ふるいの中に残るもの ◇15 | 有限実践組-skipbeat-

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■ ふるいの中に残るもの ◇15 ■





 途端に肩の力が抜けた気がした。


 そしてその夜を底辺に、私の体調は少しずつ持ち直していった。




「 ……キョーコ、おはよ。今日の調子はどう? 」


「 おはようございます、敦賀さん。昨日よりさらに良くなっている気がします 」


「 そう、良かった。じゃ、今日も行くよ? 」


「 ……っ…危ないですよ。いま料理中なのに 」


「 だから予告してるだろ?ぎゅ~~~~っ 」



 キッチンで朝食作成中の私を敦賀さんがバック・ハグ。


 抱きしめるときに敦賀さんが擬音を発する理由は判らないけど、これをするようになったのは先日のお願いがきっかけだった。








 ――――――― 敦賀さん、私っ……




「 記憶を取り戻したいって、本気で思っているんです! 」


 それは本当だった。だからこそ思っていた。


 いつものこの人で居て欲しいと。



 3年分の記憶を失くした私は

 敦賀さんに対して決していい印象を持ってはいなかった。


 けれど思い出したのだ。

 敦賀さんと社さんの会話を立ち聞きしたあの夜に。




 催眠術を施されたあと

 私を迎えに来てくれたのだろう敦賀さんが、私に向けてくれた目線の柔らかさと


 私の記憶が欠落していることに気付いて取り乱した様子を見せたこの人のそれを。



 あれは敦賀さんの本気だった。




「 だから、いつも通りの呼び方で私を呼んでくれませんか 」


「 …最上さん? 」


「 違う!少なくとも私の記憶がなくなる前、敦賀さんは私をキョーコと呼んでいたはず。だって咄嗟の時に私のことをそう呼ぶもの。そうでしょう?! 」


「 …っ……それは……でも… 」


「 敦賀さん、協力してもらえませんか?!私の記憶喪失を疑っているのなら、なおさら協力して欲しい。

 社さんから聞きましたよね?フラッシュバックを誘発するのに一番有効なのは、以前と変わらない生活をすることだって。だから……っ… 」




 敦賀さんは一瞬、目を見開いたけれど


 それからすぐに、いいよ、判った…と

 私のお願いを受け入れてくれた。




「 ああ、そうか。うん、いいよ、判った。そういうことなら…… 」



 そのとき、俺からもひとつ提案がある、と敦賀さんが続けた。



「 提案ですか? 」


「 そう。なるべく以前と同じ生活を…と君が望むのなら、朝と夜、最低でも一日2回のハグを実行したい 」


「 ……は……グ!? 」


 正直、目が点になった。



「 していたんだよ。この家で一緒に暮らすようになってから。主におはようとおやすみの時にだけど 」


「 え……どうして…? 」


「 その理由って必要?以前となるべく同じ扱いをして欲しいって、いま俺にそう言ったばかりだろう?だからと思ったんだけど。それとも、撤回する? 」


「 ……撤回なんて、しません…っ… 」




 撤回する?と聞いてきた敦賀さんは真顔だった。


 たぶん、そこには私の本気度を測る意図があったと思う。




 撤回はしない、その案を受け入れる…としたものの

 もちろん最初はかなり本気で戸惑った。



 それも3~4日を過ぎた今はだいぶ慣れたもので


 そもそも私は、子供時代でも誰かに抱っこされた記憶が無かったから、体の大きな敦賀さんにハグされるのは単純に心地好かった、というのもある。




 結果、敦賀さんとの人間関係が多少なりとも良好になったことでストレスが軽減され、私の体調に良い影響が出たのだろう…と、その時はそう思っていた。


 それでも不意に眠気に襲われることは確かにあったけれど

 食事も摂れる様になってきたことで頭がふらつくことはなくなっていた。



 ただ、ひとつだけ気になっていたこと。

 それは、以降フラッシュバックが起きる気配が全く無いという事だった。





「 ごちそうさま。さて、あと10分ほどで社さんが迎えに来るけど、君は今日どうする? 」


「 同行させていただきたいと思います 」


「 了解 」



 そう言えば、敦賀さんとハグをするようになって気づいたことがある。


 それは、敦賀さんも私と同じ様にストレスを受けていたのかもしれない、と思えた事。



 実際、ハグをするようになってから、敦賀さんの私に対する態度は日に日に軟化していた。





 インターフォンのチャイムが鳴った。

 家主である敦賀さんが応じる。



 時計を確認した私は慌てて玄関に向かい


 駆けつけた私を見た社さんが、おはようキョーコちゃん、といつもの笑顔をくれた。



「 社さん、おはようございます。昨日に引き続き、今日もよろしくお願いします 」


「 こちらこそよろしく。……出かける前にいいか?蓮 」


「 はい 」


「 今日のこのスケジュールについてなんだ。これ……これでいいか? 」



 社さんが持っている分厚いスケジュール帳を敦賀さんが覗き込む。


 その一瞬

 なぜか緊迫した気がした。




「 ……ええ、了解です 」


「 じゃ、そうする。あ、そうだ。キョーコちゃん 」


「 はい? 」


「 ごめんね。悪いんだけど、今日、場合によっては富士TVで少しの間だけ蓮の楽屋に居てもらうことになるかも 」


「 そうなんですね。はい、分かりました 」


「 そんなに時間はかからないと思うけどね。1時間前後かなって感じ 」


「 はい、心得ました 」




 まさかそれが緊迫した理由だなんて



 さすがに知る由もなく。






 ⇒◇16 に続く


地味。



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