④R2技術士試験の解答例(基盤強化)(必須Ⅰ-2)" | 技術士を目指す人の会

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勉学を通じて成長をナビゲートする講師。
2008年に技術士合格後、「技術士を目指す人の会」を立ち上げ、多数の技術士を輩出。自身も勉学ノウハウを活かして行政書士、世界史検定2級、電験三種に合格。

令和元年度の技術士二次試験の解答例を作成しました(以前投稿したものを修正しています)。

上下水道の必須Ⅰ-2です。

ひとつ前で問題文の解説をしています。見たい方は こちら をどうぞ。

 

 

【解答例】

1 上下水道事業の安定的な継続に関する課題

上下水道事業は、将来に渡って国民が快適で衛生的な生活を送ることができるよう、事業を安定的に継続する責務があり、以下の課題に取り組む必要がある。

(1)厳しい財政状況への対応

人口減少、水需要減少により上下水道事業の財政状況は厳しくなっている。財源不足が原因で災害事故対策、地球温暖化対策等が滞ることがないよう、利用料金の適正化を図るとともに、工事のコスト縮減、広域連携等による効率化を進める必要がある。

(2)技術者不足への対応

労働人口の減少、ベテラン職員の退職等により技術者不足が生じている。施設の更新、維持管理を適切に実施するため、官民連携による技術者の確保、自動化や省力化に繋がる新技術の導入を行う必要がある。

(3)施設の老朽化への対応

上下水道は膨大な数の施設で構成されており、これらは経年劣化が進んでいる。施設の事故リスクを回避し、ライフライン機能を維持するため、老朽化した施設の機能回復を図る必要がある。

(4)上下水道未普及地域への対応

上下水道事業の普及率は高い水準に到達したが、未普及の地域が残存する。公衆衛生の向上の観点から、従来形の拡張事業ではなく、地域の実情に応じた多様な給水方式や汚水処理方式を採用する必要がある。

 

2 最重要課題に関する解決策

前述の課題のうち、施設の老朽化は、上下水道の機能停止を招き、社会的な影響が甚大である。このことから、これを最重要課題と位置づけ、その解決策を以下に示す。

(1)点検・修繕(事後保全的な対応)

施設の点検を定期的に実施し、その状態を把握する。著しい機能低下、故障、損傷、漏水等が確認された場合、速やかに修繕を行う。

また、施設台帳を作成し、施設の基本情報、点検結果や修繕履歴等をデータベース化し、維持管理に活用するべきである。

(2)長寿命化(予防保全的な対応)

施設の強度、耐久性、腐食状況等を把握するため、詳細な調査・診断を行う。この結果に基づき、構築物の内面保護やコンクリートの打ち替え、管渠の更生、設備の分解補修等を実施し、施設の長寿命化を図る。

また、施設の耐震診断を行い、耐震性が不足している施設については耐震補強を行う。

(3)更新(予防保全的な対応)

施設の長寿命化で回復できる機能と能力には限界があるため、適宜更新を行う必要がある。上下水道施設は、構築物、管渠、機械電気設備等で構成されており、それぞれの材質、構造等を考慮して耐用年数を設定する。さらに、1つのシステムとして一体的に更新する必要性、施設の重要度等を考慮し、更新対象範囲と更新時期を見極める。

 

3 解決策の効果と懸念事項

前述の解決策を実施することにより、ライフラインを維持でき、管渠の破損等に起因する道路陥没事故等の二次災害を回避することができる。

ただし、解決策を実施するためには膨大な費用が必要であり、実現性を確保するため長期的かつ総合的な計画を策定する必要がある。

この対策として、アセットマネジメントを実施する必要がある。具体的には、全施設の維持管理、更新等に要する費用を算定し、将来的な財政収支に基づき事業費の平準化を図る。さらに、こうした長期的な計画をPDCAサイクルにより継続的に改善する。

また、官民連携や広域連携等を推進し事業の効率化を図ることにより、施設の長寿命化や更新の事業費を確保する必要がある。

 

4 業務遂行において必要な要件

分析、評価、計画、設計、施工、維持管理等、業務遂行の全段階において、公衆の安全、健康及び福利を最優先にする必要がある。また、社会、文化及び環境に対する影響を予見し、持続可能性を勘案して業務を進める必要がある。

 

※ ひとつ前を見たい方は こちら をどうぞ。

 

【参考】

●必須科目対策に必要な下水道の基礎

※マネジメントサイクルについては こちら をどうぞ。

※アセットマネジメントとストックマネジメントの違いについては こちら をどうぞ。

※「持続と進化」については こちら をどうぞ。

※「資源の循環」については こちら をどうぞ。

※「水の循環」については こちら をどうぞ。

※「下水道による排除・処理」については こちら をどうぞ。

※「新下水道ビジョン加速戦略」については こちら をどうぞ。

 

●試験対策

※ 技術士合格法のテキストを見たい方は、 こちら をどうぞ。

※ 令和2年の予想問題と解答例を見たい方は、 こちら をどうぞ。

※ 令和元年の試験問題と解答例を見たい方は こちら をどうぞ。

※ 【技術士対策】のコラムを読みたい方は こちら をどうぞ。