何でも出来るオールラウンダーが良い!


 テクニックを教える際に『ロイヤル式はやってはダメ!、ロシア式のやり方しか認めません!』と云う様な指導をする方々が居るらしいのですが、とても下らなくて呆れてしまいます。


 多分こう云う事を言う指導者は異なって見える動かし方の根本にある同じ理論の動きという物が理解出来て居ないのだと思います。



 例えば“ピルエットアンドゥダーン”では、「脚を“アラセコンド”までロンドジャンブしてから“パッセ”にする方法(ロシア式)」と「脚を後ろから直接“パッセ”に引き込む方法(英国式)」がある事は知らない人は居ないでしょうが、この2つは同じ論理で回転力を生み出しています。


 それは“パッセ”側の脚を後ろから横まで振る事で生まれる回転力を利用していると云う事!


 勘の良い方なら直ぐに理解出来ると思いますが、直接“パッセ”に引き込んでいる時だって膝までの大腿部は“ロンドジャンブ”しているのです。 違いは脚を長く伸ばしたまま回すのか、 膝までの短い長さにして回すのかの違いだけなのです。
 脚が長ければ回すのに時間が掛かり、回転力は大きくなりますが制御が難しくなります。
 短ければ回転力は小さいですが制御が楽で、早く脚を回せます。
 つまり2つの方法は「沢山回りたいのか」、「素早く回りたいのか」と云う所で使い分けるのが適当であって流派等に拘るのでは無く両方出来なければ駄目なのです。

 それに“ピルエットアンドゥダーン”には別の理論に基づく回転力の生み出し方もあり、上記の2つが全てではありません。 沢山の方法がありその中から一つだけ選び取って、それしかやらない(出来ない)と云うのは良い事なのでしょうか?

 流派をごちゃ混ぜにしろと言っている訳ではありません。
 現代では昔のダンサーが出来なかった様な高度なテクニックをこなすダンサーが綺羅星の様に現れていますし、新たな演出と振り付けによる新作等が沢山作られています。 それに色々な流派の振付を踊る機会だって頻繁にあるのです。
 その中で旧態依然の流派に縛られるのではなく全ての流派を正しく踊りこなせる方が良いのでは無いですか?




日本は未だに19世紀の価値観!


 流派(メソード)と云うのは振付家の作風を表現するのに不可欠の物でワガノワ流の作品を英国流やバランシン流で踊ってしまっては台無しになりますし、バランシン流の作品をワガノワ流で踊っても元の作品とは違う物になってしまうので流派の決まっている振り付けの中で異なる流派のやり方を混ぜるのは良くありませんが、新進気鋭の振付家の作品ならば流派を混ぜようがそれがその人の表現したい物ならばダンサーはそれに従って踊れなければなりません。 『私はこの流派のやり方でしか踊れません』なんて各ダンサーが言おう物なら踊りを揃える事なんて絶望的ですし。


 現代のダンサーは全てのクラシックメソードだけでなく現代舞踊のメソードまでの何でも踊れるオールラウンダーなダンサーで無ければ駄目なのです。


 昔は移動が大変で世界中の人と交流するのが難しかった事もあり各地で独自な流派が生まれたのでしょうが、現代は世界中の人とあっという間に繋がれる時代です。

 あまり流派に拘り過ぎると時代に取り残されてしまいます。 と云うか日本のバレエ界は未だに19世紀の価値観に縛られていて欧米からはかなり遅れていると思いますので、テクニックだけでなく思考もどんどん更新して行きたいですね。


 もっと広い世界に目を向けましょう!





 9月7日(土)めるもバレエスタジオでの講習会参加者募集中です。