旅の思い出「東海大学海洋科学博物館」で深海魚の驚きの生態に迫る(静岡県) | ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうとおサル妻の山旅日記

ひつぞうです。
おサル妻との山旅を中心に日々の出来事を綴ってみます。

東海大学海洋科学博物館

℡)054-334-2385

 

往訪日:2020年10月12日

所在地:静岡県静岡市清水区三保2389

営業時間:9時~17時(火曜定休)

料金:(高校生以上)1500円、(子供・シニア)750円

駐車場:500円

※JAF優待あり

 

≪チョウチンアンコウは果たして異形なのか≫

 

こんばんは。ひつぞうです。南信地方登山の旅の翌日は、旧清水市の三保の先端にある海洋科学博物館を訪れました。ここは日本で唯一海洋学部をもつ東海大学の附設機関なのです。子供の頃に海洋科学が死ぬほど好きだった僕には憧れの場所でした。「海洋学」とは水産資源や海洋地下資源、あるいは気象変動など、日常生活を支える基礎研究を行う総合科学です。

 

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浜松市内で車中泊した僕らは、窓から射し込む強い日差しで眼を覚ました。この日は平日。閑散とした新東名高速道路にゆっくりとすべり込み、一時間ほどで懐かしい静岡の街についた。そして、庵原の茶畑を過ぎて、かつて造船の街として賑わった三保の先端に向かう。

 

 

開場は午前九時。当然並ぶ者などいない。どことなく昭和の雰囲気が残る建物に強いシンパシーを感じながら入場。

 

 

施設内部は水族館マリンサイエンスホールメクアリウムの三ステージから構成される。まずは一階の水族館へ!

 

まずは南海のラグーン

 

最初に小さいながら珍しい生物が展示されていた。気になったものだけ紹介。

 

≪ニシキテグリ≫

 

サンゴ礁に暮らす熱帯魚。まるでベルサーチのスカーフ。とても小さいね。

 

「世代がバレるにゃ」サル

 

≪ノコギリウニ≫

 

同じくサンゴ礁に棲息する大型のウニ。オウサマウニ属なんだよね。

 

「食べられるのち?」サル

 

さあ。美味しくないんじゃない?

おサルおやめよ。ウニ見たら食えるかどうか考えるの。

 

≪セノテヅルモヅル≫

 

「変な名前だにゃ。どれがその生き物なのち?」サル

 

えーとね。この太い部分…じゃなかった。これ全体がヒトデの仲間なんだよ。

 

「げっ!」サル

 

枝状の触手に餌を絡め捕るんだって。ウニと同じ棘皮動物なので、茹でで卵巣を食べると意外に美味らしい(自己責任で。というより一般人には入手不可)。

 

≪スベスベマンジュウガニ≫

 

以前鑑賞したものは若い個体だったので甲羅の網目模様がはっきりしていたけどこれは大型。面白い名前をしているが、フグ毒と同じテトロドトキシンを含む、食べてはいけない猛毒甲殻類なんだよね。

 

≪マンジュウヒトデとコブセミエビ≫

 

もうね。ウルトラ怪獣のデザインそのものでとっても惹かれるフォルムなの。

 

 

大型海遊槽も貸し切り。

 

 

「すっごく人相悪い鮫だにゃ」サル

 

シロワニだよね。たしか襲わない大人しいタイプだったような。

 

「邪魔すると襲うって書いているよ」サル

 

むー。忘れた(笑)。それよりも恐ろしい生態エピソード知っている?鮫って卵胎生だよね。

 

「卵がメスのお腹の中で孵化するっていう…」サル

 

そうそれ。この鮫もメスのお腹でベイビーが生まれるんだけど、最初に生まれた仔鮫が他の卵や嬰児を食ってしまうんだよ。これを「子宮内共食い」というんだ。もともと鮫って共食いするけどね。

 

「怖~い!」サル

 

≪リュウグウノツカイ≫

(奥がオス・手前がメス)

 

駿河湾ではときおりリュウグウノツカイが海面に浮上したというニュースが流れるね。

 

「地震の前触れって言われるにゃ」サル

 

この二体は1989年10月20日に定置網に掛かっているところを同時に捕獲されたそうだ。

 

 

生きた化石と呼ばれる古代鮫ラブカの研究は、以前訪れた沼津港深海水族館アクアマリンふくしまでも進められているが、そのパイオニアがここなんだ。

 

 

それでは駿河湾の海を覗いてみよう。

 

 

ウツボも種類が多いよね。いちど高知で食べたことがあるけど。独特の味がしたな。

 

≪トゲチョウチョウウオとハタタテダイ≫

 

これとかツノダシを見るとパチンコのギンギラパラダイスを思い出すのは僕だけか。

 

 

「これで今日のランチは決まったにゃ」サル

 

鰯尽くし定食?

 

「ウイウイ!」サル

 

 

「このあたりは高級魚だにゃ」サル

 

クエを見ると俳優の志村喬の顔が思い浮かぶよ。

 

そしてお待ちかね。駿河湾の深海魚コーナー

 

≪深海魚の代表選手チョウチンアンコウ≫

 

こうしてみると異形の生物なんだけど何故そう感じるかっていうと…

 

「バランスが悪いんじゃね」サル

 

そうそう。そうなんだ。例えば口が巨大だったり、目が小さかったり、巨大なレンズみたいだったり、あるいはブヨブヨだったりとかね。深海という悪条件で生き延びるには、少ない餌を確実に捕食することが必要だし、光のない、高水圧、低温という限界状況に耐えるためには、なにかを異常発達させるしかない。僕らはシンメトリカルなものに安心感を覚えるようにできているが、深海魚はその真逆の存在なんだね。

 

≪ビワアンコウ≫

 

楽器の琵琶に似たこの魚の横腹(黒〇のなか)に注目していただきたい。

 

「なにかくっついているにゃ」サル

 

そう。これビワアンコウの雄なんだよ。深海のアンコウの仲間は雄が雌に寄生して、血管を繋いで栄養を吸収するものがいる。次第に内臓も退化して最後は精巣だけになるそうな。凄まじい遺伝子戦略だね。

 

「ひつもおサルに寄生してるよにゃ」サル

 

チビッコおサルに寄生したら、おサル動けなくなるよ…。

 

 

まるで模型のようだ。

 

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この水族館の特徴は「展示」そのものだけではなく、生態研究の説明に注力している点。是非とも好奇心豊かな子供たちにはどんどん来場して欲しいと思ったよ。

 

 

ホウライエソの仲間が発光する理由は、捕食ではなくて、海底にうつる自分の影を消して、食者から身を守ることにあるんだって。知らなかった。

 

 

定番の発行魚マツカサウオ。

 

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次は珍しい生態コーナー。

 

 

群れなすサクラダイに注目して欲しい。鮮紅色に白斑のあるオスと背鰭に黒い斑紋のあるメス。それとどちらでもない中間型がいる。実は生まれた時のサクラダイは全てメス。それが成長過程で生殖腺が変化してオスに変化するものが現れる。これは東海大学の野外調査研究によって明らかにされた。

 

 

口の中で子供を返すネンブツダイ

 

 

美味しそうな皆さん。

 

 

どうして深海魚が僕らから見れば異形に映るのか、その理由を判りやすく説明してあった。

 

10時になったので屋外展示室へ。津波の実験が始まる。

 

 

プールの端にゲートが設置してあって、上下に動くと大きな波動が生まれる。

 

 

対岸に漂着すると御覧のとおり。三保の松原は海流によって形成された砂嘴(さし)と呼ばれる地形。海抜も低く、もし、南海地震が発生すれば、上の模型のような事態が発生する。東日本大震災以前から、こうした啓蒙実験を伝えてきた業績は大きい。

 

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当館のもう一つの呼び物はクマノミの孵化研究

 

≪クマノミ≫

 

ここでは複数のクマノミが展示されるほか、産卵から孵化までをおこなうラボを見学させてくれる。

 

 

カクレクマノミの稚魚の群れ。こうして大きくなったものが1階の展示場に移される。

 

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マリンサイエンスコーナー

 

最後の呼び物。それがメガマウスザメの展示研究。

 

 

メガマウス研究でもパイオニアなのだ。

(下がメス、上がオス)

 

 

水揚げされたときはブヨブヨだが、剥製になると確かに鮫の形をしている。1989年以降太平洋沿岸で複数回発見されているが、最初に生体として御前崎沖合の巻き網漁にかかったのがこの個体だという。

サメというよりミツクリザメに似ていて吻の下から歯茎が飛び出ている。

 

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この先は海洋物理学の世界。

 

 

んでピグミーシロナガスクジラの骨格標本。

 

 

このあたりはあちこちで観ているのでスルー。

 

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最後に個人的趣味で海底レアメタルの標本を紹介。

 

 

南鳥島沖の海山(上のパネル参照)から採取したコバルト・クラスト。つまりレアメタルの団塊。

 

 

「オサルチにはできの悪いショコラタルトに見えるにゃ」サル

 

海洋地図もたくさん展示。博物館だからね。

 

≪ハドリアノ・レランドの古地図≫(1715年版複製)

 

この地図は初めて外国人の手によって、漢字表記された地図として特筆されるそうだ。

 

 

本当だ。筑後の「後」の字は怪しいけれど、よくできているよ。

 

 

ということで約二時間かけて鑑賞し尽くした。一緒になった課外学習の中学生たちはほとんど飽きていたけれど50歳のジジイは負けじと頑張った。だからちょっと今でも腰が痛い。

 

 

三保の松原ではキス釣りの釣り師たちが大勢竿を振っていた。平日なのに。ちょっと驚き。このあと昼食をとって、もう一箇所、静岡落穂ひろいの旅をつづけた。

 

(つづく)

 

いつもご訪問ありがとうございます。