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■ ふるいの中に残るもの ◇3 ■
敦賀さんの家に向かうまでの車内で私たちに会話は無く、自分はただ懸命に己の記憶を確かめていた。
マリアちゃんについて思い出せるのはやっぱりLME俳優養成所のあの出来事で、モー子さんに関して思い出せることと言えば、カインドーのオーディションに二人揃って合格し、晴れて親友同士となれたこと…までだった。
うんうん、そう。
私とモー子さんは親友同士になったのよ。
「 …っ?! 」
あれ?ちょっと待って。
もしそれが本当に3年前の出来事だとしたら、いま私って芸能界ではどういう立ち位置なんだろう?
「 ……でいい? 」
「 ふあいっ!? 」
「 ……もしかしたら、いま相槌打っていたのは偶然?俺の話、全く聞いていなかった? 」
うそ。
全然気づきませんでした。
「 は……もし何か話しかけられていたとしたら、そのようで…… 」
「 フ……その言い方……っ… 」
その先は尻つぼみして聞こえなかったけれど
敦賀さんは懐かしそうな、それでいて少し寂しそうな笑顔を浮かべた。
それを見て、ほんの少しだけ息苦しさを覚える。
「 着いたよ、行くよ 」
「 はいぃぃぃ 」
敦賀さんに促され、その後ろをヒヨコのように付いて歩いた。
大きな背中を見つめながらこの人についての記憶も辿る。
私が持っている敦賀さんの記憶といえば
ショータローと私が幼なじみだと知っているってこと。
そして私がアイツへ復讐したいと思っていることを知っているってこと。
それから
敦賀さんはLMEのトップ俳優で、世間的にも若手実力派としてかなりの有名人だってこと。
…のくせに、私にだけはめちゃくちゃ意地悪だってこと!!
そうだわ、思い出したわ、キョーコ!!
この人の笑顔に騙されてはダメ。
さっき息苦しさを覚えたのはきっと警告。思い出せって合図だったのよ。
この人の笑顔が極上であればあるほど油断してはならない。
だってこの人が私にイヂワルする時はいっつもす~っごい紳士な笑顔の後だったもの。
この人の地雷を踏むたびに何度あの嘘つき毒吐き紳士スマイルを目撃してきたことか!!
……そりゃ、さっきのはちょっと違うものだったけど。
「 どうぞ 」
「 どうも 」
エレベーターを降りたそこはワンフロアに一部屋しかない超高級マンションだった。
玄関ドアが開けられて、さらにどうぞと促された時には緊張感が高まった。
だって、男性が住んでいるマンションよ。
そこに一人で乗り込むなんてやっぱりちょっと非常識だと思うもの。
でもそりゃあね、敦賀さんほどの有名人で人気者なら、私の事なんて何とも思っていないでしょうから躊躇なく入りますけど。
「 君のスリッパはこれ。はい、どうぞ 」
あら。
お客様には小花模様の可愛いスリッパなんて用意してるの?
へぇぇ。敦賀さんってば案外少女趣味なのね?
「 ……失礼します 」
室内に一歩踏み込んだ時だった。
不思議な感覚が自分を包んだ。
私、以前にもここに来たことある気がする。
こんな間取りを見た気がする。
もしかしたら、TVとかで見たのかしら?
あるいはこれが
デジャビュ…というものなのか。
「 敦賀さん 」
「 ん? 」
「 それで…お邪魔したあと、私はどうしたらいいでしょうか? 」
「 あ……。えっと、ひとまず居間に行っててもらえる?あっちだから。ソファにでも座ってて 」
「 ……はい 」
驚いたことにこの既視感はさらに続いた。
リビングにもどこか懐かしい香りが漂っている。
そしてところどころに女性らしい気配があった。
壁際に置かれた観葉植物。
ボードの上の少しの雑貨。
ソファに置かれたクッションにはレースのフリルがついていた。
正直、意外だった。
敦賀さんが自分の好みで置いているとは思えない…と確信を持っている自分にも驚く。
可愛いクッションの合間に隠れるように置かれていた坊のぬいぐるみを見つけて、私は口元を緩めた。
これ、一体誰の趣味なんですか?敦賀さん。
「 クスクスクス…… 」
「 それ、全部君が置きたいって言ったんだよ 」
「 えっ? 」
「 だから、いいよって言ったんだ 」
――――――― 敦賀さん。
観葉植物っていうのは、置くだけで部屋の居心地が良くなる魔法のアイテムなんですよ!
そしてここ
ボードの上の雑貨は小物を置くためのスペースにしましょう。
そしてこのフリルのクッションは……
「 そのクッションがあるソファは君のお気に入りの場所だよ 」
「 ……っっ? 」
嘘でしょ?
それって一体どういうこと?
「 ごめん、悪かった。今のは聞き流して。
そうだ、荷物を部屋に置きに行こう。案内するよ、おいで?」
「 …えっと…部屋って… 」
「 ここだよ。前はゲストルームだったんだけどね 」
蝶番が小さく鳴いた。
部屋を一瞥して私は言葉を失った。
そこは確かに自分の部屋らしいと思える場所だった。
…ということは……
「 私……と、敦賀さんって…… 」
「 ……最上さん 」
「 はい? 」
「 今はまだ混乱しているだろ。だから自分の部屋で少し落ち着いた方がいいと思う。俺、リビングにいるから。何か聞きたいことがあるなら……答えられる範囲で答えるから 」
確かに混乱していた。
これは現実だろうかと疑っている自分がいる。
敦賀さんが立ち去ってしばらくの間
私は廊下に立ち尽くしていたけれど
部屋に置かれている、真っ白で、いかにも自分好みなドレッサーを視界に収めた私はそれに誘われるように入室し、添え付けの丸椅子に腰かけた。
お姫様気分を味わおうと視線を鏡に移して思わず両目を見開く。
「 は……え?これが私?? 」
鏡には
自分が覚えていない3年間を過ごしたのだろう、3年後の自分が映っていた。
⇒◇4 に続く
そーとー長くなりそうだな、こりゃ。
⇒ふるいの中に残るもの◇3・拍手
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