ふるいの中に残るもの ◇9 | 有限実践組-skipbeat-

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 前話こちら⇒ふるいの中に残るもの<18>



■ ふるいの中に残るもの ◇9 ■





「 あ、モー子さん!!ここ、ここ!! 」


「 …っ…ちょっと!大きな声出さないでくれる?真っ昼間っから身バレしたいの? 」



 翌日、私は自分に出来ることがあったらいつでも何でも言って来て…と、あの日言ってくれたモー子さんとカフェで待ち合わせた。


 場所を指定してきたのはモー子さんだ。

 何故かと言うと、私が知っていたカフェはすべて無くなっていたから。



「 えへへ、ごめ~ん。女友達とカフェで待ち合わせなんて、人生初だったから嬉しくて… 」


「 それ、初めてなんかじゃないでしょ。この前だって……って、そっか。覚えていないんだっけ 」


「 うん、ごめんね。もしかしたら私たち、待ち合わせとか普通にしていた? 」


「 していたわよ。…と言っても、最近になってからだけどね。アンタが仕事をセーブし出してから、私の都合に合わせてくれて 」


「 へぇ、そうだったんだぁ♡ 覚えてなくて残念 」


「 それより、さっさとカラオケボックスに移動しましょ。そういう話が聞きたいわけじゃないんでしょ? 」


「 うん 」



 親友に導かれるまま

 私はモー子さんの後に続いた。


 カラオケボックスはカフェから徒歩3分の所にあった。



「 それで?アンタが聞きたいことってなに?言っておくけど、アンタが催眠術を受けた理由については話す気ないわよ 」


「 うん、分かってる。それについてはちょっとだけ私も知っているし 」


「 …ちょっと…って? 」


「 例えば、3ヶ月の予定が3年になっちゃった、とか? 」


「 …っ… 」


「 大丈夫。そんな顔をしないで、モー子さん。もちろんその理由についても知りたくない訳じゃないけど、少なくとも今日私が聞きたいのはそっちじゃないの。私が知りたいのは… 」



 社さんと敦賀さんの会話を立ち聞きしたあと

 自分の部屋に戻った私は、3年間の自分の軌跡を確かめようと改めて部屋を漁った。



 改めて…というのは

 その時が初めてじゃなかったからだ。



 実は私、3年間の記憶を失って、敦賀さんと埒が明かない会話をしたあと、あの部屋で自分の荷物を色々漁っていたのだ。



 最初に手にしたのは携帯電話だった。

 メールの履歴を確認するつもりで。



 けれど一つも見ることは出来なかった。



 何故かと言うと

 携帯がスマホに変わっていたから。



 私が使ったことのある携帯と言えば二つ折りのものだから、操作が良く判らなかった…と言いたいところだけど、本当の理由はそれじゃない。

 実はそのスマホ、暗証番号などではなく、文字列のロックがかかっていたのだ。



 そこで思いつく言葉をいくつか入力してみたけれど

 予想通りの空振りで…。


 どこかにメモでもないかと探したけれど、私自身は日記をつけるような習慣は無かったし、手帳にもそれらしいのはどこにも書かれていなかった。



 結果、今の私では到底解除は出来ないと判断し、ため息を付きながら部屋を漁った訳だけど、一年間も暮らしているというのが嘘のように、出てきたのは束になっている雑誌だけ。それ以外に目ぼしいものを見つけることは出来なかった。




 芸能人 京子としての活動については、その翌日に社さんから話を聞いている。


 それによって自分が出演したドラマや映画のDVDなどは鑑賞済み。

 この3年間で出演したCMや、ここ一年ぐらいに受けていた雑誌取材の事も聞いていて、実際に自分が表紙を飾った雑誌もほんの一部だけど…と言われて数冊を見せてもらった。



 けれど残念なことにそれで記憶がフラッシュバックすることは無く

 だから…と言う訳じゃないけれど


 自分が催眠術をかけてもらおうと思った理由は決して仕事なんかじゃないと思った。



 きっと、もっとプライベートなことだ。




「 私が知りたいのは、私と敦賀さんのこと 」


 そもそも私は

 昨日、二人の会話を立ち聞きして



 3年後の私が

 3年分の記憶を


 水面下に沈めようと決意した理由に

 恐らく敦賀さんが関係しているに違いない…と考えた。



 ショータローに復讐するために生きると誓った自分のそれをすっかり忘れ、私はモー子さんににじり寄った。



「 …どんなことよ 」


「 例えば、私と敦賀さんってどんな関係なのかな、とか 」


「 どんなって、一年も前から一緒に暮らしていて今更それを私に訊ねる? 」


「 それ!モー子さんはそれを知っているのね?だったらその成り行きも知ってる? 」


「 知る訳ないじゃない。私はただアンタに報告されただけよ。敦賀さんの家に引っ越すことになったって 」


「 そう、なんだ 」


「 …っていうか、そういう事なら私じゃなく敦賀さんに聞くべきでしょうが 」


「 訊いたわ。でも教えてくれなかった。そういうのは自力で思い出した方がいいって言われて 」


「 ああ、そう。なんかそんなこと言いそうな気がするわ。その気持ちも分かる気がする。

 リスクがあるって事は聞いていたけど、それでも3ヶ月じゃなく3年分の記憶を失くすなんて想像すらしていなかった。私だってこれだけ複雑な気分になれるんだもの。敦賀さんなんてそれ以上でしょ。自分の彼女がそんなことになっちゃったら 」


「 ……やっぱり、彼女…なのよね?私が、敦賀さんの… 」


「 逆に聞くけど、そういう事すら敦賀さんは何も話してくれないの? 」


「 うん。直接的には何も… 」


「 直接的には…ってどういう事よ 」


「 実は昨日、社さんと敦賀さんの会話を偶然立ち聞きしちゃって、それで確信を持ったの。一緒の家に暮らし始めたのは一年ぐらい前だってことは、その前に教えてくれていたんだけど、どうしてそうなったのかって聞いたら、そういう流れになったから、で誤魔化されて… 」


「 ふぅん。でもそれなら何度も聞けば教えてくれたんじゃないの? 」


「 ううん。それが、何を聞いても自分で思い出した方がいいって答えるばっかりで全然ダメだった。それでこっちもムッとしちゃって。そりゃ、自力で思い出すつもりでいたのだけどっ!! 」


「 …思い出すつもりでいたの? 」


「 え?どうして?そのつもりでいたけど? 」


「 だって、せっかく忘れたのに? 」


「 ……そうだよね。いま何も分からないってことは、それを忘れることが出来たってことだよね。でも、今の私はそれが何だったのかちゃんと知りたいと思ってる。知ったらまた忘れたいって思うのかもしれないけど 」


「 思うわよ。絶対に 」



 モー子さんの返答は力強く、それを私は少し意外に思った。



「 ……そうなの?それって、敦賀さんが関係してる? 」


「 教えないわ。私からは絶対に 」


「 うん、そう言ってたね。…ってことは、どうしたって自力で思い出さないと 」


「 そう。やめた方がいいと思うけど 」


「 うん。一応肝に銘じとく。でね……正直に言うとやっぱりビックリしているの 」


「 何をよ 」


「 私が敦賀さんと…って話を。だって私にとっては敦賀さんってすっごくイヂワルな人って認識なんだもの。だからまさか3年後に自分があの人と付き合っているなんて夢にも思っていなかった。今もまだだいぶ信じていないのよ? 」


「 そうなの?私はアンタから報告された時には少しも驚かなかったわよ。むしろそうでしょうねって思ったわ 」


「 ええぇぇぇ~??どうしてぇぇ? 」


「 どうしてって、アンタ、敦賀さんのこと、崇拝していたもの 」


「 はぁ?!嘘でしょ??ナイナイ、そんなこと!! 」


「 間違いなく崇拝していたわよ!嘘だと思うなら何日か敦賀さんに付きっきりになるといいわ。それでその仕事ぶりでも見たらいい。そしたらきっとアンタ、また同じ轍を踏むだろうから 」


「 えええ~、そんな簡単に?そんなの想像すらつかないわ。だいいち私、恋愛には全く興味が無いの!仮に崇拝していたとしても、それが恋に発展なんてするかしら 」


「 プッ!そうそう、そう言ってたわ。敦賀さんと付き合うようになったって報告してくれたときに 」


「 え?私、モー子さんにどう報告したの? 」


「 それ、聞きたい? 」


「 聞きたい!! 」


「 ……ま、いいか、これは。今日みたいにカラオケ店に二人で来て…… 」





 ――――― モー子さん!最上キョーコ、一世一代の報告があるの!




 なによ、一世一代って。

 いつも大袈裟よね、アンタって。



 大袈裟にもなるわ!

 だって私……っ




「 アンタ、すごく嬉しそうだったわ。すごく幸せそうだった。

 夢みたいな話だけど…から始まって、私、敦賀さんと付き合う事になったの。恋愛に興味なんて無かった私が信じられなくない?どう?これって一世一代の報告でしょう?…って、そう私に言ったのよ。誰よりも早く、一番乗りの報告だって 」



 そう言って微笑したあと

 モー子さんはそれも忘れちゃったのね…と、寂しそうに呟いた。



 私は

 ごめん、とも、そうだったね、とも言えなくて


 ただ自分が

 いかに罪深い事をしたのかを目の当たりにした気分だった。



「 ……ごめん。そんなこと言うつもりは無かったのに。こんなところでいい?もう出ましょうか 」


「 あ、うん。でもごめん、その前にお手洗いに行ってきていい? 」


「 ええ。悪いけど私は先に出るわ 」


「 判った。お会計は私がするね。モー子さん、今日はありがと 」


「 どういたしまして 」



 モー子さんと別々になって、カラオケボックスのトイレで手を洗いながら


 私は自分の記憶より3年分大人になっている自分を鏡越しに見つめつつ


 この前見たばかりのダークムーンの打ち上げインタビューを思い出していた。




 敦賀さんの隣で

 はにかんでいた半年後の自分の姿は


 不思議なくらい、今の自分の顔そのままだった。



 髪の長さこそ違うけど。



 3年という月日は着実に流れていて

 そのことを私は鏡を見るたびに実感している。




 そう言えば、自分の部屋の荷物を漁って

 束になって出てきた雑誌には


 自分が表紙を飾った物なんて一冊も見当たらなかったけれど



 一つ残らず敦賀さんの特集記事が載っていた。



 それが、恐らく敦賀さんが関係しているに違いない…と私が考えた理由だったのだけど、その推理が恐ろしく見当違いだったことが、のちに判明することになる。






 ⇒◇10 に続く


お分かりかと思いますが、現在のキョーコちゃんは6巻あたり(ACT.30)の記憶しかありませんので、29巻あたり(ACT.171~173)の頃は未来の自分になる訳です。

んで、適当に半年後とかにしちゃいました。場合によっては後で確認してこっそり訂正入れときますww


…ってか、半年後が23巻後って……。すご。



⇒ふるいの中に残るもの◇9・拍手

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