同じ周波数特性*1を持つ2つのアンプ*2を、同じスピーカーで鳴らし比べても、どういうわけか低音の量感や高音域の量感が違って聞こえるものだ。
極めて平坦な周波数特性を持つ2つのアンプを比較再生しても、再生音が平坦に聞こえるとは限らないのである。
場合によっては、電線を変えるだけでも聴感上の周波数特性が変わったように聞こえる。
低音や高音の量感が変わったように聞こえるが、特性に変化はない。原因は諸説あるが、これと言って決定的なものはない。
人間の聴覚は時にすさまじい。我々人間の脳は、いまだに解読不能な点が多い。
聴覚は視覚ほど記憶力に秀でていないが、時間軸に対する反応は視覚以上である。
人の視覚は一秒間24コマで満足するが、聴覚は1万コマでも満足しないからだ。
音響装置には感覚的な部分と、頭脳的な部分が互いに混在している。
悲しいことに音響の良し悪しは、野球の成績のように数字で証明することができない。それは、また、音楽そのものにも言えることだ。
よい音楽を奏でるためには、その事をまず頭に叩き込んでおかなければならない。
音作りで頭が先行すると、先入観が強くなるあまり、感覚が育たなくなる。先入観というものは、いけない、いけないと思っていても付いてしまうものだ。
また、感性が先行しすぎる事も危険である。感性を重んじるあまり、印象のよい物に対しては、あばたもえくぼになり、印象の悪かったものに対しては不当なほど低い評価を下してしまうようになる。
智に働けば角が立ち、情に棹差せば流される。この世界は、高級品で全てを固めれば人を感動させる事ができるほど簡単ではない。よい音楽を奏でるには、中庸であることが肝要だ。大いに悩みたい。
(*1) 周波数特性:低音から高音までの音圧をグラフにしたもの。
(*2) アンプ: ここでは、電気を使って音を大きくするための装置のこと。