前回は、必須脂肪酸の根拠と植物油の歴史についてみていきました。
健康的な油になった!?植物油
アメリカでは1945年頃から、大豆油が綿実油に代わって使われるようになりました。
そして1950年代になると、アンセル・キーズという人物が飽和脂肪酸悪玉説(食事ー心臓病仮説)を発表しました。[1][2][3]
その追い風となったのは、1955年にアイゼンハワー大統領が心臓発作で倒れた事件にあります。
これによってアメリカ国民が、食事と心臓病との関係に関心を示すようになりました。
6年後の1961年、AHAは心臓病の原因は飽和脂肪酸や悪玉コレステロールにあるとし、
飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えることを推奨しました。[4]
それからというもの、調理には植物油を使うのが一般的になりました。
しかし、近年になってこれらのことに疑問をあげる声が増えてきました。
植物油にまつわる不都合な出来事
長年にわたって、植物油は健康的なものと信じられています。
こちらはアメリカにおける植物油普及のグラフです。
植物油は1960年ごろから急激に普及しています。[5]
特にオメガ6のリノール酸の普及とエネルギーに占める割合が著しく増加しています。
しかし飽和脂肪酸悪玉説によれば、これだけ植物油が普及すれば心臓病は減るはずですが、
心臓血管疾患による死亡率推移が、右肩あがりで増加しています。[6]
飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸(PUFA)との大きな違いは何かというと、
飽和脂肪酸は酸化しない。
多価不飽和脂肪酸は酸化する。
という点です。
これまでもたくさんの記事にしてきたように、
PUFAの酸化と病気の関連がたくさん指摘されています。
特に2010年以降、多くの文献が発表されています。
PubMedで『PUFA oxidation(PUFA 酸化)』と検索すると2010年以降2,089件。
『PUFA oxidative stress(PUFA 酸化ストレス)』と検索すると2010年以降 839件ありました。
日本では、年代が進むたびにPUFAの摂取量が増えています。
それとともに、ガンや心臓病が増えています。
【外部リンク:小野薬品工業】
人類の歴史は、700万年とも言われています。
現在のように、オメガ3とオメガ6を食用油として摂取してきた歴史的事実はありません。
せいぜい、食べ物に微量に含まれていたのを食べてきただけです。
たとえば、大さじ5杯(60g)の油を作るのに必要な植物は、
とうもろこしなら98本、ブドウの種なら625粒、ひまわりの種なら2800粒、ゴマなら52,000粒も必要です。
大量に植物を集めて抽出しているものを使うというのは、古代の人たちがしていたとは思えません。どこか不自然ではないでしょうか。
にもかかわらず、この100年の間に突如として、
多価不飽和脂肪酸が必須脂肪酸だという概念が生まれたのです。
しかし、おかしいのはそれだけではありませんでした。
続きます。
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【参考文献】
[1]Effects of diet on blood lipids in man.
Clin Chem 1955; 1:34–52.
[2]Studies on serum cholesterol and other characteristics of clinically healthy men in Naples.
Arch Intern Med 1954; 93:328.
[3]Studies on the diet, body fatness and serum cholesterol in Madrid, Spain.
Metabolism 1954; 3:195–212.
[4] The Facts on Fats 50 Years of American Heart Association Dietary Fats Recommendations.
AHA.June.2015.
[5]Changes in consumption of omega-3 and omega-6 fatty acids in the United States during the 20th century.
Am J Clin Nutr. 2011 May; 93(5): 950–962.
[6] Heart disease and stroke statistics--2012 update: a report from the American Heart Association.
Circulation . 2012 Jan 3;125(1):e2-e220.
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