技術士合格法(7.2 くっつける+ひろげる)(R6.4.30更新) | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

7.2 くっつける作業とひろげる作業

 

(1)くっつける作業

●「くっつける」とはどんなことをすることなのか

試験本番を想像してみましょう。

予想が少しだけ外れていたとします。

この時、出題された問題と自分が作った予想問題の内容を比べて、次のように考えるはずです。

「あの解答をベースにして、もう1つの解答のあの部分を付け足そう」

つまり、自分が記憶している複数の解答の中から、使えそうな部分をピックアップして、これらを「くっつける」ことによって、新たな解答を作るわけです。

下図のように、あるテーマに関する解答Aと解答Bを用意していたとします。

実際の試験問題が解答Aに関する内容と解答Bに関する内容、両方について述べることを求めている場合、Aの一部とBの一部をくっつけて、新たな解答を再編成することができます。

これが「くっつける」という作業です。

この作業は、自らが作成した文章を思い出して、合体すればいいわけですから、難しい作業ではありません。

予想問題が完全的中するというシチュエーションがあり得ない以上、試験本番で最もラッキーな状態とは、「数問は、憶えた解答をそのまま書くことができ、残りの問題は、くっつける作業で対処できた」というケースなのです。

この作業は、自らが作成・記憶した文章を思い出して、合体すればいいわけですから、思ったほど難しい作業ではありません。

予想問題が完全的中するというシチュエーションがあり得ない以上、試験本番で最もラッキーな状態とは、「数問は憶えた解答をそのまま書けて、残り数問はくっつける作業のみで対処できた」というケースなのです。

 

●「くっつける」を意識して解答を作成する

記述試験の本番で「くっつける」作業をスムーズにやるために、何をすればいいのでしょうか?

当然ですが、まずはできるだけ多くの解答を作成する必要があります。

「くっつける」ためには、「くっつける」文章を用意しておく必要があるからです。

もちろん、それだけではありません。ここでは、技術士試験に関するテクニックをご紹介します。

技術士試験は文字数に制限があります。

このため、文章を無造作にくっつけたら、原稿用紙におさまらない場合があります。

このため、「くっつける」作業を行った結果、解答がどれくらいの行数になるのか完成形をイメージできるようにしておく必要があります。

完成形のイメージを目指して、丁度いい長さの文章を切り取って、「くっつける」作業をすればいいわけです。

この作業を試験本番でやり遂げるためには、以下のことをやるべきです。

 

各段落の同じ行数に統一する。

 

これが記述式試験対策のテクニックです。

各段落の行数をできるだけ統一することにより、文章を「くっつける」ことが容易になります。

例えば、1つの話題を8行程度(200字程度)に統一するとします。

そうすると、原稿用紙1枚が24行(600字)なので、3つの段落で解答を構成することになります。

上図で考えると、解答Aの一部と解答Bの一部をくっつける場合、何の工夫もしていなければ、原稿用紙1枚にまとまるかどうか、すぐにはわかりません。

しかしながら、1つの段落を8行でまとめていれば、「解答Aから2つの段落、解答Bから1つの段落を持ってきて、くっつければ1枚になる」という具合に、最終形をイメージすることができます。

試験本番で「くっつける」作業をスムーズに行うため、解答を作成する練習の段階で、1つの段落を8行程度に調整する必要があります。

8行ジャストにするは難しいと思いますが、最小でも6行、最大でも10行にまとめるよう努力するべきです。

また、8行で構成される一つの段落で、取り上げる話題を何にするのか意識することも重要です。

1つの段落で、1つの話題を完結するのが理想です。

難しいようなら1つの段落に2つの話題を書いてもいいです。

重要なのは、その段落で、何について記述しているのか、説明できるようにまとめることです。

これをやっておくと、問題文の内容に合わせて、「くっつける」作業を行うことが容易になります。

それから、全体の文字数を調整する際に便利なのが、「末文」の部分です。「末文」は、「前文・主文・末文」のうち、最後に今後の展望等に言及するところです。

主文がメインなので、末文の文字数が少なくても、全体の内容に大きな影響はありません。

最終的な文字数の調整は末文でやればいい、そう考えて解答を作成すれば楽です。

特に、必須科目については、記述項目が指定されています。

必須の最後の記述項目は、倫理と社会持続性です。

これが末文です。

この記述項目は、どの問題も共通で、書くべき内容はほぼ同じです。

このため、倫理と社会持続性について、8行くらいで文章を作っておき、試験本番で、文字数の微調整をすれば良いわけです。

 

 

(2)ひろげる作業

 

●ひろげる作業とは

前述したとおり、試験本番では、「くっつける」のみで対応できるのが理想的です。

しかしながら、そうならないからこそ苦労するわけです。

実際の試験では、「くっつける」ための解答が存在しない事態に遭遇します。

例えば、原稿用紙3枚分の記述を求められているのにも係わらず、1枚半分の文章しか記憶していないというケースです。

ここであきらめてしまうと、試験の結果は明らかです。

合格するためには、こうした状況下でも次のように考える必要があります。

「記憶をたどって、どうにかして文章を書き足そう」

これが「ひろげる」という作業です。

繰り返しになりますが、予想問題が完全的中することはないです。

合格するためには、「ひろげる」作業を行う必要があります。

ただし、試験本番でいきなり「ひろげる」作業をするのは無理です。

こんなことができるのは、特段、試験勉強をしなくても合格する能力のある天才・秀才です。

つまり、私たち普通の人間は、勉強する段階で「ひろげる」作業を行う準備を整えておく必要があるわけです。

それでは、具体的に何をするのでしょうか?

試験本番で「ひろげる」作業をやるためには、出題されたテーマに関する文章と情報が必要です。具体的には、次の2つのことを事前に準備しておく必要があります。

 

 ①甦らせるための文章

 ②整理した情報

 

●甦らせた文章を書き込む

甦らせるための文章といっても、そのためにわざわざ文章を作るわけではありません。

勉強するプロセスで自然な形で甦らせることができる文章を作ることになります。

では、甦らせるための文章は一体どこにあるのでしょうか?

これまで述べてきたとおり、解答の作成は、「70%の解答」の作成と「100%の解答」という二段階で行います。

「70%の解答」の段階で多くの文章を作成したとしても、「100%の解答」の段階で原稿用紙以内にまとめるため、文章を削除します。この削除した文章が重要になります。

つまり、甦らせるための文章というのは、「70%の解答」の中に存在するわけです。

編集作業を経た後の解答には、甦らせるべき文章は残っていません。

「70%の解答」の文章量が相当量あってこそ、編集作業の際に削除する文章が存在します。

つまり、文章を甦らせるためには、「70%の解答」を作成する際、調べたこと、思いついた、様々な情報をとくにかく多く書き出しておく必要があります。

できるだけ多くの文章を作成することが、結果的に、甦らせるための文章を作ることを繋がります。

結局のところ、こうした地道な努が、試験本番で「ひろげる」作業を行うことを可能にするわけです。

 

 ●整理した情報を書き込む

予想問題が的中していない状況下で、これまでに作った解答の一部を甦らせることで対応できることがあります。

しかしながら、そうはならない場合もあります。

つまり、出題されたテーマについて、これまでに文章を作ったことがない状況です。

これはかなりのピンチです。

それでも、試験本番では何とか文章を作成して、原稿用紙を埋める必要があります。

そんなピンチを迎えた時は、次のように考えなければならないです。

「どうにかして、あの情報を文章化しよう」

では、その情報は一体どこに存在するのでしょうか?

 

それは「情報の体系化です。

 

情報の体系化では、各テーマに関する「現状・問題・対策」を整理することの重要性について説明しました。

具体的には、各テーマについて、下表を作成します。

 

 

この表に記されている情報があれば、試験本番で「ひろげる」作業が可能になります。

予想問題が完全的中しない以上、「ひろげる」作業を念頭においた準備が必要になります。

「情報の体系化」は、解答を作成するための作業ですが、同時に、「ひろげる」作業の準備になるわけです。

試験に出題される可能性のあるテーマについて、自分目線で「現状・問題・対策」を作ります。

この過程で、多くの情報を頭の中にインプットすることができます。

また、「現状・問題・対策」は、試験直前の最終チェックにも使うことができます。

試験直前、勉強の蓄積がピークになります。こうした時期に「現状・問題・対策」を見ると、ちょっとした情報のインプットであっても、既存の知識と結びついて、記憶に残りやすいです。

あらゆる試験に共通して言えることですが、情報の体系化をしっかりとやることが重要です。

技術士試験の場合、できるだけ多くのテーマについて、「現状・問題・対策」を作るべきです。

そうすれば、試験本番で「ひろげる」作業を実施するこができ、その結果、合格を手繰り寄せことができます。

 

●抽象的な予想問題により「ひろげる」能力を磨く

「ひろげる」作業を行うため、①甦らせるための文章、②整理した情報を準備することの重要性について話をしてきました。

実は、これら以外に、もう一つ「ひろげる」能力を向上させる方法があります。

この方法は簡単ではないですが、有効か方法です。

それは、抽象的な予想問題を用意して、解答を作成するというものです。

例えば、以下の問題が出題されたとします。

 

①送配水管の「漏水防止」の方法を数例挙げ、その内容を説明せよ。

 

受験生が「漏水防止」ではなく、「漏水調査」について解答を用意していた場合、その解答をそのまま書いたら不合格になってしまいます。

逆に、受験生が「漏水防止」に関する解答を用意していて、試験本番で「漏水調査」について出題されたケースを考えてみます。この場合、事前に用意していた「漏水防止」に関する解答の中から、「漏水調査」の部分を抜き出せば、ある程度の解答を作ることが可能です。

これは、「漏水調査」よりも「漏水防止」の方が、範囲が広い概念だからです。

言い換えれば、「漏水防止」は抽象度が高いテーマであるため、これについて勉強をしておけば、抽象度の低いテーマについても柔軟に対応できるわけです。

そう考えると、抽象度の高い予想問題を用意して、その解答を作成しておけば、どのような問題に対しても柔軟に対応できることになります。

例えば、次のよう抽象的な予想問題を用意して、解答を作成します。

 

③送配水管の「維持管理」について説明せよ。

 

送配水管の「維持管理」は、「漏水防止」、「漏水調査」だけではありません。

水質・水圧・流量の常時監視、マッピングシステムによる管路情報の管理、管内停滞水に起因する残留塩素濃度の管理、管内の異物の除去等も実施する必要があります。

こうした抽象的な問題に対しては、維持管理全体について体系的に説明する必要があります。

こうした解答を作っておけば、試験本番で出題されたのが「漏水調査」であったとしても、「漏水防止」であったとしても、何らかのことを書くことができるはずです。

抽象的な予想問題について解答を作ることで、予想が完全に外れるという事態を回避できます。

抽象的な予想問題の解答を作ることにより、どのような問題にも柔軟に対応できる能力を身につけることも可能になります。

ただし、これには相応の労力が必要になるため、時間的に余裕のある方が挑戦すると良いでしょう。

 


 

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