いつもありがとうございます、一葉です。
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前話こちら⇒ふるいの中に残るもの<1 ・2 ・3 ・4 ・5 ・6>
■ ふるいの中に残るもの ◇7 ■
「 わ ――――――― ……っ… 」
社さんに連れて来てもらった局の撮影スタジオに足を踏み入れた私は、辺りをきょろきょろと見回した。
スタジオに入ってすぐ目に飛び込んだのは、若手実力派ナンバーワンと謳われている敦賀蓮。
ひときわ目立つLMEの看板俳優をすぐさま見つけて、厭味なほど目立つ人…と思いながら私は視線を斜めに反らした。
「 あ、いたいた。こういうとき便利だよな、蓮の背の高さって 」
「 !!! 」
そうか。
芸能人だからじゃなくて、背の高さで目立つって理屈もありなのかも。
「 蓮! 」
「 やし…あっ 」
いくつもの撮影機材と眩しすぎる大きなライト
活気あふれる現場の空気感はもちろん私も知っている。
と言いたいところだけど
自分が知っているスタジオの様子というのはドラマ撮影のものではなく、気まぐれロックという番組に坊で出演した時のものだけだった。
あ、いやだ。それで思い出しちゃった。
なんだか無茶苦茶ムカつくわ。
そうよ
私ったらなぜこれを忘れていたのかしら。
私が芸能界に入ったのはアイツを握りつぶすためだったのよ!!
そうだった!!
私は復讐に生きると誓った女。
今それを思い出したわ。
「 社さん! 」
「 蓮、悪い。待たせたな 」
「 俺の方は特になんの問題もありませんから、それはいいんです。けど……っ… 」
社さんに声を掛けられ、敦賀さんが足早に私たちに近づいた。
私を見下ろす険しい目。
じろりと見られてジロリと見返す。
言っておきますけどね
そんなことじゃ怯まないわよ、私は!!!
「 君が来るなんて聞いてない 」
「 そうですね。すみませんでした。社さんが連れてきてくださると言うのでお言葉に甘えて来てしまいました 」
「 …っ!!社さん、なぜ連れて来たんです? 」
「 なんで…って、キョーコちゃんが来たいって言ったから? 」
「 たったそれだけで気軽にホイホイ連れて来ないでくださいよ 」
「 なんでだよ?いいだろ、別に。お前だってキョーコちゃんがいた方が張り合いが出るだろうが? 」
「 出ません。むしろ俺の気が散るだけです 」
あらあら。
LMEの看板俳優と言われている人が、観客一人が増えたぐらいで気が散っちゃう?
うっわ、心狭っ!!!
っていうか、私ごとき、無視すればいいでしょうが!!
実はこのとき、私は敦賀さんに対して異様に腹を立てていた。
正確には、敦賀さんの家に行ったあの日からずっと腹を立てている。
理由は至極単純で、この人が何も話してくれないから。
自分宛ての手紙を見つけたあの日
電話を終えた敦賀さんに
私はそのとき思いつく限りの質問をしたのだけれど
答えられる範囲で答える…と言ったにもかかわらず、この人が私の質疑に明確な回答をくれたのはほんのわずかなものだった。
「 敦賀さん、教えてください。私はいつから敦賀さんのお宅にいるのでしょうか? 」
「 ……だいたい、一年ぐらい前から、かな 」
「 どうしてお邪魔をすることに? 」
「 そういう流れになったから 」
「 そういう流れって? 」
「 それは………… 」
敦賀さんは一旦言葉を詰まらせて
それから少しの間をおいて重く口を開いた。
「 …ん。ごめん、その件は具体的には話せない。そういうのは自力で思い出した方がいい 」
「 は?! 」
そりゃあね
自力で思い出すつもりでいたわよ、いたけど。
でも、知っているのだから教えてくれたっていいじゃない?
だって私は当事者なんだし。
そもそも何故こうなっているのかが私には皆目見当も付かないのだから。
「 ……今日、琴南さんやマリアちゃんに敦賀さんがお礼を言ったのは何故でしょうか 」
「 それは、俺がそういう立場の人間だから 」
「 そういう立場って? 」
「 だから俺とキョー…っ……そういうの、言えば混乱するだけだと思うから言えない。そこらへんも自分で思い出した方がいい 」
「 ……っっ!!今日! 」
「 今日? 」
「 そうです、今日!私が迎えに来て欲しいって、敦賀さんにお願いしたんですよね?! 」
「 そうだよ 」
「 そう言われて敦賀さんは二つ返事で了承したんですか?! 」
「 そうだよ 」
「 それは何故ですか?! 」
「 なぜって、迎えに来てって言われたから 」
「 だから、どうしてそんな簡単に迎えになんて… 」
「 だから、君にそう言われたからだよ。それ以外の理由が必要? 」
「 違う!私が知りたいのは、どうして私が言ったからって…ってことで…!! 」
まさかね、という予感が過ぎった。あり得ない…という反発心も。
けれど、それに関する確証を得ることは出来なかった。
なぜなら、私がどんなに質問を重ねても
敦賀さんはそれらしい答えを決して口にはしなかったから。
そのクセいちいち私の反応を丁寧に見つめて
すがるような瞳で私のことをじっと見る。
それが私をイライラとさせた。
「 じゃあ、この状況はどういうものなんですか?私が敦賀さんの家に居るのって… 」
「 それは、さっきも言ったけどそういう流れになったから 」
そういう流れってどんな流れよ!
そこもちゃんと教えなさいよ。
「 …ってことはですよ、敦賀さんと私って、大家さんと私みたいな関係だと思えばいいんですか? 」
「 ちが……っ……あ、うん。今はそう思ってもらっても… 」
「 そうですか、そうなんですね。だとすると、おいくらなんですか? 」
「 え? 」
「 家賃です!!ワンフロアに一件しかないマンションの一室を私がお借りしちゃっているんですよね?その私のお部屋代はひと月おいくらなのでしょうか? 」
「 それ、は……思い出してからでいいよ 」
この時さすがにカッチーンと来ました。
一体このひとは私の現在の状況をどう思っているのでしょう?!
思い出してから、思い出してから、思い出してからって!!
じゃあ思い出せなかったらあなたはどうするつもりなんですかって話でしょ?!
だいたい、本当に思い出して欲しいと思ってる?
もしそうなら質問には答えてくれるものじゃない?!
答える気が無いくせに、何か聞きたいことがあるなら…なんておかしいわ。そりゃ、答えられる範囲で答えるからとは確かに言っていたけれど!
そんな状態だったんですよ。
それで気が散るなんて言われたら、余計に腹が立つのは当たり前でしょ。
「 蓮。いくらなんでも、もう少し言葉を選べ、お前らしくない。
俺がキョーコちゃんをここに連れて来たのは、記憶を戻すのに一番有効なのがフラッシュバックだって教えてもらったからだよ 」
「 フラッシュバック…って、あの? 」
「 ああ、そう。何を言われたのかは後で教えてやるよ 」
「 了解です。じゃあ話は社さんから聞かせてもらうから、君はもう家に戻って。記憶がない状態で現場に居たって大して面白くも無いだろう? 」
「 おっ…!! 」
面白い、面白くないの問題?!
そりゃあ、私だって都合よくフラッシュバックするなんて思っちゃいないわよ?!
だけど、何が功を奏するかなんて誰にも判らないことじゃない!
本当に、この人……!!
「 はい、そういう事で決まりました。社さん、彼女をお願いします 」
「 蓮。お前な… 」
「 敦賀さーん、もうすぐ始めますって~ 」
「 あ、はい、いま行きます!……今日、なるべく早く帰るから。今日は君、もう家から一歩も出るな 」
「 …っ!! 」
なんで?
どうしてそんなことをあなたから言われなくちゃいけないの。
共演者の女性に呼ばれた敦賀さんは
それだけを言い捨てるとさっさと私に背を向けた。
4~5歩進んだところで足を止め
急に振り向いた彼の瞳はすがるような物憂げ。
…っていうか、本当に意味が分からない!
あなた、もしかしたら二重人格者だったりします?!
「 すみません、お待たせしました 」
「 本当だよ、すごい待っちゃったよ、敦賀くーん 」
「 ははは、すみません 」
「 うそうそ、冗談ですよ 」
共演者たちに囲まれて敦賀さんが笑みを浮かべる。
私に見せるのとはまるで違う
紳士な微笑の敦賀さんはどこから見ても温和な風…。
ふーん、そう。
私と一緒にいるときはどこか物憂げ―で
何かを言いたそうにしているくせに何も言わない状態を貫いて、しかも時々命令口調になるような理不尽な人なのに
他の人にはそんな風に優しいんだ。
ええ、ええ、いいですけど。
私は別にあなたに優しくして欲しいわけでも、好かれたいと思っている訳でもないし!
…っていうか、ちょっと忘れていたけれど
そもそも私は復讐に生きる女ですから、敦賀蓮なんてどうでもいいわ!!
…って、過去に考えたことがあるのを急に思い出したかも。
フラッシュバックっていうのは
もっとどこか劇的に、ドーンとか、バーンとか
まるで神の降臨のように記憶が唐突に頭の中に溢れるものだと想像していたけれど
実際のフラッシュバックは
とてつもなく地味だったことにだいぶ後で気が付いた。
⇒◇8 に続く
いつものようにお話の大まかなプロットは出来ています。…が、詳細部まではさすがに無理!
ということで、原作コミックスを読み返しつつ、一つ一つを精査確認しているためにちょびっと執筆に時間がかかっております。ごめんなりお
だって、読み返すとつい夢中に(笑)
そして何を確認しようとしていたのか分からなくなるというww
サクサク進まないものかのぅ。( ̄▽ ̄) いや、出来るならやっとるわい
⇒ふるいの中に残るもの◇7・拍手
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