“アンドゥオール”は目的では無い!


 『脚をアンドゥオールする』と云うのは目的を達成する為の手段であり“アンドゥオール”自体が目的ではありません。 しかし、それを取り違えているダンサー・指導者が多過ぎませんか?

 “アンドゥオール”が手段であり目的ではないと云う事が解っていれば指導の仕方やダンサーのレッスンへの取り組み方も変わると思うのですが誤解したままでは正しいと踊り方へとは繋がって行かないのです。



 では“アンドゥオール”とは一体どの様な目的の為に行うのでしょうか?



 “アンドゥオール”を行う最も大切な理由は『軸と体幹を安定させる為』です。


 どう云う事かを説明すると例えば独楽の軸が本体と確りと固定せずに緩く取り付けてある様な状態だと、その独楽は上手く回せるでしょうか? 上手く回りませんよね。
 何故なら軸の回転と本体の回転にズレが出て来るからです。

 軸を先に回転させたとするとその軸に引かれて本体が周り出しますが、本体を引っ張った事で軸は減速してしまいます。 そして減速した軸を今度は本体が引っ張る形で減速します。
 これが続く訳ですから最初に与えた回転力はあっという間に減衰してしまいます。
 要は上手く回らないのです。

 静止してバランスを取っている時でも軸脚と上半身が一体化して居ないと身体が揺れてしまいます。 これでは安定が取れているとは言えません。



 この様にダンサーがどの様な動きをしようとも軸と体幹がズレて動かない様にする為の一つの解答が“アンドゥオール”なのです。
 “アンドゥオール”は脚がこれ以上は外向きに旋回しない限界の所まで回しますが、脚を回し続けようとする限り限界位置に留まってくれます。 つまり“アンドゥオール”している限り軸がフラフラ動いて体幹とズレると云う事は起こらなくなるのです。

 では限界まで“アンドゥオール”せずに中途半端な位置で脚の旋回を止めたらどうなると思いますか? 中途半端な位置では脚を安定させる事が難しく脚を回し過ぎたり戻し過ぎたりと云う事が起こり、軸と体幹がズレてフラフラしてしまうので踊り難くなるのです。


 勿論“アンドゥオール”しなくても軸と上半身を一体化させれば安定的に動ける様にはなりますが、その様な踊り方はクラシック以外の時に使います。 ですからそう云う身体の使い方も勿論身に付けなければなりませんが、先ずは“アンドゥオール”を確りと訓練する事がとても大切なのです。




体幹と繋がってこその“アンドゥオール”!


 脚の“アンドゥオール”は脚だけ“アンドゥオール”していれば良い訳ではありません。

 最初に述べた通り“アンドゥオール”の目的は『軸と体幹の安定の為』なので軸脚と体幹は繋がって一体化していてこそ安定します。

 一体化と言っても固着化する訳ではなく上下に引き伸ばす事でズレて動かないようにします。

 別の考え方をすると『真っ直ぐの体幹の真下に軸脚が“アンドゥオール”されて何処までも伸びて行く』が良いでしょう。


 本当に真っ直ぐに立つ為には下に向かって身体が引き伸ばされると考えた方が体軸のズレなどを感じやすくなり余計な力を入れない様に気を付ける事も容易になります。

 『下から伸び上がって行く』と考えると意外にも体軸がズレやすく、また伸び上がり切れない事も多く力も過大に使ってしまうんです。




 バレエでは大切な“アンドゥオール”ですが、“引き上げ”や“タンデュ”と云った物と一体と言っても過言ではない位に切り離しては考えられません。 全て同時に行わなければならないので別々に考える必要さえないのですから、もはや『同じ物』と言ってしまっても良いのかも知れません。

 全てを同じ物として捉えていた方が気を付ける事が集約されて少なくなり、その分だけ他の事を考える余裕が出ます。
 振付を覚えるのが早いとか注意された事が直ぐに出来ると云う様なダンサーの頭の中はこの様に整理がされているから余裕があるのです。
 余裕を持って踊れる様に“アンドゥオール”と“引き上げ”等を一つの物として捉えて踊れる様に意識改革をしましょうね。






 次回のめるもバレエ講習会は9月7日(土)に決定致しました。 次回も沢山の方の受講をお待ちしています。