油のこと①:必須脂肪酸の根拠と植物油の歴史 | 最果てなど無いと知る〜健康を本質から考えるブログ〜

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この記事は2021年2月13日に公開したものを再編・リニューアルしたものです。

 

 

必須脂肪酸と呼ばれている脂肪酸があります。

それがオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸です。

この二つは、多価不飽和脂肪酸(Poly Unsaturated Fatty Acid:PUFA)ともいいます。

必須脂肪酸と多価不飽和脂肪酸

 

オメガ3とオメガ6は、体内では合成できず、欠乏すると様々な弊害が起こると言われていることから、必須脂肪酸と名付けられました。

 

 

では、必須脂肪酸という根拠はどこからやってきたのでしょうか。

崎谷博征先生のオメガ3神話の真実と、ならびに、近年発表された文献[1]を要約しながら紹介します。

 

 

 

必須脂肪酸の根拠とは?

根拠となる実験は、1930年までさかのぼります。

 

 

ジョージ・バーという人物が、ラットに脂肪抜きのエサを与えたところ、

ラットに皮膚炎などの慢性的な炎症の症状が出ました。[2][3]

必須脂肪酸の根拠となったバーの実験

バーは皮膚炎を起こしたラットにオメガ6脂肪酸を与えたところ、ラットが回復しました。

 

 

これが今なお続く、必須脂肪酸の根拠となっています。

なお、人間では実験しておらず、ラットでの実験の結果です。

 

 

その後、他の科学者がバーと同様の実験を行いました。

ある科学者たちは、皮膚炎を起こしたラットにビタミンB6を与えたら、皮膚炎が回復しました。[4][5]

 

 

またある科学者たちは、皮膚炎を起こしたラットにタラの肝油(DHA・EPA)を与えましたが、皮膚炎が回復しませんでした。[6][7]

 

 

バー自身もよく分かっておらず、皮膚炎を起こしたラットにタラの肝油を与えましたが、皮膚炎が回復しませんでした。

他の研究者もバーの実験を再現

バーは『偶然にも、リノール酸とリノレン酸は成長と皮膚の異常の両方を緩和するようである。』と苦し紛れの結論を出しています。[8]

 

 

他の実験者は、脂肪酸以外の成分が影響しているのではないかと推測していました。

ラットにカゼインや小麦胚芽油、小麦ふすま、ラードを与えると、皮膚炎が低減したり、ラットが成長したのです。[9]

 

 

実は、ラットが皮膚炎になったのは、ビタミンやミネラル不足だったのです。

 

 

こうした実験と結果があったにもかかわらず、

バーの実験は脚光を浴び、必須脂肪酸という概念ができました。

 

 

人間の身体には、確かにオメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は使われています。

オメガ3脂肪酸は、眼球や脳に多くなっています。

眼球は外気にさらされますが、北半球の場合、摂氏がマイナスにもなる環境では、眼球が凍りつく可能性があります。

 

 

凍った湖の中でも魚が生きていられるように、オメガ3脂肪酸は冷凍庫に入れても凍りません。

そのため、眼球にはオメガ3が多いのだと考えられます。

 

 

しかしながら、根拠と言って良いのかどうかは、疑問が残ります。

 

 

 

行き場を無くした植物油の大逆転

元々、植物油(多価不飽和脂肪酸)は燃料や塗料として使われていました。

 

 

日本では江戸時代まで行燈が使われており、その燃料として菜種油やエゴマ油、魚油を使っていました。

 

行燈

 

 

オメガ3のアマニ油は、酸化してすぐに乾いて重合し皮膜を作るので、塗料のニスとして使われていました。

 

亜麻仁油木工用

 

しかし、明治時代になると石油製品が登場し、次第に燃料や塗料は石油製品に変わってゆき、植物油は行き場を無くしていきます。

 

 

その頃アメリカでは、1900年ごろまでは調理油として動物性油脂が使われていました。

ラードが主流でしたが、豚肉の臭いがしたり、ラードと綿実油が混ざっていたり、コストが高かったということもあって、評判が良くなかったようです。

 

 

アメリカでは1911年に、P&GがCRISCO(クリスコ)という綿実油のショートニング商品を発売。大々的なマーケティングを行い、

1916年には、CRISCOは6,000万缶もの売り上げとなるベストセラーになりました。[10]

クリスコはベストセラーに

当時は綿実油の評判も質も悪く、オリーブオイルと混ぜられていたこともありました。

綿製品が大量生産されると、売れ残った綿花が大量に余ってしまい、廃棄されていました。

それを食用にどうにかできないかと目を付けました。

 

 

CRISCOは、消費者に原材料の心配をさせず、信頼のあるブランドとしてのイメージを定着させるマーケティング手法を使いました。

 

 

P&Gは綿実油に水素を添加して固形の油を作り出すことに成功し、販売の際には綿実油からできている事には一切触れていませんでした。

 

 

当時は食品会社に成分表示を義務付ける法律が無かったからです。

 

 

全て植物性のものから作られているというイメージ戦略で、人々の関心を惹き、

純度の高さや、臭いや味も少なく、フライやケーキに使えると宣伝しました。

 

クリスコのレシピ

 

こうして、安価で使いやすいCRISCOが瞬く間に大人気になりました。

 

 

その後、バーの実験が追い風となり、石油製品によって追いやられていた植物油は、

CRISCOのベストセラーや、必須脂肪酸という名誉が与えられ、燃料や塗料から、食用になりました。

 

 

日本では、1960年頃から始まったアメリカ主導のキッチンカーによるフライパン運動で、

調理油に植物油を使うのが主流となりました。

 

 

続きます。

 

 

【参考文献】

[1]A short history of saturated fat: the making and unmaking of a scientific consensus.

Curr Opin Endocrinol Diabetes Obes. 2023 Feb; 30(1): 65–71.

 

[2]A new deficiency disease produced by the rigid exclusion of fat from the diet. 

J. Biol. Chem. 82: 345–367.

 

[3]On the nature and role of the fatty acids essential in nutrition. 

J. Biol. Chem. 86: 587–621.

 

[4]Irradiated Vitamin B Complex and Dermatitis: One Figure.

The Journal of Nutrition.Oct.1934;8(4):385-396.

 

[5]Essential fatty acids,vitamin B6,and other factors in the cure of rat acrodynia.

J Biol Chem.Feb 1940;132(2):539-551.

 

[6]Observations on the Nutritive Value of Certain Fats.

Experimental Biology and Medicine. 1931;28(7):756-758.

 

[7]Some Observations on the Growth of Rats on “Fat-Free” and Fat-Containing Diets.

Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine. 1930;27(9):1059-1062.

 

[8]On the Nutritive Value of Certain Oils.

Proceedings of the Society for Experimental Biology and Medicine. 1931;28(9):905-907.

 

[9]Growth on diets poor in true fats.

J Biol Chem.1920.45(1):145-152.

 

[10]How Crisco toppled lard – and made Americans believers in industrial food.

The Conversation.

Published: December 18, 2019 1.49pm GMT.

 

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