丸い形は弓の様になっている!


 バレエ特有の丸く形作る腕のラインって、どの様にコントロールしているのかを知っていますか?



 多分多くの人が肘と手首を曲げて腕を丸い形にまとめているだけと思っているのではないでしょうか? 




 でも実は『肘や手首を曲げて・・・』と云うのは間違っているのです。




 本当に正しいコントロールというのは腕を真っ直ぐに伸ばそうとしています。




 伸ばそうとしているのに曲がった形になると云うのは矛盾している様ですが、あくまでもコントロール方法の話なので、この様に意識してコントロールすると云う事を言っています。



 腕の形は肩の付け根と指先と肘の三点の引っ張り合いから形作られます。 だから本当は三角形になるのですが背中を通じて反対の腕と繋がって形作る事で丸い印象になって来ます。



 腕で丸い形を作っていても指先から肘、肘から肩、背中はそれぞれ引っ張り合って真っ直ぐに伸びていますよね?

 だから曲げる意識ではなく伸ばす意識でコントロールしていると云う事なのです。



 また腕が弓矢の弓の様になっていると意識する事で肘関節が簡単に緩まない(動かない)様にコントロールする事が出来ます。



 弓って弦を張る事で弓なりの形を保っていますから弦が無ければ真っ直ぐになってしまいます。 腕も肘関節を伸展させて真っ直ぐに伸びようとするのを指先と肩の間に弦が張ってあるとイメージする事で弓なりの形を整えて、それ以上肘関節が伸びないし曲がらない状態にして上げるのです。 これには『腕は曲げるのではない、伸ばすんだ!』と身体に意識させる為にも有効な意識です。




 この様に形作った腕を身体から引き離す様に引っ張る事で腕の位置と体幹が安定して回転や跳躍時のバランスが格段に安定してくれます。 逆に言うと“ピルエット”が立てない、回れない、跳躍が上手く出来ない、音に間に合わないと云う様な諸々の事は腕のコントロール方に問題がある場合が殆どなんです。




 肘を曲げると考えてコントロールしていると全てが逆に働いて、どんどん体幹が弱くなり踊れなくなりますので正しい使い方を学びましょうね(^_-)-☆





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 12月30日は火曜クラスの今年最後のレッスンとなります。 今年の火曜特別クラスはアダージオ基礎の方法論を学ぶレッスンをやって来ましたが最後の総仕上げとして金平糖のアダージオを練習したいと思っています。



 クラス定員は既に埋まっていますが、アダージオレッスンの見学とアップレッスンへの参加枠が若干残っています。

 受講料は合計5,050円で、アップレッスンはキネシオレッチ、バーレッスン、ポワントのセットとなっています。


 もし興味がお有りでしたらメッセージ、若しくはメールの方までご連絡下さい。





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『触れる』『吸い付く』の感覚が大事!


 他人の身体に触れると云う事に抵抗感を感じる日本人は多いと思います。 しかしバレエでは『何かに触れる』と云う事がとても重要な要素となっています。


 例えばパドゥドゥでは支える必要がない時でも男性が女性の腰に手を添えているだけで『支える準備は既に出来ている』と云う意思を伝えられ女性に『いつでも助けて貰える』と云う安心感を与える事が出来ます。


 手の添え方にもコツがあり単に触れるのでは無く手の平が吸盤の様に吸い付いて密着しなければなりません。 これは女性側も身に付けて置かなければならない技術で手と手、手と腰等が吸い付く様に繋がっている事で始めて男性のサポートが有効に働く様になって来ます。

 サポートの上手な男性ほど、その手は女性に常に吸い付いており、一瞬だけ離れるとしても意識だけは触れたままで途切れないので直ぐに元に戻る事が出来るのです。





 しかし『触れる、吸い付く』とはパドゥドゥに限った事では無く、一人で踊る時にも常に意識して置かなければならない事です。


 例えば『バーとの触れ方』『床と足の触れ方』が良くないと上手く立つ事も、ひいてはバーに頼らずにバーレッスンする事も出来ません。 また空気(空間)との触れ合いを感じると云う事も上手に踊る上では欠かせません。


 身体が反り返ってしまうとか肋骨が開くという事も背中側に空気の壁があり壁を押すことなく静かに吸い付くとイメージすると不思議と力が抜けて真っ直ぐに立てる様になります。 また腕全体、身体全体で空気に吸い付いている、押していると云う感覚があれば身体の引き上げを助けてくれますし、体幹と無関係に腕だけが動いてしまう事もなくなりますし腕の動きだって滑らかになります。




 踊りを上手に踊る為には自分の身体の中の事も身体の外の事も感じ取れ無ければなりませんので全身で床やバーに吸い付く、周りの空気も全て感じて触れ合う感覚を意識してみて下さい。






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骨盤の動きが俊敏性を左右する!


 『バーレッスンで基礎的な事は一通り出来ているのにセンターでの動きが悪い』また逆に『基礎的な事は滅茶苦茶なのにセンターではある程度動けてしまう』こういう事ってプロでもよく見受けられますよね。 でも何故この様な事が起こるのでしょうか?



 普通は基礎が出来ていれば動けるし、出来ていなければ動けないと考えますよね。 でもそう単純な話では無いのです。 一流バレエ団のプリンシパルクラスのダンサーでも基礎的に正しく踊っていないのに綺麗っぽく見えてスーパーテクニックを披露するダンサーは結構居ます。 それなのに動けてしまうのにはそれなりの理由があるのです。




 それは『骨盤の動き』です。




 どんなに脚の伸ばし方や身体の引き上げが完璧でも骨盤が移動しなければ“グリッサード”等の移動するパは上手く出来ません。 骨盤を回転させられなければ“ピルエット”などの回転動作も上手く行きません。 骨盤が上がらなければポワントに立つ事も高く跳躍する事も上手く行きません。 また骨盤が安定しなければバランス良く立っている事も出来ません。


 つまり基礎の良し悪しとは関係なく骨盤のコントロールが上手い人と云うのが良く動けるダンサーなのです。(綺麗かそうでないかはまた別の問題となりますが)



 とにかく動ける様になりたいと思うのなら骨盤をどの様に動かしたら良いかを考え、骨盤の動きを阻害する動作は何かを見付けて、それを排除する事が一番手っ取り早い上達法です。
 しかし骨盤の動きを阻害する動作と云うのは無意識に出て来るクセの様な物なので本人が一番気付きにくい事もあり修正するのには的確な指導と時間が掛かります。

 これって体質改善する様な物で地道にやり続けて数ヶ月から数年掛かるのが普通ですし、身に付いた事も努力を中断すれば元に戻ってしまいます。 プロダンサーでも学生時代より基礎力が落ちて行く人が多いのは学生時代の様にうるさく注意してくれる指導者がバレエ団では少ないからなのです。


 骨盤のコントロールが上手くなる為には脚を使って骨盤をどの様に押すかと云う方法を考えなければなりませんし、骨盤を押した力が正しく上体に伝わっているかの確認も必要となります。
 これらがいわゆる『引き上げ』とか『床を押す』『膝を伸ばす』『体幹を保つ』と言った注意に繋がって行くのです。





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欧州のゲネプロはプレヴュー公演!


 ゲネプロとはドイツ語のGeneral Probe(ゲネラルプローベ)の略で総稽古と云う意味の言葉です。


 日本でもバレエ公演や発表会前の総仕上げとして舞台上でゲネプロを行いますがドイツ等の欧州の劇場でのゲネプロと日本のゲネプロでは違いがあります。 何がどう違うのかを紹介したいと思います。



 ドイツの劇場等のゲネプロは公開リハーサルになる事が殆どで日本では公開される事が殆どありません。 これは大きな違いですが、実は日本のゲネプロの様な舞台稽古もゲネプロ前にやっています。 ドイツではHaupt Probe(ハウプトプローべ)と呼ぶ舞台稽古がそれでメインリハーサルと云う意味になります。

 HPは完全に本番と同じ仕様で行う舞台通し稽古なので日本のゲネプロと同じですよね。 因みに只の舞台稽古はBühnen Probe(ビューネンプローベ)と呼びます。



 GPもHPも通し稽古なので問題が発生しても振付家側がリハーサルを止める事は殆ど無いのですが、唯一リハーサルを自由に止められる存在が居ます。



 それは指揮者です。



 常任指揮者ともなれば劇場内で絶対的な権力を持っていて、それは総支配人に匹敵するかも知れません。 何しろ指揮者が居なければオペラもバレエもコンサートも何も出来ないのですから当然です。 それにオペラやバレエ、コンサートを上演する時に歌手やダンサー、楽団員は大勢居ますが必要な指揮者はたった一人だけです。
 つまり指揮者として国立劇場等と契約が結べる者とは歌手やダンサー、楽団員の数に比べると圧倒的に少なく、それだけ競争率が高くてパリ・オペラ座や英国ロイヤルバレエ団等のプリンシパルになるよりも遥かに難しいのです。 指揮者をマエストロ(巨匠)と呼称するのも頷けますね。
 そんなマエストロの言葉に逆らえる者など劇場内には居ないと言っても良いかも知れません。
 だからゲネプロだろうと演奏を自由に止められる権力が指揮者にはあるんですよね。 勿論無意味に演奏は止めませんが(笑)


 少し話が逸れましたが欧州の劇場のGPでは振付家等のスタッフの後方に観客がいてさながらコンクールの様ですがダンサー達にとっては観客が居ると云う事はプルミエと同じ様な緊張感で踊る事になります。 そしてGP後にはスタジオに戻ってダメ出しがあり必要なら翌日にプルミエ前の最後のリハーサルを行います。 そういう訳でプルミエはGPの2日後に行われます。 日本の前日や当日にGPを行うのとは大きな違いですね。

 プルミエ当日は朝のレッスンが終わると通常のリハーサルが入る事もありますが、大抵軽めのリハーサルで開演の6時間前には休憩に入り、一旦帰宅して開演2時間前に再び楽屋入りしてアップレッスン、メイク等の開演準備に入ります。 劇場に1日中缶詰になる日本の超過密スケジュールの公演とは大違いですね。

 欧州のダンサーが日本のバレエ団で客演する時などにはGPを軽めの確認程度の踊りにする事が多いのですが、それはサボっている訳ではなく、欧州ではそんな超過密なスケジュールで本番を迎える事がない為に本番で疲れ過ぎて踊りがガタガタにならない様にコンディションの調整を行っているからなのです。


 この様にゲネプロと言っても日本と欧州ではかなり大きな違いがあるのですが、それも日本のバレエ団の殆どが劇場付きや公立のバレエ団ではない所から来ています。

 日本のゲネプロは超過密スケジュールで過酷ですが、その過酷さ故に日本のダンサー達は欧州の劇場のダンサー達と比べて体力的にも精神的にも強いんです。 だから過酷なのがメリットとなる面もありますね。 ただ日本のダンサーに故障が多く、また故障したまま踊らざるを得ない状況なのはデメリットと言えるかも知れません。

 所変われば品変わると言いますが環境が違いを生んでいて面白いですよね。





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照明を作るのは大仕事!


 欧州の劇場のバレエ団ではプルミエまでの間に数回の舞台稽古があります。 その中でもとても重要なリハーサルに照明リハーサルがあります。 ドイツ語ではベロイヒトゥング・プローベ(Beleuchtung Probe)と呼ばれていて作品全体の照明プランを決定する為の最重要なリハーサルです。


 照明リハーサルでは舞台装置を本番通りに設置しダンサーはメイクをし衣裳を身に着けて舞台上に立っているか歩くだけとなり踊る事は殆どありません。 場合よっては30分以上同じ姿勢で立ちっ放しと云う事も・・・・(^_^;)


 その間、振付家を筆頭に照明、衣裳や舞台装置のデザイナー、ドラマ監修等の作品作りに関わるスタッフらが客席から舞台の照明を色々と試して自分達のイメージに合う照明を決めて行きます。 時にはリハーサルの結果、舞台装置や衣裳が変更になる事もあります。


 これを作品の最初のシーンから最後まで行うのですから物凄く時間が掛かり1回の照明リハーサルが5〜6時間に及ぶ事も・・・ リハーサル開始が大抵17時なので終わるのは23時なんて事もプルミエ前には良くある事でした。 時には1回で終わらず他の舞台稽古の際にも同時進行と云う形で行われたりもします。



 この照明リハーサルは衣裳付きで動かないので防寒具無しの身体は冷えて筋肉はどんどん硬直して行き、30分もするとガチガチで踊れる状態からは程遠くなります。 またダンサーは基本的に動くのが好きなので立ちっ放しで踊れないのは相当なストレスになり皆結構イライラします。 多分照明リハーサルを好きなダンサーは一人もいないのじゃないかな(笑) でも、その重要性を理解しているので誰も文句は言いません。 愚痴は言いますが(笑)


 まあリハーサルスケジュールに従ってスタジオに行ったのに他のパートのリハーサルが押して時間切れで結局リハーサルができずに只待っているだけの日とかも欧州のバレエ団では普通にありますが契約を交わしていて、その時間も給料が出ているのですから普通のサラリーマンと一緒で上司の指示に従って働くのは当たり前でどの様な使われ方をしようとも誰も文句は言わないのです。 日本だと月給が出ているダンサーは殆ど居ないのでこの辺りの感覚は理解し難いかもしれませんが・・・



 この様に新作の照明を作るのは沢山の人手と時間と労力を必要とします。

 『白鳥の湖』や『ジゼル』といった古典の代表作も初演や大幅な改訂が行われた際には膨大な時間を掛けて照明を作り上げて行ったのではないかと想像されます。 そしてこういう作品のデータの積み上げが発表会の際に1回のスタッフ下見だけで照明デザインを速やかに決められる素となっているのです。



 公演や発表会でダンサー達が気持ち良く踊る為に大勢のスタッフ達が影で支えてくれている事を思い感謝の気持ちを忘れない様にしましょう(^_-)-☆




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大人もジュニアも確りと役を全うしてくれました!


 5月から練習を重ねて来たバレエアーツの発表会がやっと終わりました。 怪我等で出演できなくなった人達も居ましたが、それ以外は何の事故も問題も起きずに無事に発表会を終える事ができました。

 私は大人作品の『白鳥の湖』の中のヴァリアシオン数曲の指導の他はジュニア作品の『ピーターパン』にフック船長役として出演もしましたが、もう一作品の『フェアリードール』と共に作品の構成、演出振付けが秀逸で短い時間に分かりやすく物語がまとめられていてとても良い作品でした。 踊りだけでなく演技指導が確りとしていてバレエアーツのカリキュラムにある『ドラマクラス』での演技指導が活かされているのが手に取るように見られました。 やはり幕物は演技が上手くないと話の内容を観客に分かりやすく伝える事ができませんから、こういうカリキュラムをバレエ教室で組むという事は子供達の未来を見据えて、俳優としての可能性をも伸ばして行く為の礎となると思います。 ジュニアの為のパドゥドゥも定期的に行っているので、ここの生徒は恵まれて居ますね。 こういう努力が観客の反応にも現れていたのが一出演者としてもとても嬉しく感じました。

 今年の発表会では例年以上に生徒達のやる気が感じられて凄く盛り上がりましたし、主催の愛見先生を始め各先生方の努力が結実しているのを見るとこれから益々良い生徒が育って来るのではと期待が膨らみますね。



 今回共演して下さった清水豊弘先生は谷バレエ団所属の方で演技力が高く踊りが俊敏で真面目で人柄が良い誰からも好かれる好青年で親子程に齢の離れた身体が思う様に動かない私を気遣ってくれて、2人が息ぴったりで楽しく演じられたのも彼のお陰と感謝しています。



 アトリエヨシノのフック船長の衣裳も私は凄く気に入ってメイクにも力が入り髭まで自作した所、子供達からは『面白いし、変な顔だよ!』と言われたのですが私にとってはそれが最大の褒め言葉でした。 何しろ『どうしたら観客に笑って貰えるか?』と振付け、演技、メイク全てを面白可笑しくするべく考え抜いて本番に臨んだのですからね(^_-)-☆
 愛見先生の『吉本新喜劇の様にドタバタして!』と云う指示もドツボにハマって出演者全員が本番の演技は更にパワーアップできたと思っています。


 今回のメイクは自分でも良くできた方だと思うので、いっその事、この写真を遺影にしちゃおうかな(笑)





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『場当り』は立ち位置の確認の為にある!


 前回『スタッフ下見』について書いたのですが、今回は『場当り』は何の為に行うのかを解説したいと思います。




 舞台稽古ではゲネプロ等の通し稽古の前に必ず『場当り稽古』という物をやります。 英語では『Placing Rehearsal』と呼び文字通り《立ち位置》の確認をする稽古が『場当り』と呼ばれるのリハーサルなのです。


 立ち位置の確認をする事が目的のリハーサルなので基本的に場当り稽古で音楽は流しませんしダンサーが踊る事もありません。


 場当りでは舞台の出捌けの位置、板付きの立ち位置、踊り終わりの位置、踊っている時に通過すべき場所や移動経路等の確認、アンサンブルフォーメーションの形や位置と一人一人の間隔、フォーメーションの変化に伴う移動経路やラインが交差する際の一人一人の移動経路の確認とタイミングなどと確認する事が沢山あり踊る前にそれらをダンサー全員が正しく把握して置かないと接触事故が起きたり、列が揃わなかったり、決められた位置までたどり着けなかったりします。

 そして位置取りの軽いミスが次の行動への枷となり、それが積み重なってダンサー達の余裕を奪って行きそれが更なるミスを呼び寄せます。


 その様な理由で『場当り』では立ち位置の確認と記憶に全神経を集中する事を最優先にして欲しいのです。

 場当りなのに踊っていると意識が踊りの方に傾いて位置確認が疎かになるので振付けで指定された場所まで小走りで速やかに移動して指導者の細かい指示を待ち、その時に指導者に指定された立ち位置を記憶しましょう。




 場当りで踊っては駄目な最大の理由は『時間や労力の節約』の為です。 確りと踊れば音楽で踊る時と同じだけの時間が掛かってしまいますが、それでは通し稽古以上の時間が掛かります。 場当りでは時間も体力も使わずに立ち位置の確認だけをする(頭を使う)、通し稽古は本番通りに踊るという役割を確りと分ける事で全てにおいて効率良く舞台稽古を進める事ができるのです。

 それに舞台稽古の時間が押してしまう原因の殆どは場当りを踊りの稽古と勘違いして位置確認より踊りに時間を費やしてしまう事なのです。 ソロで踊る一分のヴァリアシオンでも位置確認だけなら5〜6カ所程度ですから20秒もあれば余裕で終わります。 アンサンブルだと全員で列を揃えるという複雑さがあるので、もっと時間は掛かりますが、それでも踊ってしまうより小走りに移動するなどして位置確認する方が遥かに早く場当りは終わります。

 場当りがスムースに終われば舞台稽古にも支障が出にくくなり、その後に本番が控えている場合には、その準備に使える時間も増えます。 つまり余裕を持って本番を迎えられるのです。



 また舞台上でダンサーが感じる均等な距離感や綺麗なフォーメーションと客席から見えるそれとは異なる事が多々あるのでダンサー達の独断で場取りをしてはいけません。 必ず客席から見ている指導者の指示に従って下さい。 アンサンブルの形の美しさはあくまでも客席から見た時の形と距離なのですから、舞台上では不均等な並びでも客席から見て美しければそれが正しいのです。 例えプロダンサーであっても舞台上のダンサー目線で勝手に場取りをしない様に気を付けましょう。




 場当りの本当の意味を理解していない団体の舞台を観るとダンサー達が立ち位置を守るのではなく周りの人に合わせて列を揃え様としているのが分かり、結果的にピタッと揃わず、ゾロゾロと集まると言った感じの揃い方になり作品の出来もあまり良くない事が多くなります。 そういう時ってダンサー達があまり頭を使っていないのも見て取れるのです。


 それもこれも中途半端な場当りで全員が確りと立ち位置などの確認が出来ていないからです。




 『場当り』では余計なお喋りは慎み、無駄な動きをせずに指導者の指示を聞き漏らさない様に神経を集中して下さい。






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スタッフ下見はダンサーの練習の為にあるのではない!


 オープンクラスを教えていると色々な教室でレッスンを受けている生徒が集まります。 そうなると『うちのスタジオはこんな感じ』と云う様な話が出てスタジオ毎の違いに盛り上がるのですが、その中で発表会前の『スタッフ下見なんて待ち時間も長くて練習にならないし意味が無い!』と苦情を言っている大人バレエの生徒がどこのスタジオにも居るんだと分かりました。


 スタッフ下見では『スタジオに出演者全員が集まる為にウォームアップする場所も時間も無い』とか貸しスタジオで『床が滑る、固い』等という踊りにくい条件が重なり、そのストレスから不満が出るのも理解出来ますが、では意味が無いなら何故発表会前には必ずスタッフ下見があるのでしょうか?



 スタッフ下見の意義さえ理解していれば不平不満は出ないと思いますのでスタッフ下見を行う意味をお伝えしたいと思います。



 先ずスタッフ下見は日本のバレエ界の特別な事情から行われていて欧州の劇場では日本の様な形で行われる事はありません。 その理由は後述するとして本質的に『スタッフ下見とはダンサー、生徒の練習の為にある訳ではありません!』




 ではスタッフ下見とは何の為にあるのかと言うと舞台監督、音響(オケ付きの場合は指揮者も)及び照明の責任者に完成状態の全作品を見せて各作品をどの順番で上演し、舞台をどの様に進行させるのかから始まり、各作品毎に音出しの切っ掛けや尺の長さ、出捌けの確認、作品の雰囲気や衣裳の色などから照明プランを決める為の相談、舞台上で必要な大道具や小物の用意やそれを何処に配置したりどう回収するのか、また舞台転換や緞帳や紗幕の開閉のタイミング、上演時間の長さを計算するなど、発表会での舞台運営の全てを相談し決定する為の場がスタッフ下見なのです。



 つまりスタッフ下見無しで発表会をやったら、衣裳や作品が引き立つ様な照明をセットできるのか、音楽が正しいタイミングで出るのか、舞台装置や小物がちゃんと用意されているのか等の全てが当日になるまで分からない、もし必要な物が用意されていなくてもそのまま本番を迎えるしかありません。



 どうですか? 全てが出たとこ勝負のぶっつけ本番って怖くないですか?



 それに舞台監督をはじめ全てのスタッフは本番でダンサーが気持ち良く踊れる様に本番前から綿密に計画を立ててタイムスケジュールを出し、本番日も朝早くから舞台の仕込みを、本番後にも遅くまで残って片付けを行ってくれているんです。 事故が起きない様にダンサー達の健康や安全に配慮して舞台の運営を円滑にする為にもスタッフ下見を通しての事前の計画立案は絶対に欠かせない物なのです。


 想像してみて下さい。 本番日のスケジュールが全て未定でリハーサルはいつ始まるのか、リハーサルの順番はどうなるのか等が分からなければ、自分がいつ楽屋入りしてメイクしてウォームアップして衣裳を来てリハーサルや本番の準備をすれば良いのかが分かりません。 いつ呼ばれても良い様に朝からずっと準備を終えて待機する訳にも行きませんよね?




 最初に言いましたが、スタッフ下見とはダンサーの練習の為にやるのではなく舞台運営を安全に円滑に行う為の話し合いの場であり、それは巡り巡って発表会で踊るダンサー達が余計な事に気を取られずに踊りに集中する手助けとなっています。


 これを知ったら『スタッフ下見は無意味』どころか時間を割いて下見に来てくれている舞台スタッフに感謝の気持が芽生えて来ますよね? ですから『下見は無意味』などと言わずに舞台に参加する一人として下見に協力する意識でいて下さい。




 因みに欧州の劇場で日本の様な形でスタッフ下見が行われないのは劇場付きのバレエ団は舞台監督をはじめ舞台スタッフも劇場専属の為にいつでも、何回でも打ち合わせが出来ますし、舞台稽古も複数回に渡って行える為にスタッフ全員を呼んでスタジオ内で一度に下見をする必要が無いからなのです。 ですから照明を作る為の舞台稽古、オーケストラと合わせる為の舞台稽古、舞台装置などの動作確認の為の舞台稽古、衣裳付きでの舞台稽古などが日本で言うスタッフ下見に相当しています。



 しかし日本の場合はなるべく一度に全てを行う事で経費の削減を図っていて、それがスタッフ下見となり、前日や当日の場当りや総稽古(ゲネプロ)となったのです。(※欧州ではプルミエ当日に舞台稽古は絶対にやりません)

 こういう経費がチケット代金や発表会費へと反映されるので経費削減の為にも下見で出演者が少しばかりの我慢をしてくれると皆が幸せでウィンウィンの関係になれますね。






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踊っている時に失敗を振り返らない!


 ヴァリアシオン等を踊っている最中に何かを間違えたり、失敗したりしたりすると、その場で何を間違えたのか、何故失敗したのかを考える人が多いのですが、踊っている最中に失敗した事に気を取られては絶対に駄目です!



 何故なら失敗に気を取られると精神的に追い込まれて次にやるべき事を忘れて、また失敗をするから・・・(^_^;)



 『覆水盆に返らず』と言いますが舞台でも稽古でも起こってしまった事は幾ら悔やんでも元に戻りませんし、やり直しもできません。

 ですから失敗は直ぐに忘れて次にやるべき事に集中するのが最良なのです。




 『いや稽古ならやり直しできますよね?』と思うかも知れませんが失敗した時に冷静に気持ちを切り替えてリカバリーできる様になるにはそれなりの訓練が必要で稽古の時から常にやり直しは出来ないと云う心持ちで臨まなければ失敗した所で踊りを止めてしまう習慣が付いてしまいます。 ですから踊っている時は稽古の時から常に先の事を考えて過去は振り返らない様にメンタルを鍛えましょうね。



 踊りなんて完璧でなくても良い! その時にベターな踊りができれば良いのですから(^_-)-☆






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