何でも出来るオールラウンダーが良い!


 テクニックを教える際に『ロイヤル式はやってはダメ!、ロシア式のやり方しか認めません!』と云う様な指導をする方々が居るらしいのですが、とても下らなくて呆れてしまいます。


 多分こう云う事を言う指導者は異なって見える動かし方の根本にある同じ理論の動きという物が理解出来て居ないのだと思います。



 例えば“ピルエットアンドゥダーン”では、「脚を“アラセコンド”までロンドジャンブしてから“パッセ”にする方法(ロシア式)」と「脚を後ろから直接“パッセ”に引き込む方法(英国式)」がある事は知らない人は居ないでしょうが、この2つは同じ論理で回転力を生み出しています。


 それは“パッセ”側の脚を後ろから横まで振る事で生まれる回転力を利用していると云う事!


 勘の良い方なら直ぐに理解出来ると思いますが、直接“パッセ”に引き込んでいる時だって膝までの大腿部は“ロンドジャンブ”しているのです。 違いは脚を長く伸ばしたまま回すのか、 膝までの短い長さにして回すのかの違いだけなのです。
 脚が長ければ回すのに時間が掛かり、回転力は大きくなりますが制御が難しくなります。
 短ければ回転力は小さいですが制御が楽で、早く脚を回せます。
 つまり2つの方法は「沢山回りたいのか」、「素早く回りたいのか」と云う所で使い分けるのが適当であって流派等に拘るのでは無く両方出来なければ駄目なのです。

 それに“ピルエットアンドゥダーン”には別の理論に基づく回転力の生み出し方もあり、上記の2つが全てではありません。 沢山の方法がありその中から一つだけ選び取って、それしかやらない(出来ない)と云うのは良い事なのでしょうか?

 流派をごちゃ混ぜにしろと言っている訳ではありません。
 現代では昔のダンサーが出来なかった様な高度なテクニックをこなすダンサーが綺羅星の様に現れていますし、新たな演出と振り付けによる新作等が沢山作られています。 それに色々な流派の振付を踊る機会だって頻繁にあるのです。
 その中で旧態依然の流派に縛られるのではなく全ての流派を正しく踊りこなせる方が良いのでは無いですか?




日本は未だに19世紀の価値観!


 流派(メソード)と云うのは振付家の作風を表現するのに不可欠の物でワガノワ流の作品を英国流やバランシン流で踊ってしまっては台無しになりますし、バランシン流の作品をワガノワ流で踊っても元の作品とは違う物になってしまうので流派の決まっている振り付けの中で異なる流派のやり方を混ぜるのは良くありませんが、新進気鋭の振付家の作品ならば流派を混ぜようがそれがその人の表現したい物ならばダンサーはそれに従って踊れなければなりません。 『私はこの流派のやり方でしか踊れません』なんて各ダンサーが言おう物なら踊りを揃える事なんて絶望的ですし。


 現代のダンサーは全てのクラシックメソードだけでなく現代舞踊のメソードまでの何でも踊れるオールラウンダーなダンサーで無ければ駄目なのです。


 昔は移動が大変で世界中の人と交流するのが難しかった事もあり各地で独自な流派が生まれたのでしょうが、現代は世界中の人とあっという間に繋がれる時代です。

 あまり流派に拘り過ぎると時代に取り残されてしまいます。 と云うか日本のバレエ界は未だに19世紀の価値観に縛られていて欧米からはかなり遅れていると思いますので、テクニックだけでなく思考もどんどん更新して行きたいですね。


 もっと広い世界に目を向けましょう!





 9月7日(土)めるもバレエスタジオでの講習会参加者募集中です。


旗と旗竿の関係の様!


 脚を“タンデュ”させる為に『膝を確りと伸ばし切って!』と指示しても正しく膝を伸ばせるダンサーはあまり多く居ません。 特に軸脚側の“タンデュ”が出来ない生徒は本当に多いのですが、『膝を伸ばす・脚を伸ばす』を誤解している事が原因です。



 『膝を伸ばす・脚を伸ばす』を理解する為に脚を旗に例えて考えてみましょうか。


 旗って旗と旗竿で出来ていますよね。 そして旗竿は細長くて曲がり難い素材で、旗は布地等の柔らかい素材で出来ています。

 旗竿は骨、旗は筋肉だと考えてみて下さい。

 旗竿は立てて置いても曲がりませんが、旗は旗竿に取り付けて置くと風などでゆらゆら動いてしまいます。 揺れ動くと云う事は旗自体には布地をピンと張る力は働いていないと云う事になりますね。


 生徒達は旗竿を見て『伸びている』と考えています。 つまり骨格的な状態で伸びているのか曲がっているのかを判断しています。



 しかし正しくは旗竿だけでなく旗自体がピンと張れて居るかも見る必要があるのです。 つまり筋肉自体も引き伸ばされて居なければ膝が伸びている、若しくは脚が伸びているとは言いません。



 膝関節は反張するまで伸展させているのに『膝が伸びていない』と注意されてしまうのは何故?と疑問に思っている方、それはこの様な理由からなのです。



 『軸脚に腰掛けないで』とか『筋肉を固めないで』若しくは『もっとリラックスして』等と注意されるのは筋肉が休んでいたり、逆に力を入れ方を間違えて縮めている事が見て取れる為です。



 そして脚の筋肉だけを切り取る様に伸ばす事は不可能で脚に続く身体、腕、首等の全身へと伸ばす意識は繋がっているので、部分毎に伸びているかを確認する事は良くありません。 必ず全体を俯瞰して全ての筋肉が繋がって伸びているかを確認する様にレッスンしましょうね。





9月7日(土)、めるもバレエスタジオの講習会受講者募集中です!


何処で回転力を作る?


 “ピケアンドゥダーン”をするのにどの様に回転力をつけるのか知っていますか?






 ①“パッセ”側の脚を振る!

 ②軸脚を回す!

 ③“パッセ”側の腕を振る!

 ④軸脚側の腕を振る!






 さあ、どれが正解でしょうか?






 上に上げた事は、ちょっと大雑把で乱暴な表現なのですが、実は①〜④まで全てやっても大丈夫なのです。




 但し条件があって身体のスクエアは崩さない事(肩と腰の動きがズレない)、両腕が左右対称に動く事と背中より後に行かない事、軸脚の踵と“パッセ”の膝が常に同じ方向を向いたままで回転している事。



 上記の条件を全て満たしていれば、どの様に回ろうとしても大丈夫です。




 よく『“パッセ”の脚は回しては駄目』と言われるのは軸脚の踵が膝の動きについて来られないからで、つまり軸脚が“アンドゥオール”をキープ出来ないからなのです。

 軸脚がウチマタに動くと骨盤の回転方向と反対側に軸脚が動いたと云う事ですから骨盤の回転にブレーキをかけている状態なんですよね。 だから『“パッセ”の脚は回さない!』と言われるのです。




 でも軸脚(骨盤)が“パッセ”の動きについて行かれる(アンドゥオールをキープし続けられる)のなら“パッセ”の脚を振り回しても全然問題はありません。



 同じ様に腕だって体幹のスクエアを崩さずに左右対称を守れれば自然と脚と連動して動くのでぶんぶん振り回しても全然問題ありません。

 回るのが不得意な人は両腕の繋がりが無くバラバラに動いているからで左右対称に動かせるだけで多くの事が改善します。




 じゃあ、それさえ守れば簡単に出来るかと言うと、先述した条件を守る事が出来ない人が多いんですよね。

 分析力に優れていれば先述の条件が回転を助けてくれるロジカルな方法だと気付けるのですが、そうではない人にとっては身体を制御すると回れる気がしないのでしょう。




 回転系のテクニックは回転しようと意識すると身体の制御に失敗して崩れる事が多くなり、それとは逆に手足の使い方を正確に行う事だけを意識すると身体を上手く制御して成功率が上がるので欲張っては駄目なのです。





 欲を捨てて無心に正確な身体のコントロールに心血を注いでみて下さい。







 9月7日(土)のめるもバレエスタジオの講習会受講者募集中です。
https://www.ballet-arts.jp/


https://ameblo.jp/hidecchi-1967/entry-12687291933.html



『作用反作用の法則』を知っていますか?


 これは「物を押すと押した力の分だけ押し戻される!」と云う物理学(力学)の法則なのですが、この『作用反作用の法則』はバレエの身体の動きを説明したり、自分のイメージする身体の動きを実現する為に有用で解剖学よりもずっと重要度が高いです。


 専門的な智識と用語に関しては私も疎いので『作用反作用の法則』に関しては下記のサイトをご覧下さい。




 バレエにおける『作用反作用の法則』は「床を押す⇔腰が押し上げられる」と云うのが一番わかり易い例かと思いますが、実はあらゆる動きに『作用反作用の法則』は関わっています。




『作用反作用の法則』を使って“アンドゥオール”しよう!


 例えば“脚のアンドゥオール”では床からの反作用を利用して訓練する方法が有効です。

 脚を“アンドゥオール”させるのに大腿骨だけを最初から外旋させられる人は殆ど居ませんので“アンドゥオール”の為の筋力と柔軟性を訓練しなければなりませんが、その訓練法が『作用反作用の法則』に則って行うのが一番効率良く“アンドゥオール”の為の筋力が付きます。


 その方法とは
『足の裏で床を内向きに回そうとする力を掛けて行く』
             と云う方法です。


 床はどんなに回そうとしても動きませんから床に対して働き掛けた内向きの力の作用に対して脚には外向きの力が反作用として返って来ます。

 そして足の裏で床を内向きに回そうとする動きは自分の脚の土踏まずを上げ、足首と膝関節を真っ直ぐに引き上げる方向に働いて行くのです。

 つまり、つま先を内側に回すかの様に使うと大腿部の筋肉が外向きの正しい方向に働き出して大腿骨から外旋した確りとした“アンドゥオール”の訓練になるのです。

 そして正しく訓練を積み筋力が充分に付けば股関節から先を自由に外旋、内旋させる事が出来る様になります。


 
 これとは逆に「つま先を外向きに」意識すると全てが上記とは正反対に働いてしまい、つま先は横向きでも大腿部は正面向きになろうとし、膝関節・足首が捻れて土踏まずも潰れて真っ直ぐに立てなくなるので、『つま先を開いて!』と云う注意や意識と云うのは良くないのです。





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『体幹』と『体軸』!


 バレエを踊る上で両脚、片脚で立ちバランスを取る事は当然の様に出来て居なければなりませんが、どうしたら正しく立てるのかと云う理論を理解した上で訓練しなければ正しく立てる様にはなりません。 ですから先ずは理論を学ぶ必要があるのです。




 皆さんは『体幹』と『体軸』とは何かを理解していますか? 多分違いがよく解らない人の方が多いのでは無いでしょうか? ですから先ず『体幹』と『体軸』の違いを学びましょう。



 『体幹』とは全身の首から上と四肢を除いた残りの部分です。 肩も胸もお腹もお尻も全て体幹です。 何か漠然と軸的な物を想像していたかも知れませんが体幹とは胴体の事なのです。


 『体軸』の方は身体の中を上下に貫いている線の様な意識で脳天から骨盤の底まで、体幹の中を通って居ます。 『体軸』には『体幹』の様な実体が無いのが特徴で『体軸』を意識出来る人は『体幹』が安定し、意識出来ない人は『体幹』が不安定となります。


 『体軸』を感じないままプランク等の体幹トレーニング等を行っても体幹の対称性が崩れて訓練の目的とは正反対の結果を招く恐れが高くなるので無闇な体幹トレーニングをするより自分の『体軸』を作る意識を育てる方が『体幹が強く』なります。



 ここまで『体幹』と『体軸』の違いを説明しましたが、両脚や片脚で自立する為には、またはバランスを取る為には、どちらが必用か理解出来たと思いますが、如何ですか?




 必要なのは

 『体軸』ですよね!




 『体幹』は『体軸』をコントロールすると一緒に動いてくれる存在であって『体幹を強くする』とは即ち『体軸の強さ』なのです。 同じ様に『体幹の崩れ』は『体軸の崩れ』と言い換えられます。



 『体幹』と『体軸』の違いや働きを理解して始めてバレエの正しい立ち方や長座が出来るので“プリエ・タンデュ”の前に『体軸』を学び、身に付けて下さい。

 



 『体軸』を感じる為の方法については、またいつか書きたいと思います。

 確実に理解したいと云う方は直接学びに来て下さいね。







 9月7日(土)にめるもバレエスタジオでの講習会の受講者募集中です。
 『体軸』もこの日にお教えします。


『効率の良い練習方法を見つけちゃだめ


 これ凄く良い言葉ですよね。


 でも、これは効率の良い練習方法をしては駄目と云う意味では無く、『どんなに効率的な練習方法でも練習時間が短かったり少ない回数しか練習しないのならば効率良く上達は出来ない』と云う事を言っている訳なのですが、読解力に乏しい人だと意味を取り違えて『効率の悪い練習方法が良い』と捉えそうですね。





 以前わたしが教えていた生徒の話ですが、良くない癖を抜く為に『暫くの間はピルエットは一回転だけを正確に練習しなさい』と指示した事があったのですが一月と経たない内に文句を言って来ました。


 『いつになったら、沢山回って良いんですか? 私は早く上達したいんです!』


 早く上達させる為に最速で上達出来る練習方法を教えて上げたのですが上記の生徒は『コツコツと基礎練習を積み上げて完全に身に付ける事が上達への近道』と云う当たり前の事が理解出来ずに場当たり的な練習に終始して、コツコツ練習する事自体を止めてしまいましたが、きっと私に『あまり努力しなくても直ぐに上達する効率的で魔法の様な指導』を期待して居たのでしょうね!

 そんな物が在るのなら誰も苦労はしませんし、誰でも努力せずにエキスパートに成れてしまいます。 それに指導者がどんなに優れて居ても本人が頑張れなければどうにもなりませんしね。


 私としては長年に渡って染み付いた悪い癖を矯正するのに半年から1年位は掛かると考えていて本人も『頑張って綺麗に踊れる様になりたい』と決意を話していたのに、結局本音では努力したくなかったと云う事だったんですね。



 巷には『運動せずにダイエット出来る』とか『器具を装着するだけで筋トレが出来る』等など努力せずに成果が得られると云う謳い文句の商品が溢れていて、それに惹かれてしまう人が多い様ですが、ハッキリ言わせて貰います。



『努力せずに成果は得られません!』



 『効率の良い練習方法を見付けてはダメ、ちゃんと時間を取らないと』と云う言葉は怠惰に流されて努力を怠り勝ちな人達への叱咤の言葉なのです。 私もこう云う言葉に触れると気持ちを新たにして頑張ろうと云う気力が湧いて来ます。 皆さんも時間を取って練習を頑張りましょう






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テクニックが出来たとは?


 バレエのテクニック“ピルエット”“アッサンブレ”“シャンジュマンドゥピエ”等など初歩的なテクニックでも生徒には最初は難しいと感じる事でしょう。 でも回れる様になり、跳べる様になると段々苦手意識も薄れて堂々と自信を持って踊れる様になると思います。 ここまでテクニックのレベルが上がると『自分は出来ている!』と考えてしまい勝ちですが、本当にそうでしょうか?



 実はここがその後のレッスンの受け方を決める分水嶺(ぶんすいれい)とも言える所で、無意識の内に基礎に忠実な踊りを目指すのか、自己流の踊り方に傾いて行くのかの、どちらかに分かれて行くのです。



 以前『バランスが取れているからと言って正しい訳では無い』と話しましたが、これはテクニックにも言える事で『跳べて回れてもそれが絶対的に正しい訳ではないのです!』 何故なら体幹が崩れて居てもバランスが悪くてもテクニック的な事は行えてしまう事があるからです。

 クラシック以外では体幹を真っ直ぐの位置からわざわざズラしてテクニックを行う事も多く、それは意識的に行ってコントロールした結果ですので体幹が崩れていても正しいのですが、クラシックでは体幹が崩れる等の形式から外れた方法でテクニックをやっても評価はされないのです。






一つずつ順番に動く事が結局は最善策!


 回転系のテクニックは“パッセ”の形で回る事が多いのですが、その“パッセ”が膝は骨盤の真横になっていても“アンドゥオール”はされていないと云う事がプロダンサーでも往々にしてあります。

 開脚と“アンドゥオール”は別物なので膝を横に持って来ただけでは“アンドゥオール”では無く“アンドゥオール”が出来ていなければクラシックの基礎通りの正しい方法では無いと云う事になります。



 動きを端折ると云う事も多くのダンサーがやっています。

 どの様な複雑なテクニックでも、一つ一つの動きの順番や速さと云う物が決まっていて、その通りに動かなければなりませんが、順番通りにやらなかったり、途中のポジションや動きを抜いてしまったりするダンサーが多いのです。
 勿論途中で何かを端折れば音楽と動きがズレますから、これでは例え何となく動けてしまったとしても『出来た!』とは言い難いとは思いませんか?
 また動きのテンポが速い時に、どうしても動きを端折りたくなる気持ちは理解できますが、動きを端折るより、時間を掛けて全てをやった方が結果的には早く動けるので効率的なのです。 こういう時こそ『急がば回れ』を実践して下さい。

 ですから全てのテクニックは先ず動きを細かく分けて一つずつ順番に、前の“パ”が終わらなければ次をやらない、“アンドゥオール”等決められた事を確実に行うと云う練習が必要なのです。


 テクニックは大雑把な把握の仕方では絶対に正しく動ける様にはなりません。 緻密な分析力、そして基礎で定められた動きの順番等を正確にやり切る意思の強さが無ければなりませんから心の強さを鍛えて行きましょう!





 9月7日(土)にめるもバレエスタジオでの講習会の参加者募集中です。
 詳しくはホームページで↓


足首が弱いから立てないの?


 ポワントやドゥミポワントで安定して立てない理由を『足首の弱さ』だと思い込む人が多い様ですが立てないのは決して足首の力の問題ではありません。


 大体足首の強さって何ですか? 脹脛の筋力の強さ? 足首がグラグラ揺れない事、それとも足裏で床を押す力の強さの事?

 『足首が強い・弱い』と皆が言う割に、それが何なのかが理解出来ていない人が多いのです。

 足首の強さが何なのか理解出来ていないと『ドゥミポワントで踵が中途半端な位置だと辛いけど、上がり切っていれば楽』と云う様な勘違い等が起こります。


 指導者やプロダンサーでさえ『ポワント等で足首が安定しないのは足首の筋力が弱い所為だ!』と主張する方が多いのですが、では脹脛や足裏に筋肉を付けたら足首は強くなるのでしょうか?


 足首の強さの本質を理解していないと足首を鍛える為と称してルレヴェを何十回もやらせるとか正気とは思えない様なトレーニングを課す指導をしてしまったりするのです。 

 近視眼的に身体の一部だけを酷使する様なトレーニングは絶対にやらせてはいけません。





足首の強さとは釣り合い力!


 私は足首の強さと筋力はあまり関係ないと思います。


 何故なら足首の強さとは『釣り合いを保つ力』だからです。


 “プリエ”の時も膝を折り畳む力と膝を伸ばす力の両方の釣り合いによって“プリエ”をコントロールしている様に足首も折り畳む力と伸ばす力の釣り合いで足首をコントロールしていて、この足首をコントロールする意識の強さが『足首の強さ』なのです。


 よく理解出来ないと云う人の為に説明すると、紐の両端を左右に引っ張って紐をピンと張った状態にします。 紐を右側に引っ張る時に左側にも引っ張る力を掛けて置けば紐はピンと張った状態のままですが、左側の引っ張る力を抜いてしまうと張りが失われてしまいます。

 次に紐を左側に戻す時に左側だけを引っ張ると紐は更に緩んで揺れだします。


 これが紐で無くて体幹だったら?


 『動かせば動かす程緩んで揺れ出す』と云う事が起こるのです。


 この様に身体を動かす際に片側だけを引っ張ると釣り合いが崩れて不安定になるので必ず反対側への引っ張りを行い釣り合いを取る事を意識するのです。


 アテールに降りる時に足首の伸ばす力と折り畳む力のバランスが崩れると踵は床に叩き付けられる様に落ちてしまいます。 これは足首が弱いと言えますよね。 でも床を押す力が弱い訳ではないので“ルレヴェ”を沢山練習させる意味が無い事は一目瞭然です。



 ここまで説明して来て聡明な方なら、私の説明は『引き上げ』の事だと気付かれたと思いますが、結局は『足首の強さ』とは引き上げが正しく出来ているかどうかと云う事に掛かっているのです。



 最初に『足首の力の問題ではない!』と言ったのは全身の引き伸ばし、つまり『引き上げ』が出来ていれば後はコントロールする意識の問題なので闇雲に足首の訓練を行うのは止めましょうね。






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“アンドゥオール”は目的では無い!


 『脚をアンドゥオールする』と云うのは目的を達成する為の手段であり“アンドゥオール”自体が目的ではありません。 しかし、それを取り違えているダンサー・指導者が多過ぎませんか?

 “アンドゥオール”が手段であり目的ではないと云う事が解っていれば指導の仕方やダンサーのレッスンへの取り組み方も変わると思うのですが誤解したままでは正しいと踊り方へとは繋がって行かないのです。



 では“アンドゥオール”とは一体どの様な目的の為に行うのでしょうか?



 “アンドゥオール”を行う最も大切な理由は『軸と体幹を安定させる為』です。


 どう云う事かを説明すると例えば独楽の軸が本体と確りと固定せずに緩く取り付けてある様な状態だと、その独楽は上手く回せるでしょうか? 上手く回りませんよね。
 何故なら軸の回転と本体の回転にズレが出て来るからです。

 軸を先に回転させたとするとその軸に引かれて本体が周り出しますが、本体を引っ張った事で軸は減速してしまいます。 そして減速した軸を今度は本体が引っ張る形で減速します。
 これが続く訳ですから最初に与えた回転力はあっという間に減衰してしまいます。
 要は上手く回らないのです。

 静止してバランスを取っている時でも軸脚と上半身が一体化して居ないと身体が揺れてしまいます。 これでは安定が取れているとは言えません。



 この様にダンサーがどの様な動きをしようとも軸と体幹がズレて動かない様にする為の一つの解答が“アンドゥオール”なのです。
 “アンドゥオール”は脚がこれ以上は外向きに旋回しない限界の所まで回しますが、脚を回し続けようとする限り限界位置に留まってくれます。 つまり“アンドゥオール”している限り軸がフラフラ動いて体幹とズレると云う事は起こらなくなるのです。

 では限界まで“アンドゥオール”せずに中途半端な位置で脚の旋回を止めたらどうなると思いますか? 中途半端な位置では脚を安定させる事が難しく脚を回し過ぎたり戻し過ぎたりと云う事が起こり、軸と体幹がズレてフラフラしてしまうので踊り難くなるのです。


 勿論“アンドゥオール”しなくても軸と上半身を一体化させれば安定的に動ける様にはなりますが、その様な踊り方はクラシック以外の時に使います。 ですからそう云う身体の使い方も勿論身に付けなければなりませんが、先ずは“アンドゥオール”を確りと訓練する事がとても大切なのです。




体幹と繋がってこその“アンドゥオール”!


 脚の“アンドゥオール”は脚だけ“アンドゥオール”していれば良い訳ではありません。

 最初に述べた通り“アンドゥオール”の目的は『軸と体幹の安定の為』なので軸脚と体幹は繋がって一体化していてこそ安定します。

 一体化と言っても固着化する訳ではなく上下に引き伸ばす事でズレて動かないようにします。

 別の考え方をすると『真っ直ぐの体幹の真下に軸脚が“アンドゥオール”されて何処までも伸びて行く』が良いでしょう。


 本当に真っ直ぐに立つ為には下に向かって身体が引き伸ばされると考えた方が体軸のズレなどを感じやすくなり余計な力を入れない様に気を付ける事も容易になります。

 『下から伸び上がって行く』と考えると意外にも体軸がズレやすく、また伸び上がり切れない事も多く力も過大に使ってしまうんです。




 バレエでは大切な“アンドゥオール”ですが、“引き上げ”や“タンデュ”と云った物と一体と言っても過言ではない位に切り離しては考えられません。 全て同時に行わなければならないので別々に考える必要さえないのですから、もはや『同じ物』と言ってしまっても良いのかも知れません。

 全てを同じ物として捉えていた方が気を付ける事が集約されて少なくなり、その分だけ他の事を考える余裕が出ます。
 振付を覚えるのが早いとか注意された事が直ぐに出来ると云う様なダンサーの頭の中はこの様に整理がされているから余裕があるのです。
 余裕を持って踊れる様に“アンドゥオール”と“引き上げ”等を一つの物として捉えて踊れる様に意識改革をしましょうね。






 次回のめるもバレエ講習会は9月7日(土)に決定致しました。 次回も沢山の方の受講をお待ちしています。


疑似科学に騙されないで!


 先日のブログで『“バットマンフォンデュ”は軸脚と動脚で動く距離が5:4の比率で・・・』と云う話題を上げたのですが、こう云う教え方をしている指導者からのレスポンスが皆無でしたので、この比率が何処から出た物か確かな情報は得られませんでした。 でもひよこ座先生から、こう云う考え方なのでは?と云う物を教えて頂いたので、それに基づいて話をしたいと思います。



 先ずひよこ座先生の予想は下記の通りです。



 『軸脚側が“プリエ”と“タンデュ”した時の骨盤と踵の直線距離の差と動脚側が“プリエ(クドゥピエ)”と“タンデュ”した時のつま先が動いた距離の比率』



 つまり動脚側のつま先が“クドゥピエ”からどれだけ動いたか、軸脚側は腰がどれだけ上下したかを言っているのでは無いかと云う事なのです。



 確かにこの様に考えたのなら5:4と云う比率が出て来たのも、まあ分からなくも無いですが、考え方がやはり少し非科学的と云うか疑似科学的に感じますね。

 だって本来なら比較する事が出来ない筈の所ですから比率だって導き出せない筈なのに5:4と云う比率が出る事自体がおかしいのです。




 先ずは比較の話からですが、比較する為には基準を合わせなければ比較出来ないので、つま先の動く距離と骨盤の動く距離では同じ基準とは言えないですよね。


 同じ基準で比べるとは、つま先ならつま先、膝なら膝、骨盤なら骨盤と云う同じ部位の移動距離を比べるべきです。



 例えばつま先なら軸脚側の移動距離は床から動かないので0です。 そして動脚側のつま先の移動距離は足や脚の長さ(個人差がある)と股関節の角度によって変化してしまいます。

 ですからつま先の移動距離自体が曖昧で比較対象にはなり得ないのです。



 動脚のつま先の移動距離が変動してしまう可能性があるのですから、軸脚の方の高低差と動脚のつま先の移動距離を比べると云う考えかた自体が成り立たない事が解りますよね?!



 それにつま先の移動と云うのは股関節で脚の角度を変化させても起きる現象なので膝関節を屈伸させなくても起きます。 また脚をタンデュする動作と股関節の角度を変える動作は同時に行えるので軸脚のタンデュと動脚のつま先の速度を変えてタイミングを合わせるなんていう考え方等は微塵も必要ありません。



 他にも両ひざの移動距離や骨盤とくるぶしの間の距離の比率とか色々と考えたりシミュレーションしてみたのですが、両脚の移動距離の比較と云う概念自体が“バットマンフォンデュ”には合わない様で、どうしても変な結果にしかならないので考えるのを止めました(笑)

 だって元々“バットマンフォンデュ”は両脚の“プリエ”と“タンデュ”を同じ様に行うだけで、それと同時に動脚側の股関節の角度を変えれば良いと云う単純な動きなんですから。


 つまり脚を動かす距離が5:4の比率で左右非対称だと云うのは大いなる虚構なのです。



 もっともらしい理論でもよく考察してみたらその理論が破綻していると云う事はよくある事です。

 世の中には『電子レンジ加熱した物には発がん性がある』とか『水を再加熱すると毒性が発生する』等の何の根拠もない荒唐無稽なデマや疑似科学の論文もどきの情報も溢れていて、それを信じてしまうダンサーもいるのですが、そう云う人は大抵基礎が理解出来ない頭脳の持ち主だったたりします。 ですからそう云う物に騙されない様に正しい知識を沢山学ぶべきなのです。
 特にプロダンサーを目指す子供は勉強を忌避する傾向があると聞いた事があるのですが、頭が優秀でなければ本当に優れたダンサーにはなれません。

 大人も子供ももっともっと色々な事を学んで行きましょうね(^_-)-☆






 9月7日(土)に次回の講習会が決まりました。 詳しい事は決まり次第追々告知して行きますのでホームページの方をマメにチェックしてみて下さい。