと、あるいは、音楽の世界観を観察するには、それを判断する人の想像力を育まないとならないこと・・・などを必要とするからである。
プロのミュージシャンでもない限り、出来るだけ非言語的な判断基準には目を背けたくなるものだ。
ところで、滑らかな音を作り出すいい方法がある。音の強弱を平均化させるのだ。
すると、音は滑らかになる。
ただし、音の強弱を平均化するということは、その分楽音のリズム感をも平均化してしまうことになる。
リズムのアクセントが分かりづらくなり、シンコペーション(*4)を感じにくくなるからだ。
ソフトフォーカス(*5)で写された美女に生々しい色気がないように、単に滑らかな音質というだけでは、音楽はつまらなくなりがちだ。
そもそも我々人間の神経というものは、強い音はより素早く、弱い音は、より時間をかけて脳に伝達されるという特性を有している。すぐれた演奏者は、このような人間の脳が起こすタイムラグ(*5)を無意識的に利用し、巧みにリズムやビートを作り出しているものと思われる。
もし、あなたが何か新しい楽器を買うとき、あるいは、新しい音響装置を買うとき。そのときは、ぜひ音の芯や表面ばかりに気をとらわれる事なく音の動きにも着眼されることをのぞみたい。
*1:ステレオ再生
左右2つのスピーカーで音声を再生する方式、左右の音圧差で楽音の位置が特定できるシステム。
*2:定位(ていい)
音響用語である。ステレオ再生における楽音の位置のこと。一般的にオーケストラでは左側に高音楽器、右側に低音楽器が定位する。
*3:音場空間(おんじょうくうかん)
ステレオ再生で音の波形の時差によって、部屋やホールなどの空間の残響が再現される。これを音場と言う。音響用語である。期間雑誌stereo soundの記者らが考案した造語。
*4:シンコペーション
弱伯を強く奏でる演奏方法。ジャズのフォービート、ロックのエイトビートなどは、シンコペーションしたビートである。
*5:ソフトフォーカス
写真・映画などの撮影で、画面に柔らかい印象を与えるため焦点をぼかすこと。軟焦点。
↑ソフトフォーカスに撮影された写真
サンスイのアンプは筆者が音の動きがいいと感じるアンプの一つである。
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4312マーク2は、音楽におけるシンコペーションの移動や、音の強弱をしなやかに再現してくれるスピーカーだ。
ボーカルとギターについては、同社のトップモデルでも再現できない独特な色気を放つ。
特に白塗りの30cmウーハーの設計が素晴らしい。このウーハーだけでも数十万円の価値はある。
ウーハーダンパー組織が適度に柔らかく、現代スピーカーによく見られる無駄とも思われる、対入力設計の音質的悪害を受ける前の設計だ。
対入力は40Wしかないが、何台もスタックしなくとも、たった2台で驚くほどクリアーな爆音が出せる。
大量生産品で価格はリーズナブルだが、使いこなしが難しい製品でもある。このスピーカーを使って美しい音で爆音を出すには、ワット数が少なく、高次高調波歪の少ないアンプを使う必要がある。
既にJBL4312マーク2を所有していて、コンポーネントのセッティングに満足しておられない方には米国マッキントッシュ社のMC240という真空管パワーアンプをオススメしている。
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MC240パワーアンプは真空管式であるが、パワーを出しても、低歪みで働く。出力が40ワットと抑え気味だから、心置きなく爆音が出せる。その音質には洗練された風格が漂い、楽音にはムダな動きがない。
どういうわけかオーディオの世界では音の安心感や安定感ばかりが話題にのぼる。しかし、私はつねづね音の不安感の再現性こそ、音楽を構築する上で重要なファクターだと感じている。
私はシングル構成(*1)のパワーアンプ(*2)を好まない。それはテンションノートが上手く響かないと思うことが多いからだ。テンションノートとは和音の響きに緊張感を与え、かつ和音進行を阻害しない音のことだ。例えばドミソの和音にレの音を足すとCナインスという独特の緊張感をもった和音が出来る。この場合レの音がテンションノートである。
シングル構成(*1)のパワーアンプは偶数倍のひずみ(*3)が多く、耳に心地よい歪が付くという。耳に心地よいのだから、聞けば心地よい音がする。
心地よい音を聞かせると圧倒的多数の人が、その音をいい音だと言う。だから、それはいい音には違いない。
私もそのような音に不快感を感じない。だから、その音を良い音だと言わざるを得ない。しかし、演奏者としての立場から言わせてもらうと、心地よい音ばかり出るアンプや、ホールは困りものだ。不安感や緊迫感を十分に表現できない。
ここに聴取者と演奏者の意識の乖離があるかも知れない。
偶数次歪(*3)の多いアンプと、奇数次歪(*4)の多いアンプ。どちらがいい音のするアンプなのか。そして、世に言う“いい音”が、本当にあなた音楽にとっていい音なのか。ぜひ一度考えてみてほしい。
緊迫感と安堵感の対比に秀でていると感じるアンプとして、私は上杉研究所が発表している真空管式パワーアンプに信頼を寄せている。
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音質は中庸を得ており、プリアンプによって変幻自在である。音の動きに対してはすこぶる敏感で生々しい。肩の力が抜けた玄人好みの音だ。
安全な設計だからギターアンプにもオススメである。垢抜けした印象や、大御所っぽさが出せると思う。質のよいギタープリアンプなどを噛ませれば高級ギターアンプの更に上を行くハイエンド・ギターアンプが作れる。
上杉研究所では、ギターアンプにも使用しやすいモノーラル構成のパワーアンプもラインナップされている。
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使用にあたっては、RCA←→フォノの変換プラグを使えば良い。
↓プラグは、インターネットのサウンドハウスで100円ほどで購入できる。
http://www.soundhouse.co.jp/shop/ProductDetail.asp?Item=233%5EAPR212%5E%5E
上杉研究所のアンプは不安定な音は再現するが、動作としては安定している。したがって、ケーブルの良し悪しを選ばない。その点も評価したい。
*1 シングル構成のパワーアンプ :
スピーカーを動かすためのパワーアンプはトランジスターや真空管などの電子部品でできている。
トランジスターや真空管などを指して出力素子と呼んでいるが、通常、パワーアンプのスピーカー駆動部分は、音の波形を上下に分割し、それぞれ二本の出力素子に分担させて音を増幅している。このようなアンプの出力構成をプッシュプル構成と呼んでいる。
それに対し、シングル構成のアンプは、音の波形を分割せず、一本の出力素子のみで音波(電波)を増幅してスピーカーに伝えている。簡単に作ることができ、失敗が少ないが、音の波形が上下で不ぞろいになってしまう。
*2 パワーアンプ:
ここでは、スピーカーの振動板を前後に動かすために電波を増幅する電子機器のこと。スピーカーはパワーアンプから送られた電波を音波に変える。ちなみに音波を電波に変える機器がマイク(マイクロホン)である。
*3: 偶数次歪( ぐうすうじひずみ)
アンプ増幅の際、元の音に対して、2倍、4倍、8倍etc...の波長を持つ偶数倍の音波が付加されること。これを偶数次歪みという。耳に心地よい音とされる。
*4: 奇数次歪( きすうじひずみ)
アンプ増幅の際、元の音に対して、3倍、5倍、7倍etc...の波長を持つ奇数倍の音波が付加されること。これを奇数次歪みという。